森山光太郎作品のページ


1991年熊本県生、立命館大学法学部卒。幼少期より大伯父から歴史の手ほどきを受け、2018年「火神子 天孫に抗いし者」にて第10回朝日時代小説大賞を最年少受賞し作家デビュー。


1.草莽の臣 

2.戦ぎらいの無敗大名 

  


       

1.

「草莽の臣(そうもうのしん) ★★   


草莽の臣

2024年11月
早川書房

(2300円+税)



2025/01/22



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聞き慣れない言葉ですが「草莽」とは、地位を求めず、国家の危機に際して国家に忠誠を誓って行動する人のこと。特に幕末期には、倒幕運動に参加した地方の豪農や豪商出身者等を指す言葉として使われたそうです。

本作は、4つの時代において、外国からの脅威に対して日本を護るために自らを投げうって戦い続けた人たちを描く歴史小説。
ユニークなのは、千年に亘って外敵から日本を護る役目を背負った石見の
益田一族(藤原の末)という存在を設定したこと。
これにより、独自の面白さが開けています。

「白村江」:主役となるのは、大海人皇子、藤原鎌足
白村江の敗北により倭国は、次々と唐から要求を突きつけられます。そしてそれは、内乱を招き倭国を弱体化させるものだった。
「蒙 古」益田兼久。蒙古襲来のリスクを軽減するため、兼久は北条時宗の命を受けて高麗に潜入する・・・。
「唐入り」益田元祥(毛利家家臣)。秀吉の朝鮮出兵により国内勢力は二分し、国力の衰退に繋がりかねない・・・。
「禁 門」益田右衛門介親施(〃)。長州藩で勢いを増しつつある攘夷志士たち。内乱を引き起こして隙を見せれば、欧米列強に付き込まれ、日本も中国同様になりかねない。その危機に日本を護る役目を担う益田右衛門介はどう行動するのか。

4つの篇の内、特に面白かったのは「白村江」と「禁門」。
前者は、唐から日本に乗り込んできた天才官吏と鎌足との、逆転に次ぐ逆転の攻防が読み処。呆然とさせられる程、凄い。
後者は、幕末の長州藩を巡る騒動にこんな裏があったのか?と驚愕、興奮させられるストーリーになっています。
  
歴史好きの方には、是非お薦め。

序章.風濤/1.白村江/間章.撃鉄/2.蒙古/間章.人国(ひとつくに)/3.唐入り/間章.道/序幕.禁門/終章.偃武

       

2.

「戦ぎらいの無敗大名 ★★   


戦嫌いの無敗大名

2025年07月
双葉社

(1800円+税)



2025/09/07



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中央では織田信長が一気に覇権を手にしようとしていた時代、九州では古くからの大大名である大友宗麟、島津家が勢力を争い、さらにその両者の間に急激に勢力を拡大した龍造寺隆信が割って入るという構図。

本作は、そうした中、
筑後柳川の小領主にしか過ぎないものの、支配地の拡大を目指すのではなく、民を護ることを第一義とした将、蒲池鎮漣(しげなみ)を描いた歴史長編。

この鎮漣のキャラクターが抜群に面白く、そのまま本作の魅力、核心部分になっています。
幼少の頃から腕っぷしも気も弱く、戦といった荒っぽいことは嫌い、恐ろしいという気持ちを露にしていたお蔭で、「姫若」と揶揄される人物。
しかし、民を護ろうという気持ちは強く、その分状況を見る目は確か。その能力を発揮していつしか、龍造寺隆信、その右腕である
鍋島孫四郎直茂にとって無視できない存在となっていく。

領民や他の領主から「姫若」と嘲られながらも、いつの間にか持ち味を発揮し、皆の無視できない存在になっていくという展開が痛快。
そして、その具体的な活躍ぶりを読むのが楽しい。
とくに柳川城に押しかけた七万もの軍勢にどう対するのか、そこでは合戦の面白さを堪能できて、言うことなし!

一方、大友宗麟、島津家、龍造寺隆信&鍋島直茂という、九州における戦乱の歴史を知ることが出来たことも嬉しい。

ただ、所詮は小さな土地の領主、大勢力に対しての抵抗には限りがありますが、義を真っ直ぐ貫いた点は、実に爽快です。

なお、鎮漣の右腕である
大木統光、隆信の右腕である鍋島孫四郎という二人の存在が見逃せません。
また、鎮漣の父親である
宗雪、異母兄である鎮久、隆信の娘で鎮漣の妻となった玉鶴姫等々の人物像もそれぞれ読み応えあり。


序/破/急

          


  

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