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1.熱望 2.ランチ合コン探偵(文庫改題:ランチ探偵) 3.教室の灯りは謎の色 4.ランチ探偵−容疑者のレシピ− 5.ひよっこ社労士のヒナコ 6.きみの正義は−社労士のヒナコ− 7.ノゾミくん、こっちにおいで 8.ランチ探偵−彼女は謎に恋をする− 9.女の敵には向かない職業 10.その嘘を、なかったことには |
「熱 望」 ★☆ | |
2020年09月
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出版社紹介文に「究極のイヤミス!」とあり、イヤミスって何のこと?と意味が解らなかったのですが、「後味が悪い」「イヤな気分になる」ミステリ作品のことを言うのだそうです。 契約社員として働く清原春菜31歳、ようやく結婚が決まったと喜んでいたら何と結婚詐欺。なけなしの1百万円を取られた上に勤務先から契約を切られ、食うにも困る日々に。そこで一念発起した春菜が考えたことと言えば、今度は自分が男たちを騙して金を奪ってやろうというもの。さて、その結果は・・・。 差し詰めジェットコースター・ストーリイなのですが、何より呆れるのは、主人公の春菜が呆れるくらいに自己肯定的なところ。 主人公の明るく前向きなキャラクターに反して、どんどん深みに嵌っていくという展開。それが軽快なテンポで語られていくところが本作品の持ち味でしょう。 |
「ランチ合コン探偵」 ★★ (文庫改題:ランチ探偵) |
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2016年10月
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“安楽椅子探偵”もの連作ミステリ。 気分転換に軽い作品をと思って手に取ったのですが、趣向の面白さから予想以上に嵌りました。 阿久津麗子25歳、住宅関連会社の経理部に勤務する正統派美人。ところが彼氏にフラれ仕事中ボーっとしていたところ、鋭くその理由を見抜いていたきたのが、有能だがコミュニケーション能力欠如と評されている1期下の後輩、けれど同い年の天野ゆいか。 思わぬところで打ち解けた2人、麗子がランチ合コンをセットする度、2人していそいそと出かけていきます。 麗子の狙いが彼氏探しにあることは明らかですが、ゆいかの狙いはというと、安楽椅子探偵の才能を発揮できる奇妙な話に巡り会うこと。 興味深い話に舌なめずりするゆいかの様子が眼に浮かんできて、思わず楽しくなってしまいます。 1.夜中にエレベーターが動くのは、自殺した幽霊の仕業? 2.毎週金曜日、大量に弁当を買う謎の美女の理由は? 3.銀行店頭でストーカーを取り押さえた俳優はヒーローか? 4.新婚旅行前に姿を消した妻の行方、理由は? 5.家の窓に毎日並び変えられるぬいぐるみの謎は? 6.離婚して回収した婚約指輪がなくなったのは元妻の盗みか? なお、なぜランチ合コンが可能かというと、昼休みに加えて“時間有給”を取っているから、という設定。成る程なぁ。 1.アラビアータのような刺激を/2.金曜日の美女はお弁当がお好き/3.午後二時すぎのスーパーヒーロー/4.帝王は地球に優しい/5.窓の向こうの動物園/6.ダイヤモンドは永遠に |
「教室の灯りは謎の色」 ★☆ | |
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学習塾「優勇塾」に通う高校1年の並木遥は、実は不登校中。 そんな遥を主人公にし、この学習塾を舞台にしたスクール風連作ミステリ。 学習塾といえば、補習あるいは受験の為に通ってくるところですから、そう問題事が起きるとは思えないようなものですが、それでも生徒たちがいれば思春期なりの悩みもそれなりの事件も起きる、ということなのでしょうか。 探偵役は、サイズの合わないテーラードジャケットをいつも着ていて、無愛想な塾講師の黒澤光彰。 黒澤にマイナーな印象を持っていた遥が、第1章で黒澤に救われるや、一転して黒澤にまとわりつき、彼の探偵能力を引きずりだそうとする毎度の展開が楽しい。 「ランチ合コン探偵」のような意表を突く面白さではなく、どちらかというとオーソドックスな展開のミステリです。 ・「水中トーチライト」:遥が不登校になった真の理由は何か。 ・「消せない火」:塾内で放火しようとしたのは誰か。 ・「彼の憂鬱、彼の選択」:バイト講師を内倉が嫌う理由は? ・「罪のにおいは」:長野聖を部屋に閉じ込めたのは誰か。 ・「この手に灯りを」:安奈が逃げ出して事故にあった背景にどんな事情があるのか。 1.水中トーチライト/2.消せない火/3.彼の憂鬱、彼の選択/4.罪のにおいは/5.この手に灯りを |
「ランチ探偵−容疑者のレシピ−」 ★☆ | |
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OLコンビがランチ合コン相手の語り出す日常ミステリの真相をその場で解き明かす、コージーミステリ&安楽椅子探偵もの“ランチ探偵”シリーズ第2弾。 正統派美人の阿久津麗子がワトソン役、ホームズ役は麗子の1年後輩にして同い年の天野ゆいかという設定は前作どおりです。 前作では、ランチ合コン+安楽椅子探偵ものという趣向の清新さと面白さに興奮したのですが、第2作となると最初から合コン目的が謎解きに設定されているとあって、少々興覚めの観あり。 しかし、謎が絡まないゆいかが合コン話に乗ってこないのですからやむを得ない、との弁。 1.借り上げ社員寮の部屋で幾度も起きた不審な出来事の真相は何か。 2.美容室、客の一人が持ち込んだスマホをゴミ箱に捨てたのは、本当にスタッフ女性のミスか? 3.大叔母から2匹愛犬と共に1千万円の負担付遺贈を受けた青年の話。犬を殺そうとした犯人は、遺産相続争いした相続人か? 4.スポーツジムの女子ロッカーからお金が入った封筒を盗んだ犯人の目的は何か? 5.シェアハウス住民の一人が大切にしていた写真に落書きしたのは、本当に彼が付き合っていた相手の幼い息子か? 「MENU 5.」では、ランチ探偵はもうこれで最後?と心配させられましたし、ミステリ以外でのハラハラがありましたが、これからも本シリーズは続くと期待したいところです。 何といっても、麗子とゆいかのコンビが魅力的ですから。 1.その部屋ではなにも起こらない/2.密室における十人の容疑者/3.小日向家の犬はなぜ狙われる/4.秘密の扉を開くのは/5.そして、いなくなった |
「ひよっこ社労士のヒナコ」 ★☆ |
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2019年10月
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元は派遣社員でしたが、ひたすら勉強して3回目で社会保険労務士の試験に合格したという朝倉雛子、26歳が主人公。 雛子を含めて4人という小さな事務所“やまだ社労士事務所”に所属する新人社労士として、依頼先の企業にて生じた様々な問題の解決に奮闘するという連作式お仕事小説。 山田真哉「女子大生会計士の事件簿」と似たコンセプトですが、会計士の場合は経理・決算問題、社労士となれば労務問題と当然ながら問題ごとの内容は異なります。 それに加えて、女子大生といえどもベテラン会計士であったのに対し、本作の雛子は新人社労士。 新人故の甘さを突かれて、余計な面倒毎に巻き込まれる、ということも度々。 ・「五度目の春のヒヨコ」は、残業手当をめぐる問題。 ・「綿菓子とネクタイ」は、バイトの待遇問題。 ・「カナリアは唄う」は、産休・育児休業の問題。 ・「飾りより、灯りより」は、派遣社員の待遇問題。 ・「空に星はなく」は、パワハラ、労災問題。 ・「撮りたい手は」は、裁量労働制の問題。 どの篇も特別にドラマチックということはありませんが、ブラック企業、過労死、不当解雇等が社会問題になってきた現在、タイムリーな題材なのかもしれません。 感じることは、社会の状況や考え方、物事の是非がどんどん変わりつつある、ということ(根っこは少子化かも)。 時代の趨勢に合わせて柔軟に思考を変えていく、変えていけることが大切だと改めて思います。 なお、読む側は簡単に読み通してしまいますが、こうした作品を書く側にはかなり苦労があったのではないかと思う次第です。 五度目の春のヒヨコ/綿菓子とネクタイ/カナリアは唄う/飾りより、灯りより/空に星はなく/握りたい手は |
「きみの正義は−社労士のヒナコ−」 ★☆ | |
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時勢に適った企業内の労働問題をリアルに描く“社労士のヒナコ”シリーズ第2弾。 主人公の朝倉雛子は28歳、やまだ社労士事務所に勤めて2年目の社労士。 契約先企業の担当者からは「朝倉先生」と呼ばれ、本人も早く一人前にと思っているものの、事務所のベテランたちからすると<ヒヨコ>は脱したとしてもまだまだ<雛鳥>ということらしい。 サクッと軽く楽しく読める連作ものですが、取り上げられている問題はどの企業にとっても課題となることばかり。きちんと読めば参考になるところ大だと思います。 総じていえば、これまで企業は自分にとって都合のよいことばかりを従業員に押し付けてきた、でもこれからの時代は従業員の福祉も考えて従業員と企業が折り合っていく時代になった、ということだと思います。 企業が犠牲を強いられるようになったと考えるのではなく、時代が変わった、人手不足という情勢もあり、企業が従業員を正当に扱う時代になったのだと考え方を切り替えれば、きっと道は見えてくるのだと思います。 ・「春の渦潮」:老人介護施設が舞台。有期雇用の実績者について無期雇用への転換が義務付けられましたが、特定のスタッフを何としてでもクビにしたいとの相談。それは許されるのか、折り合う余地はないのか。 ・「きみの正義は」:工務店、学習塾で雇ったバイトが年齢を詐称、雇用側はどう対処すべきなのか。 ・「わたしのための本を」:書店が舞台。店長、無申告残業が常態化。収益状況が厳しいからと言うが・・・思わぬ事態あり。 ・「藪の中を探れ」:一般企業内でのセクハラ事件。38歳独身の男性課長が、上司である40歳独身の女性部長からセクハラを受けたと社内で訴え。双方の言い分に食い違い有り。果たしてどちらの主張が正しいのか。ちょっとミステリ風で面白い。 ・「らせん階段を上へ」:居酒屋チェーンの本社が舞台。周囲も認める頑張り屋でアルバイトから登用され今は正社員となった女性。しかし、父親が要介護となり時短勤務の要望。それを屋敷専務は辞めさせると強硬。どう解決すべきか。雛子の調整能力が問われます。 春の渦潮/きみの正義は/わたしのための本を/藪の中を探れ/らせん階段を上へ |
「ノゾミくん、こっちにおいで」 ★☆ | |
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海のそばで合わせ鏡を作って名を唱えると、ノゾミくんがやってきて願を叶えてくれる・・・という都市伝説。 SNSで広がったその都市伝説を信じ、好きな相手とカップルになりたいと願った女子高生が、「助けて」「ノゾミくんに殺される」という言葉を残して校舎の屋上から転落死するという事件が起こります。 ノゾミくんの正体は何なのか、ノゾミくんに願いを叶えてもらった依頼者はノゾミくんに殺されてしまうのか・・・。 次々と人が死んでいきます。 まず、勤務先でイジメを受けていたらしいOL、ノゾミくんに願いごとをしていた女子高生、さらに・・・。 それは、ノゾミくんに誰かが復讐を頼んだからなのか。 出版社紹介文には「ホラーミステリー」とあります。 たしかにホラーと思われる事象が描かれていくのと並行して、ノゾミくんの正体、伝説の所以を調べようとする高校教師=遠山逸子による謎解きの展開があります。 ノゾミくんに襲われる者たちが抱く恐怖感、相当にリアル。 真相が明らかになっても、ホラーは留まるところがありません。正体が解ってみると、なおのこと怖ろしい、というのが本ストーリィ。 それにしても会社、学校を問わず、イジメはロクなことではありませんし、またSNSで広がる噂を自分に都合よく勝手に信じてしまうのも危険なこと。 いやいや、最後の最後まで、本当に怖ろしかったです。 序章/1.月曜日/2.火曜日/3.水曜日/4.木曜日/5.金曜日/6.土曜日/7.日曜日/終章 |
「ランチ探偵−彼女は謎に恋をする−」 ★☆ | |
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OLコンビがランチ合コン相手の語り出す日常ミステリの真相をその場で解き明かす、コージーミステリ&安楽椅子探偵もの“ランチ探偵”シリーズ第3弾。 久しぶりだなァと思っていたら、5年ぶりでした。 正統派美人の阿久津麗子がワトソン役、ホームズ役は麗子の1年後輩にして同い年の天野ゆいかという設定は前作どおりです。 ただし、本作ではコロナ感染拡大下、会食の自粛が促され、ランチ合コンも開催難。麗子とゆいかにしても、テレワークが導入され、経理部と人事部と所属が異なるため中々会うこともできないという状況。 それでも麗子が奮闘してランチ合コンは継続。そしてその席上、ゆいかの「すべての構図が、見えました」という声が響きます。 ・「お稲荷さん、いまは消え」 相手は広告代理店勤務、イタリア料理店で。 父親が転勤族だったため僅か半年通っただけの中学校。その校舎内にはお稲荷さんがあった。しかし、同窓会であった同級生たちはなかったと無かったと明言。何故? ・「アンモナイトは百貨店の夢をみるか」 相手は老舗百貨店勤務、スペイン料理店で。 勤務する百貨店、大理石の柱の中にはアンモナイトの化石。それを取り戻しに行く、という書き込みがSNSに。その狙いは? ・「ずっとお家で暮らしてる」 お試しオンライン飲み会、相手は知人の未知と平岡。 平岡が講師として勤務する予備校のオンライン授業、A子のペンギンボールペンが何故かB子の手に。何故? ・「五月はたそがれの国」 オンライン合コン、相手はキッチンカーの自営業者。 キッチンカー商売を妨害するように、容器のゴミ捨て。誰が? ・「天の光は希望の星」 久々のリアル合コン、大学時代の友人コンビ、中華点心店で。 2人の大学時代のゼミ仲間、その頃からくっついたり別れたりを繰り返していた2人、やっとプロポーズが成功。しかし、突然に破談。何故? 麗子、合コンに熱心なのは相手探しのようですが、ゆいかは謎ネタ期待らしい。そんな2人のやりとりが愉快です。 1.お稲荷さん、いまは消え/2.アンモナイトは百貨店の夢を見るか/3.ずっとお家で暮らしてる/4.五月はたそがれの国/5.天の光は希望の星 |
「女の敵には向かない職業 AN UNSUITABLE JOB FOR A WOMAN'S ENEMY」 ★☆ | |
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何やら面白そうだと題名に惹かれて読んだのですが、この題名、ストーリィの内容に釣り合っていないのではないかなぁ、ちょっとズレているように感じます。 ともあれストーリィ。 主人公の葛城彩華、長年勤めていた会社が突然倒産、これを機会にと上京し漫画家の道を目指そうとします。運良く編集者の目に留まり、憧れの人気漫画家=篠宮香蓮のスタジオにアシスタントとして雇われることになります。 しかし、香蓮の双子の弟でやはり漫画家の神薙志門との共同であるそのKSスタジオを舞台に、次々と事件が起こります。 ボツにしたネームの流出? ストーカー? 転落事件? 何だかんだと彩華に探偵役が割り振られるだけに、バタバタ・ミステリ、という印象です。 ただそれ以上に興味を惹かれるのが、今時こんな?と思える、神薙のセクハラ、パワハラぶり。しかも、本人にハラスメントをしているという自覚がないのですから始末に負えない。 SNSでの炎上は自業自得ですが、離婚した妻の元にいる愛娘から徹底的に批判されるところは痛快。 日頃こうしたハラスメントに苦労させられている女性方は、すっとするのではないでしょうか。 ミステリなのか、ハラスメントなのか、それとも彩華の挑戦ストーリィなのか、ごちゃ混ぜというところがちょっと残念ですが、それなりに面白く読みました。 中でも、永遠ちゃん、最高!かな。 プロローグ:九月最初の金曜日/1.彩華/2.神薙/3.彩華/4.神薙/幕間:九月最初の金曜日/5.神薙/6.彩華/7.神薙/8.彩華/9.神薙/10.彩華/11.神薙/12.彩華/13.神薙/14.彩華/終章 |
「その嘘を、なかったことには」 ★☆ | |
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「最後のページをめくるまで」「あなたが選ぶ結末は」に続く、“どんでん返し”シリーズ第3弾、とのこと。 出版社紹介文から、驚天動地の結末を期待して読み始めたのですが、私が勝手に思い込んでしまっていたのか、期待していたどんでん返しとは少々異なり、その分物足りず。 どんでん返しに至るまでにはミステリ要素もあり、その点が私の思いとズレてしまったのかもしれません。 ・「妻は嘘をついている」:帰宅すると、家の中で見知らぬ男が死んでいた・・・。 ・「まだ間に合うならば」:ようやく仕事が得られるようになった今、ストーカー被害。ストーカーは果たして・・・。 ・「三年二組パニック」:卒業式で仕返しが実行されるという噂が広まる。一体、誰が、何を? 担任教師が探るのですが。 ・「家族になろう」:妻と義母の長年にわたる確執の真相は? それが明らかになった時・・・。 ・「あの日、キャンプ場で」:自主映画の撮影場所であったキャンプ場に我がまま女子を置き去りに。しかし、溺死体となって発見される。置き去りにした自分たちに責任はあるのか・・・。 01.妻は嘘をついている/02.まだ間に合うならば/03.三年二組パニック/04.家族になろう/05.あの日、キャンプ場で |