水原 涼
作品のページ


1989年兵庫県生、鳥取県育ち。北海道大学文学部卒、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。2011年「甘露」にて第12回文學界新人賞を受賞し作家デビュー。

  


       

「筏までの距離 ★☆   


筏までの距離

2025年06月
集英社

(2000円+税)



2025/07/24



amazon.co.jp

ストーリー展開があるようで、ないような、8篇。

戸惑いながらも、さてどのような意図を持った作品なのかと考えてみると、共通項が見えてきました。

各篇、いずれも登場人物が、一時あるいは一時期、縁をもった女性との関わりが描かれています。
一時期親しくなっても、その関係が終わってしまえば、単なる他人というか知人でさえなくなるのか。
そう言われれば当たり前のことではあるのですが、そこにちょっと懐古、寂しさが漂うのが感じられます。

もうひとつの特徴は、主人公が小説家あるいは小説を書いている人間で、自分が経験したことを小説にして欲しいと頼まれる、というストーリーが幾編か。
小説が書かれる前の経緯を聞かされるようで、興味惹かれます。

「ロング・スロウ・ディスタンス」:私は小説家仲間である七市から、彼がかつて出会った女性とのことを聞かされ、小説にして欲しいと頼まれる。

「マスキングテープ」:マスキングテープをあちこちに貼る、元恋人の癖、今も主人公に影響が残る。
「植物園にて」:大学時代、植物園へ一緒によく行った恋人との、関係と別れ・・・。
「回して削る」:離婚、そして会社を退職して郷里に戻った男性、木工仕事をしながら今も元妻のことを思い出す。
「坂で会う」:就職して以来、故郷に戻ることのない私。

「筏までの距離」:取材旅行にでかけたリゾート地で出会った女性。関係を持つのか持たないのか、微妙・・・・。

「台風一過」:大学時代から今も古書店でバイトする私は、小説書きも。彼女の笑いが忘れられず。
「沙貴のこと」:沙貴は大学時代の恋人の妹。久しぶりに再会した彼女から、自分のことを小説に書いてほしいと頼まれる。

表題作
「筏までの距離」に、一番惹きつけられます。
その他、
「ロング・スロウ・ディスタンス」「沙貴のこと」が面白く感じられました。

ロング・スロウ・ディスタンス/マスキングテープ/植物園にて/回して削る/坂で会う/筏までの距離/台風一過/沙貴のこと

           


  

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