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1.#柚莉愛とかくれんぼ 2.茜さす日に嘘を隠して 3.春はまた来る |
「#柚莉愛(ハッシュタグ ゆりあ)とかくれんぼ」 ★☆ メフィスト賞 Catch "Yuria" if you can |
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2021年11月 2020/04/06 |
普段だったら手を出さないタイプの作品だと思うのですが、借りることができたので読んだ次第。 結成後3年目だがまだメジャーデビュー出来ていない女子3人組のアイドルグループ<となりの☆SISTERs>。 そのセンターをずっと務めている青山柚莉愛(高校2年)と、このグループをSNSで追いかけている<@TOKUMEI>を主軸にしたストーリィ。 地下アイドル、そのファン、SNSという道具立ては、如何にも現代かつ若者的です。 ネット配信時、柚莉愛がマネージャーから指示されたままに行ったことが、ファンを騙した、馬鹿にしていると怒りを買い、大炎上。 そこには、いつの間にかアイドルを自分の望み通りに動く存在と思い込んでいたファンが意図的に企んだ炎上という事実もあります。 注目すべきは、<@TOKUMEI>と名乗る人物の正体、そして最後の展開。 予想もしなかった顛末に驚かされますが、結末の後味悪さは気になりますし、リアル感があるかと言えばイマイチ。 |
「茜さす日に嘘を隠して」 ★★ | |
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青羽悠「青く滲んだ月の行方」とペアになる、“大人未満”5人の女子学生たちを描く連作式青春群像劇。 どうペアか?というと、「青く」で登場した女子学生たちが本作では主人公という立場になります。 ですから、逆の側から見る、という感じ。それが面白い。 「砂が落ちる」は、「青く」の第二話「街の地球人たち」に登場した宮下愛衣が主人公。性悪女の典型といった印象だった愛衣の切ない姿が描かれていて心に残ります。 本書で惹きつけられたのは、井ノ坂皐月と文の姉妹。 「さんざんな朝」「手紙」「色を変えて」の3篇に登場します。 「青く」の第一話「端正な夜」に登場する皐月は、しっかりと自分の道を歩んでいるという印象でしたが、本作ではまるで違う。 傍目と実像はこんなにも違うものかと、驚かされます。 その皐月が敗北感を感じているのが、妹の文。高校の時からネットに自作の歌をアップし始め、顔出しはしていないものの、今では現役女子大生シンガー<ふみ>として活動中。 そんな文も、皐月の思いも寄らぬトラウマを抱えている、という次第。 これもまた才能あるシンガーという虚像と実像の差の大きいところが面白い。 「青く」は★☆、本作は★★という評価になりましたが、「青く」という土台があってこその面白さが本作にあった、と思っています。 1.さんざんな朝/2.砂が落ちる/3.手紙/4.あと1歩/5.色を変えて |
「春はまた来る」 ★★ | |
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男子が作った罠と戦う、女子の友情と絆、決意を描いた長編ストーリー。 主人公は東京のW大理工学部で学ぶ地味な女子、牧瀬順子。 高二の時、男子が行った可愛い子ランクで最下位にされる程、地味で存在感のない女子だった。 その順子がまさか、上記ランクでトップだった倉持紗奈と大学で再会するとは。もっとも、紗奈はT女子大の学生。 <W大学男子と女子大生のみ>というインカレサークルに入会したことから、順子がいつも仲間と勉強しているW大学の学食に現れたという次第。 地味な順子と華やかな紗奈、そんな対照的な二人であったにもかかわらず順子が紗奈を受け容れたのは、紗奈が「順子のことをもっと知りたいから」と言ってくれたから。 しかし、そんな紗奈が、サークル内で性被害に遭ってしまう。 本作に登場する言葉、「分断」「連帯」、その言葉に強く惹きつけられます。まさにそのとおり、と感じます。 二つの言葉にどんな意味があるのか。それは本作を読んでもらえればすぐに分かります。 そして、男子に都合のよい仕組みとは・・・これには絶句。 なお、それは単に大学の中だけに留まらず、社会全般において、男性に都合の良い仕組みが出来上がっている、それを否定できないと感じます。 さて、順子が企てた逆襲とは・・・。どうぞお楽しみに。 プロローグ/第一章〜第五章/エピローグ |