こだま作品のページ


作家。2017年、私小説「夫のちんぽが入らない」にて作家デビュー。18年エッセイ集「ここは、おしまいの地」にて第34回講談社エッセイ賞を受賞。「けんちゃん」が著者初の創作小説。

 


                    

「けんちゃん ★★☆


けんちゃん

2026年01月
扶桑社

(1650円+税)



2026/02/05



amazon.co.jp

オーツク海沿岸のS町、そこにある特別支援学校高等部、そして併設されている寄宿舎が主な舞台。
題名の
「けんちゃん」とは、軽度の知的障害児たちが通うその学校の、農業科三年の男子生徒のこと。
予想のつかない行動をして周りの人たちを困惑させたり、振り回したりするけんちゃんですが、自分の欲求に正直でいつも一生懸命。さらに何につけても自信たっぷりですから、憎めず、皆から人気者。
そんなけんちゃんと関わることになった人たちの、けんちゃんとの交流、そして彼らから見た<けんちゃん>を描いた連作ストーリーです。

多田野唯子:交通事故で脳に障害を負った姉のいる実家暮らしでは自立できないと一年発起し、臨時の寄宿舎指導員に採用されてS町にやって来た29歳。
水上悠介:東京での就活に失敗し、ローカル新聞社の地元支局の記者に。うまれつき左手の小指が欠損。
七尾 光:生徒たちが定期的に買い物をする、地元コンビニのバイト店員、29歳。障害児だって普通のお客さん、かわいそうな子が頑張っているという見方は気持ち悪い、と。
若山葉月:農業科の新入生。頑固な父方祖母のおかげで、障害児なのかそうでないのか、中途半端な気持ちにされてきた。

各篇の主人公たち、それぞれに様々な事情を抱え、もう一歩踏み出せてこれなかったような印象です。
それがけんちゃんの一途さや明るさに触れ、前向きな気持ちになっていく、という処が本作の読み処です。

本ストーリーを読んでいる限り、知的障害が多少あっても普通の子とそんなに変わらないじゃないかと思えてきますが、それはこうした舞台にいるからこそのこと。
どのような障害を持っているのか知らないままいきなり彼らと向かい合うのは、現実としてやはりハードルは高い。
それでも、差別視せずに向かい合うことが、お互いにとって大切なことだろうと思います。 良い本に出会えました。
お薦め。

けんちゃんと多田野唯子/けんちゃんと水上悠介/けんちゃんと七尾光/けんちゃんと若山葉月/けんちゃんは光の中で

       


   

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