|
|
「高宮麻綾の引継書」 ★☆ |
|
|
巻頭に掲載された、本作主人公である高宮麻綾の「引継書」、その書きっぷりからこれは面白そう、とまず感じた次第。 高宮麻綾は、TSフードサービス・トレーディング三課に所属する三年目社員。 グループのビジネスコンテストで、自らが提案したフードロス削減を目標とした<メーグル事業>案で優勝。 その結果を踏まえ、実際の事業化推進のため、親会社である鶴丸食品・事業推進部への兼務発令を受けたのですが、出向いて早々に、重大な瑕疵が発見され案は白紙になったと通告されます。 いったい誰が自分の事業計画を邪魔したのか? 許さない。犯人を見つけて予定どおり事業家してやると、怒髪天を衝く、といった反応。 そこから、何としてでも<メーグル事業>実現させてみせると、高宮麻綾の暴走が始まります。 ビジネス小説、会社が舞台ということで、登場人物は多彩。 ビジネス小説ということで、池井戸潤“半沢直樹”シリーズを連想しましたが、“半沢直樹”を逆転系とすれば、本作は“暴走系”と言えそうです。 高宮麻綾のしつこい熱意、何ものも恐れない行動力は確かに身もので、凄いと思わされます。 ただ読了後、落ち着いて整理してみると、やはり自己陶酔型のメチャクチャな行動だったのでは?と感じる次第です。 高宮とTSフードサービスの上司等、両方の視点から眺めると、片や暴走、片や包容力を感じます。 つまり、まだ三年目なのだから、育ててやろう、その熱意を傷付けないようにしてやろうといった姿勢を感じるのです。 最終結末、いったい高宮の行動は何だったのか?と思いますが、少なくとも自分の至らなさを自覚した処、ちょっと成長した、と言えそうです。 続編が予定されているとのことなので、ちょっと成長後の高宮麻綾の活躍を期待したい処です。 1.あたしが勝たなきゃいけない理由/2.会社と戦(や)るなら徹底的(ボコボコ)に/3.さらば愛しき密告者/4.窓際のいびり姫/5.事業が死ぬのはいつだと思う/6.高宮麻綾の引継書 |