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「我拶もん(がさつもん)」 ★★ 小説すばる新人賞 | |
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寛保二年の江戸が舞台。 主人公は、斡旋されて大名や旗本の駕籠を担ぐことを生業としている<陸尺>の桐生(20歳)。 格好良さで“風の桐生”と異名をとり、陸尺の中では最高格である上大座配。 自分の人気に有頂天気味の桐生でしたが、芝居小屋の市村座と陸尺たちの喧嘩騒ぎに巻き込まれて仕事を干され、さらに江戸を襲った大洪水で親しい人を失うばかりか自らも大怪我をして、どん底に。 作者の神尾さん、とことんまで落ちた桐生が絶望から再生する姿を描きたかったのだとか。 そうした桐生に絡むのが、算術好き、湯屋で町人たちと交わるのが好きという、変わり者の久留米藩主=有馬玄蕃頭頼ユキ。 そしてその近習で堅物の坂田小弥太、玄蕃頭の姉で臼杵前藩主の正室である、これまた個性的な梅渓院。 (※この梅渓院、小弥太の憧れの女性という処がミソ) さらに気風の良い深川辰巳芸者の粧香、大工棟梁の甚吉、謎の黒羽織の人物に陸尺仲間と、多彩な人物が登場します。 展開に、都合の良すぎる処、かなり安易と感じたり粗い部分はありますが、ストーリー運びは達者で流暢、飽きることがありません。 また、桐生にことごとく反発する堅物の小弥太とのやりとりはたっぷり楽しめますし、粧香の小気味よい啖呵も痛快。 これぞ時代小説系エンターテインメント! 楽しめます。 一章〜四章/終章 |