垣谷美雨
(かきやみう)作品のページ No.3



21.懲役病棟 

22.墓じまいラプソディ 

23.マンダラチャート 

【作家歴】、竜巻ガール、七十歳死亡法案可決、ニュータウンは黄昏れて、あなたの人生片づけます、避難所、老後の資金がありません、農ガール農ライフ、あなたのゼイ肉落とします。、嫁をやめる日、後悔病棟

 → 垣谷美雨作品のページ No.1


定年オヤジ改造計画、四十歳未婚出産、姑の遺品整理は迷惑です、うちの子が結婚しないので、うちの父が運転をやめません、希望病棟、代理母はじめました、もう別れてもいいですか、あきらめません、行きつ戻りつ死ぬまで思案中

 → 垣谷美雨作品のページ No.2

 


                   

21.
「懲役病棟 ★★


懲役病棟

2023年06月
小学館文庫

(730円+税)



2023/07/17



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後悔病棟」「希望病棟に続く、“病棟”シリーズ第3弾。

今回の主人公は、神田川医院で
早坂ルミ子、黒田摩周湖の先輩医師、元暴走族で金髪という太田香織(37歳)と、ベテラン看護師の松阪マリ江(50歳頃)

笹田部長から2人、強引に女子刑務所に派遣されます。
その際、ルミ子と摩周湖から香織、古い聴診器を是非使ってくれと押し付けられますが、受刑者の診察に使ってみると・・・。

香織とマリ江、好奇心旺盛というか、不思議な聴診器のおかげで女子受刑者たちの切ない人生を知ることになります。
そこからが面白い。
香織、何とも強引なのです。そのうえ猪突猛進というか、医師の役割を超越いや逸脱しているというか。
でもそのムチャクチャな行動ぶりが、4人の女子受刑者に希望を与えていくのですから、堪えられません。

また、香織とマリ江のやり取りにも結構、笑わされます。

「万引き犯」:谷山清子、62才。万引き常習。でも清子は被害者? 一人息子から手紙も来ず。
「殺人犯」:児玉美帆、40歳。DV夫から子どもたちを守るため殺害。舅姑の元に引き取られた子どもたちのことが気がかり。
「覚醒剤事犯」:山田ルル、26才。イケメン男に騙され2回も入所。しかし、他に頼れる人間はいない。
「放火犯」:秋月梢、80歳。娘も孫もいなくなり、もう生きる意味はない。
※4篇中、「万引き犯」と「殺人犯」が特に読み応えあり。
「受刑者からの手紙」エピローグ。

1.万引き犯/2.殺人犯/3.覚醒剤事犯/4.放火犯/5.受刑者からの手紙

              

22.
「墓じまいラプソディ ★★☆


墓じまいラプソディ

2023年12月
朝日新聞出版

(1600円+税)



2024/01/23



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結婚する時、姓はどっちのにする? お墓は誰が引き継いでくれるのか?
誰もが行き当たる切実な問題を、常識かどうかなど放っておけ、とばかりに本音トークで描き出した痛快な家族ドラマ。

松尾五月61歳。人が揉めているのを見聞きするのが大好き。
夫の
慎二が何か電話で揉めている様子と思ったら、亡くなったばかりの姑が、夫と同じ墓には絶対入りたくないと遺言したとのことで、義姉の光代が父親に言い出せず、困っているという。

五月の次女である
詩穂は32歳中林悟との結婚準備が進んでいるところ。しかし、自称フェミニストのくせして悟、姓は詩穂が変えるのが当然と思っており、詩穂はそれが気に入らない。
※詩穂の異父姉である
牧葉はかつて、結婚を決めた相手の姓がDV男の実父と同じだったことから相手の姓になることを拒否、破談に至ったという過去あり。
一方、悟の両親は、女は結婚したら名前を変えるのが当然、お墓も引き継いでもらうのだからと、詩穂を批判。

まさに、姓の選択=お墓の継承に繋がる、というのですから厄介なものです。
慎二の実家である松尾家、悟の親の中林家、それぞれに墓の問題を巡って揺れ出します。
そこで面白いのが、娘からも常識がないと批判されている五月の口出し。遠慮も気遣いもなしに本音トークを炸裂させるのですから、抱腹絶倒となる場面が幾度もあり。
いやー、とにかく面白いです。思わず笑いだしてしまうほど。

しかし、お墓問題、厄介ですよね。改葬するにも墓じまいするにも、それなりに費用はかかりますから。
お墓についてこれからどう考えていかなければならないか、またどう考えていく道があるのか、それらの問題がよく理解できる、実益と笑いを含んだストーリィ。

なお、松尾家の菩提寺の女性住職と、中林家の菩提寺の住職の対照的な姿も見逃せません。

私自身の問題についてもいろいろ考えさせられました。元々私個人としては・・・・なのですけどねぇ。

          

23.
「マンダラチャート Mandala Chart ★★




2024年11月
中央公論新社

(1880円+税)



2024/12/19



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垣谷さんにしては思いがけないタイムスリップもの。
それでも女性の生きづらさを描くというという視点は変わりありません。

北園雅美、主婦、63歳。大谷選手を真似してマンダラチャートに書き込みしていたところ、そこに吸い込まれ、気づくと中二生の自分にタイムスリップしていた。
そこから人生をやり直す、というストーリー。

63歳という人生経験があってのやり直しですから、雅美には現在的な視点が備わっています。それからすると、女だから、という固定観念、偏見が満ち満ちている時代。
それに対して全力でぶつかっていくのですが・・・。
絶望するような状況が明らかになるのは、短大ではなく4年生大学の建築学科に進み、就活に直面したとき。4年生大卒で高学歴という女性を募集している会社がない!

あらゆる場面で、あの頃はそんな時代だったなぁ、女性たちにとってはさぞ悔しいことも多かっただろうなぁ、と思います。

本作でそんな雅美にも、盟友とでもいうべき心強い仲間が登場します。それは中学の同級生でイケメン男子として人気が高かった
天ヶ瀬良一。彼もまた、雅美から遅れてタイムスリップ。
そのため互いに打ち明け話をできるし、雅美にとっては常に心強い励まし手となります。

最後、雅美は再び現代に戻るのですが、果たしてどういう選択を取るのか。どうぞお楽しみに。


1.大谷翔平選手/2.タイムスリップ/3.中学二年 1973年/4.初恋の人に呼び出される/5.交換日記/6.高校入学 1975年/7.初恋の人に落胆した日/8.初恋の人からのプロポーズ/9.大学入学 1978年/10.大学一年生の夏休み/11.大学四年生 内定がもらえない/12.どこまで妥協すればいいのか/13.天ヶ瀬の妻と会う/14.麗山大学就職課/15.究極の選択/16.高層建築は誰のため/17.上田工務店/18.天ヶ瀬のアドバイス/19.天ヶ瀬は救世主か/20.一緒に帰ろう/21.大洋リビング/22.対決/23.令和時代/24.再会

      

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