岩井圭也作品のページ No.3



21.
中華街の子どもたち−横浜ネイバーズNo.6− 

22.
サバイブ! 

23.追憶の鑑定人 

【作家歴】、文身、プリズン・ドクター、この夜が明ければ、生者のポエトリー、最後の鑑定人、付き添うひと、完全なる白銀、横浜ネイバーズ、飛べない雛、楽園の犬

岩井圭也作品のページ No.1


凪の海、暗い引力、人生賭博、われは熊楠、科捜研の砦、ディテクティブ・ハイ、舞台には誰もいない、夜更けより静かな場所、いつも駅からだった、汽水域

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21.

「中華街の子どもたち−横浜ネイバーズ6− ★★   


中華街の子どもたち

2025年04月
ハルキ文庫

(800円+税)



2025/05/23



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横浜ネイバーズ”シリーズ第6弾。

なお、本巻は、第一シーズンの完結編とのこと。
その所為か、これまでの巻のような連作ものにはなっておらず、まるごとの長編。
そしてその内容はというと、主人公
ロンと、その実母であり今や犯罪集団の共同代表となっている南条不二子との対峙。

とはいえ、南条不二子が何故今に至ったのか、これまでその理由や事情は深く描かれてはきませんでした。
本巻ではそれが、生い立ちから含めて不二子側、舅であった良三郎の側、そしてロンの側から語られることによって、明らかになります。

南条不二子、どうであれ今は犯罪者であることに変わりはないのですが、ロン、その不二子さえ救おうとする。
何故ならそれは、実母だからではなく、○○だから、というロンの言葉はもう決め台詞ですね。

幼馴染みだった
マツヒナもそれぞれの道を歩み始めた中、ロンだけが取り残されていた観があり、それにロン本人も焦りを抱えている状況でしたが、本巻の最後でようやくロンにも進みたい道が見つかったようです。
また、皆をヤキモキさせてきたヒナとの関係もやっと前進。もっともこの部分は、強引に取って付けたような感じです。

ともあれ、第二シーズンが楽しみです。

        

22.

「サバイブ! Survive! ★★   


サバイブ!

2025年08月
祥伝社

(1800円+税)



2025/09/01



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大学四年生の黒川虎太郎、既に大企業からの内定も取得済だというのに、悪性リンパ腫、それもステージW。
絶望にかられたものの二度目の治療が成功し、無事退院。
入院中、有名な投資家=
ベルナルド宮本の著書に出会ったことがコタローの人生を変え、起業を決意。県庁に入庁したばかりの友人=白井博(ハク)を引っ張り込み、二人して新潟県から上京、株式会社<サバイバーズ>を立ち上げます。
しかし、そう簡単に上手く行く訳がありません。二人ともバイトに明け暮れながら、少しずつ動画制作の事業を前進させていきます。
そして苦闘の中で、
森野四葉(ヨツバ)、谷山健之助(タニケン)という仲間が加わりますが、苦闘ぶりは少しも変わらず・・・。

ベンチャー起業に夢をかけた青年たちの奮闘を描く、ビジネス青春譚という処なのですが、さすが岩井圭也さん、単なる青春物語には終わりません。
ベンチャー企業とはどういうものなのか、ベンチャー経営者に必要なものとは何なのか、投資を受けるためには何が必要なのか、そうしたメッセージを含むストーリーとなっています。

TV等でよく見かけるベンチャー企業は、成功し順調軌道に乗った会社ばかり。起業したばかりの時代はどのようなものだったのか。本ストーリーが実態そのままとは思いませんが、いやー、大変だぁ。
これだけの奮闘を続けるためには、それだけの意義、目的、目標がないと出来ないようなァと思う次第です。

終盤になって仲間に加わる
新出真帆(シンディ)のキャラクター、存在感が面白い。そのままコタローたちへの批判になっていますから。
是非お薦めしたい、ベンチャービジネス青春譚です。

※なお、個性ある仲間たちが集まって何かを成し遂げようとする辺り、<横浜ネイバーズ>と似た雰囲気を感じます。名称も似ていますしね。


1.はじめるか、ビジネスを/2.おれの人生ってなんだ?/3.求められるものを愚直に/4.たとえ百敗しようが/5.おれ、死なないから

       

23.

「追憶の鑑定人 ★★   


追憶の鑑定人

2025年09月
角川書店

(1850円+税)



2025/09/20



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最後の鑑定人」「科捜研の砦に続く、シリーズ第3弾。

基本的にミステリですが、単なるミステリ続編にならず、本巻では
土門誠という人物の真に迫る内容となっているところが素晴らしい。

土門誠、鑑定人としての技量は「最後の鑑定人」と言われるくらい抜群ですが、無表情で無愛想と、コミュニケーション能力は極めて乏しい。
しかし、そんな土門にも、信頼し合う友人たちがいた、というのが本巻の読み処。
その友人たちというのは、
元治大学理学部生命科学科で同じ研究室に属していた同期の三人。
本巻では、その三人(
猪狩愛、鳥飼創一、窪俊吾)が各篇にそれぞれ登場します。しかも、協和大学理学部教授になったばかりの猪狩愛、土門からの依頼に応じて鑑定に協力も。
さらに最後の篇では、その猪狩愛が危機に陥り、彼女を救い出すため土門が渾身の鑑定を行う、というストーリー構成。
また、学生時代の土門誠に関するエピソードも披露され、土門誠ファンには見逃せない巻です。

「交感原理」:殺人を自首した女性の弁護を引き受けた相田弁護士から、ストーキングに遭っていた事実を鑑定して欲しいとの依頼ですが、明らかになった事実は・・・。
「雑踏に消ゆ」:S市開催の花火大会で群衆事故が発生。S市担当者から調査委員会発足前の事前調査を依頼されます。
「見知らぬ水底」都丸刑事から、溺死体について違法薬物の私用有無の鑑定依頼。
「灰色の追憶」協和大学理学部棟に火災が発生。巻き込まれた猪狩愛、研究実績等を失うだけでなく、記憶まで失うという事態に。しかし、警察は・・・。

※なお、土門の助手である
高倉柊子も、本シリーズには欠かせない登場人物であり、独特の存在感を発揮しています。

交感原理/雑踏に消ゆ/見知らぬ水底/灰色の追憶

         

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