藤岡陽子作品のページ No.3



21.僕たちは我慢している 

22.春の星を一緒に 

【作家歴】、いつまでも白い羽根、海路、トライアウト、ホイッスル、手のひらの音符、波風、闇から届く命、晴れたらいいね、おしょりん、テミスの休息

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満天のゴール、この世界で君に逢いたい、海とジイ、跳べ暁!、きのうのオレンジ、メイド・イン京都、金の角持つ子どもたち、空にピース、リラの花咲くけものみち、森にあかりが灯るとき

 → 藤岡陽子作品のページ No.2

 


             

21.
「僕たちは我慢している ★★


僕たちは我慢している

2025年05月
COMPASS

(1800円+税)



2025/06/06



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金の角持つ子どもたちにて中学受験に挑む子どもたちの姿を描いた藤岡さん、今回作は大学受験に挑む高校生たちの葛藤、覚悟を描いた連作長編。

主人公は、
千原道人、穂高英信、中森揮一、香坂淳平という野球部仲間だったり、同級生だったりという4人。
かれらの高二〜高三という大学受験に向かう時期を、それぞれを主人公にした4章構成からなるストーリー。

大学受験と一口に言っても彼らの場合、自分の成績、自分の希望に沿って志望校を選べばいい、という単純なことにはなりません。
家庭の経済状況という問題もあれば、事業を継いでもらいたいという親の期待、ずっと取り組んできた部活動、といった様々な要素がその背後にあることを否めません。

そのうえで、彼らがどう決断し、どう覚悟を決めるか、という処が読み処。もちろんその後に、受験勉強と合否見込みといった問題もあるのですが。

ただ、彼らが通っている高校は、毎年国立十大学へ学年の6割以上が進学するという、中高一貫の名門私立校。そしてその親も、医師だったり弁護士だったり、それなりの事業経営者だったりと、普通の一般家庭ではありません。
ある意味、特権階級だからこその話、問題とも言えますが、だからこそ彼らの抱える悩みも深いと言えます。
受験に際しての迷い、悩みという部分だけを取り出せば、そこはやはり受験生の共通項と思います。

各主人公たちが、悩んだ末に自分自身で決断する、という顛末が気持ち良い。またその過程で、互いに支え合う、励まし合うという部分も見逃せません。
受験をテーマにした、高校生たちの青春群像劇。爽快です。


1.僕たちは春に揺れる−高校一年 四月/2.僕たちは秋に憂う−高校二年 十一月/3.僕たちは夏に挑む−高校三年 八月/最終章.僕たちは冬に懸ける

                      

22.
「春の星を一緒に ★★☆


春の星を一緒に

2025年09月
小学館

(1800円+税)



2025/09/19



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藤岡陽子さんの作品、本当に好きだなぁ。
本作も、主要登場人物たちの善良さと頑張りに、常に前向きな気持ちにさせられ、時にハラハラ、時に次への期待を抱きながら、気持ちよく読み終えた次第。

本作は、丹後半島北端の過疎地を舞台に、過疎地医療と母・息子の再出発を描いた
満天のゴールの続編。

前半は、丹後半島で、老父の
耕平と同居するシングルマザーの奈緒涼介の日々が引き続き描かれます。
しかし、二人にとって大きな出来事があり、今後についてそれぞれが選択を迫られることになります。
そんな折、二人が信頼する医師の
三上高志が東京にある総合病院の緩和ケア病棟に転じることになり、三上から勧められた奈緒と涼介は実家を出て東京に戻ることを決意します。
後半は、三上と同じ緩和ケア病棟に看護師として勤務することになった奈緒、涼介の、新たな奮闘の日々が描かれます。

緩和ケア病棟ですから、入院してくるのは末期がん患者が主。
それらの人に奈緒がどう向き合うかという面も勿論ですが、それ以上に終末医療の在り方について考えさせられます。

最後は出来過ぎな処もありますが、高校三年生となった涼介の成長ぶりが、とても嬉しい。
そして本作の題名となっている言葉に、どんな気持ちが籠められているか、いやあー、本当に素敵でした。

※これで完結かもしれませんが、次の段階に進んだ彼らの姿を、是非また読みたいものです。


1.朝凪/2.暗影/3.永訣/4.蛍火/5.星原/6.明星/7.秋空/8.涙雪/9.邂逅/10.決戦/11.積雪/12.満天

           

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