青崎有吾
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1991年神奈川県横浜市生、明治大学文学部卒。在学中は明治大学ミステリ研究会に所属。2012年「体育館の殺人」にて第22回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。2024年「地雷グリコ」にて第24回本格ミステリ大賞・第77回日本推理作家協会賞・第37回山本周五郎賞を受賞。


1.早朝始発の殺風景 

2.地雷グリコ 

  


       

1.

「早朝始発の殺風景 ★★


早朝始発の殺風景

2019年01月
集英社

(1450円+税)

2022年01月
集英社文庫



2019/02/08



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如何にも高校青春ストーリィと言える連作ミステリ。
各篇の共通項は、密室劇であること。

「早朝始発の殺風景」の“密室”は、早朝の始発電車。
主人公の
加藤木が始発電車に乗り込むと、その車両にたった一人乗客が。しかもそれは、口を利いたこともない同級生女子。
何のために彼女はこんな始発電車に乗っているのか。それは彼女にしても同様。何故、加藤木は始発電車に?
その女生徒の苗字が「殺風景」だというのですからびっくり。

「メロンソーダ・ファクトリー」では、ファミレス。
仲の良い3人組女子。学園祭で着るクラスTシャツのデザインにつき、親友は自分を傷つけるような選択を。一体何故?
「夢の国には観覧車がない」では、観覧車。
フォークソング部の引退記念遊園地行き。それなのに何故、下級生男子と2人だけで観覧車に乗ることになったのか?
「捨て猫と兄妹喧嘩」は公園。妹が拾った猫、両親が離婚して父親と元の家に暮らす1歳上の兄に引き受けてほしいと頼むのですが・・・。
「三月四日、午後二時半の密室」は、同級生の部屋。
卒業式を風邪で休んだ
煤木戸の家を、元クラス委員長の草間は卒業アルバムを届けるため訪れるのですが・・・。

「エピローグ」は5篇の登場人物たちが揃って登場します。

本ストーリィの魅力は、密室状況における語らいの中で、それまで知らなかった同級生のこと、友人でありながら全く気付かなかったことを知っていく、という展開にあります。
それこそ、高校時代の楽しさだったのではないでしょうか。

中でも一番青春らしい輝きを放っているのが、「早朝始発の殺風景」。エピローグも加藤木・殺風景の1年後の様子を中心に描いていて、嬉しくなります。

私好みの、青春連作ミステリ。

早朝始発の殺風景/メロンソーダ・ファクトリー/夢の国には観覧車がない/捨て猫と兄妹喧嘩/三月四日、午後二時半の密室/エピローグ

    

2.

「地雷グリコ Glico with Landmines ★★☆     山本周五郎賞


地雷グリコ

2023年11月
角川書店

(1750円+税)



2024/06/22



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多分、本作題名から気に留めなかったのだと思いますが、山本周五郎賞を含む3賞を受賞し、直木賞候補作にもなっているということで読むに至りました。

主人公は、高校生たち。
重要な事柄を賭け、風変わりなゲームで勝負を争います。
・ジャンケンで進める歩数を決める<グリコ>+地雷を追加。
・トランプの<神経衰弱>を百人一首の札で。
・<ジャンケン>の3手に、それぞれ“独自手”を追加。
・<だるまさんがころんだ>+入札の仕組み。
・4部屋を使っての<ポーカー>。

語り手は、
都立頬白高校一年である鉱田
そして本作の主役であり、各ゲームで驚くべき勝負を披露するのは、彼女と中学以来の親友である
射守矢真兎(いもりやまと)

ともあれまずは、こんなゲームをよく考えつくものだと、感心させられます。
そして、それぞれのゲームには、ちょっと読んだだけでは気づけない仕掛けが施されています。そのため、挑戦する側である真兎の方が不利、という場合が多い。
しかし、それらをどうやって真兎は覆し、勝利を収めるのか。もうそれは驚愕、という一言に尽きます。

本作はゲーム小説か?と問われれば、そうではない、と答えるべきでしょう。本作には、推理小説の趣向が凝らされているのですから。
冒頭、何故いつも真兎はルールの追加を申し出るのか。
ゲームの最後あるいは終了後、真兎が仕掛けた手により、開始時点で真兎がゲームの鍵をすべて見破っていたことが明らかになります。それは推理小説の最後で行われる、名探偵による謎解きと何ら遜色ないもの。

ゲームのユニークさ、ゲーム中のスリル、そして学校同士のプライドを賭けた対決、そして思わず仰天する逆転ぶり、その興奮、と面白さ満載(
但し、感動の類はなし)。是非お楽しみに!

地雷グリコ/坊主衰弱/自由律ジャンケン/だるまさんがかぞえた/フォールーム・ポーカー/エピローグ

   


  

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