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「ノートル=ダム・ド・パリ」(抄訳版) ★★☆ 原題:"Notre-Dame de Paris" 訳:大友徳明 |
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2022年02月
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ヴィクトル・ユゴーの大長編名作の抄訳版。 岩波文庫の上下巻で 計1,000頁を越える物語が 僅か220頁程にまとめられているのですから、手軽に読むことが出来ます(原作11編を51章に再編)。 抄訳ではあっても、訳者があとがきで述べているように、本作の醍醐味は十分に味わえます。適度に読み手の想像力が補ってくれるからでしょうか。とくに終盤の展開は圧巻! さて、ストーリーは、1482年のパリが舞台。 ノートル=ダム大聖堂の前に捨てられていた醜い赤ん坊は、副司教クロード・フロロに拾われて成長し、今は鐘撞きのカジモドとなり、フロロの忠実な下僕(耳は聴こえず)。 そのフロロは、聖堂前の広場で踊るジプシー娘のエスメラルダに淫欲を抱き、カジモドを使って誘拐しようとする。 しかし、エスメラルダは危ない処を救ってくれた王室射手隊長のフェビュスを恋しますが、そのフェビュスは不実な男。 フロロはエスメラルダを手中にすることを諦めず、その結果エスメラルダは苦境に陥れられますが、自分に優しさを示してくれたエスメラルダを愛したカジモドは何とか彼女を救おうとします。しかし・・・ エスメラルダ、カジモトが辿った過酷な運命には、胸を突かれざるを得ません。 カジモドの姿はたしかに醜いものですがその心根は極めて純粋。一方、フロロやフェビュスは身分、容貌は優れているもののその心は自分勝手で醜悪というに尽きます。 気持ちのすれ違い、思い違い、妄執、人間の愚かさ、群衆行動の愚かさ、それらの全てが本物語には詰められています。 やはり傑作です。抄訳ではあっても読めたことは嬉しい。 なお、本書の素晴らしさは、1832年版のエッチング挿絵19点が収録されていることにもあります。 特にノートル=ダム大聖堂、鐘を打ち鳴らすカジモドの挿絵には魅了されます。 私が所蔵しているミルトン「失楽園」の挿絵も素晴らしいものですが、それに劣ることなし。 お薦めしたい一冊です。 |