|
|
Melissa Da Costa 1990年生、フランスの作家。2019年「空、はてしない青」にて作家デビュー。同作は2026年本屋大賞翻訳小説部門第一位を受賞。 |
| 「空、はてしない青」 ★★☆ 原題:"Tout le bleu du ciel" 訳:山本知子 |
|
|
2025年09月
|
エミルは26歳の青年。それなのに若年性アルツハイマーと診断され、余命は長くて2年と宣告されます。 残された人生を病院に閉じ込められて終わりたくないと、両親や姉たちに黙ってキャンピングカーでの旅を決意。 それに先立ち、“人生最後の旅の道連れ”をネットで募集したところ、応じてきたのはジョアンヌという29歳の女性。 サービスエリアで落ちあった二人は、まず風光明媚なピレネー山脈を目指し、定めのない旅へと出発します。 前半の主体はエミル。旅への期待と、記憶の穴が増えていくことへの恐怖を抱えながら、ジョアンヌへの気遣いも背負います。 そのジョアンヌという存在が、ひとつのミステリ。 どういう女性なのか。何故エミルの旅の道連れに応募したのか。 エミルが別れた恋人ローラについて回想を重ねる一方で、ジョアンヌのことも少しずつ語られて行きます。 もちろん二人の旅も魅力的です。キャンピングカーから離れてトレッキングに出たり、エウスという美しい町に一ヶ月以上滞在したり。美しい景色、見知らぬ町、新たな人々との出会いと。 後半の主体はジョアンヌ。何故ならエミルの状態が悪化、記憶を保てないばかりか意識の混同も生じます。エミルとの約束を守るべく懸命にエミルを支えようとするジョアンヌの姿は、もうまるでサスペンスのようです。 そのうえで、どういう結末を迎えるかが最後の読み処。 エミルにとっては人生を全うすべき最後の旅。一方のジョアンヌにとっては、人生の再出発を模索する旅。 旅、人生、お互いへの想い、家族への想い、新たな出会い、それらの全てが本物語には詰まっています。 どう読むか、どう感じるかは、読む人それぞれだろうと思いますが、忘れられない読書の旅になると思います。 お薦め。 |