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Becky Chambers
 1985年生。宇宙開発に関わる家族の元、ビデオゲームや非電源系ゲーム、養蜂や天体観測を趣味にして育つ。現在は妻と共にカリフォルニア在住。2015年のデビュー長篇「銀河核へ」は、クラウドファンディングで執筆資金を集めて個人出版したものが人気を博し、大手出版社から刊行され直したというユニークな履歴を持つ。同書に始まる<ウェイフェアラー>シリーズは2019年ヒューゴー賞シリーズ部門を受賞。「緑のロボットへの賛歌」(2021)はヒューゴー賞とユートビア賞のノヴェラ部門を、「はにかみ屋の樹冠への祈り」(2022)はローカス賞ノヴェラ部門をそれぞれ受賞。

 


                 

「ロボットとわたしの不思議な旅 Monk and Robot ★★
                    訳:細美遥子


ロボットとわたしの不思議な旅

2021,22年発表

2024年11月
創元推理文庫
(1200円+税)



2025/01/17



amazon.co.jp

舞台は、惑星モタンの衛星バンガ。
そこで人類は、数百年前にロボットを工場労働から解放し、ロボットは人間社会から去り、自然の中に消えていった。

主人公は
修道僧(シプリング)・デックス。修道院を離れ、ワゴン車で各地を回り、<喫茶僧>として人々に憩いを提供するために旅立ちます。
そのデックスが人間の居住区域を離れ未知の領域に入り込んでから偶然に、初めて出会ったロボットが、
スプレンディッド・スペックルド・モスキャップ
モスキャップもまた、壊れたロボットの部品によって作られた野性ロボットで、デックスが初めて出会った人間。

デックスと、「人間は何を必要としているのか?」を知ろうとするモスキャップは、それから二人での旅を始めます。

本書は、それぞれ独立してSF小説の賞を受賞した二部作を一冊にまとめたもの。
「緑のロボットへの賛歌」は、デックスとモスキャップ、二人だけの旅。
「はにかみ屋の樹冠への祈り」は、二人が他の人々と出会う、交流する旅になっています。

第一作では、デックスとモスキャップ、二人の間でのコミュ力、具体的に言えば他者への想像力、共感力が問われる内容になっています。
モスキャップが率直であるのに対し、デックスの方はモスキャップに対し遠慮しすぎ。人間とロボットの関係からすれば、現在と正反対でおかしく感じられます。

第二作では 二人が人間の居住地域に入り込んだことから、人間に対するモスキャップの興味心に拍車がかかり、そこでのやり取りが面白い。
しかし、ここに来て、デックスが喫茶僧となろうとした理由は何だったのか?という問題が浮上してきます。

どんな舞台であろうと、気が合って一緒に旅をするという展開は楽しいもの。本書のデックスとモスキャップにおいても、それは同様です。
さらに、二人の旅の目的に共通するところがあるとすれば。

何だかよくわからない処もある二人のこの旅、お互いに通じ合おうとして行違うことも多々あって、なんだか楽しい、という一言に尽きます。


緑のロボットへの賛歌(2021) A PSALM FOR THE WILD-BUILT
1.転職/2.バンガでいちばんの喫茶僧/3.スプレンディッド・スペックルド・モスキャップ/4.物体、そして動物/5.残滓/6.しなびた青菜と飴色の炒めた玉ネギ添えのグラスフェッド・チキン/7.大自然/8.夏グマ
 
はにかみ屋の樹冠への祈り(2022) A PRAYER FOR THE CROWN-SHY
1.ハイウェイ/2.<森林地帯>/3.<河川地帯>/4.<沿岸地帯>/5.<灌木地帯>/6.まわり道

      


     

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