今回は、エーモン・フィングルトンの「製造業が国を救う」を読 んだ感想と、その発展系や日本の進むべき方向を検討しよう。 ポスト工業化時代はアメリカの時代と、毎日ように新聞に出る。 これから、世界の繁栄を築くのは製造業ではなくてコンピュータ・ ソフトや娯楽や金融といった情報ベースの産業であると。 しかし、この「ニュー・エコノミー」がもたらすバラ色の未来図が 本当に現実性のあるものなのか、真面目に検討した報告は、ほとん どない。その間にも米国は製造業から撤退している。本当にこれで いいのだろうか? 製造業=労働集約的な組立作業と見なしているが、今日の大量生 産品の製造工程においては、組立というのは最後の、しかも最も、 低レベルの技術しかいらない1工程にすぎない。部品や素材の製造 といった生産の初期工程の方は、しばしば高い技術力を要するし、 それよりもさらに高度な技術を要するのが、その部品や素材を作る ための製造機器の作製なのである。 この何十年で、日本はこの分野において技術的洗練の度合いを深 めている。 反対に、ポスト工業化社会で成功するための高度な才能を持ち合 わせていない労働者にとって、ニュー・エコノミーへの傾斜は悲劇 以外の何ものでもない。25%以上の所得減に見舞われている。 ソフトウエア産業は、それでは未来期待できる分野か? マイクロ・ソフトの売上高は6000億円、従業員1万5000名 程度(米国国内)と小さい。また、インド等の発展の遅い国のソフト 技術者が、この分野に進出してきている。このため、米国のソフト 生産の多くをインド等の人件費単価の安い国に移転している。 インターネットも同様で、ほとんどのサービスが無料で、広告料 でしか稼げていない。このため、数人での会社しかできない。 アマゾンも、万年赤字である。このため、儲けが出ているのはシス コやSUNなののハードしかない。 一方、製造会社は進化している。シリコン、レーザ、ハイビジョ ン。 旧世代の製造業も、造船業では時速80km/時の高速船やメガプ ロートを開発しているなど、新しい事業を立ち上げる努力している。 一方、米国は製造業の撤退を隠すために、日本からのOEMの部分 を米国製造業の生産としている。このため、製造業の空洞化が分か らない。 米国のメイン部は、インターネットやソフト開発しかない。が、そ の部分も、そろそろ、限界点に達してきた。バブルが弾けたら、イ ンターネットの今の投資はなくなり、赤字が隠せなくなる。この時 が米国の正念場になる。大企業がなくなっているため、不況になる と、非常に弱い。 しかし、日本もこの米国の製造業と同様に、空洞化してきている。 最終組み立てラインは、日本以外の国でいいと思うが、素材や部品 の製造は、今後も日本で行うべきである。 ソフト開発は、日本でもインド人、中国人にシフトする可能性が大 きいため、今後ソフト会社は、その作業をシフトする必要性がでて きている。シフトすると値段は、現在の半分程度になる。 そして、その代わりに、仕様の作成等のコンサルティングにシフ トするべきであろう。今後の方向が難しい分野になってきている。