6109.産業危機から世界恐慌になるか?



新型コロナウィルス流行から産業危機、そして世界恐慌になる危険
が出てきた。その可能性を検討しよう。   津田より

0.米国株価
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月6日25,864ドルでしたが、3月9日2013ドル安の23,851ドルでサー
キットブレーカー発動し、2013年2月に制度導入後初である。3月10
日は1167ドル高の25,018ドル、3月11日は1464ドル安の23,553ドル、
3月12日は2352ドル安の21,200ドル、12日はセリング・クライマック
スになっているようで、サーキットブレーカーが2回も発動した。

3月13日は一転して、1985ドル高の23,185ドルになった。というよう
な歴史的一週間になった。

1987年10月「ブラックマンデー」(下落率21.1%)以来の大きな下げ
になっている。今回のコロナショックの下げは、2月12日から3月12
日までの下落率は28%である。「ブラックマンデー2.0」との言え
る暴落である。13日は、トランプ大統領が、新型コロナウイルスに
関して国家非常事態を宣言し、政策を総動員する姿勢を示したこと
で米景気に対する投資家の不安心理が後退。しかし、まだわからな
い。

トランプ大統領は、12日に欧州からの入国を止め、給与税を引き下
げるとしたし、FRBは、2日間で1.5兆ドルもの資金を短期市場にす
るが、金融市場の流動性が干上がっているようだ。それと、600億ド
ルの国債購入を発表した。しかし、それでも12日2352ドル安になっ
た。13日に大規模な財政出動とトランプ大統領が言ったことで、株
価は1985ドル上昇した。政策の総動員ということで、3月17日、18日
のFOMCでも、利下げ1%に追い込まれそうである。

やっと、安倍首相との電話会談で、トランプ大統領も新型コロナウ
ィルスの危険性を認識したようで、本腰を入れて対策を打つことに
した。それが国民や投資家に伝わった。しかし、まだ、米国の苦難
が始まったばかりである。

今まで、中央銀行バブルで株価は上昇したが、GDPは変わらないし、
企業の利益も変わらないので、株価と業績の乖離が拡大していたが
、それを巻き戻しているだけとも言える。

もう1つが、株の信用取引が多かった。この取引の追証や強制売却
が起こり、大幅な暴落が起きたようである。このため、手持ち資金
がなくなり、ドルの流動性が枯渇した。

しかし、ナスダックの下落は、NYダウやSP500に比べて小さいし、
BtoB企業は厳しいが、BtoC企業はまだよい。中小企業が厳しい。キ
ャッシュを持つ企業は良いが、キャッシュがない企業は厳しい。

そして、米国も新型コロナで、国家非常事態宣言も出た。FRBの利下
げもQEも効果はない。1929年の下落曲線が似ているので、大きく下
げて、一度戻して、しかし、また下げるという1929年の株価の動き
になるようである。

そして、もう少し新型コロナ感染が早ければ、サンダース氏になっ
たはずが、民主党候補にはバイデン氏になりそうである。
1929年と同じようなに、ルーズベルト大統領の社会主義的な政策に
なると見たが、そうはならないようだ。国民皆保険制度もお預けに
なった。

1.日本株価
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月6日20,749円であったが、3月9日1050円安の19,698円、3月
10日168円高の19,867円、3月11日451円安の19,416円、3月12日856円
安の18,559円、3月13日1128円安の17,431円、13日は午前9時59分か
ら裁定取引に対する制限を実施して、証券会社の自己取引で現物株
の売りを出せないが、結果は大幅下落になった。13日はSQ日で、4兆
円もの売買ができている。

13日は、1万7千円での日銀のETF買いと、海外勢の売りの攻防戦は
すごかった。そして、13日午後に2000億円規模の日銀買いが入り、
海外勢が買戻しに動き、急速に株価が戻したが、14時半からまた、
海外勢の売り攻勢で、1万7千円半ばになった。ドル円は105円であり
、株安の割に円高にならない。海外勢が米国で、ドル流動性不足か
ら、日本株を売って、円売りドル買いをしたので、円が動かなかっ
たようだ。ドル不足解消のドル買いが発動したようである。

日銀は、ETF買いの増加と国債の買取額を大きくするなどの対策を出
すが、このような政策では、限界がある。

3月16日は、上げから始まることになるが、当分下値を追う展開にな
ると見る。

そして、下値のめどを探るために過去の株価を見ると
24448円:バブル崩壊後高値(18年10月02日)から
19027円:ブラックマンデー級(下落率21.1%:87年)
17431円:2020年3月13日(下落率28.7%)
17072円:チャイナショック級(下落率29.1%:15年)
15072円:列島改造バブル崩壊級(下落率37.5%:73年)
13215円:ITバブル崩壊級(下落率45.2%:00年)
11551円:リーマンショック級(下落率52.1%:08年)
 6994円:バブル後最安値(08年10月28日)
となり、まだ、始まったばかりとも言える。2波、3波の下落があ
る可能性を視野に入れておくことが重要だ。

日本の新型コロナへの対応は、重症患者への対応を中心にして、検
査を行い、医療崩壊は避けた。新型コロナ法案で、広範な施設での
隔離が可能となり、やっと、軽症者への検査も実行することになっ
たようだ。1つの模範となる感染症対応策を取ったと思う。

しかし、WHOは、韓国・中国の完全に感染者数を洗い出す対応策を模
範と推奨している。米国も車で来て、検査できるようにするという。

この韓国の真似をして、イタリアは医療崩壊を起こして、死亡者数
が急激に増えている。イランの死亡者数の増加は、医療体制が脆弱
なことによる。しかし、検査をしやすくしても、米国は医療崩壊し
ない。検査費用が高いので、上流階級の人たちしか受けられない。

東京オリンピックの開催は、中止か延期になるでしょうが、中止に
なると日本売りがすごいことになる。トランプ大統領も東京五輪を
1年延期にした方が良いと発言。IOCは、WHOの勧告を尊重するとい
う。

2.新型コロナによる経済恐慌
新型コロナ感染流行で、世界の景気は落ちて、石油消費量は減少す
ることが明らかである。

このため、サウジはOPECプラスに減産提案をしたが、ロシアが拒否
したことで協調減産が決裂した。すると、サウジは、一転、原油を
増産するとしたことで、原油価格が30ドル/バーレル以下になった。

シェールオイルの原価は、新規では55ドルであるが、既存設備では
35ドル程度であり、30ドル以下になると赤字になる。4月・5月には
、シェール企業の倒産が出てくる。

シェール企業はハイ・イールド債(ジャンク債)を大量に起債して
いるが、このジャンク債がデフォルトになる。ジャンク債を集めて
リスクを低めたのが、CLO債であり、このCLO債を大量に購入したの
が、地銀と農林中金であり、CLO債の暴落で地銀と農林中金の損失は
、非常に大きいことになる。CLO債が崩れると金融危機が日本で起き
ると言われていたが、それが本当に起きることになる。

2月26日には、CLO債から資金が68億ドルの流出している。保険のCDS
も上昇してきて、3月4日には社債市場からも143億ドルも流出してい
る。

ということで、原油価格が下落すると、債券市場も崩壊する可能性
が高い。

そして、米国にも新型コロナが上陸して、人が集まる場所の閉鎖、
飲食街の閉鎖などで、今後米国の消費が落ちるが、GDPに占める個人
消費が75%もあるので、企業は雇用を削減して景気悪化に備えること
になる。最初にサービス業が傷つき、徐々に製造業も傷つくことに
なる。

そして、今まで株価を上げるために借金をした結果、企業の借入金
は15兆ドルもあり、債券6兆ドルと銀行からの融資が1兆4千億ドルで
ある。この借金して資産を買っていたが、借金と資産を増やす両建
て経営の破局を迎える。

このため、資産を売却しても、資産価格の大幅な下落で資金が入っ
てこない。一方、債券市場が混乱すると、金利が上昇して、企業の
起債ができなくなり、債券のデフォルトが増え、かつ資金の確保が
できなくなり、運転資金がなくなり倒産が多発することになる。

債券市場の混乱は、「灰色のサイ」と呼ばれるミンスキー・モーメ
ントとなり、株、債券、不動産も金など資産の全部売りになる。銀
行の融資も飛ぶので、金融危機にもなる。

ということで、パンデミックから産業危機になり、その後金融危機
になるが、その上に原油価格暴落から債券市場の崩壊が重なること
になる。大きなドミノ倒しが始まっている。

このため、ムニューシン財務長官を中心に、PPTメンバーが徴集され
て、株式市場の株価維持の対策を打っている。このため、13日のNY
ダウは上がったが、まだ予断を許さない。このため、FRBも日銀と同
じ様に、株を買えるようにする法律の改正も検討課題に挙がってい
るという。

同様に欧州でも感染が拡大してきたが、日銀と同様に金融政策には
限界がある。しかし、財政出動は、ドイツが反対しているので、欧
州の経済も大きく落ち込むことになる。

逆に、日本の大企業の内部保留額は500兆円もあり、1年間ぐらいは
耐えられる体質になっている。米国企業の身売りが出て、日本の大
企業は、米企業の買収がより取り見取りのような状態になるはず。

現時点でよいこととしては、中国の感染収束が期待できる状態にな
り、サプライチェーンの復活で、製品が出回れば、インフレを抑え
ることができる。このため、中国の早い復活を期待したい。ここに
しか、希望を見いだせない状態でもある。

4月までに新型コロナが収まれば、Ⅴ字回復になるが、4月以降にな
れば企業倒産が増えて、産業危機や金融危機になり、経済回復は、
長時間がかかることになる。

もし、半年、世界的な感染拡大が続き、同時に世界的な景気後退も
起きると、新型コロナ感染で死ぬより、経済的な問題で死ぬ人の方
が数百倍も多くなる危険性もある。

3.経済政策が重要
GDPは、10月から12月で7.1%も落ちているので、経済政策としては、
思いきった政策が必要で、日銀は、一層の量的緩和を行い、株価が
2万円になるまでは、無制限にETF買いを行うことが必要である。そ
して、日銀内特別会計で、株の管理をして、2万数千円で株を売り、
収益を得て、次の経済混乱に備えることである。透明性を確保して
、株の売買を行ことだ。

量的緩和では、地銀や農林中金が持つCLO債を起債金額で買うことで
ある。これにより金融危機を起こさないことが必要である。

政府は、大規模な財政出動して、中小企業の借金を棒引きするよう
な徳政令を出し、半年程度の融資を行い、銀行には、中小企業への
融資金額を債権化して、それを政府・日銀が買うことである。

フリーランスや非正規雇用者には、金を配り、中小企業の正規雇用
労働者は給与分の補助金を政府が出すことである。そのようにして
、この疾病が収束した後の景気回復を早期にできる準備をするしか
ない。時間を止めて、その間の生活費を政府が面倒を見ることであ
る。

消費税は、ゼロではなくマイナスにするのも面白い。中国での生産
が軌道に乗っているなら、消費税マイナスで、政府が後で補填する
ようなことでもしないと、ぜいたく品や耐久消費財の消費が動かな
い。日本も米国ほどではないが、消費がGDPの65%を占めるので、消
費の活性化は必要である。それで消費を繋ぐしかないように思う。

4.新型コロナウィルスの由来論争から米中貿易戦争中止へ
このコラムでは、新型コロナウィルスが、人工物か自然物の議論を
止めているが、米中間で、このウィルスを生物兵器としての人工物
とした論争が起きている。米国は、武漢ウィルスと言い、中国は、
米国が武漢でこのウィルスをばら撒いたという。

この論争にも注目する必要がありそうだ。米中論争の切欠になる。
米国は、中国からの輸入品がなくなると、インフレになり景気後退
で、スタグフレーションになる。どこかで、米中貿易戦争を止める
必要が出てくる。

ということで、米中での貿易戦争終結の段階に入ることになる契機
になる可能性もある。トランプ大統領は、中国との思想的な論争を
望んでいないし、新型ウィルスの由来にも興味がない。経済的な観
点だけしか興味がない。

このため、米国のスタグフレーションを解決するためには、中国か
らの輸入品が必要になる。そのために、米国は対中輸入関税UPを止
めることになると見る。

5.中東での動乱
イランの感染拡大と死者の増加で、イラン国内に不満がたまってい
る。この国内の不満を海外に敵を作り、国民の目をそちらに向けさ
せる政策を打つような気がする。

イラクにある米軍基地をロケット弾で攻撃して、米兵2名を殺した。
この報復として、親イラン民兵の基地を空爆したが、それが発展す
ると、中東戦争になる。

トルコとシリアの戦闘は、ロシアの仲介で停戦になったが、まだ予
断を許さない。

中東戦争で原油が止まると、原油価格は上昇するので、債務危機は
起こらない可能性もある。それを狙っている国がいるような気もす
る?

さあ、どうなりますか?



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