国際決済銀行(BIS)のバーゼル3が2019年から発効するが、日本 の国債はGDPの2倍以上もあるので、リスク資産となることが明らか である。そのために、どうなるのか検討しよう。 津田より 0.バーゼル3の内容 国際決済銀行の銀行国際規定であるバーゼル3では、ギリシャ危機 でギリシャ国債を大量に持っていた銀行が破綻したことで、格付け の低い国債は安全資産ではなくリスク資産になり、準備金を積む必 要があることになった。今までは、日本国債は安全資産であったの で、日本国債は準備金の扱いであった。 そして、安全資産の割合が基準以下の銀行は国際業務ができない。 海外で大手銀行が破綻すると、他国、国民の預金が保護できないの で、安全な銀行しか国際業務ができないようにしたのである。 現在、日本国債はA1、A+であるが、AaaやAAAより大分低いが、安 全圏にいるはずであったが、現時点でも日本国債も安全資産ではな いようだ。 このため、大手銀行3社、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友 銀行は、日本国債を減らしていくことになる。 特に海外業務が大きい三菱東京UFJ銀行は、国債取り扱い主事の位置 を返還してでも、国債の保有量を減らすことにしたのである。国際 業務ができなくなるという危機意識から政府に逆らったのである。 そして、2018年まで延期した消費税増税がないと、不適格一歩 前のBaa、BBBになる可能性も高い。または、Ba、BBと不適格になる。 そこまでには日本は、経済成長ができて消費税増税できる状態にな れるのかというと、疑問視する状態にある。 しかし、財務省と日銀は、そこまでにプライマリー・バランスをし ないと日本国債は不適格になり、銀行や保険会社が国債を買わない ので、売れずに金利の大幅な上昇になると見ているようである。 日銀は、BISのバーゼル検討委員会のメンバーであり、日本銀行の黒 田総裁は、よく知ってるので、2016年3月にその旨の発言を経 済諮問委員会で行ったがオフレコになり、議事録にはないという。 1.プライマリー・バランスが必要 このため、安倍首相も2020年までに財政黒字化(プライマリー ・バランス)をすると表明することになる。しかし、現状の日本経 済の状態では、できるのであろうか? 現時点でも、物価上昇率はマイナスかプラスでも僅かである。日銀 の量的緩和でのマネーベース(日銀発行通貨量)は、10倍程度も 大きくなったが、マネーサプライ(市中通貨流通量)は、25%増 えただけである。ほとんどが銀行の金庫にあるか、日銀当座預金に ある。このため、日銀は、日銀当座預金の金利をマイナスにしたの である。 ということで、浜田宏一先生の量的緩和理論は残念ながら、現状を 説明できていない。内需拡大がないとマネーは市中には出ないとい ういたって基礎的なことを無視した理論であったことが明確化した 感じである。 2.大手銀行維持のための日銀買いオペ 2019年までに大手銀行は、日本国債の保有を劇的に減らす。大 手銀行は国債を売りに出すので、国債の長期金利は上昇する(価格 が安くなる)可能性が有り、これを防止するために日銀買いオペが やめられない。 もし、日銀買いオペをしないと、大手銀行は手持ち国債を売却する 必要があり、金利上昇で売却価格が低くなり、大幅な損失が出てし まう。現在、大手銀行の保有国債は22%もある。1000兆円の 22%というと、220兆円となり、これが10%程度低くなると、 22兆円もの損失になる。大手銀行の倒産も視野に入るほどの巨額 である。 このため、2019年までに急速に、日銀は大手銀行の手持ち国債 を金利ゼロ付近で買うしかないのである。大手銀行を倒産させない ためにである。 3.買い替え国債問題 それと、もし、プライマリー・バランスが2020年までに取れな いと、国債を買ってくれる機関がなくなる。これは可能性はあるが 問題外であるので、今は検討しない。 しかし、プライマリー・バランスが取れたとしても、日銀の手持ち 国債を償還するが、この買替え国債も問題になる。現状、1000 兆円ある国債の償還量は、年間20から30兆円程度もあり、これ を買い替えする必要がある。 しかし、この国債も売れないことになる。この国債を一度、市中に 出したとしても、最後は日銀が買うしかない。 それだったら、日銀が政府から直接買い入れるヘリマネにするしか ないことになる。国債も永久債にして、買い替えを無くした国債に する。 そうすると、円の流通量が無制限になるので、為替市場では円超安 (1ドル=240円以上)になる可能性が高い。 ということは、ハイパー・インフレになるということである。 4.預金封鎖の可能性 日本国債の償還は現時点で、ほぼありえないことになっている。 1000兆円にもなっているが、今でも新規国債を24兆円も発行 している。 2020年までには、米国トランプ次期大統領から防衛費を10兆 円にしろとなるし、国際情勢も危うくなり、日本の安全保障環境も 大変になる。 予算の1/3を占める社会保障費を下げる必要があるが、今の状態 では民進党や国民の反対もあり、そう簡単に引き下げることもでき ない。自民党はインフラ建設の増額を推進するし、予算は増額の方 向に向かっている。何で2020年までにプライマリー・バランス を取ると宣言したのか、非常に危うい状況になってきた。 このようなことになると、逸そ、ハイパーインフレにして、国債の 負担を軽くして、今までの1200兆円ある国民預金をパーにする 方が簡単ではないかという議論が起きてくるように感じる。 1946年にも預金封鎖をして、資産税を90%掛けて、預金量の ほとんどを奪って、同時に新円にしてデノミを行い、戦前戦中の国 債を無くした事例がある。NHKの番組になったということは、その可 能性が現在、また出てきたということである。 このため、皆が持つ銀行預金が一番まずいことになる。日本円で持 つことは、ハイパーインフレになったら、価値が1/3以下になる 可能性があり、資産防衛が必要になる。特に高齢者、退職者が持つ 預金が危ないことになる。 5.プライマリー・バランスを取るためには 2020年というのは、後4年である。この第1歩である2018 年に消費税を上げるには、経済成長させて、景気を上げておかない と、景気を冷やすことになる。 生産性を上げるとか、日本に観光客を呼ぶとか、いろいろ言ってい る評論家はいるが、あと1年でそのようなことで経済成長ができる と思っているのであろうか? あまりにも、バゼール3規定を知らな過ぎる。このバーゼル3の存 在が日本を追い込んでいるのである。それも時間がない。 よって、景気が悪くてもどうであろうと、2018年の消費税は上 げるしかないのである。また、2019年にも消費税を再度上げる ことになると見ている。景気は、より悪くなるがプライマリー・バ ランスを取らないと、ハイパー・インフレになるからである。 消費税を20%にしても、財政均衡化(プライマリー・バランス) を図るために、社会保障費の予算を絞るしかない。中国の強大化で 、かつ米国の中国対決姿勢で、防衛費は増えるが減らすことができ ない。 外国籍の生活保護はありえないし、生活保護費を今の数分の1にす るとか、今の基準ではありえない予算均衡化をすることも視野に入 れるしかない。 当然、このような政策を行えば、安倍首相の自民党政権でも潰れる ことになる。しかし、民進党でも今のようなバラマキを言っている と、国家を潰すことになることを肝に銘じる必要がある。 さあ、どうなりますか?