米国の利上げにより、今回の世界的な混乱が始まった。まず中国人 民元のドルリンクで、他通貨に比べて人民元が高くなり、輸出がで きなくなったことで中国政府は人民元の切り下げた。しかし、それ で中国企業は米ドル債務が多く、その償還を焦ったことで、ドル買 い人民元売りが止まらないことになり、一層の人民元安を招いた。 中国の経済は減速して、かつ米国のシェールオイルの生産は維持し 、その上にイランの制裁解除でイラン原油が世界に供給できること で、原油の価格が下落して、その下落でオイルマネーが逆戻りする と怯えて、世界の投資家がリスクオフに傾いた。 このため、世界的な株安になってしまった。特にアジアの株式市場 の下げは厳しい。中国経済の減速を直接に影響することで、香港を 中心に東京市場も大幅に下落した。それに比べてNYSEやヨーロッパ の株式市場は、それほどでもない。 地理的な環境で経済への影響が違うことで、市場の影響度も違うこ とになっている。地経学をロゴフは提唱していた。 ということで、日本は中国の影響をまともに受けていたのである。 しかし、量的緩和から抜け出そうとしても、なかなか抜け出せない ようである。日本も金融緩和から抜け出そうとして、何遍も躓いた 過去があるが、非伝統的な金融政策である量的緩和から、どう抜け 出せない良いのか、経済的な理論もなく、手探りである。 ぬるま湯から出るのはなかなか大変であり、どうしても、またぬる ま湯を市場は求めてしまうことになる。 しかし、熱を加えて、熱い湯にすると、経済は死んでしまう可能性 もあり、お湯加減が難しい。 FRBのお手並み拝見ですね。 さあ、どうなりますか? ============================== 2016年 01月 22日 14:30 JST コラム:世界的リスクオフ反転へカギ握るFRB、焦点はイエレン 証言 田巻 一彦 [東京 22日 ロイター] - ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が3 月に金融政策スタンスを見直す考えを示し、世界の株式市場には、 買い戻しの動きがみえてきた。だが、年初からの世界的なリスクオ フ心理の強まりは、米利上げが起点になっており、米連邦準備理事 会(FRB)がどのようなシグナルを出すのか、見極めないとリス クオンへの転換は難しいだろう。その意味で2月10日のイエレン FRB議長による米議会での発言が、当面の焦点になりそうだ。 <とりあえず効いたドラギ発言> ドラギECB総裁の発言は、「底なしの下落リスク」を感じ始めて いた株式市場やコモディティ市場の関係者にとって、願ってもない 朗報となった。 というのも、昨年12月に追加緩和を実施したばかりであり、その 結果も市場の期待値を下回って、ユーロが下落するどころか上昇。 「ドラギマジック」に陰りが見え、今回は何もないという声が多か ったからだ。 しかし、21日の会見では、年明け以降、新興国の成長見通しや金 融、コモディティ市場の混乱、地政学リスクなどをめぐる不透明感 が強まる中で「下振れリスクが再び高まった」と明確に指摘。「そ のため次回3月初旬の理事会で、金融政策スタンスを見直すととも に、おそらく再検討する必要がある」と踏み込んだ。市場は「追加 緩和示唆」と受け取った。 22日の東京市場では、日経平均.N225が一時700円を超える上昇 となり、1万6700円台を回復した。 ただ、この相場上昇が、トレンド変換となるのか、それとも一過性 の「息継ぎ」に過ぎないのか──。多くの市場関係者は、判断を下 しかねているようだ。 <中国市場の波乱・原油安、起点は米利上げ> 年明け早々の市場では、株安の原因を人民元や中国株の下落と捉え 「中国経済は緩やかに成長しており、相場は行き過ぎ。いずれ落ち 着きを取り戻す」との見方が多かった。 また、原油価格の下落に関しても「20ドル台はオーバーシュート 。いずれ30ドル台から40ドル台に戻る」との見方が多かった。 しかし、ここにきてようやく今回のリスク回避現象の中心に「米利 上げ」があるとの見方が広がり出してきた。 中国市場の変動にしても、コモディティ市場の下落にしても、昨年 12月に始まった米利上げによって、マネーがドル建て資産に回帰 するという見通しや思惑によって、その動きが加速している要素が 大きい。 2016年に4回の利上げがありうるとした年初のフィッシャー FRB副議長の発言は、8日に送信したコラム「世界的株安の中心 に米利上げの反作用、4回維持なら振幅拡大」[nL3N14S1HH]で指摘 したように、リスクオフ相場のトリガーを引いた可能性が高い。 <FRB幹部発言、変化の予兆も> ただ、ここにきてFRB幹部から、微妙な軌道修正を「予感」させ る発言が出てきている。これまでタカ派的な発言を繰り返してきた セントルイス地区連銀のブラード総裁は14日、原油価格の継続的 な下落は、インフレ期待の「厄介」な低下をもたらす恐れがあると 発言。最近の市場動向に警戒感を持っていることを明らかにした。 また、イエレン議長に近いとみられているダドリーNY連銀総裁は 15日、原油安とドル高がインフレ率目標の達成を困難にしている との見解を表明した。 ただ、期待の低下は「利上げを思いとどまらせるほど十分ではなか った」とも発言。16年の成長率は2%超、労働市場は多少ながら さらに引き締まるとの見通しも示した。 もし、FRBが年4回の利上げペースを緩める方針を明確にすれば 、年初から顕在化してきたリスクオフ心理とマネーのリスク回避現 象は、いったん小康状態になる可能性があると予想する。 実際、米アトランタ地区連銀は発表しているGDP・NOWは、1 月20日時点でプラス0.7%にとどまっている。低成長で利上げ を繰り返せば、景気の足踏みとともにFRB幹部が懸念するインフ レ期待の低下を招くことになりかねない。 <イエレン発言次第で、日米欧の協調ムード演出も> その意味で2月10日の米下院金融委員会、11日の米上院銀行委 員会でのイエレン議長の金融政策に対する発言は、当面最大の材料 になるだろう。 ここで3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げに 消極的なスタンスを示せば、リスク資産からのマネー流出に一定の 歯止めをかけることができる。 日銀が1月28、29日の金融政策決定会合でどのような結論を出 すのか、今のところ断定的なことは言えないが、仮に1月会合で追 加緩和を見送っても「必要ならちゅうちょなく」というスタンスの 黒田東彦総裁が、3月にいよいよ動くとの思惑は一層高まることに なるだろう。 また、ドラギ総裁は3月の追加緩和の可能性を強くにじませる発言 を行った。2月10日にイエレン議長が3月の利上げ見送りを示唆 するメッセージを出せば、日米欧が市場の急変動に対し、足並みを そろえるという「協調イメージ」を演出することが可能になると考 える。 1月最終週のFOMC、日銀金融政策決定会合と続くイベントの先 にあるイエレン議長の米議会証言が、マーケットの暗夜行路を導く 「一条の光」になるのかどうか。FRBからのメッセージは、いよ いよ重要度を増しそうだ。