岩谷産業(株)が主催する1月25日の水素フォーラムに参加した。 岩谷の野村社長から産官学の連携を取るためのフォーラムであり、 岩谷も役割を担うというが、政の言及がなかった。ある衆議院議員 の下にお呼びしたトヨタ自動車の担当者も陳情ではないと念を押さ れたのを思い出す。 しかし、現在、水素社会を推進する政策を作らないと欧米との戦い に勝てないはず。政治の関与は重要であると見る。 資源エネルギー庁小見山FC推進室長は、いろいろなことを推進して いるというが、コスト問題がネックになっているという。それに補 助金をつけて普及する方向をとっている。 この考え方が米国とは違うようである。経済性のあるところから導 入というのが米国の考え方である。このため、米国はフォークリフ トとデータセンタの非常用電源というマーケットでの推進を進めて いる。 もう1つが、規制であり、欧州で1.4億円でできる水素ステーシ ョンが日本では4億円もしている。それに対してFC推進室長は規制 緩和を積極的に推進すると明言していた。 現時点、16項目の規制緩和をして、燃料電池自動車をバックアッ プするという。70気圧までの炭素繊維のタンクを許可した。 タンク試験設備29億円の建設費用も予算処置し、水素ステーショ ン100ケ所の建設費2分の1を補助する予算処置もしたと。 早稲田大学の松方教授は、水素の位置づけを脱原発のためではない とした。人口減少と5%の省エネで脱原発はできる。再生エネルギ ーの変動を調整する蓄電やFCVのための役割であるとした。 ユニバーサルエネルギー研究所の金田社長は、米国は9.11以降 脱中東政策の一環でエネルギー政策を変更した。ユナイテッド航空 機はスリーマイル原発に向けて飛んでいたのを米軍機がミサイルで 撃ち落としたようだ。原発を破壊されていたら、大変と撃墜したよ うだと。 このため、2006年にジョージ・ブッシュ大統領は「2025年 までに中東依存度を75%削減するとした。」と演説して、何から でも作れる水素に着目した。エネルギー安全保障上の選択である。 2008年のリーマンショックで、米国の自動車会社が倒産して、 GMに資本金を投入して立て直した。この時点でGM流PHVを推進して 立て直す。この延長上にFCVがある。米国のFC推進ではフォークリフ トとデータセンタの非常用電源としてのFC導入である。経済性があ る分野から導入している。水素ステーションの値段も500万円以 下であり、日本の規制とは違う。 水素の値段が高いので、FCVの方が導入が早いはず。夜間電力を利用 した水素で、自動車を走行すると、ガソリン車とほぼ同じ程度にな ると。 三菱重工の大坪部長は、コンバインドサイクル化して天然ガス火力 発電の効率は60%、石炭火力発電の効率を50%に引き上げる目 処がついたと。 燃焼温度を上げると効率が高くなるが、その熱に耐える金属がない ことになる。今は1600度の温度での燃焼が出来た。水素タービ ンは2000度になり、着火点が早いなどまだ、出来ていないが近 づいてきた。 この効率をさらに上げるには、トリプルコンバインドサイクル化が 必要であり、このためにSOFCを使う方向である。2012年度中に 公開実証試験を開始する。これにより効率70%にする方向である。 そして、小型から超大型までの品揃えを考えているという。 現時点でも製鉄所の副生水素を燃やして電気を作っているが、水素 濃度は最大50%である。しかし、14万KWなど小さいタービンと 発電機で行なっていると。 最後に上羽専務が2050年に3400億Nm3の水素が必要である と試算するという。もしこれを電気分解で製造しようとすると、実 に1.7兆kwの電気が必要になる。現在、日本の総電力量が6000万 KWであり、それを上回ることになる。どう手に入れるかを考える必 要がある。岩谷は、海外から水素を持ってくるというが、それでは 現状とあまり変わらないような気がした。 諸外国では水熱分解での水素製造を目指した原子力でも高温ガス炉 にシフトしているが、日本では、全然議論されていない。気になる 点である。 岩谷は、FCVに期待しているという。FCV自体がエネルギーキャリア になり、水素ステーションから家にエネルギーを運ぶツールになる と見ているが、ホンダのように家庭で電気分解して水素を作る可能 性もあるので、疑問符が付いた。 以上、岩谷水素フォーラムの様子を紹介した。