安倍総裁の講演会は意欲的であるが、その分、政策の負の側面を考 慮しておくことが重要である。 金融緩和政策を打ち出したことで、円安に降れて株高になり、日本 企業の採算は向上するはずである。しかし、金融緩和の資金をどこ に回すかで中長期的な様相が変化する。 自民党は、公共事業を積極的に展開する政策方針であり赤字・建設 国債を無限大に発行する方向である。この赤字・建設国債を日銀が 買うことになると、どこかで国家破綻を起こしかねない。どこかで 国債金利が上昇して、景気を押し下げることになる。これは反対で ある。 金融緩和を行うのであれば、為替介入と同等な効果がある外債購入 しかない。もし、120円程度の円安になったら、逆に外債を売り 円を100円近辺まで戻すことも考えて、金融緩和を行うことが必 要である。 円安になると輸入物資が高騰してインフレになるが、その後はスタ グフレーションに陥るリスクが高くなる。このため、逆方向の円高 もできるような政策を必要である。また、リートなどの不動産など に投資すると、バブルを生じかねないのでしてはいけない。 マイナス金利を、日銀当座預金で行うのは賛成である。この中央銀 行の当座預金金利のマイナスは、北欧諸国で実験している。それな りの効果はある。 安倍さんの裏には高橋洋一氏の理論が隠れているので、高橋氏の理 論の欠点が今後、この国の経済活動を混乱に陥れる可能性が高いよ うである。 それを修正する政策を民主党などは考える必要があるように思うが 、どうであろう。 さあ、経済政策の論議を始めよう。 ============================== 「無制限緩和で脱デフレ進める」 安倍氏の発言要旨 2012/11/15 20:31 nikkei 自民党の安倍晋三総裁が15日に都内で開いた日本商工会議所との 政策懇談会と、読売国際経済懇話会の講演での発言要旨は以下の通 り。 【金融政策】 「政権を取った暁には日銀としっかり政策協調し、大胆な金融緩 和をやって、市場が織り込み済みになってしまうような緩和ではな く、基本的には2〜3%のインフレ目標を設定し、それに向かって 無制限緩和していく。そういう市場に強いインパクトを与える、デ フレから脱却し、為替に大きな影響を、そして株式市場にも影響を 与えるような緩和策を進めていくことを約束する」 「銀行が政府にお金を預ければ0.1%の金利がつくのは高すぎる。 最も安全な日銀に0.1%で預けられるのであれば、すぐにお金は日本 銀行に帰ってくる。それよりはむしろ逆にゼロにするか、マイナス にするくらいのことをして貸し出し圧力を強めていただかなければ ならないだろう」 ============================== コラム:金融緩和に依存する安倍氏の政策、財政規律緩むリスク 2012年 11月 15日 16:19 JST 田巻 一彦 [東京 15日 ロイター] 安倍晋三・自民党総裁が講演などで 打ち出しているマクロ経済政策は、日銀の金融政策に過度に依存し ている印象だ。自民党が次期衆院選で勝利して安倍政権が発足し、 表明している政策がそのまま実行に移され、日銀が追加緩和政策と して日本国債の買い取りを大幅に増加させた場合、積極的な公共投 資の推進もあいまって、政府の財政規律が大幅に緩むリスクが高ま る。 公的債務残高の対国内総生産(GDP)比率は、短期間で200% 後半に上昇する懸念がある。 債務残高の急速な上昇は、日本国債の格下げを招き、円安と長期金 利の上昇が互いに影響しあいながら継続する現象を発生させるだろ う。安倍総裁は3%のインフレターゲットに言及しているが、債務 膨張─長期金利上昇─円安の経路で物価上昇が実現する可能性があ る。ただ、このケースでは残念ながら付加価値の増大は伴わず、ス タグフレーションに陥るリスクが高いだろう。日本経済の成長力強 化に的を絞った政策対応が、何よりも求められている。 <金融政策が柱、安倍総裁が強調> 安倍総裁は14日夕の講演で、自民党が政権を奪還した場合、デフ レ脱却の政策では金融政策が大きな柱になるとの見解を表明。イン フレターゲットを設定して達成まで無制限な対応が必要だと述べた。 15日の講演では、インフレターゲットの水準が2%か3%かは専 門家に議論してもらうとの方針を表明。2%の水準にも言及した。 また、15日には2013年度予算を景気刺激型にし、公共投資を 増額させる方針も明言した。自民党は総額200兆円規模の国土強 靭化計画を打ち出しているが、総選挙勝利後には早速、2013年 度予算編成で実行に移す手はずになっているようだ。 マクロ経済政策における金融政策依存度の大きさと、公共事業を積 極的に展開する政策方針は、一見すると別々の政策目的による別個 の政策対応のように映る。しかし、私の目にはこの2つの政策が強 くリンクしているように見える。 <緩和強化による国債買い取り急増、市場の警鐘機能弱めることに> 住宅ローン担保証券(MBS)の発行残高が巨大な米国では、量的 緩和政策の一環として米連邦準備理事会(FRB)がMBS買い入 れを主要な政策手段の1つとして実行できる素地が整っている。こ れに対し日本では、そうした流動性の厚い証券市場が見当たらない。 その結果として、日銀が量的緩和政策を一段と強化する際には、日 本国債の買い取り増が主要な手段にならざるを得ない外的環境の制 約が存在する。 安倍政権が発足し、日銀が政府と歩調を合わせ追加緩和を強化する なら、日銀の国債買い取りは増加テンポを速めていくことが予想で きる。日銀が国債買い取りを増加させれば、市場での国債流通量は 減少し、需給のタイト化を背景に国債価格は上昇(長期金利は低下 )するだろう。そのことは政権にとって、国債の新規発行を容易に させる環境の好転と映るに違いない。