イランの資源世界戦略は中国の世界戦略と衝突する 2008.5.11 DOMOTO 中国共産党が、その政権基盤の揺るぎの物議をかもしている中で、 その盟友とも言えるイランが、資源を手段とした世界戦略を推し進 めている。 中国株価大暴落の懸念や著しい経済格差から来る国民の不満、多民 族支配の民族問題を抱える中国共産党政権の基盤が脆弱であるとす れば、資源争奪時代のただ中にあってアメリカは最大の敵として、 中国と同時にイランを警戒しているはずだ。 「Yahoo!JAPN」のニュースサイトや他の日本のマスコミ・サイトで は、イランや中央アジアの動きがわからないが、「Asia Times」で は、中東、中央アジア、南アジア、中国、ロシア、アフリカ、そし てヨーロッパとアメリカの広範囲の地域にかけて、イランの世界戦 略外交の動きを追っている。 Iran moving into the big league(5月3日) http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/JE03Ak03.html Iran woos Farsi-speaking nations(5月10日) http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/JE10Ak01.html 下記のリンクの地図を見てほしいが、中東、カスピ海、中央アジア 、南アジア、北アフリカに及ぶスンニー・イスラム圏の中央部に位 置し、インドとヨーロッパに対して等距離の、シーア派国家イラン の国家的野望は、この広大な北アフリカからユーラシア大陸にかけ ての資源のベルト地帯を支配する事で、少し以前まで言われていた 単なる中東地域での覇権支配ではない(Asia Times)。 http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/35per.Muslim_World.JPEG 国際情勢を扱う事のあるコミックで、『河の上流を押さえた者が勝 つ』という台詞があったが(「河」とは石油と天然ガス)、イラン の世界戦略論のベースがそれだ。 ロシアに次ぐ、天然ガス世界第2位の鉱床を持つイランは、パキス タン経由でインドに至る「天然ガスパイプライン事業」でそのパキ スタンとインドへの支配力を強め、世界第2位の人口を持つインドの エネルギー保障の鍵を、イランが握る事になるとAsia Timesは述べ ている。 「ガス輸出国フォーラム(GECF)は、石油輸出国機構(OPEC)のよ うな連合設立について協議している。米国とEUは、OPECに類似し たガスの生産者団体の形成は、世界のエネルギー保障を脅かし、価 格操作の余地を作り出す可能性があるとの見解を明らかにしている 。専門家らは、ガス団体はOPECほど強い影響力を持つには至らない としている」とロイターは伝えているが、世界のエネルギー保障を 脅かすのにOPECの半分の影響力もあれば、充分だ。 ガス生産国、「ガス版OPEC」設立を協議へ=イラン外務省 (4月28日 ロイター) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080428-00000470-reu-int 中国主導の上海協力機構の加盟国・準加盟国のほぼすべての国とア フガニスタン−中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジ キスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド―との「資源支配 外交」を、イランはこの数年で進めており、それに加えて、ヨーロ ッパに対しても中東のエネルギー資源支配を前提とした「支配外交 」を推し進めている。 現在、黒幕的に中国とイランの連合軍が、アメリカを劣勢にしてい るが、近い将来中国とイランは、北アフリカからユーラシア大陸に かけてのこの広範囲の地域で、衝突し、覇権争いを起こす事になる だろう。 先ほど述べた、ブッシュ米政権が「イランの核開発資金となる」と 懸念していた天然ガス・パイプライン事業は、勿論その理由だけか らではなく中央アジアと南アジアにおける軍事バランスに影響を与 えるものとして、アメリカ政府が神経を尖らせていた問題だ。 インドの政策研究センター(ニューデリー)の安全保障問題専門家 、バーラット・カーナド氏はこの問題について、「インドが手を伸 ばさなければ、中国に奪い取られるだろう。資源争いはゼロサムゲ ームなのだ。民主主義は関係ない」と述べたそうだが、『資源争い はゼロサムゲームなのだ。民主主義は関係ない』というこの「原則 ・定理」は、次の来たるべき時代を完全に規定するかもしれない。 【インド万華鏡】エネルギー安保戦略 “反米”国家と関係強化へ (5月6日 産経新聞) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080506-00000048-san-int ゼロサムゲームの資源争奪の時代、わけわからずのアメリカ民主党 候補オバマのはるかに上を行く、マケイン候補の、無能な「国際連 合」に替わる「民主国家連盟」創設の構想が、空論で終わる可能性 は高い。 http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/200712/mccain.htm DOMOTO http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html