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2014年2月11日
■何が足りないのか? 何を知るべきか?
 労働者・市民の闘いの課題を照らし出した東京都知事選挙


 東京都知事選挙は、自民・公明、連合が支持した桝添氏が211万票を集めて勝利した。脱原発や反貧困・格差拡大反対、福祉の充実を訴え、共産党と社民党が支持した宇都宮氏は98万票で次席。原発ゼロをもっぱら訴え、小泉氏と二人三脚の選挙を行った細川氏は95万票。安倍政権に最も近いのは自分だと訴えた田母神氏は60万票を取った。

 桝添氏が勝利したとは言え、それは原発推進の立場を「原発依存を減らす」「原発は国の問題」などと言って誤魔化し、元厚労大臣という前歴を強調したり連合の支持を得ることで反労働者・反福祉の立場を隠し、中国や韓国などを敵対視する排外主義を国際政治学者の肩書きで煙に巻くなど、自らの本性を徹底的に隠すことで得た偽りの勝利に過ぎない。もし桝添氏が、その本音をもう少しあけすけに語っていたならば、また対立陣営がその本性を的確に曝露し得ていたならば、200万票の票を得ることは無かっただろう。

 宇都宮陣営は、社会矛盾を知る意識的な有権者層を良く結集し、格差と貧困に直面する若者たちの間にも支持を広げ、善戦をしたと言える。しかし、桝添陣営の争点隠しを打ち破り、その本性を的確に曝露し、無自覚層を覚醒・啓蒙し、動揺する層に確信を与えて自らの陣営に引き寄せるところまでは闘いを深めることができなかった。しかも、脱原発の意識を持った市民の少なくない部分を、細川・小泉連合に持ち去られてしまった。

 都知事選挙において細川・小泉連合が名乗りを上げたのは、自民党が安倍晋三の下で国家主義化を深め過ぎたことや、福島原発事故への無反省に対する保守勢力内からの反発、統治の危機への不安の表れであり、その意味で根拠と理由を持った動きだ。それが成功したかどうかは別として、国家主義や排外主義を強める安倍自民党に対抗し、別の保守政治勢力を立ち上げようと行動を起こしたのだ。

 問題は、この小泉・細川の政治運動に対して、「彼らは改心した」「脱原発のための二度と無いチャンス」「自民を負かすためには反桝添候補者の一本化を」「反ファッショ統一戦線を」などと叫んで細川支持に走った一部の脱原発の活動家、左翼崩れ、知識人や文化人たちだ。

 彼らは、原発が持つ問題を格差や貧困や福祉切り捨てなどの社会問題と恣意的に切り離し、それらの社会問題やその根っこにある利潤至上・弱肉強食・差別を内在した経済システムの問題と原発の抱える問題とを別のものとして扱えると浅はかにも考えた。だから、格差や貧困やみすぼらしい福祉にほとんど関心を示さぬどころか、そうした現状に拍車をかけた小泉氏や細川氏でも、脱原発の闘士になり得ると愚かにも信じた。

 そればかりか彼らは、細川氏が都知事になれば本当に脱原発が実現できるという、途方もなくナイーブな幻想を持って回った。彼らは、仮に細川氏が都知事になっても、もともとが脱原発運動に疎遠な立場にあり、この課題実現のための知的、人的、運動的資源を持たない彼の号令が、何の実質的な力にもなり得ないという政治の常識が理解できていない。原発を維持しようとする勢力の背後には、福島原発事故で大きな痛手を負ったとは言え、それ故にこそさらに既得権益への執着を激しくする財界や官僚を中心にした原子力ムラの強力な結束がある。これを打ち破るためには、労働者・民衆の中に深く根ざし、多くの信念と志のある専門家や政策マンの信頼を集め、彼らの力を結集していくことができる政治勢力が総力を挙げて都知事を支えていく必要がある。細川氏や小泉氏がそんな資質や条件を持った政治家でないことは、現実を少しリアルに見れば分かるはずだが、脱原発の活動家や知識人や文化人の一部は、浮き世離れをした妄想に身を委ねたのだ。

 1月23日にも書いたことだが、かつて政権についた民主党が、「コンクリートから人へ」「生活が第1」「最低でも県外」等々のそれ自体は素敵であったスローガンを実現できず、それと真逆の政治に行き着いた原因がどこにあったかを、細川支持の脱原発派の人々は真剣に考察すべきだ。そうしたスローガンを本当に実現しようとすれば、民主党は、その前に立ちはだかる財界、官僚、米国の巨大な力を押し返す戦略を持たなければならなかった。その戦略のカナメは、小手先の政治術策にはなく、何よりも日本の労働者・民衆の大きな力を引き出し、それを味方に付けることであったが、民主党には最初からその選択肢はなかった。何故ならば、民主党という政党は、もともと民衆の運動と疎遠な所に存在し、そればかりか民衆の運動に敵対してきた政党だったから、そんな発想はどこからも出てきはしないのだ。にわか仕込みの市民・弱者への擦り寄り策で湯浅誠氏などを政権に入れたが、本気で「生活が第1」を追求するなら、巨大な労働者・民衆の運動と結びつき、100人、1000人の湯浅誠を味方に付け、試練を経た確かなブレーンを結集しなければならなかったが、そうした戦略的な問題意識を民主党政権はかけらも持たず、結局は財界、官僚、米国に擦り寄ることで政権維持を図ろうとするまでに落ちぶれた。小泉・細川連合の政治も、その点ではかつての民主党と全く同じ構造の内にあり、従って一時のエピソードとして人々の歓心を買うことはできても、脱原発政治を前進させる可能性などどこにも存在しないのだ。

 今回の都知事選挙は、反原発運動に限らず、反貧困、福祉切り捨て反対、反排外主義等々の労働者・民衆の運動において何が欠けているか、何を知り、何を学ばなければならないかを明らかにしてくれた。桝添氏に都知事の職を奪われたからと言って何も落胆する必要は無い。この敗北と右往左往の中から何を学ぶかと言うことこそが、決定的に重要だ.。


2014年1月23日
細川・小泉連合は脱原発を実現できない

 細川氏と小泉氏は、原発の是非が選挙の最大の争点だという。しかしお二人が真に脱原発を目指しているなら、その圧倒的な知名度を活かして宇都宮氏の支援を表明し、活発な選挙活動を展開すれば、例え相手が自公や連合の支援を受ける強力な桝添氏でも、勝てる可能性が出てきただろう。革新・市民派の宇都宮氏を保守の小泉・細川氏が支援するという意外さも話題を呼んで、宇都宮氏の陣営は大いに活気づき、盛り上がったに違いない。仮に宇都宮氏が負けても、脱原発の流れは格段に強化され、国政を決定的に動かす力になっただろうし、もし宇都宮氏が勝ったとすれば、原発ゼロは圧倒的に揺るぎないものになっただろう。

 しかし、細川氏や小泉氏は、そうはしなかった。宇都宮氏に対抗し、宇都宮氏をつぶす形で、細川氏の立候補を決めた。何故なのか。

 それは、小泉氏や細川氏の狙っているものが、単純に脱原発というわけではないからだ。彼らが試みているのは、安倍晋三氏が牛耳る今の自民党への異議申し立てであり、安倍自民党に対置する形で別の保守政治勢力を打ち立てんとする行動だ。アンチ安倍自民党の新しい保守政党を立ち上げることが、小泉・細川氏らの真の目的なのであり、脱原発のスローガンは、その手段として活用されているに過ぎない。

 もちろん、小泉・細川氏が脱原発を望んでいないというわけではないだろう。しかし、彼らはその経済的・社会的・政治的な深刻な意義、加えて歴史的な意味について、深く理解できているわけではない。彼らは、資本家政府の手の中にある様々な政策的選択肢の中のひとつとして、原発から他の発電方法への転換を考えているに過ぎない。

 それだけでも大したものではないか。たとえ無自覚にではあれ、彼らが脱原発を実現したとすれば、そのことの社会変革的な影響は彼らの思惑を越えて波及するのだからやらせて見れば良いではないか、という者がいるかも知れない。

 しかし、そもそも、小泉・細川氏らが脱原発を実現する戦略や能力を持っていると想定すること自体が現実的ではなく、まったくもって甘すぎる見通しといわざるを得ない。小泉・細川氏の手で進められる脱原発政治は、挫折せざるを得ない。それは、「コンクリートから人へ」「生活が第1」「最低でも県外移設」と言った鳩山・菅・野田氏の民主党政権が、そのスローガンとは全く真逆の政策へと行き着かざるを得なかったのと同様だ。

 何故そう断言できるのか。それは、小泉・細川の政治運動は、かつての鳩山・菅・野田氏の民主党政治と全く同じ構造を持っているからだ。民主党政権は、本気で「コンクリートから人へ」「生活が第1」「最低でも県外に」を実現しようとするならば、何よりも日本の民衆の運動、労働者・市民の力に依拠しなければならなかった。それらのスローガン実現の前に立ちはだかる財界、官僚、米国の巨大な力に対抗し、それらを押し返す力は、強力な民衆の運動の中にしか存在しないからだ。にもかかわらず、民主党政権は逆に財界や官僚や米国に擦り寄った。

 何故そうなったか。もともと民主党という政党自体が、民衆の運動から疎遠であり、むしろそれに敵対してきた政党だったからだ。「コンクリートから人へ」「生活が第1」「最低でも県外」を本気で実現しようとすれば、ひとりの湯浅誠ではなく100人、1000人の湯浅誠や鴨ももよや山城博治等々の党派を超えた民衆を代表する人々の力を政府内に取り込み、その背後にいる巨万の自覚した民衆の力を主体としつつ、そして民衆の声を自らの声とすることができる各分野の専門家たちの力を結集しつつ、財界、官僚、米国に力に立ち向かう戦略を持たなければならなかった。にもかかわらず、民主党という政党には、最初からその選択肢は存在しなかった。

 小泉・細川連合も、その意味では全く同じ構造を持っており、したがって同じ運命をたどらざるを得ない。脱原発を実現するとか、世の中を大きく変えるということは、一握りの政治家はもちろん、たとえ数百人の国会議員と言えども、それだけの力で実現できることではないという真実に気づくべきである。

 「渇しても、盗泉の水は飲んではいけない」
 私の古い友人が今度の都知事選を評して述べた言葉を結びとする。

2014年1月18日
原発とは何か、脱原発運動は何をめざすのか


脱原発運動は、何を求め、何をめざすのか。
とりあえず、原発を廃止すること、だけなのか。
しかし、そもそも原発とは何なのか、それを廃止するとはどういうことなのか。

まず、原発とは何なのか。
原発は、電気を発電するひとつの方法、テクノロジーというだけではない。
原発は、ウランの採掘・精製から始まり、プラントの発注・設計・建設、稼働・運転、廃棄物の管理と処理、それら全体に関わる被曝労働を含む労働過程、そして原発を社会に受け入れさせるための立地自治体対策、宣伝広報活動、政治家や学者・文化人連中などの応援団を動員するプログラム等々の全体に、大きな濃い影を刻印している。

原発は、社会的な差別の上に成り立ちつつそれを拡大再生産し、被曝労働者を始めとする大量の被曝者を生み出し続け、政治を金の力で歪め、民主主義を絞め殺し、地域住民を脇に追いやり、テクノロジーの可能性を貧粗にし、文化や人々の日常意識を無関心の蔓延も含めて堕落させ、一部の原子力マフィアによる富の収奪をもたらしてきた。

では、原発をやめるとはどういうことか。
原発をやめるとは、日本社会の病巣を取り除くための挑戦なのであり、金の力による政治の簒奪、反民主主義、上意下達と中央集権、労働者や市民が健康に生きる権利の剥奪、テクノロジーの一面化と堕落、金と権力による文化支配等々の、現代日本の病巣を取り除くための闘いとしてしかあり得ない。

だから、原発をやめるということは、単に発電方法をよりクリーンな方法に転換させるということには留まり得ず、また原発をやめれば自動的に上述の社会の病巣が取り除かれるということでもない。反原発・脱原発の課題は、それを本当に実現しようとすれば、現代社会の根底にある構造、一部の人々による社会の圧倒的多数の人々に対する支配や隷属や欺瞞や搾取と意識的に向かい合わざるを得ない。

小泉・細川パーティ、それを支持する経済界や企業家の有志たちは、脱原発が持つこうした経済的・社会的・文化的に深刻な意味は理解しておらず、社会の土台の変革が問われているのだという自覚はかけらもない。彼らは、原発を幾つかある発電方法のひとつとしか考えておらず、金勘定の指標でしか考えておらず、その観点からよりクリーンな発電方法、経済的にもペイするばかりかむしろ商売として将来的に原発以上に展望のあるやり方に転換すべきだと言っているに過ぎない。

小泉・細川パーティが都知事選で勝利すれば、おそらく国政レベルも大きく巻き込んだ新たな結集軸の形成、政界再編が起きる。どこまで真面目に扱うか、また実行力がともなうかどうかは怪しいが、脱原発を綱領の一部に掲げるブルジョア政治勢力、保守勢力の一分派が登場することになるだろう。行き場のない、また風を読むに敏な、国会議員や自治体議員やその候補者たちが群がって、一時的には盛況を呈するかも知れない。

脱原発の市民運動の一部から、それで悪いか、今よりは少しでも良くなることは間違いないではないか、桝添と自公よりはマシではないか、という声も聞こえてきそうだ。だが、それは善意からではあるかも知れないが、勘違い、間違いだ。現代社会の歪んだ基本構造、深刻に病んだ社会をそのままにして、そこから原発だけをマイナス消去するということは、現実的には不可能だ。原発と社会の歪みは、不即不離であり、それらはひとつの事態の諸側面、むしろ原発は社会の構造的歪みの根から育った枝葉に過ぎないからだ。

都知事選を機に、原発とはそもそも何なのか、脱原発とはどういうことなのか、このことを改めて熟慮してみることが必要かも知れない。


2014年1月15日
細川氏の都知事選立候補と脱原発市民運動の未来


 本日も午前中は『阿部はるまさ 市政報告』のポスティング。午後からは原発事故被害者救済全国運動の実行委員会として、数十名の国会議員へのロビイング活動を展開。以下は、ロビイング活動をしつつ、考えたこと。

 細川氏の立候補表明で、脱原発運動が揺れている。脱原発の勢いを加速させるためにこの際は細川氏を支援すべきか、原発だけでなく福祉や労働問題や人権問題などに見識を持つ宇都宮氏を支持すべきか、というのが市民派の悩みの中身だろう。

 また脱原発の課題を重視する多くの人たちの発想法は、宇都宮氏と細川氏のどちらが桝添氏に勝つ可能性を持つか、勝って脱原発のうねりを強化することに資することができるか、というものだろう。

 私は、第1に、都知事選においては福祉や労働問題や人権問題等々も重要であると考えるが故に、細川氏支持はまるで問題外だと思う。細川氏が、東京都だけでなく今日の日本社会がぶち当たっている福祉や労働...や生活問題の危機的状況に、正しい認識を持つとも、真面目な政策を打ち出せるとも到底思えない。この点では、どんな幻想も持つことはできない。これは偏見や決めつけではなく、彼らのこれまでの言説や行動からいくらでも証明することが可能なこと。

 第2に、もっと大事なことは、脱原発にしろ、福祉や労働問題等々の課題にしろ、私たちが都知事選を通して追求し、手に入れなければならないのは、民衆自身の政治的力量の強化、そのレベルアップとスケールアップだということだ。都知事が誰になるかは、民衆の政治力量の盛衰に大きな影響を及ぼす条件とはなるが、第一義的に重要なことは民衆自身の主体的な力量の強化や成長だ。

 私たちが、市民派候補を見捨てて細川氏支持で行動することで、仮に細川氏が勝利できたとしよう。脱原発のムードが高まり、国政レベルでもその方向が格段に強まるように、当面は見えるかも知れない。しかし、その脱原発政治のイニシアチブは、誰が握るか。民衆が握るのだと、いうのは強弁に過ぎない。細川氏や、小泉氏や、そして細川・小泉人気にあやかって蝟集してくる国会議員や自治体議員、脱原発を綱領に持ったブルジョア・パーティーが握るのだ。細川氏と小泉氏がタッグを組んだだけで雪崩打って支持を表明する市民ほど、彼らにとって御し易いものはない。

 脱原発のブルジョア・パーティーは、決してあり得ない話しではない。財界・企業家の中にも、脱原発派はいる。高支持率を誇る安倍政権の下で今は身を潜め、たまにおずおずと脱原発をほのめかすだけだが、ブルジョアたちの中にも原発無しでやっていけるという真実に気づいて身を焦がしている者たちは多い。小泉氏や細川氏は、そういう勢力に勇気づけられつつ、彼らの意思を政治的に代弁しているのだ。

 脱原発のブルジョア勢力は、しかし原発事故が生み出した多くの被害者に同情しているわけではなく、被曝労働者の境遇を何が何でも救わなければならないと考えているわけでもない。彼らは、単に、経済合理的に考えて原発は割に合わないと考えているだけなのだ。ないしは、そのハイソで上品な日常生活習慣故に、「トイレのないマンション」を嫌悪しているだけなのだ。

 脱原発の市民運動は、今、脱原発を掲げ始めたブルジョア政治勢力の一分派=小泉・細川パーティの尻尾になるのか、それとも独自の社会的勢力として自主・自立の道を歩むのか、その岐路に立たされている。目の前の、一見大きく魅力的に見える成果(幻影)を追うのか。情勢がどのようであろうとも、最後に頼りになるのは自分たち自身の政治的力量(現実)なのだと見定めて、その強化のための試練をあえて選ぶのか。私は、一片の迷いもなく、後者の道を選ぶ


2013年10月11日
原発事故子ども・被災者支援法の基本方針案の閣議決定を糾弾する
  真に必要な支援策を目指す闘いがこれから始まる


 10月11日、政府は原発事故子ども・被災者支援法の基本方針案を閣議決定した。法律が明確に規定している住民の意見の反映のプロセスを全く経ないで行われた、違法な閣議決定だ。この閣議決定にあたって、数日前から、市民と省庁との交渉何度も行われ、11日当日も朝からの官邸前での抗議行動、記者会見や省庁への申し入れが繰り広げられた。

 原発事故子ども・被災者支援法の支援対象地域の指定にあたって、復興庁は、住民の間に分断を生まないことを重視したと言った。しかし実際には、新たな、よりひどい分断が生み出されようとしている。福島を地理的に東西に真っ二つに引き裂き、避難した住民ととどまった住民の間の心にも軋轢と対立を持ち込もうとしている。被災地を県境で区切ることによって、宮城県・丸森町、岩手県、群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉の年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域、汚染状況重点調査地域をはっきりと無慈悲に切り捨てている。福島を二つに分断するばかりでなく、福島とそれ以外の汚染地域を大きく分断している。

 施策の中身も本当に酷い。福島の人々に対しては、被害の実態に即した支援策ではなく、帰還支援偏重だ。ひたすら「福島に帰還しろ」という内容だ。「帰還しない者にはちゃんとした支援もないと思え」という恫喝的な内容だ。避難者支援、とりわけ住宅や就労に対する支援はなきに等しいほどに貧弱だ。要するに、「放射能を恐れるな」「放射能と共存すべきだ」という福島エートス運動の政策化だ。

 そして、福島県以外の重点調査地域から発せられてきた要求は、一顧だにしていない。重点調査地域からの健康診断・健康調査の要求に対しては、個人線量計(ガラスバッチ)の配布と有識者会議で必要無しの答えを用意し、その後はリスクコミュニケーションとやらで安心論を説く講座とセミナーだけという施策だ。

 そもそも、支援法は、支援対象地域について、「一定基準以上の線量」に基づき指定すると明確に規定している。ところが基本方針案は、「相当の線量」なる珍奇な概念を新に作り出し、施策ごとに地域を設定するという。これは、完全なすり替えだ。

 なぜなら、「一定」も「基準」も量に関する概念だ。1グラムとか1シーベルトとか、あるいは何グラム以上とか以下とか、いずれも量に関する概念だ。ところが「相当の」は、「何々にふさわしい」とか、「釣り合いが取れている」とかの意味であり、関係に関する概念・関係概念だ。両者は、全く似て非なるものであり、これを一緒くたにして、「法律は守っています」などとは絶対に言えないはずだ。彼らは、霞ヶ関文学を駆使することで、よりによって法律の条文まで勝手に解釈しているのだ。

 関東ホットスポットの市民は、支援対象地域に指定せよという要求を、抽象的な法の条文だけを根拠に主張してきたのではない。取手市の学校検診において子どもたちの心電図異常が明らかになった事実。市民と生協と専門家の協力で実施したエコー検査や母乳検査や尿検査や血液検査で、通常から外れた検査結果が出ている事実。そして多くの子どもや保護者たちが、3・11以降、実際に健康の異変を体験した事実などに基づいて、国による健康調査がどうしても必要だと主張してきたのだ。

 子どもたちの目に見える形での健康の異変は、すべての者に起こったわけではない。50人、100人に1人の割合かも知れないが、確実に異変は起こったのだ。放射能に対する感受性は、一人ひとりの子どもで異なるのだから、当然の話だ。目には見えないが、詳しい検査をすれば通常の状態から外れた結果を見せる子どもたちはもっと増えるかも知れない。

 だからこそ、市民は実際に、自分たちの力で、専門家の協力を得ながら子どもたちの健康調査を行い、事実の究明に努めてきた。ところが、その間、環境省や復興庁は何をやっていたか。市民の調査に匹敵するような、それを越えるようなことをやってきたと言えるか。ただ、WHOやUNSCEARなどの原子力政策推進派のバイアスがかかった報告を宣伝し、放医研の非科学的駄文を受け売りしてきただけではないか。あまりに、いい加減で、レベルが低すぎる。特に環境省は、公害などに対する規制省庁としての役割を完全に放棄し、いまではすっかり経産省や国交省並みの事業官庁に成り下がってしまった。

 こんなお粗末な前提から作文された基本方針案を閣議決定することなどは、とうてい許されることではない。関東ホットスポットの市民は、閣議決定に断固糾弾する。福島の被害者と共通の運命を持つ関東の被害者は、閣議決定後も全国の仲間との共同の活動を通して、被害者が真に必要としている支援策を勝ち取るために、闘いを継続していく。

 原発事故がもたらした福島から関東にかけての深刻な放射能汚染の中での反被ばくの市民の闘いは、原発の現場で過酷な被ばく労働を強制されている労働者にとっても無縁ではない。福島と関東の被害者、そして被ばく労働者を含めた、オール被曝者の闘いを目指さなければならない。関東ホットスポットの市民は、これからが反被ばく運動の闘いのスタートと受け止め、より強力な活動に取り組んでいく。


2013年9月6日
■原発事故子ども・被災者支援法の基本方針案に市民の怒りが燃え広がる
 市民の声を聞かぬ基本方針は撤回を! 1ミリシーベルト以上を支援対象地域に!


 8月30日に、復興庁が原発事故子ども・被災者支援法の基本方針案を発表と同時にパブコメにかけました。当初9月13日までとされていたパブコメは、市民の声に押されて9月23日まで延長されました。9月に入って1週間ばかりの短期間の集中した闘いの成果です。

 そもそも支援法は、チェルノブイリ法を目指そうとの志の下、超党派の議員立法として提案され、昨年の6月に衆参の全国会議員の賛成で成立した法律です。ご存じのように、チェルノブイリ法では、年間1ミリシーベルトを超えれば移住の権利が発生して様々な支援が与えられ、5ミリシーベルトを超えれば移住の義務が発生します。福島原発事故が引き起こした汚染地帯では、そうした施策が必要だとの認識のもとで、超党派で作られた法律なのです。

 内容的には、原発事故を引き起こした責任が国にあることを認めた上で、避難・在住・帰還の自己決定権を尊重し、そのどれを選んでも国の責任で支援を行う、住宅、就労、就学などへの支援を行う、被害者に対して国の責任で健康調査を行い医療を提供する、とりわけこどもの健康への対策を重視する、基本方針や具体的施策の実施については被災市民の声を反映させる仕組みを作る等々を謳っています。支援対象地域については、立法者の考えでは、年間1ミリシーベルト以上の地域が想定されていました。その意味で、画期的な法律でした。

 しかし、支援法を具体的に実施するための基本方針は、法成立から1年3ヶ月も棚ざらしにされ続けました。国がこの法を棚ざらしにし続けた理由は、水野参事官のツイッター暴言事件によって曝露されました。国は、被害者に配慮したこの法を快く思わず、棚ざらしの果てにお蔵入りにすることを狙っていたのです。

 8月末に復興庁が発表した支援法具体化のための基本方針案は、支援法の趣旨や条文を完全に無視したものでした。それは、支援対象地域を福島県下の浜通と中通りを中心にした33市町村に限定し、千葉・茨城・埼玉・群馬・栃木など関東ホットスポットは完全に切り捨て。福島県民に対しても20ミリまでは安全だから帰還しろ(根本復興大臣は100ミリまで大丈夫論を展開。安倍首相は、過去、現在、未来にわたって健康には全く影響無しと断言)、放射能の影響はフィジカルなものではなくメンタルなものだ、安全ではなく安心を与えるリスクコミュニケーションを重視する等々という、被ばく隠し、被災者切り捨て、不安を口にする者は心の病気扱いという、とんでもない内容でした。

 しかし、市民の声の急速な高まりを前にして、復興庁側にも動揺の気配が生じてきています。パブコメ延長はその現れです。延長を機会に、福島と東京だけに限定された説明会を、関東ホットスポットでも開催させる必要があります。

 また私たちは、市民によるパブコメは当然のこととして、自治体当局に意見書を出させる働きかけを重視してきました。こうした働きかけの結果、意見書を提出する自治体は千葉県の東葛ホットスポットの全市、そして茨城や埼玉へと広がっています。

 原発事故被害者による損害賠償請求の権利が、来年の3月から時効を迎えてしまうことも大問題です。時効の停止を求めて市民が声を上げていくこと、自治体議会への陳情や請願、自治体議会での意見書や決議案の採択も必要です。

 私たちは、改めて「反被ばく無くして反原発無し」を確認したいと思います。脱原発は、原発に替わるあれこれのエネルギー調達方法についての議論に終始するものではありません。原発の問題点は、何よりも、人と生き物をそのミクロの遺伝子レベルで徹底的に破壊する放射能被ばくを不可避とする点にこそあります。基本方針案を葬ろう!支援法を実現しよう!原発と原子兵器の息の根を止めよう!

2013年8月31日
■原発事故の拡大と消費増税論議でふらつく政府・自民党
 生活防衛の闘いとともに、行き詰まった企業中心社会を乗り越える活動を

 来年4月からの消費税増税計画は、政権の内部からも異論が出始めた。消費税増税法には、「種々の経済指標を確認し…経済状況を総合的に勘案した上で…その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」との付則が書かれており、果たして増税か可能なほどに経済が好転したか否かをめぐり支配層内部で認識の不一致が明らかになっている。

 他方で、福島第1原発における汚染水の漏出が止まらない。汚染地下水の海への流出に加えてタンクからの漏出は国際原子力事象評価尺度で「レベル3」(重大な異常事象)と評価された。原発事故は収束に向かうどころか、コントロール不能という現実にあることが改めて曝露されつつある。

 消費税増税をめぐる論議は、支配層が陥っている危機の深さを示している。
 デフレ脱却を掲げたアベノミクスは株や不動産のミニバブルを発生させ、輸入品の価格高騰を引き起こしたが、決して実体経済の活力を高めたとは言えない。こうした現状で消費税を増税すれば、再び消費の縮小、デフレの深化を生み出しかねない。

 かといって消費税増税を先延ばしにすれば、日本の借金財政への不安がさらに募って、国債の消化が不調となり、高金利をもたらし、それがますます財政危機を激化させる可能性がある。これは決して杞憂ではなく、金融経済が膨張し、それが実体経済を振り回すようになった現代の資本主義経済においてはひとつの必然事とも言える。

 消費税増税はまた、無駄と浪費の大規模な公共事業、軍事支出、巨大な官僚機構の保持、寄生的階層への懐柔策を抜きに成り立たなくなってしまった現代資本主義にとっては不可避の政策だ。

 要するに、政府・自民党・財界は、進むも地獄、退くも地獄の状態に置かれている。

 私たちは、勤労者・庶民の生活をいっそうの困難に陥れる消費増税に断固反対する。租税は、そもそもが労働力の再生産費に過ぎない賃金や生活必需品には課税すべきではなく、剰余価値の分配形態である利潤や利子や配当や地代などにこそ課されるべきである。アダム・スミス、デヴィッド・リカードゥ以来の近代の経済学を正当に継承しようとするならば、それ以外の税源論はない(「スミス博士は、常に、労働階級は国家の負担に大いに寄与することは出来ないと主張しているが、それは正当であると思う。必需品または賃金に対する租税は、それゆえに、貧民から金持ちに転嫁されるであろう」『リカードゥ全集第1巻』)。私たちは、そうした立場をさらに一貫させ、剰余価値の分配形態である利潤や地代や利子や配当などに対する強度の累進課税を要求し、低所得者ほど負担が大きくなる逆累進課税である消費税や消費税の増税に反対する。

 しかしそれは、そのことによって労働者や庶民の、多少とも長期にわたる暮らしの安定が得られるという幻想にもとづくものではない。何よりも大衆増税がもたらす生活悪化からの緊急避難のためであり、そして何よりも進退窮まった資本主義との心中を拒否して、そこから抜け出す新しい経済社会を目指す活動を押し進めていくためだ。

 原発問題も同様だ。東北・東日本一帯の大規模な放射能汚染、次々と明らかにされつつある健康被害、新たな大量の放射能漏れ等々は、原発はその存在自体がもはや許されないものであることを白日の下に晒しつつある。しかし、東電をはじめとする企業は、原発無しでは経営が破綻する。日本の産業界に君臨してきた電力資本群は、原発の再稼働を強行しないと企業として財務的に成り立ち得ず、軒並み倒産の憂き目にあい、日本の資本主義自体に激震が走ることとなる。ここでも、進むも地獄、退くも地獄の現実が口を開けている。

 私たちは、消費税増税のない安定した暮らし、原発のないクリーンエネルギーの社会を、企業の利潤が第一の経済の下で多少とも長期にわたって、安定的に実現できるかの幻想とは無縁だ。利潤が全ての企業中心社会を超えた、勤労市民が文字通りに経済社会を自主的に切り盛りしていく社会、自由で自律した諸個人の連合と協議にもとづく経済社会の仕組みづくりをめざす活動の一環として、庶民の暮らしを破壊する消費税増税反対、環境と人の健康を破壊する原発に反対する活動を進めていこう。


2013年7月9日
■日本の進路を左右する参議院選挙――九条の会・流山が定例の駅頭宣伝

<チラシを以下に転載  PDF版はこちら

いまこそ「憲法を守ろう、活かそう」の声を!
 「平和主義」「国民主権」を否定する改憲は許さない

■日本の進路を左右する参院選
 参院選挙の真っ最中です。争点の一つは、改憲は是か非かです。いま、衆院は改憲派の自民、維新、みんなの党が8割近くの議席。参院でも改憲派が3分の2以上を得れば、憲法改定は一気に現実味を帯びます。参院選は、日本の将来を左右する重要な選挙になろうとしています。

■「立憲主義」の否定 権力を縛る憲法から国民を縛る憲法に
 
憲法を選挙の争点に押し出したのは、昨年、改憲草案を公表した自民党。自民の改憲草案の特徴の一つは、「立憲主義」の否定です。そもそも近代憲法は、権力の暴走を防ぐのが目的。だから国民の側が国家に義務を課すもので、国民に義務を課すものではありません。ところが、自民の改憲草案では逆に国家権力が主体となり、国民への義務が大量に導入されています。

■「基本的人権」の否定 「公益及び公の利益」を口実に
 自民の改憲草案の二つ目の特徴は、個人の尊重の否定と基本的人権の抑圧姿勢。戦後の憲法は、すべての個人がかけがえのない存在として尊重されねばならないと高らかに謳いました。改憲草案は、家や国家を個人の上に置き、個人は再び日陰の存在に置かれようとしています。表現の自由、集会や結社の自由なども、時の権力者が「公益」とみなしたものに反しないかぎりで許されると、大きく抑制されようとしています。

■「平和主義」の否定 戦争ができる国へ
 三つ目に、「平和主義」が根本的に否定されようとしています。草案は、戦力の不保持・交戦権の否認を謳った憲法9条の2項を変えて国防軍を保持、国防軍に係る問題は軍内の「審判所」=軍事法廷で裁くとしています。米軍と軍事行動をともにする集団的自衛権の容認、海兵隊の保持、敵基地の先制攻撃論、核武装オプションの議論など結びつけば、国民の目と耳をふさいだまま、再び戦争ができる国家へと突き進んでしまいます。

■改憲のハードル下げる96条改定を許さない
 自民、維新、みんなの党は、憲法96条を変えて改憲要件を国会議員の3分の2の賛成から半分の賛成にすべきと主張。しかし改憲要件を厳しくしているのは諸外国も同じ。理由は、個人の尊重や基本的人権などが規定された憲法は、時の政治状況によって簡単に変えられてはならないとの思想によるものです。
 96条改定反対、9条改憲阻止の声を、ともにあげましょう。


2013年7月3日
発議第12号 「慰安婦発言を非難し、撤回を求める決議」についての賛成討論


 決議案に賛成の立場で討論をします。
 私自身は、橋下氏の5月13日、5月15日、5月27日の記者会見発言と、それを文書に起こしたものの全てを丹念に読みました。
 その上で、橋下氏の発言と、それを弁護・擁護しようとする発言があることに対して、強い憤りを感じるとともに、正直に言って情けない気持ちを覚えています。

 まず、橋下氏の発言をつぶさに見れば、彼の主張の核心がどこにあるかは明白です。それは、彼自身が何度も強調しているように、 “国際社会で日本だけが特殊な国家、レイプ国家だという批判を浴びているが、それは不当だ” というものです。13日の記者会見では5回、15日には4回このことを語っています。
 また、なぜそういう批判を浴びることになったのかと問うて、彼は “日本が言うべきことを言わなかったからだ” と述べています。
 問題のこうした理解自体が、極めて一面的で、幼稚なものですが、それはここでは問いません。

 大事なことは、では橋下氏が “日本として言うべきこと” をどう提起しているか、ということです。それは “当時は、日本だけでなく、他の国々も同じ事をやっていた。日本だけが特殊なのではない” というものです。14日には4回、15日には4回、このことを主張しています。
 これについてはさらに、 「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走って行くときに、そりゃ精神的に高ぶっている集団、やっぱりどこかで休息じゃないけれども、そういうことをさせてあげようと思ったら、慰安婦制度ってのは必要だと言うことは誰だって分かるわけです」 とも語っています。
 「必要だと言うことは誰にだって分かる」 という以上は、誰よりもまず橋下氏自身が必要だと理解している、そう思っているという意味以外にはとれません。
 メディアはこの部分に注目をして、大々的に報じました。ある意味で、この部分が橋下氏の意見のキモの部分ですから、メディアがここにスポットを当てたのは当然です。メディアの取り上げ方は、あながち見当外れではありません。

 よく議論されるのは、「橋下氏自身が慰安婦制度を今も必要だと考えているのかどうか」ということのようです。しかし、言葉の上でああも言っている、こうも言っている、ということが問題なのではありません。重要なことは、橋下氏の発言の文字面をなで回ることではなく、彼の主張の論理展開を、きちんと捉えることです。橋下氏のような人の発言にも、それなりの論理というものが、きちんと存在しています。その論理展開が、橋下氏自身も慰安婦制度が必要であったと考えていたことを示していることが、問題なのです。
 この点で、重要なことは、橋下氏の批判の矛先は、軍隊慰安婦制度そのものに対して向けられているのではなくて、 “日本を特殊な国家だとして非難している国際社会” に対して向けられている点です。
 慰安婦とされた女性たちに対する言葉は、 “優しい心で接してあげないと” な どという極めて皮相なものに過ぎません。

 また、在沖縄米軍による性犯罪多発に対して性風俗の利用を奨めたことは、決定的です。このことは、彼自身が、軍隊と性の問題について、かつての日本軍と同じ感覚を未だに持ち続けていることを明らかにしました。他の誰かではなく、彼自身が、極めて問題のある人権感覚、戦争と性の問題に対する反道徳的な考えを払しょくしきれていないことを、はしなくも曝露したのです。
 要するに、彼は、軍隊や戦争には慰安婦制度はつきもの、必要な制度だと確信しているのです。橋下氏はそうは言っていないなどという議論は、言葉の上っ面をなで回すだけの議論、物事の本質を洞察し、理解する能力が欠如していることを示す議論という他ありません。

 橋下氏が、この問題に対する弁解の集大成として述べた、5月27日の最も整った、綺麗な文書の中にこそ、実は彼の本音が現れています。彼がそこで、「誤解・誤報だ」と強調している点こそが、実は彼が本当に言いたかったこと、彼の本音です。そして彼が「本当に言いたかったのはこういうことだ」と言っている部分は、実は彼の本音からは一番遠い考え方、後で弁解のために考えついた言葉です。

 橋下氏は、日本特殊論が非常に気に入らないらしいのですが、彼の発言自体が、はしなくも日本特殊論を実証してしまいました。
 橋下氏が言うように、世界の軍隊は女性の性を戦争に利用しました。韓国や中国の元慰安婦の人たちは、決して日本の制度だけを批判し、自分たちの名誉の回復だけを主張しているのではありません。ボスニア紛争の中では国連の平和維持部隊までがこうした忌まわしい行為に関わっていたことが曝露されましたが、これは氷山の一角です。韓国の元慰安婦の女性たちは、今も残るこうした制度を批判し、自分たちと同じ苦しみを味わう女性を再び生み出してはならないと主張し、だからこそ自ら名乗りを上げて告発するという、勇気ある行動に立ち上がったのです。

 日本のように露骨に、軍と政府が関与する形での慰安婦制度を持っていたのは他にはナチスドイツくらいなものでした。その背景には、日本社会の後進性、女性の地位の低さ、民主主義の未発展などが存在していました。

 重要なことは、日本では、未だに、かつて軍隊慰安婦制度を作り、利用した事実を、否定しようとする政治家が、何度も何度も登場し、そうした発言を繰り返していることです。この点は、やはり日本の特殊性の表れ、その名残と言うほかありません。橋下氏と同じような発言を行っている政治家は、自ら、日本は特殊な国だ、あんなむごい仕打ちを同じ人間に対して加えておいて、未だに反省も出来ない奇妙な国だと、世界に向かって繰り返し宣言しているのです。

 私たち日本人は、自らの過ちに真正面から向き合えず、常に言い訳をし、それを合理化しようとする態度、こうした幼稚さ、ひ弱さを克服しなければなりません。そうでないと、国内でももちろんそうですが、国際社会ではなおさら、私たちを友人として迎え入れてくれる人や国はいなくなってしまうでしょう。

 橋本発言の持つ意味について考えてきました。私は、問題の本質は次のことにあると考えています。
 大事なことは、こうした発言が出てくる時代をどう考えるか、こうした反人権的で反道徳的な感情からの誘惑をどう乗り越えていくかと言うことです。
 現在の国際関係、特にアジア諸国の関係を見ると、中国や韓国の力の増大、アメリカの国力の相対的な低下等々の中で、国家間の利害の対立が激化しています。この状況に対して、多くの国が、自国のみへの過剰な愛国心を扇動して、それに寄りかかることで対応していこうとしています。

 しかし、仮に諸外国がそういう方向に向かいつつあるとしても、日本はむしろそういう道を歩まないということを明確にし、偏狭な愛国心に走る諸外国を、日本自身のそれとは異なった行動という実物教育で説得し、善隣友好の精神での外交を断固として押し進めていくべきです。そのためには、過去の過ちは率直に、潔く認めて、謝罪や補償を行う決意の表明をすることが、その第一歩です。
 以上の観点から、決議案に賛成するものです。

■「放射能被ばくに対する子ども・妊婦の甲状腺検査等専門検査の実施などを求める意見書」への賛成討論

 3・11の福島原発事故の後の、福島における小児甲状腺ガンの異常とも言える多発については、意見書の中で述べられました。ここでは、さらに、流山市を含む千葉県北西部とほぼ放射線量が等しい取手市における学校検診において、子どもの心臓疾患が急増した事実、しかもチェルノブイリ事故の後に顕著に増大した疾患と同じQT延長症候群、右脚ブロックなどが急増した事実を指摘したいと思います。この事実は、流山市の放射線量でも、露地物の野菜などを食べることが多かったり、また学校検診などにおいて1次検査を丁寧に行い、少しでも不安のある児童をきちんと2次検査に回せば、ほぼ同じ結果が出ることを予想させるに十分なものです。

 そもそも、日本の政府や自治体が依拠してきたICRP(国際放射線防護委員会)の考え方は、放射線の健康への影響はどんなに線量が低くてもその線量に応じた影響が予想されるというもので、これは直線しきい値無し(LNT)説と呼ばれています。1シーベルト、つまり1000ミリシーベルトの被曝をすれば5.5%のガン死亡者が、放射線被曝以外の原因によるガン死亡者に追加されます。年間1ミリシーベルトを100年間、つまり100ミリシーベルトを浴びれば1000人に5.5人、50年間浴びれば1000人に2.75人のガン死亡者が追加されるとしています。この考えと、ALARA原則、合理的に達成可能な限り放射線量を引き下げる必要がある、というもうひとつの考え方に立って、ICRPは年間1ミリを一般公衆の被曝限度量としています。

 もちろん、このICRPの考え方については、リスク評価が甘過ぎるとの批判が、最新の研究を踏まえた知見の側から、数多く寄せられています。ICRPのこの基準を作った人物自身が、リスク評価は少なくとも2倍に引き上げなければならないと語っているのも、周知の事実です。
 さらに言えば、この公衆の被曝限度量は年間1ミリシーベルトという考え方は、全ての世代を平均したもので、子どもの場合にはその数倍のリスクを考えなければならないというものです。

 では、意見書が取り上げている茨城・千葉北西部・埼玉南東部の放射線量の実態はどうか。事故初年度に文部科学省が行った調査では、地上1bで年間1.8ミリシーベルトから4.5ミリシーベルトという線量です。ICRPが言う年間1ミリの被曝限度量の2倍弱から5階弱です。また、土壌汚染については、6万から10万ベクレル/uであり、これは放射線管理区域である4万ベクレル/uの1.5倍から2.5倍です。この現実を前にして、流山市内の放射線量が市民の健康に影響を及ぼすことはないなど断言することは、正気の沙汰ではないと言わなければなりません。

 なぜ、多くの自治体は、この現実を、正面からしっかりと見据えようとしないのでしょうか。厳しい現実から目を背けたい。耳に痛い忠告は聞きたくない。幸いに、国は自らが称揚してきたICRPの考え方からも大きく逸れて、いまでは50ミリでも100ミリでも安全だと言い始めている。国のこの宣伝にすがろう、乗っかろう。見ざる聞かざるを決め込もう。
 もし、こういう姿勢に流れようとしているのだとすれば、それは「原発安全神話」に流されてしまったときと、まったく同じあやまちを繰り返すことに他なりません。人々の、そして子どもたちの健康や命よりも、目先の経済的な利害や政治的な利害を優先するという、あってはならないあやまちを繰り返そうとしているのだと言わなければなりません。

 そうした愚を犯さないために、そして子どもや孫たちの健康と命を「放射能安全神話」に売り渡してしまわないために、この意見書を全議員一致で採択することを呼びかけて、私の討論を終わります。

■陳情第4号 「老朽化した公立学校の調査と対策に関する陳情書」への賛成討論

 採択すべきとの立場から討論を行います。
 おおたかの森駅近くの小中併設校建設計画が打ち出されたことにより、既設校の教育環境の整備の課題が浮かび上がっています。とりわけ耐震対策というに留まらない安全・安心面の対策、情報化の進展や自然環境への配慮など時代の新しいニーズに合った教育環境の質的向上、地域コミュニティとの連携や調和などの課題が重要となっています。

 文部科学省は、すでに耐震対策の後の、あるいはそれと並行しての、学校施設の抱える問題点に注目して、2012年8月に「学校施設整備のあり方に関する調査研究協力会議」から、「学校施設老朽化対策ビジョン」の中間取りまとめを発表し、本年3月には「学校設備の老朽化対策について」を公表しています。

 その中では、とりわけ学校施設の老朽化が大きな問題となっており、自治体当局へのアンケートによっても2011年で安全面での不具合が約1万4千件、機能面での不具合が約3万件、環境面でも省エネ化などの課題があり、また財政面でもこのまま十分な対策が講じられなければ、対策を講じた場合に比べてその負担が大幅に増大することが指摘されています。

 また、施策の方向性として、計画的整備、長寿命化、重点化などの方向が示され、それぞれに対して国の支援の必要も語られています。

 流山市も、併設校建設計画への市の財政や教育資源の一点豪華主義的投入を軌道修正し、既設校の老朽化対策に向けた調査、計画策定、計画実施の準備を整えていくべきとの立場から、陳情第4号に賛成します。

■陳情第5号 「小中併設校建設について、十分な説明会を求める陳情書」への賛成討論

 採択すべきとの立場から討論を行います。
 流山市当局が打ち出している小中併設校計画は、市民や議会の疑問に十分に答えないままに進められている言わざるを得ません。

 第1に、現時点での事業費の想定額が137億円、流山市の年間予算総額の3分の1に及びます。この計画のために2013年度予算は前年度の13%増、市債も前年度の2倍超となり、2013年度末の市債残高は434億円となるなど、今後の流山市の財政運営にも大きな影響を及ぼします。しかも、想定額137億円というのは、あくまでも現時点での試算であり、今後の経済状況によってはさらに上積みされていく可能性さえあります。市民の声としても、また議会における議論としても、事業費をもっと低減できるのではないか、そのための努力を真剣に行ったのかとの問いが、強く発せられているところです。

 第2に、こうした巨額の事業費によって建設される新設校と、既設の学校との間の教育環境に大きな格差が生じるのではないかとの指摘もあります。何よりも、既設の小学校15校、中学校8校の中には、老朽化が進み、施設の補修や改修が必要となっている学校が多数あるにもかかわらず、その手当を十分に行わないまま、そのための計画がきちんと示されないまま、超豪華な校舎が一点豪華主義的に建設されようとしていることに、大きな疑問の声が寄せられています。これは、文部科学省が打ち出している「学校施設老朽化対策ビジョン」との整合性も問われる問題ではないかと考えます。

 こうした問題点が浮かび上がっている以上、その事業計画は、さらに多くの市民に知らされ、説明され、納得を得なければなりません。とりわけ、学校教育施策に関わる問題であり、市内の全学校区の子どもと保護者の利害に関わる問題である以上、全小中学校での説明会の開催を求める声は当然のことと思います。そうした丁寧な説明作業をくぐる中で、計画の修正が求められることもあるかも知れません。その可能性の検討も含めて、市民への丁寧な説明、市民の納得が不可欠です。
 そのような対応を通して、現状のような市長とUR都市機構のための学校建設から、市民のための学校建設へと、方針転換がなされる必要があります。
 以上の理由から、陳情第5号の採択に賛成致します。


2013年6月7日
千葉・茨城・埼玉の市民(放射能からこどもを守ろう関東ネット)が国会行動
  第6回省庁交渉、請願署名提出、記者会見を行う
  
NHKニュース

●6・7行動の概要
                
1.省庁交渉 (復興庁・環境省)について

 日時 6月7日 午前10時30分〜12時
 場所 衆議院・第1議員会館・国際会議室

【交渉目的・経緯】
昨年6月に議員立法で成立した原発事故子ども・被災者支援法に基づき、関東の被ばく地帯を対象に含め、子どもの継続的な健康調査を求める。昨年10月より交渉開始。本日は6回目の交渉

【要請事項】
国の振りまく安全・安心論にもかかわらず、放射能の健康への影響は「科学的に不明」ということがますます明白になっていることの再確認しつつ、追加被曝線量1ミリシーベルト以上・重点調査地域での健康調査などをや文科大臣の国会答弁にもとづく学校検診での放射能検査を要請する

2.「放射能被ばくから子どもを守るための対策を求める請願書」について

 原発事故子ども・被災者支援法が成立して1年。いまだ基本方針も定まらない状況下、法の目的に沿って関東の被ばく地域に対する対策を求めて国会に請願するもの

【請願先】
 衆議院、参議院の両院

【請願内容】
@ 茨城県、千葉県北西部、埼玉県南東部の子どもや妊婦の健康管理調査等を定期的に継続して実施すること
A 検査結果は所見を含むすべてのデータを受検者または保護者へ渡し、結果について十分な説明を行うこと。
B「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針策定においては、茨城、千葉北西部、埼玉南東部において空間線量が2011年度1mSv/yを超えた地域を対象地域に含めること。

【請願署名】
「放射能から子どもを守ろう関東ネット」で2013年3月より署名活動を開始。ネットワークの地元駅頭での街頭署名呼びかけ、町内会、幼稚園、ネットワークや各団体のブログ、facebookやtwitterなどでも呼びかけ

【署名数】
 衆議院 36,815筆   参議院 36,665筆
   
【提出方法】
 紹介議員をたてての依頼。紹介議員を通じて提出

【紹介議員】
「支援法議連」加盟の議員、ネットワークの地元議員を中心に、衆・参両議院の全会派の議員に依頼交渉をした。
 紹介議員   20 名(衆議員議員 9名、参議院議員 11名)
 政権与党としては、公明党の参議院議員の加藤修一氏,、自民党の衆議院議員渡辺 博道氏。

<参議院>
社民   福島 吉田
民主   田城 岡崎 長浜
みどり  谷岡 平山
公明   加藤修一
みんな  川田  寺田
改革   荒井
共産   大門

<衆議院>
生活   小宮山
維新   小熊 村岡 椎木
みんな  柿澤
共産   高橋
自民   渡辺
民主   田嶋


2013年5月15日
■安倍政権による労働法制の規制緩和に反撃を!
 非正規拡大、無給の長時間労働押しつけ、首切り自由を許すな!

 安倍政権が打ち出した大規模な金融緩和、野放図な財政出動が、金融や不動産、一部の輸出依存企業に空景気をもたらしている。そしてそれが実体経済の活性化を意味するものでないことが分かっているだけに、安倍政権は第3の矢=産業競争力強化を叫ばざるを得ない。

 しかし、この競争力強化の中身たるや、決して実際の経済活力の増大をもたらすものにはなりえない。安倍政権の第3の矢の正体は、労働法制のいっそうの規制緩和、つまり低賃金と不安定な身分に置かれた非正規雇用の拡大、長時間労働の押しつけと残業代の不払い、解雇の自由化などを今以上に強力に推し進め、労働者の境遇をさらに悪化させようとするもの以外ではないからだ。

 まずは、職務や勤務地や労働時間などを限定した「正社員」の創出。これは、工場やオフィスの移転、頻繁な事業転換が当たり前となっている現代の企業にあっては、企業の都合次第で首切り自由な労働者、「名ばかり正社員」を生み出すものであることは明らかだ。その上さらに、前政権下で欺瞞的な「規制強化」が演じられたばかりの有期雇用や派遣労働について、再規制緩和が行われようとしている。

 さらに、ホワイトカラーエグゼンプションの復活も狙っている。事務系や研究開発系の労働者を労働時間規制の枠外に追いやり、それを手始めにして残業代の出ない労働者群を作り出そうというのだ。

 そして、極めつきは、解雇の金銭解決の導入。不当な解雇についても、なにがしかの金銭的見返りを代償に合法化しようという試みだ。一時の雀の涙金で、労働者にとっては命に等しい雇用の場さえ奪おうというとんでもない目論見だ。

 こうした労働法制の規制緩和が一体何をもたらすかを、労働者は小泉政権と第1次安倍政権の時代に体験させられた。一方での格差と貧困の拡大、大量の路上生活者の登場。他方での空前の利益に酔い、多額の内部留保を抱えてほくそ笑む企業、そしてにわか成金や富裕者の登場。

 いま再び、同じ政策が、かつて以上に露骨に、容赦なく押し進められようとしている。労働者を徹底的に無権利化し、長時間・過密労働を低賃金で押しつけ、その上にいつでも解雇可能な存在におとしめようとする安倍政権の策動を、労働者は許さない。

 労働者は、悩みを相談し合い、助け合い、組織をつくらなければならない。大企業と政府による労働者の奴隷化の策動に対する反撃を、働く現場から、路上から、地域から、ともにつくりだしていこう!
月10日に




2013年5月10日
「原発事故子ども・被災者支援法」で社民党千葉県連合が千葉県当局に要請
 
<千葉県への要請文書>

 5月10日に、社民党千葉県連合は、千葉県当局に対して「原発事故 子ども・被災者支援法」に関する要請を行いました。
 以下、県当局との話し合いの内容の概要をご報告します。

社民党側の参加者は、小宮清子県議、阿部治正市議(流山)、二階堂剛市議(松戸)、小倉良夫市議(野田)、勝亦竜大市議(市川)、早川真市議(我孫子)、宮国かつあき市議(市原)の7名。
県職員は、防災危機管理部 防災政策課の副参事、同じく防災政策課の復興班長の他3名。

約1時間話し合いましたが、主なやり取りは、以下の通りです。

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社民党:千葉県として国に対して、地域指定と健康調査を要求すべきではないか。

県当局:県は、国が基本方針を出すのを待っている。その後で要請をする。

社民党:支援法の内容を知らないのか。支援法は、地域住民の声を聞いて基本方針や具体的な施策を策定すると謳っている。千葉県は、県民の声を集約する公的な機関なのだから、自らの要望を国に述べることが出来るし、しなければならない。基本方針が書かれてからでは遅すぎる。

県当局:意見は平行線。

社民党:この議論は平行線にさえなっていない。あなたたちが法の趣旨を理解できていないのであり、でなければわざと議論のすれ違いを生み出そうとしているのだ。

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県当局:地域指定は、国が、専門的科学的知見を参考にして決めること。県が意見を言いう問題ではない。

社民党:これもまた、支援法の趣旨をまったく理解していない発言。支援法は、専門家の意見だけを頼りに基本方針を書き、施策を決めるという考え方では作られていない。住民の声、従って自治体の声も聞きながら、基本方針を策定するというのが、支援法の他の法律とは異なる大きな特徴。しかも、放射能能健康への影響については科学的には未解明な点があるからこそ、予防原則の立場に立って、特に子どもの健康を守る取り組みを行う必要があると支援法は言っている。立法者の考えは、支援対象地域は、年間20ミリ以下で、そして限りなく1ミリに近い地域を指定する必要があるというものだ。

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社民党:すでに9市(流山、松戸、柏、我孫子、野田、鎌ケ谷、印西、白井、佐倉)は要請を行っている。茨城県下の全自治体、自治体議会、県市長会も要請を行っている。茨城県・岩手県・宮城県は、2011年12月にすでに健康調査と財政措置を国に要求している。なぜ千葉県は要請しないのか。国は、千葉県が要請しないから地域指定は考えることが難しいと言っている。

県当局:復興庁に確認したら、県が要請していないことが地域指定をしない理由だとは言った覚えはない、との返答だった。

社民党:国に問い合わせをすればそう答えるのは当たり前。しかし、他党の国会議員や自治体議員に対して明確にそう答え、また「放射能から子どもを守ろう関東ネット」と国との交渉の中で事実上、復興庁はそう繰り返している。いずれにせよ、千葉県が国に要請をしていないことは事実だ。重要な問題は、県が国に対して何も要請していないということだ。

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県当局:例え県が国に要請しなくても、それで地域指定がなされないということにはならない。市町村が要請するだけでも、国は耳を傾けるはず。

社民党:そんなことは分かっている。支援法は、基礎自治体である市町村の意見を聞くことを基本においている。しかしこのことは、だから県が国に対して何も言わなくても良いという理由にはならない。基礎自治体も要望し、それに加えて県が国に要請すれば、より大きな力になるのは誰にでも分かること。それなのに千葉県があえて動こうとしないのは、9市が地域指定を受けることを妨げようとしているようにも見える。このままではそうなってしまうが、それでよいのか。

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県当局:千葉県は9市だけで成り立っているわけではない。他の自治体の立場もある。

社民党:他の自治体の立場が、なぜ9市(及び1ミリシーベルト以上の地域)の声を県が国に届けることの妨げになるのか。9市も無視することが出来ない、9市以外も地域指定する必要があると考えていると言う意味なら、県から9市以外の自治体の意向を聞き、名乗りを上げるよう促せば良い。うちは線量も高くないので地域指定してもらわなくても良いという自治体については、無理に含める必要はない。9市以外の事情を持ち出して、9市の地域指定を拒もうとする県の主張は、論理的にも、現実的にも、根拠がない。

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社民党:9市をはじめとする千葉県北西部の放射線量は、毎時何マイクロシーベルトか知っているか。

県当局:(明確に応えられず)

社民党:文科省の調査でも、地上1メートルで0.2〜0.5マイクロ毎時。

社民党:同じく、土壌汚染のレベルはどれくらいか知っているか。

県当局:(明確に応えられず)

社民党:文科省の調査でも、6万〜10万ベクレル/uで、放射線管理区域(4万ベクレル)の1.5倍〜2.5倍。

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社民党:郡山の集団疎開裁判の仮処分申請に対する仙台高裁の決定を知っているか。年間1ミリシーベルト以上の地域では、子どもに対して生命・身体・健康に対するゆゆしき事態が進行している、と論じている。9市は、まさに1ミリを超えて、ゆゆしき事態が進行している地域ではないのか。

県当局:仙台高裁の決定は新聞を読んで知っている。

社民党:県の担当部局なのだから、新聞記事を読むだけというのは怠慢すぎる。高裁の決定文くらいはきちんと読むべきではないか。

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その他にも、色々な論点で議論をしましたが、ぬかに釘、状態でした。
しかしながら、こうした働きかけにも、十分に意味はあると考えています。
他の政党も、ぜひ同じように県への要請行動を行って頂きたいと思います。
力を合わせて、子どもと妊婦の健康を守るために、頑張りましょう。

2013年4月15日
「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく健康調査を求めて
  関東ホットスポットの市民が5度目の省庁交渉


 <準備中>

2013年3月26日
「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく健康調査を求めて
  関東ホットスポットの市民が4度目の省庁交渉

 
<省庁への要請文書>

 原発事故子ども・被災者支援法は、昨年6月に超党派、全国会議員の賛成で成立した法律。日本のチェルノブイリ法をめざした法律で、内容は画期 的。発議者である国会議員の意図としては被災者の範囲を年間放射線量1ミリシーベルト以上の地域に住む者(住んだ者も含む)と想定。留まる、 避難する、帰還するなど被災者の自己決定権を尊重し、いずれを選んでも国の責任で住居、就業、就学、医療等々を保証する内容となっている。医 療支援については、これまでの様々な公害被害の教訓を踏まえ、放射線に起因する疾病でないことを国の側が立証しなければならないこととなって おり、とりわけ子どもの健康を予防原則の立場から重視している。
 しかしこの法律は、いわゆる理念法の性格を持っており、法を実行に移すための基本方針や計画は法の制定後に国が被災住民の意見を聞きながら 策定することとされている。そのことから、法の成立からすでに10ヶ月が経とうしている中で、住民の意見を反映させる仕組みづくりとその下で の基本方針の策定が強く求められていた。
               ◆  ◆  ◆
 ところが、3月15日に主管官庁である復興庁が支援法に基づく「施策パッケージ」を発表し、基本方針に書かれるべきことをほとんど盛り込ん だものだと説明した。
 その内容は、支援法の理念や発議者の意図とは大きく隔たったものであり、発議者である議員連盟に所属する議員たちや被災地の市民から大きな 批判が起こった。
 復興庁発表のパッケージは、被災者の支援どころか、福島県県民に対しては福島に留まり、避難した人々に対しても帰還を促すものであった。ま た福島県以外の茨城、千葉、埼玉、群馬、栃木など放射能で高レベルに汚染された地域の問題は一顧だにしていない。福島原発事故とは直接の関連 があるとは思われない青森や長崎などの県名があげられたが、それも福島県の健康被害は取るに足らないと見せかけるための資料として持ち出され たに過ぎなかった。
               ◆  ◆  ◆
 こうした中、茨城、千葉、埼玉三県の市民が組織する「放射能からこどもを守ろう関東ネット」は、4回目の省庁交渉を行った。
 過去3回の交渉は主管官庁である復興庁、環境省、文科省、厚労省、規制庁の5省庁が参加したが、今回は国会の真っ最中と言うこともあり、復 興庁と環境省の2省庁が出席した。
 市民の側からの交渉の主目的は、第1に、パッケージは支援法の趣旨を完全に無視しており、これを基本方針に横滑りさせることは許されないこ と。第2に、茨城、千葉、埼玉三県の汚染地域を支援対象地域に指定し、この地域の子どもと妊婦の健康調査を実施すること、であった。

●「政策パッケージ」についてのやり取り
 復興庁の水野参事官は、パッケージはあくまでも現時点での施策の集成であって、法的位置づけとしても基本方針に成り代わることは出来ないと 答弁。
 市民が、根本匠環境大臣の記者会見発言(支援法で必要とされる施策はほぼ盛り込んだ云々)との矛盾を指摘すると、曖昧な言い訳に後退。パッ ケージではあるけれども、基本方針に盛られるべきことをかなり盛り込んでいる云々と言い始めた。
 復興庁の本音がパッケージを基本方針に横滑りさせることにあるのは子どもでも分かることで、市民はそれらが明確に違ったものであると確認さ せるため念押しの追及を何度も行った。
 結果としては、パッケージは基本方針とは異なる、パッケージ自体今後の拡充も想定されている、という確認でこの部分の交渉は終えた。
 当たり前の確認ではあるけれども、パッケージを基本方針に横滑りさせないための、一定の圧力にはなり得ただろう。
 また、パッケージの拡充、基本方針の策定に際しては、パブコメや意見聴取会を実施することも、確認させた。
               ◆  ◆  ◆
●地域指定と健康調査についてのやり取り
 まず、「地域指定」については、市民は、法の発議者の意図、国会審議の中身、一般公衆の年間被爆限度量についての考え方の国際的な整理に則っても、1ミリシーベルト以上であるべきと主張。またパッケージでは福島以外の地域がまったく触れられていない点を批判するとともに、その理 由をただした。
 これに対し当局は、各方面の意見、専門家の意見などを聞きながら、必要な対象に必要な施策を行う等々の、曖昧な答弁を繰り返した。
 これは予想されたことであったが、逆に言えばこの点が、やはり政府の側にとって一番難しい問題、基本方針策定の最大ネックになっていること が改めて明らかとなった。市民の側から、放射線対策特措法で地域指定されたところは子ども・被災者支援法でも地域指定されるのが自然だし当然だとも主張した。
 水野参事官は、放射線対策特措法と支援法では法の趣旨や守備範囲が違うなどと当たり前のことを述べて回答したつもりになっていたが、市民は 、私たちが言っているのはそういうことではなく、まずは公衆の被曝基準1ミリシーベルトを明白に超えている、復興庁や規制庁が神経質になって いる(ふりをしている)「線引きによる分断、風評被害等々の弊害」も心配しなくて良い、自治体も住民も特措法指定地域を支援法の指定地域とすることを積極的に受け入れ、要求さえしている、従ってこの地域については国の側もほとんど悩み無く指定地域が出来るはずだと主張した。
 これに対しては、明確な返答はなし。いつものごとく、「多方面の、専門家などの意見を聞いた上で…」というフレーズを繰り返すのみであった 。
 次に健康調査について。
 この点でも市民は、ICRPでさえ年間1ミリを公衆被曝基準としている、ベラルーシ・ウクライナの施策でもやはり1ミリ基準で避難の権利や 健康調査が認められ、ECRRなどの見解はさらに厳しく警戒的である等々を指摘しつつ、関東ホットスポットで健康調査がなされないことはあり えないし、許されないことと主張した。
 これに対し当局は、ECRRなどの見解は国際的な科学的なコンセンサスは得られていないという趣旨の答弁。
 また福島の甲状腺ガン等々についても、放射線の影響かどうかは明らかでない等々と主張して、だから福島以外の地域はなおさら健康調査の必要 は考えられない云々と答弁。また「有識者会議」などの意見を聞く限り、福島以外での健康調査は必要なしと考えるとも答えた。
 しかしこの「有識者会議」は茨城・千葉・埼玉とは何の関係もない会議あったので、これに対しては、私たちの地域の話をしよう、また放射線の健康への影響はガンだけではなく多種様々な疾病が明らかになっていることを踏まえた話しをということで一蹴。
               ◆  ◆  ◆
 市民は、関東ホットスポットにおいてもどうしても健康調査が欠かせないことを示す象徴的な問題として、取手市の学校検診データ問題をぶつけ た。福島原発事故の後の取手市の子どもたちに、チェルノブイリ事故の後ウクライナやベラルーシで急増したOT延長症候群や右脚ブロックという心臓疾患が同じく急増していることを明確に示したデータである。
 これについても、福島の子どものセシウム被曝、それについての「専門家」の意見なるものから取手の子どもたちのへの影響の強引に推定し、セシウムの線量と心臓疾患の比例関係は見られない等々の曖昧な話しであったので、「取手問題とは関係無し」として一蹴。そんな不確かな間接的推定ではなく、直接にこの地域の子どもたちの心電図検査を行って欲しい、学校検診のデータがすでにあるのだから難しくはないはず、前の交渉でも「検討する」と答えた問題なので必ずやるべき、進捗状況をこの間の交渉の窓口となっている福島みずほ事務所に定期的に報告するようにと、これは譲れない部分であったので厳しく追求した。
 当初、不明瞭な答弁を繰り返していたが、最後には環境省の役人が「がんばります」と答えるに至った。4回の交渉で初めての「前向き」な答弁であった。
 健康調査については、国や自治体がすでに実施している子どもたちへの各種の数段階にわたる健診事業、これに放射能関係の健診を加えることは容易で、予算も大くはかからないはずであることも再度要求した。
 これらの幼児健診や学校検診は、市民が要求している健康調査とは範囲や性格の異なるものだが、その入り口として、あるいはその一部として、位置づけ可能な事業だ。この点を一つの突破口にしながら、市民が本来求めている健康調査事業を国に実施させるべくさらに国に迫っていくこと、近く5回目の省庁交渉を行うことを確認して、この日の行動を終えた。


2013年3月20日
2013年度一般会計予算に対する反対討論

「2013年度一般会計予算」に対して、反対の立場から討論をします。

 問題としなければならない項目は多数ありますが、この討論では、25年度予算を象徴すると思われる問題点のうち、3点に絞って指摘をします。

 第1点目は、放射能汚染対策です。放射能汚染対策は、24年度の当初予算の14億円から8億700万円へと予算額も減りました。除染の結果放射線量は下がった。放射能汚染対策は、そろそろ終了、幕引きというニュアンスの発言も聞かれます。
 しかし除染が行われたのは、広い流山市内のごく一部、学校、幼稚園や保育園、公園などにとどまっており、汚染されてしまった流山市の面積35キロ平方メートルのうちのほんの一部分に過ぎません。
 また、すでに除染が行われた地点も、何ヶ月か、あるいは1年も経つと再度線量が上昇するという現象も確認されています。お隣の松戸市においては、除染を済ませた公園の1割で、数ヶ月後には放射線量が再上昇していたことが明らかになり、新聞やテレビでも報道されましたが、流山市も同様です。除染活動はこれで終わりというわけにはいきません。
 
 民地・住宅の除染も、25年度からは転入者のみと、足きりがなされようとしていますが、以前からの居住者に民地除染の事業が周知されているとは言えない状況です。これもお隣の話しですが、松戸市は国に対して民地の除染について1年延長するよう求めました。これは、松戸市における、民地除染への積極的な取り組みの姿勢中から出てきた要求です。つまり民地・住宅の除染を丁寧に実施しようとすれば、まだまだ不十分な取り組みでしかないことが、自ずと明らかになると言うことです。流山市も同じ状況の中に置かれているはずです。流山市においても、民地の除染はまだ緒についたばかりというのが実際の姿です。
  
 山林や農地の除染も、予算委員会の質疑の中で明らかになりましたが、農地の深耕という限界のある手法、野菜が含む放射能の値で農地の汚染度をはかるなどという科学的とは言えない方法に依拠しているのが実状です。流山市を広くおおっている農地や山林の除染が進まない限り、学校、幼稚園・保育園、公園、住宅地などの放射線量の効果的な低減につながらないことは、容易に想像が出来ることです。
 
 また、放射能汚染対策の分野で、まだまったく手つかずの領域が残されています。放射能で汚染された物質を、呼吸や食べ物などを通して長期間にわたって取り込むことによる、いわゆる内部被曝が健康に及ぼす影響への対策です。
 この分野では、除染や食品の検査を通して放射性物質を出来るだけ身体の中に取り込まない対策が重要ですが、それでも体内に入ってくる放射性物質の影響を早期に見つけ出すための、健康診断や健康調査が重要です。特に、放射能に対する感受性が高い子どもたちの健康調査が切実に求められています。
 取手市の学校検診データが示したように、この問題を軽視することは非常に危険です。当初予算の中には盛り込まれていませんが、国に対して強く要望することと並行して、流山市としての独自の事業が強く求められています。
 
 2点目は、流山市の外部委託のあり方です。
 昨年はクリーンセンターの運転管理の委託が、「安上がり委託」追求の結果として焼却場の事故と業者の撤退という問題を生み出し、この問題は、流山市が被った5千万円の損害の回収の見通しが立たなくなるという形で、いまも引きづっています。
 
 当局は焼却場の運転管理の入札については「総合評価」に切り替えるなどの対応を行いましたが、問題の根本である「安上がり委託の追求」「行政サービスの質は二の次」という姿勢については改めようとしていません。
 
 それを象徴するのが、他にももちろん具体例はたくさんありますが、例えば森の図書館の株式会社すばるへの委託です。NPO法人栞への委託から500万円の減額となっています。
 司書の賃金が時給800円、昼間の職員は7人、夜は3名というすばるの体制で、メンバーが30人を超えていたNPO栞の代わりを務めることが果たして出来るのか、図書館サービスの質は維持できるのか、大きな不安が生じるのは避けられません。
 
 もともと、市の直営から栞への指定管理への移行自体が、安上がり委託の追求の一環でしたが、すばるへの委託によって更にそれが強化されたと見なさざるを得ません。
 
 3点目は、おおたかの森駅近くに建設が計画されている小中一貫併設校の抱える問題点です。25年度予算では、総額で120億円という併設校建設に向けての入り口となる予算額が計上されています。
 
 当局は、「併設校と既設校との間に教育の格差を生み出すことはない」と主張していますが、この主張は成り立ちません。
 そもそもこの計画は、おおたかの森駅の近くに、人目を惹く、豪華な校舎を立てることで、それを目玉にして、セールスポイントにして、いわゆるデュークスを呼び込みたいという狙いから出た施策です。その意味では、意識的な格差の設定、差別化戦略に基づく施策であることは、明白です。

 市内の子供たちが小学校に上がった最初の年に、併設校に通う子どもと設備の補修や改修も不十分な既設校に通う子供の間に、こうした格差を生じさせるのは極めて非教育的な施策だと言わざるを得ません。

 この格差に対する対策は、予算委員会の中でも様々に議論をされました。これまではほとんど顧みられることがなかった色々な事業が、当局の側からほのめかされ、提示されました。
 既設校の改善が図られること自体は悪いことではありません。しかし、こうした発言が後付けで出てくること自体、併設校建設の問題点、この計画の危うさを物語っており、賛成することは出来ません。
 
 以上のような立場から、25年度予算に対する反対の意思を表明して、討論を終わります。

2013年1月30日
■富める者を更に富ませ、貧しき者を更に貧しく
 大企業と富者の守り手=安倍自民党政権


 安倍自民党政権は、当面は経済政策を中心に「安全運転」を心がけ、7月参院選で多数を得た後に右翼政権としての本領発揮すると見られている。
 しかしこれまでの「三つの矢」の経済政策だけをとっても、十分にこの政権の本質は明らかとなっている。日銀の独立性の建前さえ認めぬ「大胆な金融政策」=インフレ政策のごり押し、「機動的な財政政策」の名による公共事業の大盤振る舞いの一方での生活保護縮小、そして「成長戦略」と称しての企業減税や規制緩和等々。バラマキ政策のつけは消費税増税で賄うことが予定されており、成長戦略の柱として原発海外輸出さえが目論まれている。これらの政策がもたらすのは、大企業と富者へのいっそうの富の集中、そして労働者や庶民のなけなしのフトコロからの更なる収奪、セーフティネットの縮小だ。
 重要なことは、安倍政権が何故こうした政策を打ち出すのか、その背景を明らかにすることだ。
 今日の大企業は、かつてと違いモノ作りから離れたマネーゲームでしか儲けをあげられなくなっている。モノと富を実際に生み出す生産活動から離れ、一欠片の新たな富も生まないにもかわからず、儲けをあげられるかに見えるマネーゲーム。それは諸外国からの富の収奪、国内の中間層の富を金融システムを駆使して巻き上げ、それでも飽き足らずに貧者からもなけなしの金を搾り取るやり方(米国で失敗したサブプライムローンが典型)だ。その結果、バブルが生み出されたり、はじけたりし、その都度中間層はやせ細り、貧者はいっそう零落する。
 マネーゲームは生産活動と切り離された致富活動であり、作ったモノが売れるかどうかにはとりあえずは関心は無い。車やテレビや冷蔵庫の購入者が減っていっても、とりあえずは儲けをあげられる。
車やテレビだけならまだしも、働く人々に日々の生活の糧を買うための賃金を保障しようという動機さえ欠けたしまったのが、現在の資本主義だ。
 一方で、「まだやれる」とモノ作りにしがみつく企業も、市場の飽和によって以前のような儲けが得られなくなったため、労働者への安上がり使い捨ての徹底化で何とか儲けを得ようとする。規制緩和と称して、これまで国や自治体が行ってきた公共サービスにも食指を伸ばしているが、もともと利益の上がらないこの分野では、労働者への搾取はいっそう苛烈を極めざるを得ない。
 こうした動き相まって、労働者の非正規化が拡大され、格差と貧困を広げてきた。産業革命期の貧困は、資本主義が発展すれば労働者の闘いによる譲歩の強制もあって、少しずつ改善される可能性を持っていた。しかし、今日の貧困は、今のままの経済の仕組みが続く限り、改善されるどころかますます悪化し続けるタチの貧困だ。
 安倍政権による通貨膨張、公共事業バラマキ、規制緩和政策の効果は、小さく見積もってもバブル景気の発生と破裂、悪くすれば悪政のインフレさえ発生させかねない。
 労働者の犠牲による企業と富者への奉仕、それを徹底するために誕生した安倍自民党政権に対して、労働と生活のあらゆる現場から準備していかなければならない。反貧困=労働者への搾取と収奪の強化との闘いこそ、安倍自民党政権との対決の基軸に据えられなければならない。

2013年1月16日(水)
「原発事故 子ども・被災者支援法」の地域指定などを求め第三弾の省庁交渉

 「原発事故 子ども・被災者支援法」の地域指定と健康調査を求める市民の行動の一環として、3度目の中央省庁交渉が行われました。
 この間の省庁交渉の結果、国側においても、茨城県北部での健康調査の必要性に言及し始める、放射線障害はガンだけではなく免疫不全に発する様々な疾病の可能性を認める、学校健診の利用の可能性を検討する、エコチル調査についても放射能障害を含めることが可能かどうかを検討する等々の、これまでには無かった反応が見え始めています。
 以下は、1月16日の交渉で省庁に手渡した要望書です。

「原発事故 子ども・被災者支援法」の支援対象地域に茨城・千葉・埼玉のホットスポット地域を含めることの要望と、これまでの話し合いを踏まえての質問

 昨年6月に「原発事故 子ども・被災者支援法」が議員立法として全会一致で成立しました。
 この法は、原子力発電所の事故を発生させた責任が国にあることを明確に認めた上で、以下のことを謳っています。
・原発事故による放射線被曝の状況を明らかにするために、被曝放射線量の推計や評価を国の責任において行う。
・支援対象地域に住む者も、自主避難を選んだ者も、避難先から帰還した者も、適切な支援が受けられるようにする。
・事故当時、支援対象地域に住んでいた、あるいはいまも住んでいる子どもや妊婦(胎児を含む)の医療費については減免を行う。
・健康被害が生じた際の立証責任は被害者ではなく国に存する。
・事故当時、胎児及び子どもだった被害者は、一生涯にわたって健康診断、あるいは医療費の減免を受けられる。
・施策の適正な実施のために、施策の具体的内容に被災者の意見を反映し、施策を定める
 過程を透明性の高いものにするための措置を講じる。

 この法の成立は、福島をはじめとする東北の人々だけでなく、北関東に住む私たちにとっても大きな朗報でした。というのは、私たちが住む茨城県、千葉県、埼玉県にも、放射能汚染ホットスポットと呼ばれる地域が出現し、放射能汚染への対処を余儀なくされてきたからです。

 北関東のホットスポットに住む私たちは、事故の直後から大きな不安に直面せざるを得ませんでした。線量計を持っている市民は自ら測定をして、極めて高い放射線量であることを知り、同じ不安を抱いている市民に声を掛け合って、それぞれの自治体に放射線量の測定体制の確立や除染の必要などを訴えてきました。その成果もあって、多くの自治体で給食食材や農産物の測定、学校や幼稚園・保育園・公園などの除染、民地・民家の一部除染などが実施されることになりました。

 しかし、自治体の取り組みにはバラツキがあり、除染活動と言っても汚染された広範囲な地域の中のほんの一部のエリアにとどまっており、何よりも放射線の影響から子どもや妊婦の健康を守るための施策はほとんど手つかずのままに放置されています。

 関東地方のホットスポットに住む市民と自治体にとって大きな障害となっているのは、国の支援の不在です。市民はいま子どもの健康診断に自主的に取り組んでいますが、自費による受診のために大きな経済的負担を引き受けざるを得ません。自治体も厳しい財政をやりくりしながらの施策を講じており、市民の要求に十分に応えることが出来ません。自費による受診で甲状腺のしこりや嚢胞が見つかる子どもが多数現れ、学校検診のデータでは心臓に異常が発見された子どもたちが急増していますが、国からの承認を得られず、組織的な健康診断・健康調査の取り組みになっておりません。

「原発事故子ども・被災者支援法」は、日本のチェルノブイリ法とも呼ばれています。その理由は、冒頭に述べたこの法の画期的な内容を評価してのものですが、何よりもこの法が、国による現行の避難指示区域(年間追加被曝量20ミリシーベルト以上)では不十分であり、それ以下の線量の地域の住民(住んでいた者も含む)も支援対象に含めるべきだとの明確な意思に基づいて提案され、議論され、成立したという経緯の中に示されています。この法が、低線量内部被曝の危険性の認識、放射線から身を守るためには予防原則が重要だとの認識の上に立って制定されたことも明らかです。周知の通り、チェルノブイリ法では年間追加被曝量が1ミリシーベルトを超える地域は移住の権利が生じるゾーンとされ、健康診断や健康調査など様々な支援が行われています。

 原発事故によって引き起こされた被害の救済は、何よりも福島県など東北の被災地の人々に向けられるべきですが、その福島県と同程度ないしもっと高い放射線量で汚染されたエリアが北関東に存在することは、様々な機関の調査やデータからも周知の事実であり、見過ごされてはなりません。関東ホットスポットの被災市民、特に子どもや妊婦に対する国の支援の不在。この状況を一刻も早く克服するための真剣な取り組みが、いま求められています。

 そしてその手がかりは、まさに「原発事故 子ども・被災者支援法」として、いま国民と政府の手の中にあります。私たち、茨城、千葉、埼玉の放射能汚染ホットスポットに住む市民は、この地域を「原発事故 子ども・被災者支援法」の支援対象地域に含めること、そして子どもと妊婦に対する長期的な健康サーベイランスを事業内容として組み入れることを、下記の通り改めて要請します。

 同時に、この間の各省庁との話し合いの中で要請し、おたずねしてきた諸点に対して、回答を頂けるようお願い申し上げます。

                                 記

<要請事項>
1.「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針策定においては、公衆の追加被ばく限度である、年間1ミリシーベルトを超える放射線被ばくを受けた地域(「放射能汚染対処特措法」の指定地域を含む)及び、事故後に初期被曝(放射性ヨウ素)を受けた地域を対象地域に含めること。

2.基本方針策定においては、事業内容として子どもや妊婦への医療モニタリングの継続的な実施を含めること。

<質問事項>
1.2012年11月26日の話し合いの場で、2012年の12月中には支援対象地域の指定に関す
る何らかの基準が示されるとの発言が環境省からありましたが、どのような基準が策定されましたか。協議の途中と言うことであれば、現時点での論議の内容についてお聞かせ下さい。

2.福島原子力発電所の事故が放出した放射性ヨウ素による汚染状況の実態調査結果が、
2012年12月中にも明らかにされると発言されましたが、その調査結果をお示し下さい。

3.茨城、千葉、埼玉の放射能汚染ホットスポット(汚染状況重点調査地域など)において健康サーベイランスの必要があるとは思われないと発言されましたが、その根拠はどのようなものかお答え下さい。

4.これまでの話し合いの中で、放射線障害については主に癌の発症を念頭において返答をされていましたが、放射線障害の現れは癌の発症ばかりではありません。広島や長崎の被爆でも、チェルノブイリの被曝でも、白内障、染色体異常、体細胞突然変異、体内被曝者の知能遅滞、幼少期被曝者の成長・発達障害、気管機能異常、心臓疾患等々の多種多様な疾病が確認されています。こうした事実を、健康調査の課題と関連してどのように認識されていますか。

5.取手市の小中学生の学校検診での心電図検査において、過去5年間の中で、2011年、2012年と「要管理者」が増加しています。「要精密検査」と診断され「要管理」となった生徒が急増していますが、この事態をどう受け止めていますか。放射線量が取手市と同様に高い他のホットスポットエリアにおいても調査がなされるべきと思いますが、どう考えますか。

6.昨年11月の話し合いの場で、健康診断については各自治体の施策として行うことが適切との考えが示されましたが、その場合国の果たす役割についてはどのようにお考えですか。

7.私たち市民はこれまでも地域の生活協同組合や医師などの協力を得ながら、広範囲にわたる土壌調査や母乳検査などを行ってきました。今後もこうした活動を継続していく予定ですが、地域における市民、生協、医師・医療機関、自治体、NPOなどの活動をサポートする仕組みづくりを国として取り組むことについては、どうお考えですか。

8.環境省が実施しているエコチル調査は、その趣旨においても仕組みにおいても、放射能汚染が子どもたちの健康に及ぼす影響を調査する上で極めてふさわしい事業だと思います。エコチル調査を放射能汚染の影響の調査に及ぼすお考えはありませんか。

9.東京電力福島第一原子力発電所事故による住民の健康管理のあり方に関する検討チーム 第4回会合で「福島県だけでなく、隣接の茨城県など、被ばくの被害を受けた全ての地域について、子供の健康影響調査が必要」との勧告を出す方針を示しています(12月28日)。この場合、「被曝の被害を受けた地域」はどのような基準で認定されるのですか。「子どもの健康影響調査」はどのように進めるのですか。この健康影響調査と「原発事故 子ども・被災者支援法」との関連はどのように考えられていますか。
以上
2013年1月16日

復興庁 御中
環境省 御中
原子力規制庁 御中
厚生労働省 御中
文部科学省 御中

【要望提出団体】(県別)     
放射能から子どもを守ろう関東ネット(茨城、千葉、埼玉)
小美玉市の子供を放射線から守る会
子供の未来を守ろう@うしく
子供を守る結城市民の会
下妻市の子ども達を守る会
常総市の子ども達を守る会
常総生活協同組合
生活クラブ生活協同組合 取手支部
つくば・市民ネットワーク
とりで生活者ネットワーク
古河市の子ども達を守る会
放射能汚染からこどもを守ろう@つくば
放射能汚染からこどもを守ろう@守谷
放射能汚染からこどもを守ろう@竜ヶ崎
放射能からいのちを守る茨城ネット
放射能NO!ネットワーク取手
八千代町の子ども達を守る会
我孫子の子どもたちを放射能汚染から守る会
鎌ヶ谷市放射能対策 市民の会
環境とエネルギー・柏の会
郷土教育全国協議会
こども東葛ネット
松戸PTA研究会
自給エネルギーの会
白井子どもの放射線問題を考える会
ちば放射能対策支援ネットワーク
流山・東深井地区のこども達を放射能から守る会
流山の子どもたちのために放射能対策をすすめる会
野田市さくらの会(放射能から子どもを守るママ達の会)
東日本大震災被災者支援千葉西部ネットワーク
放射能汚染から子どもたちを守る会・野田
吉川健やかネット(吉川市)
ここいきねっと(三郷市)
SCRmisato
放射能から子供を守る会@印西
茨城県・埼玉県南東部・千葉北西部の市民有志

連絡先 千葉県流山市鰭ヶ崎1479-31
 阿部治正
TEL・FAX 04-7140-7605