平成9年度指定
青銅器鎔范残欠(井尻B遺跡出土)
概要
銅鏡・銅鏃鎔范の大きさは、縦12.1cm、横4.6cm、厚さ2.2cmで、一面に鏡(鏡背)、もう一面に鏃の鋳型が彫り込まれています(写真1)。鏡鋳型は半欠品で、面径10cm程度の小形
製鏡を鋳造したと考えられますが、この鋳型で作られた鏡の出土例はありません。鏃の鋳型は、破損等の理由により半裁された鋳型面の裏面を再利用しています。2個の連鋳式で、1個分の長さが6cmと大型です。鋳型の石材は石英−長石斑岩です。弥生時代後期中頃の土壙から出土しました。
銅鏃鎔范の大きさは、長さ6.8cm、最大幅5.5cm、厚さ3cmの平面台形、断面蒲鉾形を呈し、片面だけに大型の鏃1個分の鋳型が彫り込まれています(写真2)。鏃の長さは6.8cm、関幅は3cm。竪穴住居跡から出土しました。時期は弥生時代後期中頃です。
指定理由
鏡の鋳型は本例も含め、全国で7例しか発見されていない貴重な資料です。市内では飯倉D遺跡出土品2例に次いで3例目となります。また銅鏃鋳型は全国で5例を数えるだけで、うち2例がこの遺跡から出土しました。とくに、鏃1個のために作られた鋳型は希有な出土例です。これらの鋳型は青銅器の製作技法を具体的に明らかにするとともに、奴国の領域での青銅器生産の実態を示すものとして学術的価値が高く、市文化財に指定して保存をはかる必要があります。



出土銅鏡鋳型一覧
|
出土遺跡 |
鏡 式 |
面 径 |
石 材 |
他の鋳型面 |
1 |
福岡市 飯倉D |
内行花文鏡 |
7.2cm |
石英−長石斑岩 |
矛 |
2 |
飯倉D |
(鏡面) |
7.2-7.7cm |
石英−長石斑岩 |
(矢印) |
3 |
井尻B |
内行花文鏡 |
10.0cm |
石英−長石斑岩 |
鏃 |
4 |
春日市 須玖坂本 |
内行花文鏡 |
7.5cm |
石英−長石斑岩 |
不明 |
5 |
須玖永田 |
内行花文鏡 |
8.0cm |
石英−長石斑岩 |
なし |
6 |
須玖永田 |
不明 |
8.5cm |
未調査 |
小銅鐸 |
7 |
夜須町 ヒルハタ |
内行花文鏡 |
9.3cm |
石英−長石斑岩 |
鏃・勾玉・十字形金具 |
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出土銅鏃鋳型一覧
|
出土遺跡 |
形 式 |
石 材 |
他の鋳型面 |
備考 |
1 |
福岡市 井尻B |
有茎・二連鋳 |
石英−長石斑岩 |
鏡 |
銅鏡鋳型1と同じ |
2 |
井尻B |
有茎・単鋳 |
未調査 |
なし |
|
3 |
春日市 須玖坂本 |
無茎・単鋳 |
石英−長石斑岩 |
三面に鋳型 |
|
4 |
御陵 |
有茎・三列連鋳 |
石英−長石斑岩 |
矛 |
|
5 |
夜須町 ヒルハタ |
有茎・単鋳と連鋳 |
石英−長石斑岩 |
鏡 |
銅鏡鋳型7と同じ |
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