星座の本を読んでおりますと、実際の古代ギリシアに於いてはどのような神であったのか 疑問がわいてまいります。そこでオリュンポスの12神に絞って調べてみました。
No | ギリシア名 | 該当星又は役割 | ローマ名 | 英語名 | 該当星又は役割 |
1 | ゼウス | 北極星 | ユピテル | ジュピター | 木星 |
2 | アテーナー | 知恵と戦術の神 | ミネルウァ | ミネルヴァ | 知恵・戦術の神 |
3 | アプロディーテー | 金星 | ウェヌス | ビーナス | 金星 |
4 | デメーテール | 乙女座 | ウィルゴー | ヴィルゴー | 収穫の女神 |
5 | ポセイドーン | 海神 | ネプトゥヌス | ネプチューン | 海王星 |
6 | ヘーラー | ゼウスの正妻 | ユノ | ジュノー | 四大小惑星の1つ |
7 | ヘーパイストス | 火と鍛冶の神 | ウゥルカヌス | ヴァルカン | 火と鍛冶の神 |
8 | アレース | 火星 | マルス | マーズ | 火星 |
9 | ヘルメース | 水星 | メルクリウス | マーキュリー | 水星 |
10 | アポローン | 太陽 | アポロ | アポロ | 太陽 |
11 | アルテミス | 月 | ディアナ | ダイアナ | 月 |
12 | ヘスティアー | かまどの神 | ウェスタ | ベスタ | かまどの神 |
12 | ディオニューソス | 酒の神 | バッククゥス | バッコス | 酒の神 |
12 | ハーデス | 冥府の神 | プルートー | プルトーン | 冥府の神 |
ギリシア神話において「ゼウス」は最高神でありました。「天」「昼」「光」を意味致します。「Zeus=ズデウス」はインド・ヨーロッパ語源でありまして、Den、Dan(明るい空)と 言う形もあります。梵語のDyausと同じ語源です。 天のウラーノスとは異なり、雨・嵐・雷の生ずる神で、ゼウスの武器は何者をも倒すことができた、 ヘーパイストスの造る「雷」でした。
ギリシア神話が生まれる前の時代の神話は「大地母神の時代」で女神が大半を占めておりました。 大地母神は豊穣・多産を願う農耕的な文化と南方特有の女家長制から生まれものでありましょう。 この大地母神は地中海や小アジアなどが主な信仰の地でありました。
これに対しましてゼウスを信奉するアカイア人は北方から来きて、 牧畜的であり男家長制の特徴があります。 このアカイア人が南方系の民族との数々の戦いに勝利していったようです。この時に勝者である「北方のゼウス」と、敗者である「南方の地母神」とが交わり 徐々に「ギリシアの神々」が構成されてきたように思われます。
実際にはゼウス神を敗者に押しつけるよりも、地母神を利用する方が支配がしやすかったのでしょう。 例えばアテーナーを信奉する種族がアカイア人の侵攻を受けた際に、 ゼウスの主権を受け入れるのと引き換えに、アテーナー神殿を破壊しなかったこと等がありました。またゼウスは多くの人間の女性とも交わりますが、 これは最高神のゼウスを先祖にしたいと願った人々に原因があるように思います。
ゼウスはアカイア人のギリシア半島における支配と、その正当性を示す神であったようです。
ギリシア神話においてゼウスは、イーデー山(樹木の茂る山)で育てられた話があります。 ゼウスの母であるレアーはクレータ島の大地母神で、ゼウスは大地レアーの子である植物霊で あったようです。ヘーラー神殿の起源は紀元前1500年頃で、ゼウスとヘーラの結婚はヘーラーの神殿のある サモス島で行われましたが、300年ものながきに渡ってその婚姻は秘められてきました。 この秘められた結婚はクレータ島とミュケーナイとがアカイア人に征服された後の話であるようです。
神話の時代区分 | 主神 | 文明 | 形態 |
黄金の時代 神々と人間が一緒に暮らした時代 |
クロノス・ガイア | キクラデス文明 | 新石器 |
白銀の時代 人間が強いものが弱いものを |
ガイア(地母神) | キクラデス・クレータ文明 | 青銅器 |
青銅の時代 人間が戦争をするように |
ガイア・オリュムポス神 | クレータ文明 | 青銅器 |
英雄の時代 まだ正義の英雄がいた時代 |
プレ・オリュムポス神 | ミュケーナイ文明 | 青銅器 |
鉄の時代 人間が虚言をはき残忍で |
オリュムポス十二神 | イオーニア・アテーナイ文明 | 鉄器 |
アテーナは知恵と戦術の女神で、鎧を付けた完全武装の姿で生まれました。 アテーナはアテネの都市を作ったとも言われ、都市国家アテネの都市守護神でありました。ギリシアの神々が台頭する前は地母神の時代でした。女神は処女(新月)・ニンフ(満月)・ 老女(旧月)と言う三面性をもち、アテーナはこの三面性をもつ地母神でありました。
アテーナには北方から来た説と南方から来たとする説があります。
ゼウスの頭からアテーナが生まれたのはトリートーン河畔でありました。 この河はギリシア半島のテッサリアやアルカディアにかかりまして、 ここからペロポンネーソス半島まで下り、リビアにもトリートーン河があります。 以上の経路でアテーナは南下したと言われます。アテーナは先住民族の言葉であるらしく 非ギリシア語です。アテーナの別名はTritonis(トリートニス)で、 海神トリトンとの言葉の類似(トリトンの女性名)から見て水に関係する女神であったようです。
もともとアテーナを信奉していたのはリビア人であると考えます。リビア人のクレータ島への移住は、 エジプト第一王朝のときで、エジプト南北強制併合の余波を受けてたものと思われます。 この後すぐにミノア文明がクレータ島ではじまり、北上してギリシアに伝わります。 プラトンはアテーナと「リビアの女神ネイト」と同じものであると言っております。
アカイア人はゼウスを信奉しておりました。しかし鉄器をもつドーリア人南下侵攻にあいます。 この侵攻で古層のギリシアは破壊されてしまいます。エジプトはかろうじて侵攻を防ぎました。 この時アカイア人は逃げるかギリシア本土に踏みとどまります。 その踏みとどまった代表がアテーナイ人で、半島に侵攻したドーリア人の代表がスパルタ人となります。アテーナはもともとアテネの都市守護神であったとする説もあるようです。
アプロディーテーの名より「愛と美の女神〜ビーナス」の呼び名の方が しっくりとくる方が多いと思います。アプロディーテーの最古の姿は、 シュメール神話の女神イナンナ(金星)で、その神話(注)がセム語系の アッカド神話女神「イシュタル・アシュタルト(金星)」になり、 イシュタルがペラスゴイ創世神話の万物の女神「エウリュノーメ」に繋がり、 フェニキアでは父神エルの妻「アシェラル(アスタルテ)」になます。 更にこの女神アスタルテがクレータ人の仲介によって、 キュテーラ島からペロポンネーソス半島へと上陸し、アプロディーテーになったようです(注)シュメール語の粘土板の断片にあるイナンナの神話が、ギリシアにもたらされたときに アドニス神話(アプロディーテーとデーメーデールが美少年アドニスを半年ずつ自分のものとする話)にまで発展しました。
デーメーデールーは豊穣の女神であります。デーメーテールの「デー」は 大地母神の「ダー(ガイア)」の最古の名で、メーテールは「母」を意味します。 ペラスゴイ人の創世神話では、ポセイドーンとデメデルは一対の神でありました。 この一対の神の象徴が「馬」で、その意味は大地の豊饒にあります。
デーメーテールが麦(穀)の神となったのは二次的な形です。
エジプトの神であるイシスは、しばしばデーメーデールと混同されたようです。 同じ穀神であり、同じように冥界との繋がりがあるためであるようですね。
ポセイドーンは海神であります。ポセイドーンの古形は、ただ単にパーテル(父)と 呼ばれていた様です。大地母神(デー)の夫(パーテル)となり、デー・メーテール(母)と 一対をなすとケレーニイは言っております。またその神の象徴である 「雌雄一対の馬(豊穣を表します)」から、ポセーイドン神とデーメーテール神に分離したようです。 ポセイドーンは馬の神の役割を引き継ぎます。例えばポセイドーンはメドゥーサと交わり、 そのメドゥーサの血から天馬ペーガソスが生まれます。 メドゥーサの古形はデーメーテールと同根のようですね。
ポセイドーンは海の女神アムピトリーテー(第3の原素、すなわち海の意)と結婚することで 海の支配者となれました。
ヘーラーはゼウスの正妻であります。ホメーロスはヘーラーの慈しむ地は、 アルゴス・スパルテー・ミュケーナイであると言っております。ヘーラーの信仰はアルゴリスで、 ボイオーティア・エウボイア・ロードス・サモス・ナクソス・クレータに広がりをもっていたようです。 ヘーラーの名の起源はHeros(ヘーロス・主人)の女性系であり女家長制を表しているようです。 また別の説ではHe Era(大地)の省略された形であるとも言われているようです。
ヘーパイストスは鍛冶の神でアプロディーテーの夫であります。 またゼウスが制裁に使う電光「雷」を造っています。
鍛冶屋の神が身体的に障害をおっていると言う話は、地球上に広く分布しています。
ヘーパイストスは2度海に放り出されていますが、これは治金術がエーゲ海経由であった史実と 関係があるようです。また鍛冶は火と関係するので火山と結びついて噴火口を仕事場にした話が 伝わっています。小アジアでは母神が、山(オレイアー)の母神(メーテール)として呼ばれていたようで、 この母神には「侏儒神」が同伴したようです。これが「ヘーラー」と 「ヘーラーから生まれたヘーパイストス」との関係であるようです。
軍神アレースはギリシア産でありますが、北方からきた説もあるようです。
彼の起源はテーバーイであるらしく、北部ギリシア・西部ギリシアが信仰の中心でした。 本来は戦闘の呪術である犬の生贄の儀式から発達した神であるようで、兇暴で無計画な 性格があります。アレースはギリシア神話の中で、知性が暴力に勝利する敗北の形で表される事が多いのですが、 ローマ神話マルスになりますと、建国の祖ロムルスの祖先がマルスでありますので、その扱いは一変することとなりました。
ヘルメースは「商業の神」であると同時に「道祖神」「泥棒の神」でもあります。 ヘルメースは生殖・豊穣の信仰である男根の石像から発展した神であるようです。
ヘルメースの信仰の本拠はアルカディアで、ここから各地へ伝わったらしいです。 ヘルメースと言う名の起源は、この石像、つまりヘルマ(角柱)が元になっていまして、 このヘルマは、上は人間の首・中ほどは膨らんだ陽物がついた石柱でした。ヘルマは道ばた、畑の境、牧場に立てられたため「道案内」「伝令」の神、 ひいてはずる賢くて足が速いので泥棒の神となりまして、さらに旅行者や商人を守る 商業神ヘルメースとなっていったようです。
ヘルメースの名は積み石(ヘルマ)と、境の石(ホルモス)が合わさりできたのでありましょう。
古代ギリシアでは忠言を得る方法の1つに、何か困った場合、町の市場にあるヘルメス像の 聖なるランプの1つに火をともして、祭壇に賽銭をあげ、困ったことをヘルメス像の耳元で囁きます。 そうしてから手で自分の耳をふさぎ人混みへと向かいます。人混みに入ったら耳から手を離します。 雑踏が聞こえ最初に飛び込んできた会話の断片が、 困ったことへのヘルメスの忠言とされておりました。
アポローンは太陽の神・医学の神・音楽の神・弓術の神・予言の神・家畜の神・光明の神で ボイポス(輝ける)の称呼があります。 太陽を乗せた戦車で天空を駆け巡り、夕方双生の妹・月の神アルテミスに交代します。
ゼウスを除けばギリシアで一番の人気であったのがアポローンでありました。 デルフォイに神殿がありその信託は良くあたったのだそうです。 アポローンの語源はギリシア語ではないそうで、起源については北方から来た説と 南方から来たとする説があります。余談ではありますが、ソクラテスはこのアポローン神殿に書かれた 「汝自信を知れ」と書かれていた言葉から「無知の知」を導き出したのでした。 ソクラテスは「世界で一番頭が良いのは誰だ」と信託にかけ、「それはあなただ」と 信託がかえってきて悩んでしまうのですね。 えっとそれはさておきまして
アポローンの母レトはデロス島のキュントス山北側のオリーブとなつめ椰子の木陰で アポローンを生んでいます。ここからアポローンの語源をAbol(リンゴ)に求める説がありまして、 レト・アポロン母子は、植物栽培に係わる小アジア系の神であったとするのが南方説です。
北方説の大もとはアリストテレスの「動物誌」で、レトがゼウスにより12日間狼に姿に変えられて、 ヒュペルボレイオスの国からデロス島へやって来たとしています。ヒュペルボレイオスの伝承は 地中海東岸からブリテン島までの広い範囲に渡っております。
またレトがやってきたのは小アジアのリュキアであるとする伝承もあります(ケレーニイより)。 リキュアはギリシア語で「狼の国」という意味があるそうです。要約しますと、東地中海のパレスチナ・リュキア・デロスの延長線上に レト・アポロンの源があるとするのが北方説です。 また更に北方から信仰がきたとする説もあるようです。
プラトンは未来を予見する巫女には「正気の巫女」「狂気の巫女」の2タイプあると言っております。「正気の巫女」は占星術のようなもので、「狂気の巫女」はいわゆる「精霊の乗り移り」でした。 デルフォイの神殿での精霊に相当する神はアポローンでした。デルフォイの神殿は意図的に地面の裂け目に建てられており、その裂け目から 窒息性のガス(恐らくメタンガスと思われます)が漏れでておりまして、 そのガスを吸った巫女は痙攣を起こし、わけの分からない言葉の断片を叫びました。 この言葉の断片をアポローンからの神託(オラクル・忠告又は予言)としました。
アルテミスはアポローンの双生の姉で月の女神・狩りの女神・弓の女神で、ローマ名をデイアナ (ダイアナ)と言います。 アルテミスはとても崇拝されていたらしく、 1年の中で3・5・9月の3回祭りがあったそうです。 アルテミスはレートー・アポローンと同じく小アジアからペロポンネーソスがその信仰の勢力圏で、 乳房を多くもつエペソス神像はインドまで広がりをもちます。
トルコの新月旗では、三日月の中に星が描かれております。 実際には星食が起きて三日月の中に星が見えることはないのですが(^^;
紀元前339年にアレキサンダー大王の父フィリップが、ギリシアの植民地であった ビザンチューム攻撃の際のこと。闇夜に城の下に穴を掘り進もうとした時に、 雲間から忽然と三日月が現れてその計略を暴いた話があります。 これがビザンチュームの都市守護神アルテミスの象徴である三日月でした。以後都市の紋章を三日月にし、トルコのモハメッド二世がこの都市を占領したとき この紋章を引き継ぎ、かつ、星を加えたようです。 アルテミスはローマ時代にはディアナ(ダイアナ)となり、額に三日月を戴く姿であらわされます。
またアルテミスはニンフ(精女)を多く引き連れていることとと、 月の女神であることから、キリスト教の時代に入ってからは「魔女」の代名詞にもなっていたようです。
またアルテミスが「妖精」になったと言う話もある様です。 妖精は「子供っぽくいたずら好きで陽気な性質」と供に魔女と同じく 不気味で不思議な性質も持ち合わせているのため、 祟るので触れない方が良いと思われていたようです。ケルトの妖精神話では、妖精の王夫婦の名は、夫が妖精国の王であり、かつ、 アセンズの森の支配者であるオーベロン。その妻はティターニアと言うそうです。 ルネッサンス時代には、オーベロンと言う名は魔術師の使い魔の呼び名としても 使われていたようです。
ティターニアの名の由来は、オウディウスの「転身物語」のなかでのダイアナの異名の一つで、 ウラノス(天)とガイア(地)との間に生まれたタイタン族(巨神族)の一人である 太陽ソルの姉妹であることから、ダイアナにもタイタンの生まれを意味するタイタニア(巨人の娘)、 転じてティターニアと言う名が付けられたそうです。
アイルランドでは432年にキリスト教が緩やかに入り、現在でも幾種類ものケルト妖精が 伝えられているそうで、イギリスに於いて1200年以後に「イリアス」などの キリシア文学が訳されたそうですが、この中でニンフ達と「水の精」「樹木の精」「山の精」などの 妖精(フェアリー)とが置き換えられ混同されたようです。 「転身物語」の英訳では妖精=ニンフとなり、ニンフを多く引き連れる月の女神ダイアナが ティターニアとなったようです。ジェーイムズ1世の悪魔学(1597刊行)の中で、ダイアナとその侍女達はフェアリーと呼ばれるそうで、 ティターニアはダイアナと妖精の女王を重ねているそうです。
またエドモンド・スペンサー(1552?-99)も妖精の女王をダイアナ、シンシア(月の女神)、 フィーピー(輝ける女)とも呼んでいるそうです。 このエリザベス一世の時代に妖精が活気を取り戻すようで、シェイクスピアにも登場します。
ヘスティアは「かまどの神」でありますが、ギリシア都市国家の政治的な作為から生じた 神であるようなので、余り他の神話とはかかわりをもっておりません (この辺は良く分かりませんでした)。
「かまど」はまず犠牲を捧げる所であるので、まず最初に捧げものの分け前を貰え、 なおかつ全ての神殿に於いて祭られることがゼウスから許されていましたが、 ヘスティアは「かまど」から離れるわけがいかないので余り神話はありません。 そこでオリュンポスの十二神には、 このヘスティアーではなくディオニューソスが入る場合があるようです。
酒の神ディオニューソスと言えば葡萄酒であります。原料となるブドウは黒海の南岸で栽培されて、 パレスチナからリビアそしてクレータ島へ、更にそこからギリシアへと入ってきました。 この経路を辿りディオニューソスがギリシア神話に入ってくるようです。 また一説にはビールの神であったものに、葡萄酒が付け加わったとする説もあります。デーメーデール信仰の中心はエレウシースでありますが、 この祭儀にディオニューソスが 加えられたのは紀元前6世紀初頭でした。 政府公認前の、葡萄酒に酔い舞い狂うディオニューソスの祭りは当時の支配者からは 危険視されていたようです。 アテーナイの独裁者ペオソスラトスらがディオニューソス信仰を公認したようで、 十二神の中でヘスティアーがデイオニューソスに変わるのが前5世紀の終わりのことであるようです。
オリュンポスの十二神には「かまどの神ヘスティアー」或いは「酒の神デイオニューソス」ではなく、 「冥府の神ハーデス」が入る場合があります。しかし十二神にハーデスを入れることには反論が ある説かあります。その反論は「ハーデス自身は冥界におり、オリュンポスの山にはいない」 というものです。ハーデスの支配する冥界の所在地に付いてホメロスは「オーケアノスの大洋の彼方」と言って おります。当時大地は円盤状のものであると考えられておりまして、その円盤状の端(円周)に オーケアノスという大洋が流れていると考えられたのです。冥界はオーケアノスの大洋の更に 外側にあるとされました。
冥界の所在地時代が経つにつれ次第に地下にあると考えられて、冥界の入口は ギリシア各地にある深い洞窟であるとされていたようです。
死者の国の境にはステュクス(又はアケローン)と呼ばれる河がありました。 日本で言う「三途(さんず)の川」のようなものです。このステュクス河には「渡し守カローン」が いて、船で死者を対岸に渡しました。その時に「何がしかの金銭をもった死者」から優先的に ステュクス河を渡したといいます。
もう少し時代が経ちますと、冥界には区分が生じました。 まず冥界に着いた死者はアスポデロスの咲く野原をさ迷い歩くことになり、 特別神の恩恵を受けたものだけが、その中のエーリュシオンの野原に住むことを許されました。 これに対し神々の敵は最下層のタンタロスに幽閉されました。
〜主な参考引用文献〜
○アポロドーロス『ギリシア神話』岩波文庫。
○井村君江『ケルト妖精学』講談社学術文庫。
○カール・ケレーニイ『ギリシア神話−神々の時代』中公文庫。
○カール・ケレーニイ『ギリシア神話−英雄の時代著』中公文庫。
○高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店。
○藤縄謙三『ギリシア神話の世界観』新潮選書。
○藤縄謙三著『ホメロスの世界』新潮選書。
○プルタルコス『エジプト神イシスとオリシスの伝説について』岩波文庫。
○ヘシオドス『仕事と日』岩波文庫。
○ヘーシオドス『神統記』岩波文庫。
○ホメロス『イリアス』岩波文庫。
○ホメーロス『オデュセイアー』岩波文庫。
○ヘロドトス『歴史』岩波文庫。
○山田宗睦著『ギリシア神話』カラーブックスB-1。
○アルテミス(都市守護神)・野尻抱影『星空のロマンス』ちくま文庫の−3−2。○ヘルメス(忠言)・G・ジェニングス『エピソード魔法の歴史○黒魔術と白魔術』教養文庫D594。
○アポロン(信託)同上