ネットワーク九州第7回総会報告 挽地康彦(移住労働者と共に生きるネットワーク九州・事務局)
移住労働者と共に生きるネットワーク九州は、2005年5月28日(土)、29日(日)、大名カトリック教会にて第7回総会を開催しました。例年どおり、基調講演、各団体・グループの活動報告、交流会を初日に、九州ネットの活動報告/活動方針を二日目に設定しました。参加者の総数は43名でやや少なめでしたが、関東や中国地方からの参加者もあり盛会に終わりました。
今回の総会では、「人身売買の廃絶」をテーマにすえました。日本社会に潜在する人身売買(人身取引)の現状と課題を、現場の目線から明らかにすることが目的です。マスコミでも報道され始めましたが、日本の人身売買の実態は、巨大都市のアンダーグラウンドのみならず、地方都市の日常においても顕在化しています。その意味で、この問題を「九州」で考えることは時宜にかなったテーマとなりました。
マルセル神父による開会宣言の後、「日本と人身売買」という題目で、アジア財団日本事務所の玉井桂子さんに基調講演をしていただきました。講演では、人身売買の受け入れ国である日本と送り出し国とのあいだの構造的な問題をはじめ、日本社会がもつ「人身売買=売春」という偏見、人身売買に対する各国の取り組み、国連の動向、人身売買問題を捉えるための視点など、幅広い観点から人身売買問題の全体像を明らかにされました。玉井さんご自身よる実際の被害者救援事例も交えながらの説明だったため、人身売買被害者の救援経験のない総会参加者にとっても非常にわかりやすく、かつ迫力に満ちた講演だったと思います。
玉井さんの講演につづき、九州における人身売買被害者の救援事例を、アトラスの塚田さん、美野島司牧センターの堀さん、アジア女性センターの本多さんの3名の方々(報告順)より報告していただきました。それぞれのご報告が、九州における貴重な救援事例であっただけに、問題は依然、氷山の一角であることも同時に実感させられた内容でした。人身売買が、グローバルかつローカルな問題であることは自明のことですが、問題に対応して各地域の被害者救援の取り組みもネットワーク化されているかといえば、そうではありません。その意味では、玉井さんの活動と九州ネットのNGO活動が、今回の総会をとおして有機的なつながりをみせたことは、「人身売買の廃絶」をめざしていく上で、大きな一歩を踏み出したように感じられました。
総会初日は、基調講演にたいする意見交換のあと、各団体・グループによる活動報告、交流会へとつづきました。最後に、総会二日目の議論のなかで挙がった初日の反省点を少し。まず、総会全体の参加者数が減っていること、特に福岡で開催している割に福岡からの参加者が少ないことです。そして、移住労働者およびその家族の参加が少なくなっていることです。毎年おなじ形の総会である必要はないと思うのですが、それでも、九州ネットがどこに向かって、そのために何に取り組んでいるのかを明確にした総会になるように、今後考えていかねばならないと強く感じました。