- 角館駅に着いた時は本降りの雨だった。しばらくためらった後、気を取り直して出発の準備をした。余分な荷物をコインロッカーに預け、レインウェアを着てからタクシーに乗り込んだ。幸いタクシーに乗る頃には少し小降りになっていた。
- 帰りのタクシーを予約し、運転手に見送られて登山口を出発した。雨は小降りだった。最初は杉の植林と自然林の混ざる森の登りだった。
- 30分ほど登ったころ、登山道の前方から熊が駆け下りてきた。「あれっ、熊だ」と思う間もなく、30mほどに近付いたところで熊もこちらに気がついて立ち止まった。心臓の鼓動が高鳴った。何を思ったか熊はUターンして登山道を引返して行った。レインウェアの下に入れていたカメラを取り出す暇はなかった。恐る恐る熊がいたところを通過した。
- 旧道杉沢コース分岐を過ぎると雨は本降りになってきた。シシ小屋跡を過ぎるとブナの森になった。霧の中に新緑がきれいだった。カタクリやキクザキイチゲ、ミヤマカタバミの花があったが、雨のため花びらは閉じていた。ウグイスが鳴いていた。
- 山頂は樹林に囲まれていた。標識が有るだけで登山道の途中と言った感じの所でだった。落ち着かない雰囲気だったのでそのまま白岩薬師へ向かう事にした。
- 白岩薬師までの稜線は、名残の雪庇や北斜面の雪田など、だいぶ雪が残っていた。雪の融けたところにはショウジョウバカマが咲いていた。シラネアオイも2株ほど咲いていた。
- 白岩薬師には小さな祠と三角点が有った。霧雨だった。開けていて晴れていれば展望が得られそうだったが、あいにくと霧で何も見えなかった。ウグイスが鳴いていた。
- 白岩岳山頂に戻ってきた頃には雨がやんで来た。シシ小屋跡への下りでは薄日も差してきた。ブナ林の中からはツツドリやエゾムシクイの鳴き声が聞こえてきた。シシ小屋跡でレインウェアを脱いだ。熊のいた箇所では回りに注意しながら下った。登山口には予約の25分前に着いた。