Desk Set ★★★

1957 US
監督:ウォルター・ラング
出演:スペンサー・トレーシー、キャサリン・ヘップバーン、ギグ・ヤング、ジョーン・ブロンデール

左:スペンサー・トレーシー、右:キャサリン・ヘプバーン

スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘップバーンによるロマンティック・コメディですが、二人が共演する作品としてはいったい何作目に当たるのでしょうか。いずれにしても、彼らがこの後共演するのは、極めてシリアスな作品である「招かれざる客」(1967)においてのみなので、ライトな作品に関しては「Desk Set」で打ち止めということになります。キャサリン・ヘプバーン演ずるオールドミスが勤める情報検索会社にコンピューター屋(スペンサー・トレーシー)がマシンを設置しようとするも、自分達の仕事を奪われると思い込んだ彼女達社員がすったもんだを繰り返すという他愛のないストーリーが展開されます。すったもんだの末に彼(スペンサー・トレーシー)と彼女(キャサリン・ヘップバーン)が目出たく結ばれるというお決まりのコースをたどるストーリー自体に関しては何のサプライズもないとはいえ、何よりも驚かされるのは、早くも50年代の半ば頃に、コンピューターに職を奪われるのではなかろうかなどという論点がコメディであるにしろ映画の素材として取り入れられている事実です。さすがはIBMのアメリカです。と言っても、別にIBMを宣伝しているわけではなく、アメリカ映画を見ていると、自分達のビジネスライクな性向を自虐的に揶揄する際に、IBMという無味乾燥なアクロニムが登場人物の口をついて飛び出してくるのをしばしば見かけ、むしろ皮肉な意味合いもいくばくか含まれています。何しろ、フル名称ではInternational Business Machinesなのです。個人的に最も気に入っているシーンは、スペンサー・トレーシーがキャサリン・ヘプバーンをランチに誘い、二人は会社の屋上にある吹き曝しのテーブルに座ってファーストフードショップで買ってきたサンドウイッチをやおら取り出し食べ始めると同時に、前者がケッタイで意味不明な質問をいくつか口にするのに対して、後者がそれ以上にケッタイな回答で平然と応えるシーンです。さすがはスペンサー・トレーシー&キャサリン・ヘプバーンと言いたくなるほどの絶妙なタイミングが、妙に滑稽です。また、コンピューターを設置しにやってくる女技師?を演じているネバ・パターソンが、またケッタイで素晴らしい。ネバ・パターソンといえば、同じ年あの「めぐり逢い」(1957)に出演している女優さんで、ケーリー・グラント演ずるプレイボーイに哀れにも婚約を破棄される可哀相なお姉さんを演じていました。ということで、コメディなのでオーディエンスに訴えかける特別な何かがあるというわけではないとしても、「Desk Set」は、個人的には何度も何度も繰り返して見ているスグレもののロマコメ作品です。


2001/02/25 by 雷小僧
(2009/01/12 revised by Hiroshi Iruma)
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