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「Heistもの」或いは「Caperもの」などと称される泥棒映画の中で一番気に入っている作品は何かと問われれば、恐らく「トプカピ」と答えるでしょう。まず第一にイスタンブールというエキゾチックな舞台が、見事にカメラに収められている点で早くも勝負ありというところですが、これは冗談でも何でもなく、この手の作品は舞台としての背景が大きくものを言うのです。イスタンブールのモスクの屋根を伝って美術館に侵入するシーンやトルコ名物のレスリング会場から警察の目をごまかして泥棒どもが一人また一人と抜け出すシーンなど、インスタンブールのようなエキゾチックな地に舞台が設定されているからこそキャプチャーできたシーンが、作品全体をビューティフルにそしてスリリングに彩っています。また、「トプカピ」は、コメディとサスペンスの匙加減が絶妙です。コメディ的な要素はこの作品でアカデミー助演男優賞に輝くピーター・ユスティノフのパフォーマンスに主に由来しますが、作品の全体的なトーン自体が既に軽妙洒脱なのです。それに対して、テレビシリーズの「スパイ大作戦」や「ミッション・インポッシブル」(1996)をインスパイアしたと言われる逆さ吊りになって美術品を強奪する後半の泥棒実行シーケンスは、エレガントであると同時に実にサスペンスフルであり、オーディエンスは手に汗握って画面に釘付けになること請け合いです。ハスキー声で喋り、大きなお目々と大きなお口のメリナ・メルクーリが、当時既に40を越えていたとはいえ実にチャーミングで、泥棒どもの女首領という役柄が見事に嵌まっています。作品のエレガントさは、泥棒実行シーケンスと共に彼女にも確かに由来しています。彼女に誘われたら小生もきっと美術品強盗しちゃいますね。というわけで、スーパースターが一人も出演しておらず、また前半ややスローな印象を受けますが、エンターテインメント性が極めて高い作品であることには間違いがありません。