誇りと情熱 ★☆☆
(The Pride and the Passion)

1957 US
監督:スタンリー・クレイマー
出演:ケーリー・グラント、ソフィア・ローレン、フランク・シナトラ、セオドア・バイケル


実を言えば、手元にビデオを持っているにも関わらずこの作品は最近では1度しか見ていません。「最近では」と言ったのは、子供の頃テレビで見たような記憶がある為ですが、これも定かではありません。通常はそのようなタイトルをレビューコーナーで取り上げることはありませんが、繰り返し見る気を起させることのあまりない作品であるにもかかわらず、この作品には小生をして一度は見るべきであると言い切らせるだけのパワフルさがあります。ナポレオンがヨーロッパ全土を荒らしまわっていた時代、フランス軍が攻込んでいたスペインで、ケーリー・グラント、フランク・シナトラ、ソフィア・ローレン演ずる三人の主人公達を含むスペインの市民義勇軍(ケーリー・グラントのみはイギリスの海軍将校を演じています)が、恐ろしくばかでかい大砲(上掲画像参照)をスペイン中引き廻し、最後はフランス軍の砦に突撃するというストーリーは、恐ろしく単純であり且つパワフルです。殊に、フランス軍に包囲された狭い地峡を突破するシーン、或いは車輪の付いた台座に搭載されている大砲が丘を下る時に慣性で勝手に転がり出して、木をなぎ倒しながらものすごい勢いで突進していくシーンなどは、実際にスペインで撮影されたかどうかは別としてスペクタクルで壮大な風景とあいまって、手に汗握るド迫力があります。あちらの映画評論家も指摘するところですが、それにも関わらず、この作品が傑作たる為には決定的なマイナス要因があります。すなわち、前述の主演3人が全て典型的なミスキャストなのです。彼ら三人のみが浮いて見えるばかりではなく、愛国的なスペイン市民義勇軍のリーダーを演ずるフランク・シナトラは、いかにもこれから一曲歌うか、或いは一発気のきいた洒落でもかませてやらねば気が済まないというような匂いをプンプンさせており、ソフィア・ローレンも、彼の後を追っていくスペインの田舎娘にはとても見えません。確かに見る側の勝手な先入観もあるはずですが、それこそがまさにポイントであり、そのような先入観がいやが上にも入り込まざるを得ないキャスティングになってしまっているのです。しかしながら、この両者はまだいい方であり、極めつけはケーリー・グラントです。ロバに乗った彼の姿や、ばかでかい大砲を登り坂に沿って引き上げていく折に彼が車輪に取付いて一緒懸命その車輪を転がそうとしている姿は、意図されざるコメディに見えます。恐らく、「誇りと情熱」は、派手さよりもシンプルなパワフルさが強調されるべき作品であり、もう少し名前の知られていない地味な俳優を起用した方が遥かに効果的であっただろうと思わせるタイプの作品なのです。そのようなわけで、確かにお薦めではない点もありますが、少なくとも素材としては一級品のアイデアであったように思われ、何よりも力強さに溢れた作品であることには間違いありません。


2001/06/02 by 雷小僧
(2008/10/10 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp