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監督のサム・メンデスはオスカー受賞作「アメリカン・ビューティー」(1999)を撮った人あり、正直言えば私目は「アメリカン・ビューティー」という作品には全く感心出来なかったのですが、この「ロードトウパーディション」を見た時には、これはまた素晴らしい作品を撮ったものだと思いました。どう見ても映画自体にシンクロナイズしているようには私目には思えないジュード・ロウのキャラクターを除けばケチのつけようがない作品であると言えます。一言で言えば内幕もののギャング映画ですが、その緊張感溢れるインテンスな展開といい、暗いながらも独特な奥行きを持った色合いといい、ギャング映画の原点に立ち返ったような近年稀に見る傑作ギャング映画であると言っても過言ではありません。一般的に言えばギャング映画というジャンルは、1970年以降になると「ゴッドファーザー」シリーズに代表されるようにシンプルさとは全く逆のゴージャスさ且つ過剰性を追求するような描写が目立つようになり、それに連れて上映時間自体も極めて長くなります。このような傾向は、「ゴッドファーザー」シリーズのフランシス・フォード・コッポラが一人でクリエートしたと言えるかもしれませんが、本来のギャング映画とはシンプルでかつ緊張感溢れる凝縮された展開に特徴があったと言えるのではないでしょうか。たとえばフィルムノワールという概念も確かにスタイリッシュさを目指していたという側面はありますが、「ゴッドファーザー」シリーズのような絢爛豪華なる過剰或いは余剰の世界を描くのがその主旨ではなかったと言えるでしょう。他の作品で言えば、たとえばブライアン・デ・パルマの「スカーフェイス」(1983)等も、「ゴッドファーザー」シリーズのような荘厳さではなくポップアート調ですが、やはりふんだんに過剰な世界が描かれていると言えるでしょう。そのような1970年代以後のギャング映画の系譜を考えて見ると、「ロードトウパーディション」はシンプル且つ凝縮された展開というギャング映画がかつて持っていた特徴を見事に復活させた一編であると言え、しかもこれ程見事にそれが達成されていると最早脱帽するしかないでしょうね。少なくとも私目が見たギャング映画の中でもベストであると言っても良いかもしれません。但し、DVDバージョンでは(と言うよりもTVの小さなスクリーン上では)劇場で見た時の奥行きのある深さは若干失われている感があり、この映画はやはり劇場で見るべき映画の範疇に入る作品であると言えるかもしれません。