これほど異色の女優さんも珍しいのではないでしょうか。美人タイプではなく、自閉症的とすらいえるつぶやくような独特のしゃべり方と細かな動作が彼女の大きな特徴であり、そのような強力な武器を生かして、「おかしな夫婦」(1970)などのコメディを演じてよし、「バージニア・ウルフなんかこわくない」(1966)や「雨に濡れた舗道」(1969)などのシリアスドラマを演じてよしの演技派女優でした。しかも、独特な情感を演出することの可能な稀有の名女優でもありました。それにもかかわらず、出演作品数は必ずしも多くはなく、日本ではあまりポピュラーな存在ではないはずです。デビュー作は「草原の輝き」(1961)ですが、その後しばらく映画への出演機会はなく、5年後に出演した「バージニア・ウルフなんかこわくない」でアカデミー助演女優賞に輝きます。個人的な贔屓作品は「今宵かぎりの恋」(1968)であり、キアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロン主演の「スウィート・ノベンバー」(2001)としてリメイクされたこの悲喜劇は、まさにサンディ・デニスのための作品であったと言い切っても大きな間違いはないはずです。それくらい作品にフィットしていました。70年代に入ると更にマイナー度を増してしまいますが、確かにハリウッドは、彼女のような特異な存在をもてあまし気味であったのかもしれません。 |
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1966
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バージニア・ウルフなんかこわくない
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1975
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Mr. Sycamore
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1967
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下り階段をのぼれ
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1976
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Nasty Habits
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1968
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今宵かぎりの恋
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1976
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God Told Me To
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1969
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雨にぬれた舗道
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1981
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四季
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1970
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おかしな夫婦
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1988
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私のなかのもうひとりの私
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