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お気に入りのレンズたち

 レンズを数多く持っていますが、その中でもお気に入りのレンズを簡単に紹介したいと思います。レンズの味(癖)が大好きですから、正常なレンズだけでなく、世間的に写りの悪い不良個体なども、お気に入りに含まれます。というわけで、不良個体を優先して紹介しています。

 全体的な傾向としては、柔らかい描写のレンズが多いです。開放が柔らかいレンズのほとんどは、絞れば普通にしっかりと撮れますから、1本で2種類の写りが使い分けられます。そのため、柔らかいレンズを持って行く機会が格段に多いです。機材を少しでも軽くしたいので、1本で済ませられると便利ですね。

 取り上げるレンズですが、最初だけ一気に15本を紹介し、後は少しずつ追加しながら増やしたいと思います。並び順は、焦点距離順で明るい順です。

AUTO YASHIKOR 28mm F2.8(不良個体)

 ヤシノンではなく、ヤシコールの28mmです。デザインから推測すると、シグマのOEM品で間違いなさそう。

 最初に入手した個体は、開放でかなり軟らかく、明部の周囲にフレアーが生じます。あまりにも柔らかすぎるので、同じレンズをもう1本入手してみました。2本目のレンズも少しだけ柔らかいのですが、1本目の写りとは大きく異なりました。1本目のほうが明らかに柔らかく、私にとっては大当たりの個体です。2本目のレンズは写りが正常みたいですから、ヤシコール好きの友人にお譲りして、もう手元にはありません。

 手持ちの28mmの中で、一番柔らかい写りです。フォーサーズ機に付けると、標準レンズの画角に近くなるため、柔らかい標準レンズとして重宝します。深度が深くて柔らかい写りなので、スナップ用として楽しく使えます。天気の良い日に開放で使いたいレンズですね。

作例:AUTO YASHIKOR 28mm F2.8

NIKKOR-N Auto 35mm F1.4 Ai改(もしかしたら最良個体)

 このレンズを買った理由は、開放で後ぼけが暴れると知ったからです。何人かの人から撮影画像を何枚も見せてもらい、どの個体も後ぼけが暴れていたので、購入を決めました。でも、安い出物がなかなか見付からず、買えるまでに時間がかかりました。レンズ玉が綺麗で、筐体に軽いスレのある個体が、良品相場の半額近くで売っていたので迷わず買いました。委託品ならではの安さです。

 実際に写してみたら、後ぼけは暴れません。逆に、多くの状況で美しく仕上がります。一部の条件でのみ、暴れ気味の傾向がほんの少しだけ出るようです。世間的にも私的にも、当たりの良いレンズと言えるでしょう。開放では明部の周囲に軽いフレアーが生じる柔らかい描写ですから、すぐにお気に入りとなりました。

 フォーサーズ機で使うと、35mm版換算で70mm F1.4相当の柔らかいレンズとなります。街中でスナップするときに、重宝するレンズとなりました。晴天のスナップに適した1本です。

 後ぼけが暴れるという本来の写りのレンズも欲しいので、出物がないか常に探しています。デジタル一眼レフ用の標準レンズとして使えるためか、見かける機会が少なくなっているようです。安い出物とは遭遇できていません。

smc PENTAX-A 50mm F1.2

  F1.2の標準レンズの中でも、かなり人気のあるレンズです。相場はけっこう高いのですが、たまたま、美品を安めの価格で入手できました。

 手持ちのF1.2標準の中では、ぼけの美しさが一番良いレンズです。全部の標準レンズを詳しく調べてないので断言できませんが、F1.2以外を含めても最高クラスだと思います。ですので、ぼけを安心してい入れられる数少ないレンズと言えます。

 開放では柔らかく、明部の周囲にフレアーが発生します。開放から段々と絞ることで、柔らかさが少しずつ消えて、普通のレンズに近付きます。開放からF2までの間で、狙った柔らかさを選ぶのが、上手な使い方ですね。

 M42マウントに改造したいのですが、後玉が大きすぎて、M42マウントには収まりません。改造を断念しました。

作例:smc PENTAX-A 50mm F1.2 smc PENTAX-A 50mm F1.2

PORST COLOR REFLEX 50mm F1.2 UMC

 フジカXマウントの明るい標準レンズ。オリジナルはX-FUJINON 50mm F1.2で、光学系はそのまま、フジからOEM供給されたもののようです。FUJINONよりも、このレンズの方が見かける機会は多いです。オークションにて安めの価格で入手できました。

 マイナーなマウントのため、そのままではフォーサーズ機に付けらません。どうしても使いたかったので、SRマウントに改造しました。マウント金具を交換しただけだと絞りが開放のままですから、絞りリングに連動して絞り込まれるように作りました。

 開放での写りは、非常に柔らかいです。明部の周囲にフレアーが多く出るにもかかわらず、ピント位置では結像しています。この時代のものとしては、良いレンズではないでしょうか。この特長を利用し、晴れた日に光を活かして写すのに適しています。

作例:PORST COLOR REFLEX 50mm F1.2 UMC

smc PENTAX-FA 50mm F1.4

 少しずつ改良しながら、現在まで継続されているレンズです。F1.4の標準レンズの中では、描写が良いばかりでなく、ぼけなども含めてバランスの非常に良いレンズだと思います。いつでも安心して使える、良いレンズです。世間でも、普及価格なのに素晴らしい描写で、銘玉と呼ばれてますね。以前は良品が安く買えたのですが、今は数も少なく、相場も上昇しているようです。安いときに買っておいて良かったです。

 良い写りだと言っても、シャープさを追求したタイプではありません。バランスの良い自然な描写を目指しながら、細かい部分までしっかりと写すタイプです。何度も改良し続け、FA世代になって大きく開花したようです。

 自然な感じに写る良いレンズですから、何でもそのまま写し出します。逆に、癖のないのが欠点にも見えます。癖の強いレンズが好きなので、出番は少ないです。夜の撮影で、自然な感じに写したいとき、真っ先に選ぶレンズです。

作例:smc PENTAX-FA 50mm F1.4 smc PENTAX-FA 50mm F1.4

AUTO REVUENON MC 50mm F1.4

 AGFA COLOR 50mm F1.4の兄弟レンズで、Kマウントである点も、筐体デザインも同じです。レンズ正面の銘板だけが異なるようです。日本製ですが、メーカーは分かりません。いろいろ調べた結果、同じKマウントのAUTO CHINON 50mm F1.4と似ている部分が一番多いので、このチノンがもとになっているものと推測しています。ピントリングにアタリがあり、全体的に汚れとスレがひどかったので、良品相場の1/3程度で入手できました。

 写りに問題はなく、AGFA COLORと同にように、開放では非常に柔らかく仕上がります。同じスペックの他のレンズと比べて、より多く柔らかいので、柔らかさを大きく出したいときに便利なレンズです。明部の周囲にフレアーが出て、良い雰囲気を演出できます。かなり柔らかいと言っても、ソフトフォーカスのレンズほどではありません。もっと弱い柔らかさですから、開放から安心して使えます。

 M42マウントの方が使いやすいので、マウント部分だけ改造しようかと悩んでいます。かなりボロいレンズのため、改造は躊躇しないのですけど、まだ実行してません。フォーサーズ機で使う限り、Kマウントでも困らないからですね。

SMC TAKUMAR 50mm F1.4

 ペンタックスの有名な古い標準レンズで、開放での柔らかい描写と、ピント位置から近いところでのぼけの美しさが魅力です。

 遠景を開放で撮ると、全体が少しだけ柔らかい感じに仕上がります。柔らかさの程度が少しで、上品な感じなのため、良い雰囲気に写せます。近接でも同様の傾向があり、柔らかさは少し増します。

 中間リングを付けてさらに寄ると、輪郭がぼやけた感じに変わります。ピント位置から少し外れた部分が非常に美しいため、柔らかい描写のマクロとして使うと、ふんわりした写真が得られます。マクロ用レンズとは正反対の雰囲気ですね。この写し方にハマってしまいました。ペンタックスのヘリコイド中間リングと組み合わせれば、かなり寄れて使いやすいです。

作例:SMC TAKUMAR 50mm F1.4 SMC TAKUMAR 50mm F1.4 SMC TAKUMAR 50mm F1.4

AUTO CHINON MCM 55mm F1.7 MACRO

 普及タイプの標準レンズであるAUTO CHINON 55mm F1.7がもとになっています。光学系は同じままヘリコイドを繰り出し量の大きなタイプに変更し、0.28mまで寄れるレンズとして仕上げたもののようです。マウントも、元のレンズと同じM42でした。

 このようなタイプのレンズなので、元になったレンズと同様に、中遠景で使う限りは優秀なレンズです。逆に、寄れば寄るほど写りが甘くなり、マクロレンズとは言えません。ゆるい写りのマクロという、マクロの常識から外れたレンズです。

 中間リングを付けてさらに寄ると、もっと甘い写りになります。柔らかい写りのSMC TAKUMAR 50mm F1.4と比べても、もっと甘い写りです。どうやら、近接撮影で性能が大きく劣化するレンズのようです。それだけに貴重な存在と言えるかも知れません。

 甘い写りの積極的に利用するため、ペンタックスのヘリコイド中間リングを付けて、マクロに利用しています。ただし、甘すぎる写りのため、利用機会はかなり少ないです。もっと使いたいとは思うのですが、なかなか難しいです。

 以上はマクロとして評価した場合の話。標準レンズとして評価すると、凄く便利なレンズといえます。中遠景の写りが良いのに加え、寄ろうと思えば寄れるレンズなのですから。標準レンズを使っていて、もう少し寄れたら便利なのにと思う機会が多い人には、最高のレンズとなるでしょう。

 こんなに魅力的なレンズなのに、数が少ないようで、めったに見かけません。ところが、たまにオークションに出ると、注目されないためか安く落札されます。見付けたら安く買えるレンズと言って構わないでしょう。でも、ただ一度だけ、入札が激しく争われて、凄い値段で落札されたことがあります。滅多に出ないレンズなので、相場を知らない人がほしいと思うと、価格が跳ね上がってしまう典型的な現象でした。と言いつつ、私も同様な形で買っているかも知れません。他人事とは思えない現象でもありました。

作例:精子、昇天

ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 MACRO

 フォーサーズ用の高性能マクロです。F2と明るいマクロなのに、開放から安心して使える描写性能を誇ります。デジタル専用設計だけあって、古い高性能レンズと比べても、細かい部分の描写が勝っています。

 シャープなレンズは後ぼけが汚い傾向がありますが、このレンズには当てはまりません。ぼけは全体的に美しい方で、特にマクロ領域では綺麗にぼけてくれます。ぼけの多いマクロ撮影では、レンズの描写がシャープだと、ピントの合った箇所がより際立ちます。さらにぼけが美しいと、写真全体としての魅力も増します。そういった作品が撮影できる、非常に優秀な現代のレンズといえるでしょう。当然ながら、柔らかい作品作りには向きません。

 ズイコーデジタルは、途中から円形絞りを採用し始めました。これは最初に登場したレンズなので、円形絞りではありません。それでも開放からF2.5までは何とか円形に近いので、丸ぼけを保ちながら少しでも絞りたいときは、F2.5で撮影するとよいでしょう。どこまで円形とみなせるかは個人の主観なので、自分で確認してから使ってください。

 私にとって最大の欠点は、1/2倍(35mm版換算で等倍)までしか寄れないことです。等倍まで寄れる中間リングも持っているのですが、1/2倍付近で撮影するときに、中間リングの付け外しが頻発するので、だんだんと使わなくなりました。マクロレンズを多く持っているので、描写を除くと代わりは何本でもありますから。

作例:ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 MACRO

Steinheil Macro-S-Quinon 55mm F1.9

 レンズ単体で1.4倍まで撮影できる標準マクロです。マクロ用に設計されたレンズではなくて、標準レンズにダブル・ヘリコイドを付けてマクロに仕上げたレンズとのことです。ですから、マクロ用のレンズよりも近接での描写は劣ります。それでも、近接撮影での画質低下が少ないレンズのようで、等倍以上でもなかなかの写りを見せてくれます。

 フォーサーズ機に付けると、2.8倍のマクロに変身します。かなり寄って撮るときでも、中間リングがまったく不要になって、非常に便利です。中遠景の開放だと後ぼけがうるさいですが、マクロ領域では美しいのも良い点です。

 私の場合、35mm版換算で等倍から3倍近くの領域で撮ることが多いです。このレンズを使うと、中間リングを使わずに済みます。とても便利で手放せません。他のレンズの出番が大きく減ってしまいました。

 このレンズは、ほとんどがエキザクタマウントです。M42もあるのですが、非常にレアなのでめったに見かけません。でも、何とか入手できました。Sの付かないタイプですけど。

作例:Steinheil Macro-S-Quinon 55mm F1.9 Steinheil Macro-S-Quinon 55mm F1.9 Steinheil Macro-S-Quinon 55mm F1.9

MC ROKKOR-PG 58mm F1.2(不良個体)

 レンズ内にゴミがかなり多く入っているので、良品相場の1/3以下で購入したレンズです。ゴミの混入以外は問題なく、普通に使えました。

 実写してみて驚いたのですが、開放で柔らかく、しかも非常に美しい画像が得られました。後から、難有り品を同じ価格で入手して比べてみたら、それは正常だと判断できる写りでした。1本目の個体だけが特別で、どこかが変になってしまったため、柔らかくて美しい描写に変貌したようです。

 このレンズによる柔らかくて美しい画像は、他のレンズでは出せません。何を撮影しても柔らかくて美しく仕上がるため、ちょっと困る場合もありますね。

 SRマウントなので、フォーサーズ機には何とか付けられますが、使い勝手は悪いです。アダプタからレンズが外れそうになり、落とすのが怖くて、安心して撮影できません。特殊な写りの不良個体なので、落として特性が変わったら、もう二度と手に入れられないからです。という訳で、出番は減っています。マウントを改造した方が良いかも知れません。

作例:MC ROKKOR-PG 58mm F1.2 MC ROKKOR-PG 58mm F1.2 MC ROKKOR-PG 58mm F1.2

MACRO YASHINON 60mm F2.8 TOMIOKA

 単体で等倍まで寄れる、古い標準マクロです。非常に有名で、かなり人気のあるレンズです。マクロ領域では良く写るレンズとして、描写には定評がありますね。筐体のスレが多い個体だったので、安く入手できました。レンズ玉は綺麗でした。

 実写してみると、噂どおりの描写でした。ピントの合った箇所が浮き出るように写るので、どうしても開放で使ってしまいます。フォーサーズ機だと深度が少し深めなので、マクロ領域では使いやすいです。

 私の場合、マクロレンズを数多く持っているのに加え、明るい標準レンズをマクロとして使ったりするので、このレンズの出番は少ないです。

作例:MACRO YASHINON 60mm F2.8 TOMIOKA

New FD 85mm F1.2 L + 補正レンズ付の安物アダプタ

 New FD時代の高級Lレンズで、見るからに存在感があります。レンズ玉や筐体が綺麗なのに絞りが粘っていたため、良品相場の約半額で購入できました。FDマウントはフランジバックが短いので、無限遠が使える補正レンズ付きのマウントアダプタでEOSに装着します。

 入手したマウントアダプタが安物だったので、開放ではかなり柔らかい写りになりました。なかなか上品な柔らかさのため、一発で気に入ったわけです。レンズ本来の写りは知りませんが、こうした組み合わせも面白い結果になると妙に感心しました。

 アダプタが安物だったので、補正レンズを入れてるにもかかわらず、ほんの少しですが無限遠に達しません。仕方がないので、レンズ本体を少し分解してオーバーインフに調整しました。これで無限遠が使えるようになって一安心です。

 安物のアダプタですが、New FDレンズの絞りリングが使えるような機能は持っています。New FDレンズは、特別な機能のないアダプタに装着すると、絞りリングを動かしても絞りは開放のままです。このアダプタには外側にリングがあり、それを回すと実絞り状態(絞りリングと同じ絞りになる状態)に変えられます。これがないと実用的ではないので、機能的には良いアダプタです。

 肝心の写りですが、開放ではかなり柔らかく、ハイライトの周囲にフレアーが出ます。ソフトフォーカスレンズまでは柔らかくないですが、それに近い傾向を持っています。効果がかなり小さいソフトフォーカスのレンズと言っても間違いないでしょう。ソフトフォーカスの写りと同じ傾向ですから、ピント位置ではピントがまあまあ出ていて、被写界深度が深めになっています。1.5段絞ったF2でも柔らかさが残っていて、F2.8まで絞れば普通のレンズと同じに変わります。

 ソフトフォーカスのレンズと一番異なるのは、後ぼけです。ソフトフォーカスなら後ぼけは美しく整っていますが、このレンズは汚い感じです。ピント位置から少し離れた箇所で目立つため、避けるように注意しながら使う必要があります。

P. ANGENIEUX 90mm F1.8 TYPE P1

 手持ちのスチル用アンジェニューの中では、一番好きなレンズです。開放では非常に柔らかく、明部の周囲に強いフレアーが生じます。また、全体的に描写が乱れ気味で、明らかに悪い写りに見えます。

 最大の特徴は、開放において、ピント位置から少し外れたところの描写です。言葉では表現しにくい、かなり変わった状態に写ります。それが独自の雰囲気を生み、このレンズならではの世界を作り出します。同50mm F1.5も独特な写りですが、それよりも使いやすい癖を持っています。

 気に入っているレンズなので、持ち出す機会は多いです。でも、狙ったように仕上がる機会は少なく、なかなか作品に結びつきません。とても難しいレンズだと思います。

ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2

 100mm級のマクロを数多く持っている中、写りの良さで選ぶならダントツの1位がこのレンズ。F2という明るさ、遠景からマクロ領域まで安定した写り、ぼけの美しさなど、欠点が見付かりません。あえて挙げるなら、マクロとして1/2倍までしか寄れないことぐらいでしょうか。それほど良いレンズなのです。

 このレンズを持っているので、発売前には買う気満々だったMakro Planar T* 100mm F2の購入を中止してしまいました。サンプル画像を観て、この90mmを持っていれば、買っても使わないと判断したからです。

 魅力的なレンズにありがちですが、中古なのに高値で安定しています。オリンパスがE-1購入者にOMアダプタを無料で配布したためでしょうか。私は、値上がり前に並品を安く買えたので良かったです。あくまで勝手な予想ですけど、ズイコーデジタルの100mmマクロが登場したら値下がりするでしょう。そのときが購入の良い機会かも知れません。

 90mmでF2ですから、普通の明るいレンズとしても使えます。重さを気にしなければ、幅広く使える優秀なレンズとして万人にお薦めできます。

作例:ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2 ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2

ELICAR V-HQ MACRO 90mm F2.5(おそらく不良個体)

 レンズ単体で等倍まで寄れる、日本製の90mmマクロです。海外での評価は高いのですが、数が少ないようで、値段も高く、入手に手間取りました。でも、箱入り新品同様の個体を、かなり安く買えたのでラッキーでした。

 実際に写して驚きました。開放ではかなり甘い描写なのです。しかも、中遠景を写したときに、独特の乱れ方をしてしまいます。新品同様なのに、世間的には大ハズレの個体だったようです。

 でも、それが大いに気に入りました。独特の乱れ方で写るので、変わった雰囲気に仕上がってしまいます。紅葉の時期に使ってみたら、紅葉の木々が良い雰囲気で写ることに気付きました。紅葉以外ではあまり試していませんが、面白い写真に仕上がりそうなので、いろいろな被写体を、ぜひとも試してみたいと思っています。

作例:ELICAR V-HQ MACRO 90mm F2.5 ELICAR V-HQ MACRO 90mm F2.5

SUPER-KOMURA 100mm F2.5(不良個体)

 マウントがユニオート(ユニではなくユニオート)交換式のコムラーです。少し明るい中望遠で、0.9mまで寄れて使いやすい。あまり出てこないレンズみたいなので、見かける機会は少ないです。ただし、あれば値段は安く、見付けたら無理せずに買えるでしょう。

 私が購入した1本目の個体は、開放でとても柔らかく、レトロな雰囲気に仕上げてくれます。この写りが正常と思い、予備として2本目を入手したところ、もっとまともな良い写りでした。1本目だけが悪い特性で、柔らかく写る個体だったようです。1本目の個体は、私にとって当たりで貴重品ですね。壊さないようにしなくては。

 付けているマウントはM42です。開放では、柔らかいと同時に少し乱れ気味なので、乱れが目立たないように注意しながら使っています。柔らかいレンズを何本か持っているのでは、出番は少ないですね。

Meyer Trioplan 10.5cm F2.8

 中望遠のTrioplanと言えば、100mm F2.8が一般的です。そのレンズの古いタイプでも10cmで、焦点距離は同じです。ところが、10.5cmのTrioplanもあり、数が少ないためレア物となっています。そんな貴重なレンズなのに、何と、オークションで安く落札できてしまいました。10cmより安価な100mmの良品相場と同じぐらいの価格でです。Trioplanは写りが悪いとの評判が広まっていますから、レア物でも人気がないのでしょうね。ちなみに、マウントはエキザクタでした。

 見た目は10cmのTrioplanとほぼ同じです。焦点距離が少し長いため、最短撮影距離が0.1m伸びた1.2mになってます。レンズの表記がなければ、見分けるのは難しいと思います。

 実際に使ってみたら、写りが気に入りました。古いレンズらしく、ハイライトの周囲に軽いフレアーが生じます。また、逆光にも極端に弱いです。でも、ハレ切りしながら使ったら、レトロな感じの優しい写りでした。何とも言えない雰囲気が出せるので、一発で気に入ってしまいました。100mmのTrioplanも好きなレンズですが、こちらのほうが好みの雰囲気に仕上がるので気に入ってます。

Ai AF DC NIKKOR 105mm F2D / 135mm F2S

 ぼけ味が調整できるDC機能を持った、ユニークなレンズです。通常の絞りリングとピントリングの他に、ぼけ味を調整するDCリングを持ってます。このリングで調整すれば、前ぼけと後ぼけのどちらかを美しく整えられます。また、DC機能をさらに強めれば、ソフトフォーカスに変身です。もちろん、DCリングを標準位置(調整なしの位置)にしたら、現代的でシャープな明るいレンズとしても使えます。残念なことに、提供されている焦点距離が105mmと135mmの2種類しかありません。85mmがあれば良かったのに。

 もともと高価なレンズなので、中古として出てくる数も少ないですし、出てきても安価ではないようです。程度の悪い中古がめったに出ないことも、中古価格が高い理由でしょう。でも、じっくりと待ってたら、まあまあですが安い中古に巡り会えました。レンズの細かな種類としては、105mmは1種類だけ、135mmはDタイプと非Dタイプの2種類があります。135mmのほうは当然、少しでも安い非Dタイプを購入しました。

 ぼけ味を重視し、ソフトフォーカスが好きな人なら、手に入れて絶対に損しないレンズです。1本のレンズで、シャープな写りだけでなく、前ぼけか後ぼけのどちらかを美しく仕上げた写りも、ソフトフォーカスの写りも容易に作り出せます。また、一般的なソフトフォーカスのレンズに比べて、ソフトの度合いが弱い点も使いやすいです。さらに、105mmレンズで0.9m、135mmレンズで1.1mまで寄れるのも魅力でしょう。おまけに明るいレンズですから、かなり幅広く使えます。

 実際に使ってみると、良い点ばかりではありません。ぼけ味を調整したとき、ある欠点が見付かります。気付きにくい小さな欠点ですから、普段から画質をシビアに見ている人でないと気付かないかも知れません。どんな欠点なのかは、ネット上のサンプルなどを観て探してください。何でも教えてしまうと考えなくなるので、軽い宿題としましょう。もし気付かないようなら、気付かないまま使ってて構わないと思います。

 ソフトフォーカスのレンズとして評価すると、かなり整った写りをする特徴があります。ぼけ味が良くなるように設定したときの写りも、古い柔らかいレンズと比べて整っています。私の場合、少し乱れ気味の写りが好きなので、このレンズの出番はあまり多くありません。ただし、雪が降った日には真っ先に選ぶレンズですね。過去に撮影した経験から「雪が降ったらDCニッコール」と決めているからです。このレンズの雪の描写が飽きるまでは、この決めごとを変えないつもりです。

作例:Ai AF DC NIKKOR 105mm F2D Ai AF DC NIKKOR 135mm F2S

SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8(不良個体)

 何種類か存在する135mm F1.8の中で、一番軽い部類に属するレンズです。他の多くが82mmのフィルター径なのに、このレンズは77mmと少し小さめです。

 レンズ玉は綺麗なのに、マウント部分が壊れていたので、良品相場の1/3以下で購入できました。YSマウント方式のため、マウント部が壊れていても大丈夫。手持ちのM42用YSマウントと交換して、問題なく使えています。

 極端に安かった理由は、マウント部分が壊れていたためだけではないようです。開放での描写が非常に悪く、明部の周囲に大きなフレアーが発生します。画質の悪い個体だったので安かったのでしょう。でも、私にとっては宝物ですね。晴れの日に逆光気味で使えば、幻想的な写真を生み出してくれます。135mmの中では、一番のお気に入りとなりました。

 フォーサーズ機で使うと、標準品のフードでは遮光効果が不足するので、ヤシコン用のメタルフードとステップアップリングを組み合わせて使ってます。

 唯一の欠点は、1.8mまでしか寄れないこと。フォーサーズ機に付けると実質的に2倍寄れることになるので、何とか助かってます。もし寄りたいときは、ペンタックスのM42ヘリコイド中間リングの出番です。

作例:SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8 SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8 SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8

Soligor 135mm F2.8 Telephoto

 プリセット絞りのSoligor 135mm F2.8は何種類かありますが、筐体が銀色の少し変わったタイプです。少し珍しいようで、店頭では見かけたことはありません。オークションでは何度か出品されています。マウントがエキザクタという理由なのか、あまり人気がないようで、かなり安く落札できました。

 開放での写りに特徴があります。ピント位置のハイライトにフレアーが生じ、何とも言えない美しさが広がります。また、後ぼけの柔らかさは見事なもので、これほど美しい柔らかさは他に見たことがありません。ぼけの美しさで定評のある135mm STFを越えた、美しくて優しいぼけを生み出します。私が持っている数百本のレンズの中で、STFのぼけを越えているのは、このレンズだけです。もちろん欠点はありますが、それを回避しながら使えば最高のぼけが得られます。

 こうした特長を生かすには、逆光での撮影が適しています。たとえば、人物を逆光で撮るとき、人物の輪郭に白い枠線が生じます。それだけでも十分に美しいのですが、このレンズで写すと、白い輪郭線が非常に柔らかく美しい線に変身します。実際に写した写真を観たら、誰もが惚れ惚れするでしょう。

 普通に評価すれば写りの悪いレンズですが、写した画像の美しさと柔らかさは非常に魅力的です。特にお気に入りのレンズとして、ときどき撮影に使ってます。STFを越えたぼけが楽しめる、本当に素晴らしいレンズです。

作例:SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8 SIGMA SIGMATEL YS 135mm F1.8

Soligor 135mm F2.8(不良個体)

 プリセット絞りでTマウントの古いレンズです。ソリゴールの135mm F2.8は何種類もありますが、これはたまに見かけるタイプで、いつでも安い価格です。

 試しに1本買ってみたら、魅力的な写りで感激しました。あまりにも気に入ったのに加え、見かけたときは毎回安いので、予備が必要だと思い、追加で2本も買いました。しかし、2本目と3本目は良く写るレンズで期待外れでした。おかげで、1本目だけが不要個体と判明したわけですけど。

 不良個体の写りは開放に特徴があり、被写体の明るい部分で際立ちます。綺麗ににじんでくれて、美しい画像を生み出すのです。全体的にはコントラストが低下するのですが、点光源はキラキラ感を演出できます。点光源などの光を含んだ被写体に用いると、幻想的な雰囲気を作り出せます。

作例:Soligor 135mm F2.8

描写が変な不良個体は、超々々貴重品

 ここまで紹介したレンズの中には、どこかが変になっているために、描写が悪い個体も何本か含まれています。不良個体のレンズが必ずしも魅力的な写りではありませんが、中には驚くほど面白い描写のものも含まれています。ここで紹介しているのは、そんな魅力的な写りのレンズですね。

 こうしたレンズは、超々々貴重品だと思っています。何しろ、この世で1本しかない描写だからです。あえて表現するなら「生産本数が1本だけの貴重なレンズ」と言えるでしょう。生産本数が1本ということは、世界で一番少ない生産本数のレンズですね。

 もう1つ、大きな特徴があります。正常なレンズであれば、たとえ生産本数が1本であっても、同じものが再び作れます。また、壊れたときには修理が可能です。その意味で「生産本数が1本だけど、やろうと思えば生産本数を何本でも増やせるレンズ」なのです。

 ところが、どこか変になっているレンズは、修理ができませんし、壊したら再現するのは無理です。分解して組み立てたら写りが変わるので、分解もできません。つまり「生産本数が1本で、永遠に1本しかないレンズ」なのです。また、ぶつけて写りが変わる可能性もあるため、慎重な扱いも必要です。もし壊してしまったら「この世から消えてしまったレンズで、将来も作れないレンズ」となります。少し大げさですが、冷静に考えるとそうなんですよ。

 以上の話から、いかに貴重かが分かると思います。どこかが変になって描写が面白いレンズは、壊さないように注意しながら使わないといけないのです。せっかく巡り会えた貴重なレンズですから、大事に使いたいと思います。

魅力的なレンズは不良個体に多い

 私が所有しているレンズ一覧を見れば、かなり古いレンズも持っていることが分かるでしょう。その中には、癖玉と言われるレンズも含まれています。そんなレンズを持っているのに、不良個体ばかり気に入ってるのを不思議に感じる方もいらっしゃると思います。その理由を簡単に説明しましょう。

 好みのレンズとなるための最大の理由は、それが実際の作品作りに役立つかどうかです。Dallmeyer Super-Sixといった癖玉は、確かに変な写りはしますけど、作品として仕上げるに向いているとは言えません。少なくとも私の表現の方向性ではです。それよりも、私が好む方向に乱れたレンズの方が、面白い作品を生み出してくれます。そうした方向に含まれるレンズを選んだら、たまたま不良個体が多かっただけなのです。どんな種類のレンズがこのみの方向に多いのか、あえて順番を付けるとすれば次のようになってます。

1、一部の不良個体
2、かなり古い癖玉(Dallmeyer、Angenieuxなど)
3、割と新しい癖玉(コムラーの明るい玉、F1.2標準など)
4、韓国製など技術が発展途上のために生じた、写りの悪い古玉
(注:写りの良いレンズは除いて)

 不良個体のレンズが、すべて気に入っているわけではありません。当たり前ですけど、気に入らない不良個体の方が圧倒的に多いのが現状です。ただし、私の場合は、不良の許容範囲が広いのと、ジャンクとして買っているレンズが多いので、気に入った不良個体が多くなってしまいました。許容範囲が広いのが、一番大きな理由ですね。いろいろな表現を実現したいと思っていますから、許容範囲はどうしても広くなってしまいます。その許容範囲だと、気に入る不良個体は、50本に1本ぐらいの割合です。

 こういう現状ですので、レンズはジャンクを優先して買うようにしています。面白い不良個体と巡り会えるのを願いつつ。

(作成:2007年8月22日)
(更新:2007年8月23日:作例へのリンクを追加)
(更新:2008年1月16日:魅力的なレンズは不良個体…を追加)
(随時:レンズまたは作例の追加)

(作成:2007年8月22日)
(更新:2007年8月23日:作例へのリンクを追加)
(更新:2008年1月16日:魅力的なレンズは不良個体…を追加)
(随時:レンズまたは作例の追加)
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