マイクロフォーサーズ機に、一眼レフ用の各種MFレンズを付ける場合、パナソニック製のフォーサーズ-マイクロフォーサーズのマウントアダプタを利用しています。このアダプタの厚みは実測で19.3mmもありました。
これだけの厚みがあるなら、ただの空洞ではなく、アダプタ全体をヘリコイドにすることも可能です。そうなれば、アダプタで接続する全部のレンズで、通常よりも大きく寄れます。マクロ好きにはノドから手が出るほどほしいアダプタですね。一応、宮本製作所さんにお願いしましたが、価格や販売数を考慮すると、実際に販売するのは難しそうとのことでした。
こんなことを考えていたとき、非常に役立つ部品が発売されました。M42ヘリコイドで有名なトミーテックからです。マイクロフォーサーズ用のカメラマウントで商品番号は5011、12月25日に発売されました。もちろん、速攻で入手して使い始めました。これがあれば、M42-マイクロフォーサーズのヘリコイド付きアダプタが簡単に作れます。
5011には、同じトミーテック製の変換アダプタ7843を接続します。これだけで、M42-マイクロフォーサーズのアダプタに仕上がります。結合したときの厚さ(正確には光路長ですが、分かりやすく一般的な表現を用いています。以下同様)は、たった7.5mm。
これにM42ヘリコイド7842を付けると、ヘリコイド付きM42-マイクロフォーサーズのアダプタができあがります。M42ヘリコイドの厚さは15~25mmですから、3つを結合した状態の厚さが最短22.5~最長32.5mmです。
パナソニック製フォーサーズ-マイクロフォーサーズのアダプタは、実測で厚さが19.3mm。M42-フォーサーズのアダプタが厚さ約7mmですから、M42-マイクロフォーサーズのアダプタは厚さ26.3mmとなります。
上記の自作アダプタは最短で厚さが22.5mmですから、3.8mmのオーバーインフ。無限をかなりオーバーしますが、とくに問題はありません。最長で厚さが32.5mmですから、6.2mmも被写体に寄れることになります。期待したよりは少ないですが、まあまあの量ではないでしょうか。
実は、もっと適したヘリコイド部品があります。ペンタックスが昔販売していたヘリコイド中間リングです。同じ目的のM42用ヘリコイドで、厚さの範囲が17~31mmと、トミーテック製より少し厚いのです。さらに、ヘリコイドの伸びる量が14mmで、4mm多くなってます。
同様に計算します。3つ結合した状態での厚さは24.5~38.5mmです。最短の厚さ24.5mmでは、1.8mmのオーバーインフ。最長の厚さ38.5mmでは、レンズの最短撮影状態より12.2mmも余計に寄れることになります。かなり寄れる値です。
ペンタックス製のヘリコイドには、もう1つ利点があります。トミーテック製よりも頑丈そうに作られているため、重いレンズを付けたときに安心感があります。この時代の部品は、重いけど頑丈に作るのが当たり前だったようですから、時代が生んだ性能でしょう。
というわけで、ペンタックス製を持っていればそれを使い、持っていなければトミーテック製を使うというのが、良い選択となります。
では、どれほど寄れるのでしょうか。具体的な最大撮影倍率は、どれぐらいになるのでしょうか。
それは、使用するレンズの焦点距離によって違います。同じ長さだけレンズを繰り出したとき、画角の広いレンズほど最大撮影倍率が大きくなります。つまり広角レンズほど寄れるのです。
ペンタックス製のヘリコイドを用いて、標準レンズを試してみました。選んだのはSMCタクマー50mm F1.4です。レンズとアダプタの両ヘリコイドを使って寄ると、ピント位置での被写体の横幅が約45mmとなりました。ライカ版換算で等倍マクロには及びませんが、1/2倍マクロを上回っています。2/3倍よりも寄れているので、1/2倍マクロより寄れて、等倍マクロに近い最大撮影倍率ですね。
広角レンズなら、もっと寄れます。最短撮影距離が25cmのSUN製24mmレンズで試してみました。もっとも寄った状態で、ピント位置での被写体の横幅が約27mmです。ライカ版換算で等倍には及びませんが、かなり近付きました。ペンタックスのヘリコイドを用いた組み合わせでは、この辺が限界のようです。
逆に望遠レンズなら、大きな恩恵は得られません。それでも、ライカ版の標準レンズ(フォーサーズでは100mm相当の中望遠レンズ)でこれだけ寄れたら、利用価値は非常に大きいでしょう。
このヘリコイド付きアダプタは、もう手放せなくなりました。どんどん寄って面白い写真を撮りたいと思います。
ヘリコイドを縮めた状態でオーバーインフになることは、ヘリコイドの伸びを最大に生かしてない点でデメリットです。しかし、何事にも別な面はあるもので、メリットとなる使い方も存在します。
そのメリットとは、パクセッテ用のレンズが無限遠から使える点です。パクセッテのマウントは、フランジバックがM42よりも約0.5mm短く作られています。もともとネジ径が異なるので、M39-M42変換リングを付けてM42ボディに装着しますが、フランジバックの違いで無限遠に達しません。
ところが、今回のヘリコイド付きアダプタを用いると、アダプタに0.5mm以上のオーバーインフがありますから、パクセッテ用レンズでも問題なく無限遠まで使えます。加えて、ヘリコイドで大きく寄れるわけですから、マクロレンズのようにも使えるわけです。
実際に、手持ちのLUXON 50mm F2で試したところ、若干のオーバーインフを確認できました。パクセッテ用レンズでもオーバーインフ状態ですから、無限遠も問題なく使えます。これも嬉しい点ですね。
この方法の唯一の欠点は、レンズの装着位置が正しく上にならないこと。レンズの絞り表示や距離目盛りが真上に来ません。ペンタックス製ヘリコイドでは、真下に近いほどでした。
仕方がないので、トミーテック製のM42ヘリコイドに含まれているM42スペーサー(厚さ約1.5mm)を、ペンタックス製ヘリコイドと変換アダプタ7843の間に入れてみました。そうしたら偶然にも、ほぼ真上に来てくれました。オーバーインフの程度も減り、さらに寄れる状態へと変わり、最高の結果となりました。
ペンタックス製のヘリコイドは重量感があり、カメラに付けた状態を上から見ると、レンズが伸びたような感じで格好も良くなりました。ただし、ヘリコイドを伸ばした状態だと、格好は少し悪くなります。
M42のようなスクリューマウントでは、少し変わった寄り技が使えます。マウント部分を少し緩めることで、レンズ全体が繰り出しますから、その分だけ余計に寄れるわけです。M42ユーザーには、けっこう知られている技だと思います。今回のアダプタでは、緩める箇所が2つ(M42ヘリコイドの両端)もありますから、通常より2倍も緩められます。
ただし、あまり多く緩めると、レンズが外れて落ちてしまいます。緩めすぎないように、くれぐれも注意してください。