イタボガキからムール貝 -2021.03.21up

今回はイタボガキについて書いてみたい。内容は以下のとおりである。

1.初めてのイタボガキ

2.ヒラガキは、実はロンドンで食べていた

3.国内産イタボガキとの出会い

4.イタボガキからムール貝へ


1.初めてのイタボガキ

昨日(2011-02-25)、山口県宇部から「イタボガキ」が届いた。イタボガキは「板甫牡蠣」とも書くが、学名は「Ostrea denselamellosa (Lischke, 1869)」である。

このイタボガキとは↓のような牡蠣である。普通に見る牡蠣とはちょっと形が違うでしょ。

昔は日本のいたるところにいて、東京湾にもいたらしいが、今では瀬戸内海の極一部に生息しているだけで、ほとんど絶滅状態であると思われている。

今回は、山口の宇部沖で獲れたイタボガキを分けていただけるとの事で、早速送ってもらって昨日到着したのです。

一枚、アップしてみましょう。。

普通、流通しているのは「マガキ」ですが、マガキとは全然違いますね!それに、岩牡蠣(イワガキ)とも違いますね〜〜

実は、マガキの学名は、Crassostrea gigas で、イワガキは、Crassostrea nippona といって、これらはいずれも Crassostrea属、クラソストテラ属(マガキ属)である。

ところが、イタボガキは Ostrea属(イタボガキ属)で、同じ牡蠣でも分類学的にはちょっと違うのである。。

フランスガキとかブロンとか言われる種がある「ヨーロッパヒラガキ」は、その学名を Ostrea edulis といって、実はイタボガキの仲間なのである。

尚、1970年頃フランスでは、このブロンがウイルス感染?で絶滅寸前になってしまい、日本からマガキの種苗を輸入して対応したという経緯がある。なので、現在では、フランスの牡蠣は、そのほとんどがマガキである。大震災が起こって東北でカキ養殖にも大きなダメージがあったが、その際にはフランスの牡蠣関係者が応援に来たという話を聞いたことがあるが、これは、かつてフランスが困った際に日本から下記の種苗が行って助けた事があったからでもあるとのことだ。

私自身は、10年ぐらい前にロンドンのオイスターバー「Bentley's Oyster Bar」で、「Dorset Oyster」という「ヒラガキ」(丸っこくて平べったい形をしている)を食べた(詳しくは下記に記載)。これがヨーロッパヒラガキだったのだが、その味わいが全然違っていたのを鮮明に覚えている。泥臭いといってもよい様な重厚な味わいが特徴だった。

さて、イタボガキだが、どんなお味でしょう〜〜楽しみ〜

2

殻を開けると、このように殻の大きさの割には身が小さい。。貝柱は相対的にデカい!

愛用の包丁で貝柱を切ろうとするが、かなりしっかりした貝柱で、なかなか切れないぐらいだ。マガキとは全然違う。

パク!

マガキとは全然違う風味が口の中に広がります。コッテリ濃厚な味が詰まっています!やっぱりヨーロッパヒラガキと似てるな〜〜と、10年ほど前の記憶が蘇ってきます。。

一般的には、マガキの味の方が受けるだろうなぁ〜と思います。
でも、この個性!!どっちが…というより、これだけ違うと別物として味わうのが宜しい・・・と思いました。

まず滅多に手に入ることはないと思いますが、もしチャンスがあったら、心していただきましょう!
私は、イタボガキ!頑張れ!!絶滅するな!!!っとエールを送ります。

頑張れ、イタボガキ!

ps.

牡蠣は、進化的にはホタテから分かれたそうですが、イタボガイの殻の形は、エゾキンチャクガイ(ホタテの仲間)の殻の形を彷彿とさせます。ホタテから分かれたとすることに、なるほど〜〜っと思いました。

2. ヒラガキは、実はロンドンで食べていた

 上に書いたように、実は、ロンドンのオイスターバーでヨーロッパヒラガキを食べていた。1999年のことであった。その時は牡蠣のことなど良く知らなかったので、単にオイスターバーで生ガキを摘まみにビールでも飲もうと思って食べただけだった。

 その時はロンドン市内の滞在の前にウエールズに行ったり、オックスフォードに行ったりして何日も過ごしていたので、いわゆるイギリスの食に飽きていたのだ。言われているほど不味いとは思わなかったが、全般的に塩味きついなーと感じていた。ホテルの朝食バイキングでベーコンが美味しそうなので何枚も取ってきたけど、しょっぱ過ぎて1枚を食べ切ることができなくて残したりといった状況で、その頃には凄くイギリス食に疲れていた。

 それでロンドンに戻った際の晩飯には、どこかオイスターバーにも行こうと思ったのである。ホテルにあったレストラン案内をみると老舗のオイスターバーの紹介が載っていた。それほど遠くは無いので歩いていけるので、そこに行ってみるかと足を運んだのだ。ところがである、店内に入ろうとすると、ノータイはダメだという。エーッ、オイスターバーでネクタイ着用が必須かよ〜!?って思ったが、店の方針には抗えない。しかなたく店を後にして、さて、どうしようか?!

 何の当てもなく適当に通りを行くと、うまい具合にオイスターバーの看板を見つけた。
お〜ラッキーっと、そこへ行くと Bentley's Oyster Bar & Grill (Google MAP) とあり、なかなか良さげなレストランだ。それにノータイでもOKそうだ。

 テーブルについて、メニューでオイスターを見ると幾つか種類があったが、何が何だか分からない中、Dorset No.2 と書いてある牡蠣にすることにした。6個セットの皿があるみたいで15ポンドだったので、それとビールにした。しかし、高いなー

これがDorset No.2で、↓その時の写真である

 小さくて丸っこい生ガキが出てきて、へー、なんだか形が違うなーと思いつつ食べてみると、味わいも全く違っていた。泥臭いというかこってりしっかりした味わいである。

この辺りの経緯は、すでにHPにアップしてあった

 実は、これがヨーロッパヒラガキであり、ドーセット湾で揚がる牡蠣であり、イタボガキの近縁種だったという事は、それから10数年後に山口から届いたイタボガキを食べて知ったのである。

3.国内の養殖イタボガキとの出会い

 初めてイタボガキを食べてから、時にネット検索してみると、確か岡山で養殖しようとの試みがあることを知ったが、まだ流通はしていないようだった。その後、市場でもイタボガキをみることは全くなかった。もちろんオイスターバーのメニューにもない。まさに幻の牡蠣である。

 2016年の夏、東京で開かれたシーフードショーに行った。数多くのブースを回る中で大分県のブースに目が留まった。イタボガキの養殖のことが紹介されていたのだ。お〜、イタボ養殖をされているところがあった〜!!早速にいろいろお伺いすると、そこに居られたのがイタボ養殖をおこなっている岩本水産の社長さんだった。折角だからと名刺交換して、後日連絡を取りました。

 9月末に市場仲間で築地さよならのBBQの会を催すことになっていたので、その機会にイタボガキを皆さんに紹介しようと思い、岩本水産さんに連絡して送っていただけないかと相談した。OKとのことで、大量のイタボガキを購入させていただいたのだ。

 ただ、生食の保証はできないとのことで、さてどうしたものか?!そこで、太田市場の山こささんに連絡して、牡蠣の生食についての相談をした。なるほど!と思う情報をいただいて、更に、生産者の岩本水産さんにも養殖の状況などは伺った上で、総合的に判断して私は生食しても大丈夫との判断をした。私は何個食べただろうか、到着後、数日以上に渡って生でも沢山いただいたし、蒸しても焼いてもいただいたが全く問題はなかった。

 久々のイタボガキである。2011年以来だから、5年ぶりだろうか、久々にイタボガキの味わいを堪能したのでした。

4.イタボガキからムール貝へ

 岩本水産から大量のイタボガキが届いた際に、おまけでムール貝(ムラサキイガイ)を入れて下さいました。ムール貝の養殖もされていたんですね。イタボガキが届いて早速に比較的ご近所の市場仲間にも届けたのですが、その際に、頂き物のムール貝もお裾分けしました。大きなムール貝で、早速に酒蒸しにしていただきました。

 ムール貝に付いては、2002年だっただろうか、ベルギーに行った際に、ブリュッセルのレストランでワイン蒸しをいただいた。あちこちにワイン蒸しの看板が出ていて、黒いバケツのような鍋で大山盛で出してくれるのでした。

 それまでムール貝は食べたことは勿論あったけど、美味しい貝という認識は全くありませんでした。どっちかというと、余計なものぐらいの感覚で、美味しいと思ったことは無かったのです。ところが、ベルギーで食べたワイン蒸しのムール貝(ヨーロッパイガイ)は実に美味しかったので、正直、見直しました。

 それ以降、ムール貝の調理法も工夫したりで、いろいろなムール貝を食べるようになった。ちょっと列挙してみましょうか。

【国産のムール貝では以下の産地のもの】

  • 宮城産、愛知産、京都産、広島産などいろいろある

【海外からだと冷凍もので、】

  • カナダ、チリ、韓国、フランスなど
  • 最近では、カナダから活貝として来ているが、これはムラサキイガイとヨーロッパイガイの交雑種である。
  • フランスからはモンサンミッシェル産が原産地統制で来ている。

これら全て食べたことがあるが、そんな中、岩本水産さん養殖のムール貝が来たのである。

 単純に酒蒸しにしたが、仰天した!!
 ムール貝とは思えない素晴らしく美味しい貝だった。飛び抜けてます。
 ムール貝の概念を超えていて、これは別物です!!

この私の評価は、同じくお裾分けした市場仲間の方も同様であった。それ以来、私は毎年岩本水産さんにお願いして送っていただくことになった。

 岩本水産さんのムール貝は、いわゆる普通のムール貝とはあまりにも違うので、私は「ムール貝」と呼ばずに「豊前イガイ」(または、豊後イガイ)と呼ぶことを提唱している。

上記写真の右下の写真は、生食もしてみようと殻を開けたところだ。生食も美味しいが、後味にエグ味が少し残る。このエグミを消し去ってくれるお酒でも見つければ、岩本さんのムール貝は、お刺身でも十分に楽しめるるが、純米酒等々幾つか試してみたが、まだ見つかっていない。

ついでに、もう一枚写真をアップしよう。

これがミドリイガイである。
温暖化の影響で、海水温が上昇しており、真夏の海水温ではムラサキイガイは生きていけなくなってきた。そこへ登場したのが東南アジアで生息しているミドリイガイである。このミドリイガイは、岩本さんが送ってくれたものである。同じように調理しても食感が全く違う。身質にゴム感があるので、味わいとしてはかなり劣るのであった。

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