ツブ貝を食べよう!「テトラミン」に注意して… -2009.09.20Up ボクはツブ貝が大好きだ。特にマツブのお刺身は最高でアワビより旨味があって美味しい!肝も刺身で美味い。ツブ貝系は、黒バイ、白バイ、青ツブ、磯ツブ、灯台ツブなどなど色々あるが、どれもとっても美味しいのだ。
ところで、マツブ(エゾボラ)の唾液腺にはテトラミンという毒があるので切除して食べるようにとの記載を良く見かける。死に至る例はないが、目の見え方がおかしくなり、酔っ払うような症状が2、3時間程度続くらしい。ゆうこんの父は、よく焼きツブを食べて酔っ払っていたそうだ(笑)。。 このテトラミン(tetramine)という毒性物質だが、どんな化学構造をしているのだろうかと興味をもったが、なかなか書いてないのだ。そこで、かなりいろいろ突っ込んで調べてみたら、以下のような簡単な化学構造であることが分かった。忍者が使うマキビシみたいな構造だ。。。だから致命的というほどではないのかも…などとバカなことを思ったりもしたが、こんなに単純な化合物だった。 このテトラミンは、グツグツ煮ても壊れないので、火を入れても一定量食べると中毒になる。(死亡例は無いけど。) Fig.1. テトラミン [ tetramine ] (the tetramethylammonium ion present as an unknown salt) 弱い毒性だが、最小致死用量は、マウスの静脈注射で2mg/kg程度らしい。そのままヒトに当てはめるとすると、50Kgの体重のヒトで100mgテトラミンを静注される死に至ることになる。食べる場合(経口摂取)は、吸収率の問題もあるので、仮に約5割が血中に入ってきたとして、倍の200mgを一度に食べないといけないので、青ツブ一個当たり5mg程度のテトラミンガあるとして、40個の青ツブを一気に食べる必要がある。このぐらい食べると重体になるみたいだ。。。 【追記】2009.09.29 東京化成工業で、試薬として「Tetramethylammonium Chloride」や「Tetramethylammonium Bromide」を売っていた。つまり、塩化テトラミン、臭化テトラミンということで、水に溶ければいずれもテトラミンになる。ちなみに、お値段はいずれも25gで1500円と高くはない。それぞれの製品安全データーシート(MSDS)に急性毒性データーが載っていた。マウスよりも、ラットの方が毒になるみたいだが、食べた時の毒性は「LD50 50mg/kg」とのことなので、そのまま人に当てはめると、50Kgの体重の人が、テトラミンとして約2グラム食べると概ね死に至るということだ。その1/4で500mgだから、やっぱり、50個ぐらい食べると重体になりそうだ(青ツブ一個に10mgと多めに設定)。200個ぐらい食べると死に至るかもという具合みたいだ。。。
【追記終わり】 参考までにフグ毒のテトロドキシンの構造を紹介しておこう。 Fig.2 テトロドキシン ところで、エゾバイ科巻貝はバイ貝、ツブ貝として広く食用として流通している。代表的なところでは、マツブ(エゾボラNeptunea polycostata)、青ツブ(ヒメエゾボラNeptunea arthritica)、エゾボラモドキ(Neptunea intersculpta)、磯ツブ(エゾバイBuccinum shantaricum)、黒バイ(バイBabylonia japonica)、白バイ(エッチュウバイBuccinum striatissimum)、灯台ツブ(ヒモマキバイBuccinum inclytum Pilsbry)等がある。 さて、このテトラミンだが、 それに対して、エゾボラ属以外のエゾバイ属(Buccinum)等では、多くても0.3mg/g以下(ほとんどは0.01〜0.05mg/g)の極少量なので、実際には問題がないレベルだ。つまり、黒バイ、白バイ、灯台ツブはあまり気にしないても良いようだ。 唾液腺にテトラミンを持つこれらエゾバイ科エゾボラ属は肉食性の巻貝であり、他の貝に穴を開けてテトラミンを注入して麻痺したところを捕食するらしい。それに対して、 テトラミンをほとんど持たないエゾバイ属は腐肉食性であるため、基本的に必要ないものと推定されている。 エゾバイ科以外の巻貝では、テングニシ(有明海ではナガゲ)にテトラミンが高濃度で検出されている(文献1)。テングニシを食べる際には要注意である。 ところで、磯ツブ(エゾバイ)には、マウスの毒性試験で毒性が認められているが、これは熱処理によって毒性がなくなっている。すなわち、テトラミンとは異なる毒性成分があるものと考えられるが、塩茹でするなど普通に火を入れて食べれば問題はない。お刺身で食べてみようなどと冒険すると、何かが起こるかもしれない。。。 【貝毒の規制値】(農林水産省HPより) 日本では、昭和50年代前半に東北地方を中心に大規模な貝毒食中毒が発生して問題となり、規制値が以下のように設定された。県や生産者が定期的に検査して規制値を上回れば自主的に出荷停止したりしてる。 貝の可食部に含まれる貝毒量
1MU(マウスユニット)とは?
貝毒の症状だが、一般的な例としては以下のようだが、全てに当てはまるわけではない。
【参考文献等】 2)A case of tetramine poisoning by Neptunea intersculpta(エゾボラモドキによるテトラミン食中毒事例について)京都市衛生公害研究所生活衛生部 [2008年12月11日] 3)その他の貝毒: a) Neurotoxins from Marine Dinoflagellates: A Brief Review その他、魚貝類に関連する毒で有名どころを紹介しておこう。その化学構造の複雑さにビックリだが、これらは藻類などが作って貝の中腸腺や魚の内臓に蓄積されたりする。これらを摂取したらイチコロである。 ■ブレベトキシン: 神経性貝毒の一つ ■マイトトキシン: シガテラといわれる魚貝類による食中毒の原因物質のひとつ。タンパク質やDNAなどの高分子物質を除いて、分子量3422をもつ最大の天然化合物である。マウス腹腔投与でLD50 0.05μg/kg、フグ毒の200倍の毒性だ。 ■パリトキシン: アオブダイ食中毒の原因物質と考えられている。スナギンチャクがもつ毒性物質で、 フグ毒のテトロドキシンよりも強い。マウスに対して LD50 0.15μg/kg (テトロドトキシンはLD50 8μg/kg)。 以上
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