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2024.2.23mf更新
弁護士河原崎弘
土地使用貸借契約か賃貸借契約か
相談(不動産)の概要
私の祖父が、約50年前に、郷里にある屋敷の土地を、親戚の者に貸しました。親戚の者は、そこに建物を建て住んでいました。
初めの頃は、親戚の者は野菜などを送ってきたようです。約45年前からは、親戚の者は納税代理人として固定資産税を支払っていたようです。現在は、相手は私の父のところに、年1回、税金分として18万円を送ってきます。現在、この土地の税金は、年間20万円です。
相手は、18万円を賃料と考えており、「借地権がある」と言っています。
賃貸借契約なら、借地借家法により、借主は強く保護されると聞いて、父は悩んでいます。
この契約は賃貸借契約でしょうか、使用貸借契約でしょうか。現在、賃料が税金以下なら、使用貸借契約と考えていいですか。
相談者は、法律事務所を訪れました。
弁護士の回答
土地使用貸借と、賃貸借では、借主の権利が全く違います。賃貸借なら、借地借家法が適用され、借主は保護されますが、使用貸借では、借主は保護されません。
賃借権は、相続されますが、使用借権は相続されません。契約した期限がくると、賃貸借契約は法定更新されますが、使用貸借契約は終了します。
賃貸借契約では期限がきても解約に正当事由が必要なので、解約は難しいですが、使用貸借契約では、期限がくると契約は終了します
使用貸借か、賃貸借の区別は重要な意味を持ちます。
借主が、その不動産に賦課される固定資産税の一部を負担する場合でも、それが使用収益に対する対価たる意味をもつものと認めるに足りる特別の事情のないかぎり、使用貸借と認める妨げとなるものでないとして、借主と貸主との関係を使用貸借で
あるとするのが判決です。
使用貸借の借主が税金を支払っても、それは、通常の必要費として民法も認めています(民法595条1項)。
借主が税金を支払っても、契約が賃貸借契約に変わることはありません。
そこで、現在、相手の支払う金員が固定資産税額以下であれば問題ではないのではなく、「当初の契約が、税金だけを負担する」契約であるから、使用貸借契約なのです。相手がお金を支払うようになった当初の支払い金額と、その頃の固定資産税額を比較する必要があります。
当初から、借主が税金分を負担する契約なら、この契約は使用貸借契約でしょう。
判例
- 東京地方裁判所平成9年1月30日判決(出典:判例時報1612号92頁)
使用貸借契約における借主は、借用物の通常の必要費を負担する義務を負うところ(民法595条1項)、不動産の使用貸借
の場合、その公租公課は、特段の事情のない限り右の通常の必要費に属するものと解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第310号同36年1月27日第二小法廷判決・裁判集民事48号179頁参照)。
- 最高裁昭和41年10月27日判決(出典:判例時報464号32頁)
建物の借主が該建物を含む貸主所有の不動産に賦課された固定資産税等の公祖公課の支払を負担していたとしても、負担が建物の使用収益に対する対価の意味をもつものと認める特段の事情のないかぎり、当該貸借関係は賃貸借ではなく、使用貸借であると認めるのが相当であると判示した。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161