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2015.12.31mf

有責配偶者からの離婚請求についての判例

弁護士河原崎弘

有責配偶者からの離婚請求は、原則として、認めない

判例上、原則として、有責配偶者からの離婚請求は認められません。例外として、有責配偶者からの離婚請求が認められる要件は、概略、次の通りです。

判例の流れ

  1. 夫が他に愛人を持ち、それがもとで妻との婚姻関係継続が困難になった場合には、夫の側から離婚を請求することは許されない(最高裁昭27・2・19判決 民集6-2-110)。

  2. 夫が、妻との間の婚姻関係が完全に破綻した後に、妻以外の女性と同棲し、夫婦同様の生活を送ったとしても、これをもって離婚請求を排斥することはできない(最高裁昭46・5・21判決 民集25-3-408)

  3. 夫婦が相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方が極めて苛酷な状態におかれるなど著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一ことをもって、その請求が許されないとすることはできない。
    有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居期間が36年に及び、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである(最高裁昭62・9・2判決 民集41-6-1423)。

  4. 有責配偶者である夫からされた離婚請求において、事実審の口頭弁論終結時、夫69歳、妻57歳であり、婚姻以来26年余同居して2男2女を儲けた後、夫が他の女性と同棲するため妻と別居して8年余になるなどの事情のあるときは、夫婦の別居期間が双方の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間に及ぶということができず、右離婚請求を認容することができない(最高裁平元・3・28判決、判時1315-61)。

  5. 有責配偶者である夫(大正15年4月生)からの離婚請求であつても、夫婦の別居期間が約15年6か月に及び、その間の子が夫と同棲する女性に4歳時から実子同然に育てられて19歳に達しており、妻(昭和9年3月生)は別居期間中夫所有名義のマンションに居住し、主に夫から支払われる婚姻費用によつて生活してきたものであり、しかも、妻が離婚によつて被るべき経済的・精神的不利益が離婚に必然的に伴う範囲を著しく超えるものではないなど判示の事情の下では、右離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情があるとはいえない(最高裁平元・9・7判決 民集157-457)。

  6. 一 原判決は、控訴人の婚姻関係継続の希望の実態につき、控訴人()自身、被控訴人(夫=有責配偶者)との婚姻関係が客観的に破綻し、回復すること が全く不可能であることを知悉しながら、離婚条件として被控訴人所有の土地建物の債務を被控訴人が負担したまま、慰謝料若し くは財産分与としてその所有権を移転するのであれば、いわゆる協議上の離婚に応ずるが、そうでなければどのような提案もこれ を拒絶し、客観的に婚姻関係が破綻したとしても婚姻を継続するという主として財産上の配慮による婚姻関係継続の意思というこ とを誤解しているというべきである。
    二 原判決は、控訴人の婚姻関係継続の希望と被控訴人の有責配偶者としての責任との関係で、その免責の条件がいわゆる相当 長期の別居期間の経過とみなされている。
    三 本件婚姻関係において、すでに未成年の子はなく、原判決九丁表において、離婚に伴なう財産関係の清算につき、充分な提 案がなされ、その総額は一億数千万円の対価であるにかかわらず、控訴人はこれを拒み、その離婚条件として、三億余円の時価評 価のある被控訴人所有の土地建物と、同各不動産に設定登記ある九千万円に達する銀行よりの債務を被控訴人が負担することを求 め、被控訴人に対し履行不可能な条件を提示したことにより、被控訴人の誠意ある提案を合理的理由なく拒絶し、且つ、同各不動 産に対し、処分禁止の仮処分をなすに至っているものである。
    四 そこで、右相当の長期間は、婚姻関係継続の実質的理由と有責配偶者の責任として離婚に伴なう財産関係の清算につき、誠 意ある解決の提案をなしたかどうか、との相関関係において理解されるべきところというべきである。
    五 よって、八年の別居に至る婚姻関係の実態、離婚に伴なう清算についての誠意ある提案、これに対し、別居前の多額の生活 費を受け取るのみの事実上の家庭内別居状態の継続とこれによる別居の開始継続が、八年間におよんだ場合には有責配偶者として の責任はこれを許容するとしても、離婚の請求を安易に承認させる結果となることはなく、相当な期間は経過したものというべき であり、原判決は、かかる解釈を誤ったものというべきであり、判断の誤りは原判決の結果に影響を与えること明かである。
    子供は成人し、別居期間8年の夫婦につき、有責配偶者()からの離婚請求を棄却した高等裁判所の判決を破棄した(最高裁平2・11・8判決、家裁月報43-3-72)。

  7. 別居期間が9年8か月の妻(有責配偶者)からの離婚請求が認められ、妻から夫へ慰謝料200万円、夫から妻へ財産分与700万円が認められている(最高裁平5・11・2判決、家裁月報46-9-40)。

  8. 有責配偶者である夫からされた離婚請求であっても、別居が13年余に及び、夫婦間の未成熟の子は3歳の時から一貫して妻の監護の下で育てられて間もなく高校を卒業する年齢に達していること、夫が別居後も妻に送金をして子の養育に無関心ではなかったこと、夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付も実現が期待できることなど判示の事実関係の下においては、右離婚請求は、認容されるべきである(最高裁平6.2.8判決、判例時報1505-59)。

  9. 夫は有責配偶者で、別居期間は6年以上、二人の子も成人して大学を卒業していて夫婦間に未成熟の子供がいないこと、妻は学校に勤務して相当の収入を得ていること、夫は、離婚に伴う給付として妻に自宅建物を分与し、同建物について残っているローンも完済し続けるとの意向を表明している事情に考慮し、離婚請求を認めた(東京高等裁判所平成14年6月26日判決、判例時報1801ー80)

  10. 別居9年以上(同居約14年)の夫婦間の長男は,四肢麻痺の重い障害を有するため,日常生活全般にわたり介護を必要とする状況にあり,成人に達していても未成熟の子とみるべく,その子の世話をする相手方配偶者は,その年齢(54歳)からしても就業して収入を得ることが困難な状態にあり,また,住居明け渡しの問題もあり,離婚により直ちに経済的困窮に陥ることが十分予想されるとして,離婚請求が棄却された(東京高等裁判所平成19年2月27日判決)

  11. 原告()と被告()との婚姻破綻の原因は,もっぱら,原告の女性問題にあったものと認められ,かつ,別居後,原告は,何ら被告及びその子らの生活を顧みることがなかったもので,その有責性の程度も極めて重いものであること,加えて,原告は,被告に無断で協議離婚届を出すといった行為にまで及び,被告をして,その誤った戸籍記載を是正するために離婚無効の訴訟を提起せざるを得なくさせたものであること,さらには,原告は,離婚無効の判決が確定し,婚姻記載が復活するや,ほどなく離婚調停を申し立て,本件訴訟の提起に至ったものであるうえ,本件訴訟においても,被告に対する慰謝の方途を講ずる提案はないばかりか,むしろ,婚姻破綻の責任の大半は被告にあると主張して離婚を求め,これに対し,被告は,夫として親としての情や責任,義務をまったく果たしていない原告の離婚請求を受け入れることはできないと主張しているといった本件の一連の経緯にも照らすと,その別居期間が既に17年を超える長期間に及び,原告と被告との間の子らも成人し,結婚あるいは就職していること等を考慮してもなお,原告の離婚請求をそのままこれを認容するのは,正義,公平の観点からも,また,信義則に照らしても相当とは認めがたく,有責配偶者の離婚請求としてこれを棄却するのが相当である(神戸地方裁判所平成15年5月8日判決)。

  12. 有責配偶者である夫からの離婚請求につき,別居調停後約13年経過し,18歳と16歳2人の未成熟の子がいる場合において,慰謝料150万円と二男の大学進学費用150万円を支払う旨の訴訟上の和解をした上で,原判決を取り消し請求を認容した(大阪高等裁判所平成19年5月15日判決)。

  13. 東京高等裁判所平成20年5月14日判決
    有責配偶者である夫からの離婚請求につき,別居期間が15年以上経過し,当事者間の3人の子はいずれも成年に達しており,夫婦間の婚姻関係は既に破綻しているが,妻は夫から婚姻費用分担金の給付を受けることができなくなると経済的な窮境に陥り,罹患する疾病に対する十分な治療を受けることすら危ぶまれる状況になることが容易に予想されるとともに,長男については,身体的障害及びその成育状況に照らすと後見的配慮が必要と考えられ,夫の長男に対する態度からすると,離婚請求が認容されれば,妻が独力で長男の援助を行わなければならず,妻を更に経済的・精神的窮状へ追いやることになるとの事情の下においては,離婚請求を認容することは,妻を精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状態におくことになり,著しく社会正義に反し許されない。
  14. 大阪家庭裁判所平成26年6月27日 判決
    原告(注 夫=医師 )の離婚請求の可否
      (1) 上記のとおり,原告と被告(注 妻=医師)は平成14年9月以降別居しており,その別居期間は約11年8月に及んでいる。他方で,原告と被告の同居期間はそれぞれ単身生活をしていた婚姻当初から起算 しても3年弱に過ぎず,これを上記別居期間が大幅に超えていることは明らかである。また,上記のとおり婚姻関係破綻の原因は専ら原告にあり,その責任も大きいが,その点を考慮しても上記別居期間 は相当長期間に及んでいると評価できる。
      (2) 次に,離婚請求を認容することにより被告が社会的,経済的,精神的に過酷な状況に置かれることになるか否かについて検討する。
        この点,上記1(3),(5)のとおり,被告は上記別居後の平成15年11月には医師として勤務を再開し,平成23年11月には開業しているもので,婚姻継続の有無に左右されない社会的・ 経済的な基盤を確立しているほか,原告も平成20年10月分以降に限られるものの,調停に従って毎月10万円の婚姻費用を負担し,離婚成立後も相応の養育費の支払を約し,更に長女の大学進学に際 しては相当額の学費も負担する旨申し出ているもので,これらを考慮すれば,本件離婚請求を認容することで被告が社会的,経済的に過酷な状況に置かれるとみることはできない。
        もっとも,離婚によって被告が精神的苦痛を受けることは否定できず,また,原告は平成17年以降,さほど期間を空けずに調停申立てや訴訟提起を繰り返し,その中で破綻の責任が被告にある かのような主張をしたことから,これらに逐一反論等を余儀なくされた被告の精神的な負担は多大であったと推察される。しかし,これらの点は,結局,慰謝料によって解決が図られるべき事柄といわざ るを得ない。そして,原告は500万円の慰謝料支払を申し出ているところ,上記破綻に関する原告の有責性が大きいことやその後の婚姻費用支払額,本件訴訟に至る経緯等を総合すると,上記申出金額 はやや低いとの印象も否めないものの,全く考慮に値しないほど低額に過ぎるとみることもできない。
        そうすると,上記の各点に関して離婚請求を妨げる事情があるとは認められない。
      (3) そして,原告と被告の間には未成熟子である長女(平成12年○月○○日生)が存在するところ,被告は,離婚が長女に悪影響が及ぼすおそれがあると主張する。
        しかし,原告と長女の父子関係は,原告と被告の婚姻関係の継続や原告の再婚等にかかわらず,構築され維持されるべきものであるし,上記1の事実によれば,長女は2歳前のころから原告と別 居を続け,被告が単独でその養育に当たってきたもので,その養育環境は経済面も含め安定していると認められる上,そのような長女の生活実態や養育環境が本件離婚の帰趨によって変更される可能性が あるとはいえない。また,長女は,現在私立中学の2年生であり,確かに原告が供述するところによればその年齢に比して母親への依存がやや強い傾向が窺われるが,この点は上記長女の生育歴に起因す るものと考えられる上,上記1(6)の長女の言動や被告の長女への接し方に照らせば,長女自身既に原告と被告間の不和や紛争を相当程度理解しているものと推測される。そうすると,原告と被告の婚 姻関係を形式的に維持しても,そのことが直ちに長女の心情安定に繋がるものとは認め難い。
        むしろ,原告と長女の実質的な父子交流の円滑を図ることが長女の心情安定に資するものと思料されるところ,上記経緯に照らせば,長女と原告の直接の面会は平成20年1月以降実現されてい ないことに加え,本件訴訟の前後を通じて当事者の紛争が激化した結果,原告の両親もこれに巻き込まれる形となって,長女が祖父母と屈託なく交流することも困難となっている上,被告自身も原告と長 女間の直接のやりとりを阻む状況に至っている。
        そうすると,離婚問題が解決しない以上,自ら面会交流調停等の申立てをしないとの原告の態度は,もとより不適切であるとの非難を免れないものの,このまま原告と被告の離婚を認めないこと は両名間の激しい紛争状態の中に長女を置くことになって,かえって父子間の実質的な交流実現を阻み,長女の福祉に反する結果を招来することとなる。
      (4) 以上に検討したところを総合すれば,被告が離婚を強く拒否していることや未成熟子である長女の存在は原告の離婚請求を妨げるものとはいえず,本件離婚請求が信義則に照らして許されな いということはできない。
  15. 大阪高等裁判所平成26年12月5日判決
     2 当事者間の婚姻関係は破綻しているか
       前認定の事実によると,被控訴人は,平成14年9月に控訴人と別居してから当審口頭弁論終結時まで約12年1月の間,一度も控訴人と同居せず,3回の調停申立ておよび2回の訴訟提起を含め, 一貫して離婚を求め続けているし,控訴人も,離婚を拒否し,今もなお婚姻関係の修復は可能であると供述する(原審控訴人本人)ものの,被控訴人との同居再開に向けた具体的措置を講じるまでは至っ ていないことに照らすと,少なくも当審口頭弁論終結時においては当事者間の婚姻関係は修復の見込みがなく破綻しているというべきであるから,民法770条1項5号所定の事由はある。
     3 被控訴人の離婚請求が信義則に反しないといえるか
      (1) 前認定のとおり,被控訴人は,浮気を疑う控訴人に暴力を振るうなどした上,Bと不貞関係を持ち,幼少の長女を抱えた控訴人に安定的な住居や安定的な経済的基盤を用意することもしない まま家出をしてBとの不貞関係を継続し,家出後,平成15年7月までは,給与振込口座からの出金を容認する方法で婚姻費用を分担していたものの,控訴人が仕事を開始する前の期間を含む平成15年 8月から平成20年9月分までの婚姻費用の分担としては,約5年間にたかだか約260万円を送金しただけという不十分なものであり,その後も,控訴人から申し立てられた婚姻費用分担調停に基づく 義務の履行といった自発性のやや乏しい負担をしているにすぎず,Bとの不貞関係を解消した後も,別居を継続して離婚を要求し続け,前件訴訟を提起して敗訴判決が確定しても,控訴人に対しては離婚 を要求するため以外にはほとんど連絡をしようとせず(原審における控訴人の供述にはこの認定に必ずしも沿わない部分があるが,反対趣旨の被控訴人の供述もあるから採用しない。),本件でも,離婚 できるまで何度でも訴えを提起するとまで供述している(原審被控訴人本人)。
        こうしてみると,当事者間の婚姻関係が破綻したことは,被控訴人の控訴人に対する暴力,不貞行為,不貞行為を継続するために控訴人に安定的な住居や経済的基盤の確保もせず,十分な婚姻費 用の分担もないまま家を出て,実際にも相当長期間Bとの不貞関係を継続したことに起因するものであり,その責は,専ら被控訴人が負うべきものである
        この点について,被控訴人は,被控訴人が控訴人に対する愛情を喪失したのは当事者間で価値観や性格が一致しなかったことが主な原因であると主張するが,本件全証拠によっても,被控訴人の 上記主張を裏付けるような事実を認めることはできない。
        なお,控訴人は,自らも同居再開に向けた具体的措置を長期間講じてはいないが,被控訴人への非難も自制しており(乙5,原審控訴人本人),被控訴人の上記認定のような態度を考慮して関係 修復の機会を気長に待つつもりでの対応と見ることができ,これをもって控訴人も実際には婚姻関係の修復を望んでいないなどはいえないし,上記認定の別居に至る経緯や,別居後の被控訴人の行動から すると,控訴人が同居再開に向けた具体的措置を講じていないことが,破綻について専ら被控訴人が有責との前記認定判断に影響するものではない。
      (2) そして,上記のような被控訴人の責任の態様・程度,Bとの関係を解消した後も,自らの行動を省みることなく,控訴人の責任を主張して離婚を求め続けていること,控訴人は,被控訴人と の関係の修復をなお気長に待っていると見ることもできること,控訴人と被控訴人の間の長女は,未だ14歳(中学2年生)の未成熟子であってなお当分の間,両親がともに親権者として監護に当たるこ とが相当であることを考慮すると,控訴人と被控訴人が同居していた期間が約2年3月であるのに対し,別居期間(婚姻当初の期間を除く。)が約12年1月であること,控訴人が医師として働いている こと,被控訴人が不十分であった期間はあるものの婚姻費用の分担を継続していること,被控訴人が控訴人に対し離婚給付として500万円を支払うことを申し出ていること等の事情を考慮しても,被控 訴人の離婚請求は信義誠実の原則に反して許されないというべきである。

東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 03-3431-7161
2005.3.16