夏コミが終わって、関西のイベントにも行った。・・・疲れた!
ここで一連の忙しさの印刷物の反省を。
夏だけで何百種という同人誌を請け負った。
思ったよりお客さんがPICOを利用してくれたのである。
うれしい限りだが・・・・多少のドジもあった。
一般的なドジ
A)地汚れ
印刷の紙糞が印刷中に落ち、それが汚れとなった。印刷上での当たり前なミスである地汚れがあった。
B)カラー表紙のスミ線が飛んだ!
C)印刷の飛び
本文の主線が「飛び気味」だという苦情があった。
以上の3件が大きな問題だった。
(A)は完全なPICOの不注意だ。
全部が全部汚れるなら検品しているからほぼ分かるのだが、印刷途上で突然発生する汚れはともすると検品の目から逃れてしまう。
でもその場合全部が全部ではない。
そういう意味では、お客さんは夏コミ当日に販売するのに大きな障害はなかった。
機械の完全整備、オペレーターの見る目と技量が問題だ。
注意しなければならない。
(B)カラーの表紙でスミ線が飛んでしまっていた。
クリエイティブカラーで色校正したときに指定の誤解があったので、大幅な修正をした。
フィルムを全部撮り直したのだが、その後の確認が甘かった。
スミ線が切り抜きマスクにさえぎられて片方だけ線が細くなってしまったのだ。
とりあえず大きな支障がなかったので販売には支障がなかった。
お客さんも、指定がわかりにくかったということで許してくれたが、若干の値引きをし、再版時にはすべてOKの状態でやりなおした。
(C)はなんとも言い難い。
PICOが露光時間の設定がまずくて主線が飛び気味になった例もあった。
お客によっては製図用インクで淡い細線をひいている上にスクリーントーンの重ねバリ加工などしていた人もいた。
原稿を印刷版にするためにはカメラ撮りする。
カメラ撮りするときに、製版オペレーターが最初の原稿で「標準露光」にてOKかチェックする。
その時のサンプルがその本の「標準イラスト」であればすべてのページの露光もOKだがそこが難しい。
オペレーターが濃度のあるスクリーントーンの再現性に四苦八苦すると主線が飛び気味になる。薄いトーンを出そうとすると主線は太る。
もしスクリーントーンと主線の黒度が同じならなんの問題もない。
それでも画像が飛んでいるならPICOが悪い。
薄い「製図用インク」から濃度のある墨汁、漫画インクまであるし、スクリーントーンも薄い、濃いがある。
どちらかが犠牲になる場合には、PICOは「基本はアミをきれいに出すように少しの主線のトビは犠牲にする」としている。
アミが飛ぶか、主線が飛ぶか? 二者択一がつらい。(両立はむずかしい!)
フィルム製版ではない少部数の方は墨汁、またはコミック用インクを使おう!
安いスクリーントーンは安い理由がある! 自分の絵を大事にしよう!
以前に初めて同人誌を創るということで相談を受けた人がいた。
その時、以上の問題をはっきり指摘しているにもかかわらず無視されてしまい淡い主線が飛んだ。
その点を説明しているにもかかわらずはじめから喧嘩腰で抗議されたのはつらかったし、腹立たしい。
でも喧嘩したくないのでこちらが引いた。・・・・もうこの人の原稿の印刷は受けない。
最後に・・・・、「印刷屋は無理してる」
つくづく「同人誌印刷業者」は無理してるなと思う。
安上がりに印刷しなければならないし、早く印刷しなければならないし、しかも品質が高度でなければならない。
安上がりということは、とりもなおさず「高い高精度な機械」は使えない。
だから高品質のためには、無理して安い機械をこき使うことと、オペレーターの見る目を養うしかない。
新しい印刷業者が同人誌の特質を知らなで参入しても撤退してしまうし、トラブルもつきまとう。
安さ、品質、納期のきびしさ、その苦労を乗り越える業者が「同人誌印刷業者」になる。
だから一般の印刷業者に対しては圧倒的に技術水準が高いのも真実だ。(本当だよ)
この現実を理解してほしいな。
ほんとの最後に(^^;) 余談
それなりによい印刷物をつくる印刷屋さんはみんなスクリーントーン自体の品質を気にしている。
これは聞いた話だが、スクリーントーンの品質が悪ければ良い印刷物ができないので、この点をスクリーントーンの売場の社長にぶつけてみたところこんな返事が返ってきたらしい。
「そりゃあんた、街の牛丼やさんに行って『霜降りの牛じゃない』って文句言うようなもんですよ」って言われてしまったらしい。
う〜ん、「安いんだから我慢しろ!」っていうことになるのかしら?
この理屈が通るなら、印刷会社も印刷物が汚れていても「いいじゃない少しぐらい、やすいんだから〜」 ということになるのかしら?
でもこれって安くないと買ってくれないという事情は多少は理解できるけど「安かろう、悪かろう。これで納得せよ」というのはどこか消費者をバカにしているよね。
怒れ! 消費者!
もちろん、そんなトーン屋さんばかりではない。安いけど良い品質を追求しているところもある。・・・と信じる。
では、スクリーントーンの使い方、選別の仕方について考えてみよう。
「トーン」はオフセット印刷で出来ている。
トーンの柄は、オフセット印刷されてできます。
ほこり、印刷ムラを起こしてはダメですから結構大変な印刷でしょうね。
普通の紙とはちがってインクがしみこまないプラスチックベースに印刷するのでので乾きが悪いしスピードをだして印刷できません。
「ワックス」はシルクスクリーン印刷で出来ている。
版下に接着させる側は、糊として「ワックス」が印刷されています。これはシルクスクリーン印刷です。
シルクスクリーン印刷とは、まあプリントごっこの高級なものであって、シルク目からスキージーというゴムヘラでインクを押しだしで印刷します。
この方式は、均等に、しかも厚くインク(ワックス)を盛り上げることができます。
これにもゴミが入っていたらダメですよね。
印刷ムラのあるトーン
トーン柄を印刷するときに、ムラのある印刷をしていたらもうどうしようもないです。
購入するときに、対角線、左右とも均等に印刷してあるか、透かしてみましょう。
印刷が濃いトーン、薄いトーン
これも光に透かして点検しましょう。
インクがのりすぎて汚らしいトーン、インクが薄くてグレーになっているトーンは避けましょう。
アミ目が細かすぎる、濃すぎるトーン
アミ点が小さすぎるのと、濃いアミ目(%が高い)トーンは使うのをやめましょう。
スクリーンには「○%」と入っていますが、現実はそれより濃くつぶれていて%が高くなっているものもあります。
その逆もあります。
ワックスには2種類ある?
シルク印刷するワックスにはどうやら2系統あるようです。あなたの使っているトーンはどちらでしょう?
1)ワックスががミクロサイズの「カプセル」に納められているタイプ
これは良いですよね。必要な箇所にトーンを持っていって、そこで上からこするとカプセルが破れワックスがでてきて接着します。
普段(未使用時)はワックスはカプセルに入っているおかげで老化しないし、トーンがべたつきません。
2)「もろ」にワックスを塗布する感じのタイプ
扱うときにべたつきますし、ゴミがすぐ付着します。
また保存状態が悪ければ老化して接着能力を失ってしまいます。
「安いもの」は安い理由がある
そうですよね。上記のこととかをよく考えて選定しましょうね。
せっかく描くあなたの絵なんですから、よい表現方法をかんがえてください。
1)空気を追い出せ!
トーンは貼ったらやさしく、しかもコシコシとよくこすって空気を追い出さなければなりません。
またカプセルタイプのトーンはこすらなければ接着されません。
手を抜いて空気が残ったままだったら、その部分は黒い影になって、汚らしく印刷されてしまいます。
特に大バリの場合によく見かけます。
またこの空気は「きめの細かいトーン」「%の高いトーン」ほどよく影になって印刷されます。
この点からいうと、トーンの汚れた印刷物の半分はお客さんの「怠慢」ですよ!
2)ホワイト修正した上にトーンを貼ると、影がでる!
−−−− 「でも、なんか貼りたい!」 ていう時には,
ホワイト修正して、その上にトーンを貼っても山になっていますので汚れとなって印刷されます。
平坦でないので、焦点ぼけか、空気のせいでその部分が汚れて印刷されるのでしょうね。
この場合は、ホワイト修正ではなくやさしく削って、さらに滑らかにするために削った箇所をこすって修正した方が結果は良いでしょう。
あるいは、細かいトーンはあきらめて、ごちゃごちゃしたトーンとか荒いトーンをはってごまかすようにしたら良いでしょうね。
3)ゴミをつけるな!
トーンの裏のワックスにはゴミがつきやすいです。こまめに台紙にもどしてゴミの付着をさけましょう。
特に、カプセル状のワックスでなくワックスそのものを塗布した安いトーンはなおさらです。
みんなピンホール状態で、黒いゴミとして印刷されます。
4)重ね貼りについて(1)
小さいトーンの上に、大きいトーンを貼ったらどうなります?
大きいトーンがかぶさるので、空気が境目に入りますよね。
だから大きいトーンを貼って、その上に小さいトーンを貼ればほぼOKです。
5)重ね貼りについて(2)
もう一つの注意ですが、モアレの件です。
「アミトーン」と「アミトーン」を重ねれば、モアレといって独特の模様になってしまいます。
これは重ねるアミの角度で変化していきますので研究してください。想定とは異なった結果を生むときがあります。
また、よくある事例ですが、濃いトーンに濃いトーンを重ねて、結局印刷したらつぶれてしまってベタ状になってしまったということがママあります。
よく研究しましょう。ストーリーの上で影響のないところで実験を重ねていくのも上達の道ですね。
6)グラデの使い方
グラデーションのトーンでは、思い切って一番濃い部分と一番薄い分は捨ててしまった方が良いかもしれません。
市販のトーンの多くは、コミック同人誌の印刷の仕方に配慮があまり感じられません。
だから、濃すぎる%のトーンとその逆のトーンが出まわっています。
仕方ないので、%の高い(70%位以上)、%の低い(10%未満)を避けた方が無難です。
7)台紙(原稿)をもてあそぶな!
しっかり貼ったトーンも原稿用紙(台紙)をくにゃくにゃしてもてあそべば、また剥がれます。
大事に原稿を扱いましょうね。
8)「再版だ!わいわい」 なんて喜んでばかりいられない!
幸せなことに「再版だ!」なんていう場合、喜んでばかりしてないで、もう一度トーンをこすりなおして下さい。
時間の経過で密着度が落ちています。
「再版」がきれいに印刷されない場合の原因はこの場合も多いのです。
以上のことに気をつけて、スクリーントーンに関しては「完璧!」だったとしても、−−−−−
もう一つ、きれいなコミック本ができるには 「描画インクとトーンの濃度の一致」が問題です。
すばらしいきちんとした濃度のスクリーントーンと描画インクが濃度一致していなければなりません。
簡単に言えば「黒度のあるインク」を使って下さいということです。
基本は「墨汁」です。
さらに、良くある事件で「髪の毛の細い線が飛んだ! 墨汁を使っているのに〜〜!」というやつです。
これは「細線のひき方」に問題があるようです。細線は「薄くして」細線をひいてはいけません。細くてもしっかりとインクは供給してあげねばなりません。要するに「ゆっくりと、ゆっくりと、しかも細線をひく技術」を身につけることです。
それを「サッー、サッー」と早く、しかもインクがあるかないかの状態でひいては、インクが薄くなってしまいます。
この点を研究して下さい。