特定外来生物被害防止基本方針(案)に対する意見

●特定外来種の定義を法律の趣旨に適合させること

第1 2.(1)ア 被害の判定 3頁
 「在来生物の種の存続又は我が国固有の生態系に関し、回復困難な被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある外来生物を選定する。」の部分

「我が国固有の」→削除
「回復困難な被害」→「重大な被害」

理由
 法(2条)では、「『特定外来生物』とは(中略)生態系等に係る被害をおよぼし、又は被害を及ぼすおそれがあ るもの」とある。また、生物多様性条約2002年 第6回締約国会議「生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原 則」において、侵略的外来種の定義は「外来種のうち、導入(introduction)及び/若しくは、拡散した場合に生物多様性を脅かす種」とある。
 にもかかわらず、基本方針案は、「回復困難な被害」に限定し、特定外来種の定義を極めて狭いものにしている。これは、法、条約から著しく逸脱する定義である。
 「我が国固有の」についても、意味するところが曖昧であるばかりか、特定外来種の適用範囲を著しく狭める定義であり、法、条約の趣旨にそぐわない。
 そこで、特定外来種の定義は、法律および条約にそった定義とすることを強く求める。

●予防原則の明記
理由
 生物多様性条約の前文には、「生物の多様性の著しい減少又は喪失のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとることを延期する理由とすべきではない」と明記されている。
 また、生物多様性条約2002年 第6回締約国会議「生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則」冒頭の「指針原則1」において予防的アプローチの重要性が述べられている。
 外来種による影響は、不可逆的被害が多く、対費用効果の点からも、予防原則に則るべきであり、条約尊重の立場より、予防原則に則ることを、明記すべきである。

●科学委員会の設置
第2 4 (1)(ア)特待外来生物の選定に係る意見の聴取(4頁)
 「生物の性質に関する専門の学識経験者からの意見聴取 ア 生態学、農学、林学、水産学等生物の性質に関し専門性を有する学識経験者の意見を聴くこととする。」

 「生物の性質に関する専門の科学委員会からの意見聴取 ア 生態学、農学、林学、水産学等生物の性質に関し専門性を有する学識経験者から構成される科学委員会の意見を聴くこととする。」
 
理由
 特定外来種指定に関しては、幅広くかつ最新の知見に基づいて行われるべきである。個人の知見には、限界があり、その責を負わすことは困難である。責任ある体制を確保するためには、常設の委員会設置が望ましい。

●特定外来種選定に係わる公開性の確保
第2 3 選定の際の考慮事項(4頁)
 「また、社会的・経済的影響への考慮がなされた種については、その経過およびその理由を明記することとする。」を文末に追加

理由
 「生態系等に係る被害の防止を第一義とする」のならば、その例外となる措置を執った場合は、特段の説明責任が生じる。このような意志決定の過程を公開しない限り、特定外来種選定は国際的にも恣意的であるとの誤解を招き、WTO提訴に耐えることはできない。

●非意図的導入の阻止
第5 5 (1)14頁
 「人や物資に紛れて非意図的に持ち込まれる特定外来生物のうち、輸入、飼養等その他の取扱いの意思なくなされ る導入については、本法の直接的な規制の対象とはならない。しかし、このような場合でも、生態系等への被害が生ずるおそれがあれば防除等の対応が必要であ る。このため、特定外来生物の非意図的な導入についても、主務大臣は関係者と調整をして導入経路や存在状況の把握に努め、被害が確認された場合は、必要に 応じ防除等の措置を採る。」

 「人や物資に紛れて非意図的に持ち込まれる特定外来生物のうち、輸入、飼養等その他の取扱いの意思なくなされ る導入の場合でも、生態系等への被害が低減する理由にはなりえない。そのため、国内への侵入防止措置が必要である。このため、特定外来生物の非意図的な導 入についても、主務大臣は関係者と調整をして導入経路や存在状況の把握に努めるとともに、導入経路となりうる輸入物資に関しての検査体制を充実させる。」

理由
 非意図的であっても、国内に持ち込まれるには違いがないのであり、それを阻止するための検査体制の充実は必要不可欠である。特定外来種は、被害が生じる、なたはそのおそれがある種である。被害が確認された時点で対応するのでは、対費用効果からしても、好ましくない」

以上

森本信生
〒305-0032
茨城県つくば市竹園