特定外来生物被害防止基本方針(案)に対する意見

1.「第1 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する基本構想」
「3 被害防止の基本的な方針」について(p2-3)
 被害防止の基本方針については、おおむね賛成です。
 防除の対象となる可能性がある生物を、水際でくい止めるために、是非とも本方針に沿って本法が適切に運用され、またこのことを広く国民に知らしめていただけますよう、強く希望します。
 外来種問題は「国内に入れなければ起こり得ない」という性質上、原産国からの輸出制限など、国際的な対応も重要です。「外国の政府機関や専門家との情報交換にも努める」という一文については、我が国が批准している生物多様性条約も鑑み、「外国の政府機関や専門家との協力・連携に努める」と踏み込んでいただきたいと思います。

2.「第2 特定外来生物の選定に関する基本的な事項」
「2 被害判定の考え方」について(p3-4)

 「(1)被害の判定」に「農林水産物に対する食性があるというだけではなく、重大な被害を及ぼし、またはその恐れがあるものを選定する」とありますが、被害算定の基準を明確にしなければ、「被害」の解釈次第で本方針の実効性が失われる可能性があります。また、「(2)被害の判定に活用する知見の考え方」で「国外の知見については、日本の気候等に照らし、国内で被害を生じる恐れがあると認められる場合に活用するものとする。」とありますが、植物や水生生物の場合、定着の確認に時間が掛かります。気づいた時には在来種が激減し、甚大な被害が生じるケースも多くあります。是非、「疑わしきは許可せず」という基本方針を持っていただきたいと思います。

3.「第3 特定外来生物の取り扱いに関する基本的な事項」
「1 飼養等の許可の考え方」について(p5-6)
 「(2)飼養等の目的」で述べられている「これまで安易な飼養等により遺棄や逸出がなされ、外来生物が野生化して生態系等に被害を及ぼしている例がある愛玩飼養等の目的については対象としない。」という一文は高く評価します。
 本事項の厳密な運用により、安易な飼育や園芸がもたらす、生態系への被害の軽減を期待しています。

 「(6)その他」で、「指定前より飼養等をされていた特定外来生物の個体」の届け出に関する記載を盛り込むべきだと思います。指定日から起算した届け出期間を明示し、「期間内に届け出ない場合は、不法所持とみなす」等の一文の追加を提案します。また、当該個体の繁殖についても、規制を考慮すべきだと思います。

4.「第5 その他特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する重要事項」について(p11-12)
 生態系の攪乱は、直接的な被害が見えにくいため、在来種の近縁種の輸入には、特に注意が必要だと思います。ペットとの交雑による、遺伝子レベルの生態系攪乱については、今後も十分な注意と監視を要することを明記していただけますよう、お願い致します。
 また、「いかなる生物も、野外に逸出することで今まで知られていなかった被害を及ぼす恐れがあることを考慮し、意図的に野外に放つ行為は原則として禁止する。ただし、国土保全等の正当な理由があるものはこの限りではない」という一文の追加を提案します。
 基本方針の普及により、国民の間に「生物をむやみに野に放つことは、いけない」との認識が一般的になるよう願っています。

 畠 佐代子
 全国カヤネズミ・ネットワーク代表
 (社)大阪自然環境保全協会専門研究員(生態学、環境教育)
 e-mail:info@kayanet-japan.com(カヤネット)
 e-mail:kayachu@kayanet-japan.com(個人)
 URL: http://www.kayanet-japan.com/
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