平成168月7日


環境省自然環境局野生生物課 御中

 平成1678日付けで意見募集のありました、特定外来生物被害防止基本方針(案)に対して、下記のように意見を述べますのでご査収ください。

氏名(又は会社名/部署名):財団法人 日本野鳥の会(会長 柳生博)
住所又は所在地:〒151-0061 東京都渋谷区初台1-47-1 小田急新宿ビル1
電話番号:03-5358-3513(担当部署 自然保護室 042-593-6871 金井)
FAX
番号:03-5358-3518(同上 042-593-6873

意見:(1〜8)
 

1.<該当個所>(p1)
第1 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する基本構想

2 課題認識

 外来生物の中には、在来生物の捕食、採食や踏み付けによる自然植生への影響、在来生物との競合による在来生物の駆逐、土壌環境の攪乱、在来生物との交雑による遺伝的な攪乱等の生態系への被害や、
 

 

<意見内容>

下記のように下線部を挿入する。

 外来生物の在来生態系への導入は、生物多様性に影響を与える。外来生物の中には、在来生物の捕食、採食や踏み付けによる自然植生への影響、在来生物との競合による在来生物の駆逐、土壌環境の攪乱、在来生物との交雑による遺伝的な攪乱等の生態系への被害や、

●理由

人為による外来生物の在来生態系への導入自体が生態系あるいは遺伝的多様性を撹乱し、生物多様性に影響を与えることを明記する。


 

 

2.<該当個所>(p1)
第1 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する基本構想

2 課題認識

外来生物の中には、在来生物の捕食、採食や踏み付けによる自然植生への影響、在来生物との競合による在来生物の駆逐、土壌環境の攪乱、在来生物との交雑による遺伝的な攪乱等の生態系への被害や、

<意見内容>

下線部に「寄生生物の持込みによる在来生物の圧迫」を挿入する。

 外来生物の中には、在来生物の捕食、在来生物との競合による在来生物の駆逐、寄生生物の持込みによる在来生物の圧迫、採食や踏み付けによる自然植生への影響、土壌環境の攪乱、在来生物との交雑による遺伝的な攪乱等の生態系への被害や、

●理由

在来生物への脅威として、外来生物が持ち込む寄生生物(ウイルスを含む)による脅威が確認されているため。以下の文献、サイトを参照のこと。なおこれは、人に対する感染症の被害とは異なる。

・村上興正・鷲谷いづみ監修(2002)『外来種ハンドブック』7,222ページ

http://www.iucn.jp/protection/species/case.html#06

http://www.issg.org/database/species/search.asp?sts=sss&st=sss&fr=1&sn=malaria&rn=&hci=-1&ei=-1&x=21&y=10

 (ハワイにおける外来種によって持ち込まれた鳥マラリアによる在来種鳥類への被害について)

3.<該当個所>(p3)

第2特定外来生物の選定に関する基本的な事項

2 被害の判定の考え方

(1)被害の判定

特定外来生物については、以下のいずれかに該当する外来生物を選定する。

ア生態系に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある外来生物として、@在来生物の捕食、A生息地若しくは生育地又は餌動植物に係る在来生物との競合による在来生物の駆逐、B植生の破壊や変質等を介した生態系基盤の損壊、C交雑による遺伝的攪乱等により、在来生物の種の存続又は我が国固有の生態系に関し、回復困難な被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある外来生物を選定する。

<意見内容>

下線部に以下を挿入。

寄生生物の持込みによる在来生物の圧迫

●理由

在来生物への脅威として、外来生物が持ち込む寄生生物(ウイルスを含む)による脅威が確認されているため。なおこれは、人に対する感染症の被害とは異なる。

4.<該当個所>(p4)

第2特定外来生物の選定に関する基本的な事項

選定の際の考慮事項

特定外来生物の選定に当たっては、原則として生態系等に係る被害の防止を第一義に、外来生物の生態的特性や被害に係る現在の科学的知見の現状、適正な執行体制の確保、社会的に積極的な役割を果たしている外来生物に係る代替物の入手可能性など特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮し、随時選定していくものとする。

<意見内容>

「・経済的」を削除し、下記のようにする。

特定外来生物の選定に当たっては、原則として生態系等に係る被害の防止を第一義に、外来生物の生態的特性や被害に係る現在の科学的知見の現状、適正な執行体制の確保、社会的に積極的な役割を果たしている外来生物に係る代替物の入手可能性など特定外来生物の指定に伴う社会的影響も考慮し、随時選定していくものとする。

●理由

特定外来生物の指定は、生態的撹乱の防止を目的としている。社会的体制の整備を考慮することがあっても、経済的要因を考慮すべきではない。

 

5.<該当個所>(p6)

第3特定外来生物の取扱いに関する基本的な事項

飼養等の許可の考え方

(6)その他

特定外来生物が指定された時点以前から、愛玩目的等主務省令に規定されない目的で飼養等をしていた場合については、その指定前より飼養等をされていた特定外来生物の個体に限り、飼養等の許可の対象とする。

<意見内容>

法律施行時には、施行以前から飼育していた飼い主による遺棄が大量に生ずる恐れがある。遺棄の監視や、遺棄された外来生物の回収および処置について、十分な配慮と準備をされたい。

6.<該当個所>(p7)

放つこと、植えること又はまくことの禁止

特定外来生物による被害を防止する上で最も重要なことは、特定外来生物の遺棄や逸出等を防ぐことであり、本法第9条の規定の実効性の確保には最大限配慮する必要がある。特定外来生物を取り扱っている者がその管理を放棄し、野外に放つ行為等は、生態系等に係る被害を及ぼす危険が高くなるため、例外なく禁止とする。

既に野外に存在することで飼養等又は譲渡し等に係らない特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等の行為は本法第9条の対象とはならないが、捕獲又は採取後の特定外来生物の飼養等や譲渡し等については、引き続き本法の規制が適用されることに留意する。

<意見内容>

「既に野外に存在することで飼養等又は譲渡し等に係らない特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等の行為は本法第9条の対象とはならないが、捕獲又は採取後の特定外来生物の飼養等や譲渡し等については、引き続き本法の規制が適用されることに留意する。」を削除

●理由

法運用上の事項であり、基本方針で述べることではない。防除方法として、捕獲後に放つことを禁止する場合がありえるので、むしろ無用な混乱を引き起こすことが考えられる。

7.<該当個所>(p7)

第4国等による特定外来生物の防除に関する基本的な事項

防除の公示に関する事項

(1)防除の主体と公示の方法

国は、制度上その保全を図ることとされている地域など、全国的な観点から防除を進める優先度の高い地域から、防除を進める。

<意見内容>

下記下線部を挿入する。

国は、制度上その保全を図ることとされている地域や絶滅危惧種の生息地など、全国的な観点から防除を進める優先度の高い地域から、防除を進める。

●理由

 「制度上その保全を図ることとされている地域」という表現で想起される地域は、自然環境保全地域、国立公園や鳥獣保護区など法制度上の保全指定のある地域である。しかし、保護を考慮しなければならない絶滅危惧種が高密度で生息している地域で、保全指定の無い地域もあるため。

8.<該当個所>(p11)

第4国等による特定外来生物の防除に関する基本的な事項

防除の実施に関する事項

(4)防除の確認・認定

イ防除の実施に関し、原則として、捕獲等を行う区域における安全の確保、静穏の保持、他の鳥獣の生息等への配慮がされているとともに、下記の要件を満たしていること。

<意見内容>

イの項目に以下を挿入。

○鳥獣保護法第9条第1項第3号に定める使用禁止猟具による方法は使用しないこと。

●理由

使用禁止猟具は鳥獣保護法第16条で所持規制を行っているため、使用禁止猟具による方法は鳥獣保護法の元で行うべきで、本法によるべきではない。

以上