鎮咳去痰薬
(気管支拡張薬含む)

医薬品名
構 造 式
常用量
作用
副作用
特徴
リン酸ジヒドロコデイン
リン酸ジヒドロコデイン
1%散 1回10mg
1日 30mg
延髄の咳嗽中枢を抑制することにより鎮咳作用を表す。 気管支喘息発作中は服用禁忌。依存症。呼吸抑制。せん妄。錯乱。悪心、嘔吐、排尿障害ほか。妊婦あるいは授乳中には服用をさけること。 広く使われている鎮咳剤。
リン酸コデイン
リン酸コデイン
1%散 1回15mg
1日 45mg(最大量60mg)
延髄の咳嗽中枢を抑制することにより鎮咳作用を表す。 気管支喘息発作中は服用禁忌。依存症。呼吸抑制。せん妄。錯乱。悪心、嘔吐、排尿障害ほか。妊婦あるいは授乳中には服用をさけること。
リン酸ジヒドロコデインより、使用頻度は少ない。
臭化水素酸デキストロメトルファン
臭化水素酸デキストロメトルファン
1回20mg
1日60mg
延髄の咳嗽中枢を抑制することにより鎮咳作用を表す。 呼吸抑制、眠気、頭痛、めまい、悪心、嘔吐ほか。 鎮咳作用はリン酸コデインにほぼ等しいかそれ以上といわれている。
リン酸ジメモルファン
リン酸ジメモルファン
1回10mg〜20mg
1日30mg
延髄の咳嗽中枢を抑制することにより鎮咳作用を表す。 めまい、眠気、頭痛、倦怠感、口渇、食欲不振、頻脈、動悸ほか。 リン酸ジヒドロコデインに見られるような、便秘作用はない。リン酸コデインより鎮咳作用は優れていると言われている。
ヒベンズ酸チペピジン
ビベンズ酸チペピジン
1回25mg
1日75mg
延髄の咳中枢を抑制し、咳の感受性を低下させることにより、鎮咳作用をしめす。また、気管支腺分泌の亢進と気道粘膜線毛上皮運動の亢進により、去痰作用を示す。 ねむけ、眩暈、興奮、食欲不振、口渇、発疹ほか。 鎮咳作用と、去痰作用を併せ持っている。
ノスカピン
ノスカピン
1回20mg
1日60mg
求心性の咳刺激の伝達を抑制し、咳中枢の反射興奮を抑えることにより、鎮咳作用をしめす。 眠気、頭痛、頭重、悪心、嘔吐、便秘など。 即効性である。リン酸ジヒドロコデインと一緒に配合されることが多い。
塩酸メトキシフェナミン 1回50mg
1日3回
交感神経興奮性アミン。気管支拡張作用,鎮咳作用及び抗ヒスタミン作用がある.中枢刺激作用,脈管刺激作用,昇圧作用は少ない
血清カリウム値の低下。心悸亢進,血圧変動,不整脈,頻脈等、頭痛・頭重,悪寒,不眠,めまい,発汗,神経過敏,眠気,ほてり,不快,不安,違和感など。 気管支喘息などの場合にはリン酸コデインなどを使用せず、こちらを使用。
桜皮エキス
ヤマザクラ、ヨシノザクラなどの樹皮の抽出物
1日 原生薬換算 4g(最大量) 末梢性に作用して、気管支の蠕動運動を促進することにより、鎮咳去痰作用を示す。 通常量で報告なし(副作用無しという意味ではない)。 リン酸コデインと配合して使用するする場合が多い。その場合の副作用は、リン酸コデイン参照。
シャゼンソウ
オオバコの花期の全草。含まれている成分としては、aucubin、plantaginin、hemoplantagininなど。
1日 原生薬換算 10g(最大量) 成分のplantagineが呼吸中枢に作用して、呼吸を深く緩慢にして鎮咳作用を現し、気管支の粘液の分泌を促進させて痰を薄める作用。 通常量で報告なし(副作用無しという意味ではない)。
他の咳止めと共に配合されて使用される場合が多い。
dl塩酸メチルエフェドリン
塩酸メチルエフェドリン
1回25mg
1日75mg
アドレナリン作動性の気管支拡張と中枢性の鎮咳作用を有する。 心悸亢進、顔面蒼白、熱感、頭痛、不眠、血清カリウム低下、食欲不振、口渇ほか。 総合感冒薬、咳止めなどに、広く利用されている。
塩酸トリメトキノール
塩酸トリメトキノール
1回2mg
1日6mg
交感神経β2-受容体を直接刺激して、選択的に気管支を拡張させる。心拍数の増加や、拡張期血圧低下は少ない。 心悸亢進、血圧変動、頭痛、熱感、悪心、食欲不振、血清カリウム低下ほか。 心筋に影響を及ぼさない量で、気管支筋の弛緩が認められている。
塩酸フェニルプロパノールアミン
注意*)
塩酸フェニルプロパノールアミン
1回30mg
1日90mg
末梢血管収縮作用による脱鬱血作用がある。また中枢性鎮咳作用もある。 血圧上昇、心悸亢進、頻脈、不整脈、口渇、悪心、嘔吐、ほか。 花粉アレルギーによる鼻炎薬にも多用されていたが、副作用問題で代替成分に変更。
カルボシステイン
カルボシステイン
1回250mg
1日750mg(最大1500mg)
粘液に含まれる各種ムチンの含有量を正常化し、粘液の粘土を正常化させ、痰の排出を促進させる。 食欲不振、嘔吐、下痢、発疹、肝機能低下ほか。 上気道炎、気管支炎などの消炎効果、鼻汁の排泄作用がある。
グアイフェネシン(グアヤコールグリセリンエーテル)
グアイフェネシン
1回100mg
1日300mg
視床下部の抑制及び気管支筋の弛緩による鎮咳作用と、気道分泌液の増加による去痰作用を有する。 悪心、食欲不振 大衆薬では、広く使用されている。
グアヤコールスルフォン酸カリウム
グアヤコールスルフォン酸カリウム
1回90mg
1日270mg
気道分泌を促進して喀痰を流動性とし去痰させる。 悪心、食欲不振 大衆薬で多く使用されている。
塩酸ブロムヘキシン
塩酸ブロムヘキシン
1回4mg
1日12mg
喀痰の粘度に関与する酸性ムコ多糖類の繊維網を細断化することにより、気管支分泌物の粘度を低下させ、喀痰の喀出を容易にする。気道分泌増大作用。 ショック、呼吸困難、咽頭違和感、食欲不振、嘔吐、発疹、胸内苦悶ほか。 医療用でもよく使われている。
セネガ
セネガ、またはヒロハセネガの根。主な有効成分は、preseregeninをゲニンとするトリテルペンサポニン、SeneginII、III、IVである。
セネガシロップとして1日10〜30mg(最大量原生薬4g) サポニン系去痰薬。気道分泌を促進。 嘔吐、悪心、食欲不振など。 セネガとキキョウを配合することも多い。
ブロメライン
パイナップルの茎汁から抽出した蛋白分解酵素。
1日量93000単位(最大量160000単位) 喀痰、膿汁の融解と排出促進。 悪心、嘔吐、下痢、便秘、鼻出血ほか。 皮膚の炎症性疾患にも外用されている。
セラペプターゼ
セラチア属の菌種E15より産生される蛋白分解酵素
1回5mg
1日15mg(総合感冒薬中)
喀痰、膿汁の融解と排出促進。
抗炎症・腫脹作用。抗生物質の組織内移行促進作用。
胃腸障害、発疹、発赤。 広く炎症性疾患に用いられている。
セアプローゼS
Aspergillus melleusより産生される蛋白分解酵素。17種のアミノ酸314個よりなる。
1日量60000セミアルカリプロテイナーゼ単位 喀痰粘稠度を低下し、喀痰喀出を容易にする。 胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢、発赤、発疹ほか。 1mgで1900〜2500セミアルカリプロテイナーゼ単位。
塩化リゾチーム
卵白より抽出、精製。18種、129個のアミノ酸よりなる塩基性蛋白。
1回20mg
1日60mg
卵白から得られる塩基性ポリペプチドで、ムコ多糖分解作用により、気管支分泌物の粘度を低下、喀痰の喀出を容易にする。 発疹、発赤、胃腸障害。 耳鼻咽喉科、眼科、歯科を含め、広く用いられている。卵白アレルギーの人は使わないこと。

咳の原因は、かぜだけではなくマイコプラズマ感染症や、胸膜炎、慢性気管支炎、結核、降圧剤の副作用(ACE阻害剤)など多岐にわたっていますので、咳がどのような状況で出ているのかをきちっと把握して、長期間にわたる場合は早急に医療機関に行き受診されることをおすすめします。痰の少ない乾性の咳と痰の多い湿性の咳については、病因や、病態が異なった場合にその原因に付随して生じるものです。なお、漢方薬も咳には有効なことが多いです(漢方薬の項参考)。


注意*)塩酸フェニルプロパノールアミンは2000年11月アメリカFDAでは、副作用により発売を禁止したが、日本では、アメリカより投与量が少なく設定(50mg少ない)されているため、直ちに副作用の影響はないとして発売は続行されています。しかし、徐々に代替成分塩酸プソイドエフェドリンなどに変更される予定。



鎮咳剤分子立体構造
コデイン
デキストロメトルファン
ジメモルファン

コデイン

デキストロメトルファン

ジメモルファン

延髄の鎮咳中枢を抑制する咳止めの立体構造もよく似ていることがわかります。
画像にマウスを当てますと約90度回転した画像が見られます。


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