第19章 バンザイ・コールストーム − 新生ヴァレリア王国 首都ハイム/城の広間 − ex. 〔無神論者〕 >デニムと目が合った。 >俺はニヤリと笑みを浮かべた。 >狙いは腹部。 >リムファイヤーが火を噴く。 >……心配するな、お前は神の裁きを受けはしない。 >神など存在しないのだから。 デニム王の戴冠、その式典の絶頂において、事件は起こった。 (うわ〜、本当にやっちゃったわ。 ちょっとドキドキしちゃったわ♪) 戴冠式にちゃっかり出席し、檀上の特等席をGETしていたデネブは、 予感通りの展開に、目を輝かせていた。 (デニムにも、ちょっとは情がわいてきてたんだけどね。 ま、やったことはアプローズと同じだし… 仕方ないかもね〜) 「ど、どうしたんだっ!?」 「……デ、デニム様が、デニム様が───っ!!」 「なんだ、アイツは!?」 「……銃だあ! ベルサリア様が殺されたっていう、アレだー!」 ハイム城の広間は混乱の渦に巻き込まれていた。 それは、つい先日、女王に即位したばかりのカチュアが殺された時と同じだった。 赤い長絨毯の上に突っ伏した騎士姿の男は、無表情に息を引き取っていた。 そして、階段を上がった檀上の玉座の前で、王となるべき男は、血を流して倒れていた。 新生ヴァレリア王国として、新たな一歩を踏み出すはずの式典で、こんなことが…… 叫ぶ者、呆然とする者、それはデニムの側近たちも同じであった。 「オ、オリビアっ! 早く、早く呪文を…! リザレクションを使うのよ…!」 愛する男の死を目前に、しばし呆然としていたオリビアは、シェリーの言葉に 我に返った。 「だ、ダメよ、姉さんっ! リザレクションは、リザレクションは…… 主人公には効かないのっ!」 「じゃ、じゃあ、他に何か手はないの…!?」 「………リセットしかないわ。 でも、もうエンディングなのよ!」 大混乱の中、玉座の前に倒れていたデニムが、ムクっと起き上がった。 「ど、どうしたんだっ!?」 「……デ、デニム様が、デニム様が───っ!!」 「なんだ、どうしたんだ!?」 「……大丈夫だったんだあ! デニム様は殺されてなかったんだー!」 ワーっと湧きかえる兵士たちを眼下に見下ろしながら、デニムは目をパチクリしていた。 一体何が起きてるのか、分からないというように。 「デニム! 生きていたのねっ!?」 (デニム…?) デニムは今度は、何やら、しまった…という表情を見せた。 その時、脇から近づいてきた女が、デニムに耳打ちした。 「は〜い、お帰りなさい… あ・る・び〜♪」 (………し、失敗した……) アルビレオは、己の失敗を悟った。どこでどう間違えたのか… よりによって、転生先に国王を選んでしまうとは… よりによって、転生したところに、この女がいるとは… 「ほら、みんなが、あんたの言葉を待ってるわよ、しっかり〜!」 デネブの言葉通り、兵士たちは、銃で撃たれても生きていたデニムに狂喜していた。 その何百という兵士たちの視線は、全て自分に注がれている。 アルビレオも覚悟を決めた… 「あ〜、お、おっほん…… ヴァレリア王国、バンザーイ〜」 一瞬、広間は静まり返った。 しかし、次の瞬間、兵士たちの大唱和が起こった。 「ば、バンザイだー!!」 「……デ、デニム様、デニム様、バンザ───イっ!!」 バ〜ンザイ!、バ〜ンザイ!、バ〜ンザイ!……… 鳴り止まぬバンザイ・コールストーム。 デネブは、デニム…いや、アルビレオを肘で小突きながら言った。 「…悪の軍団の怪人が死ぬ時じゃないんだから。 このヘ・タ・ク・ソー」 アルビレオは、苦笑した。 (こういうのは苦手なんだってば……) デネブは、そう言えば…と、あることを思い出した。 (ベルちゃん、ここに残ってれば良かったのにねぇ〜) ≪ Next Chapter ≫ |