指導林家全国研修会体験発表

「指導林家としての活動体験について

発表テーマ

丹沢「森の仲間たち」森林・林業型環境教育をめざして


                        都道府県  神奈川県  

◎発表内容                   氏  名  川又正人

○私は神奈川県の西部、丹沢山塊の西のふもと「森林と清流の町、山北町」から参加しております川又と申します。

神奈川県は首都圏を構成し、人口840万人、県土面積24万ha、そのうち森林面積95,000haで県土の40%を占めています。国有林11,000ha、民有林84,000ha人工林が38%、天然林57%、他5%の割合であり、また人工林のうちスギ59%、ヒノキ37%、マツ4%です。

 山林の所有状況は0.1−1ha未満が79%、10ha以上は705戸(2%)です。この中には、三重の林業会社が所有している850haの山林もありますが、現在では素材生産は中止していて、オートキャンプ場と渓流釣りの観光林業に衣替えをしています。

 神奈川県には、県森連が経営する原木市場があるが最近では1万立米を割る販売量で、少しまとまった量を購入するには他県の市場に出向かなければなりません。


○神奈川県は首都圏にありながら飲料水は自前の水源で賄っています。一部を東京都に販売しているくらい豊富な水源をもっています。しかしH8年に異常渇水にみまわれ未曾有の給水制限に追い込まれました。そこで神奈川県では緑のダム構想を政策として掲げ23年間で975億円の税金を投入する予定で水源林整備が始まりました。公益的機能の高い森林づくりを目指して私有林の公的管理・支援を行うというものです。

○私は、林業に18年間携わってきましたが、平成12年4月に指導林家の認定を受け、地元の学校や社会教育施設等で森林教室等の講師を依頼されて活動しています。そのなかで、植林、枝打ち、シイタケ栽培、木工工作、森林の持つ働きなどを体験を通じて子供たちに理解してもらいたいと思ってやっております。

 平成9年に丹沢湖畔にある所有林1.4haを開放し、森林体験フィールド・丹沢「森の仲間たち」を設立しました。ここでは神奈川県森林インストラクターの仲間とともに1泊2日の宿泊をともなった月例会を運営し、活動はこの8月で31回を数えます。

 このなかに、平成9年度に林業改善資金を導入し簡易休憩所を設置、平成10年度には乗用モノレール(302m)を導入しました。モノレールは林内作業をする際に乗って現場まで移動できますので移動時間と登坂時の労力の軽減が出来ます。また、作業台車を接続して資材の運搬や伐倒した材木を運搬することが出来、何よりも移動に際しての自然環境にかかる負荷を少なくできるメリットが大きいと思います。子供たちが自然環境に配慮されたモノレールに乗って自然観察、林内作業をすることの意義は大きいと思っていますし、35度の傾斜をスイスイと移動する様子は子供たちだけではなく大人も歓声を上げます。これらの他に廃業したキャンプ場から施設・備品を譲り受け移築しました。月例会で宿泊に利用しているログハウスはその中のひとつです。



 そのほかに、間伐材の有効利用に炭焼きをしています。炭焼きはドラム缶を利用した横窯4基、縦窯2基の計6基で、窯本体に2個、煙道に1個、1,200度まで計測できデジタル表示の温度センサーを設置し温度管理をしています。煙の色で焼く職人芸ではなく、誰でも楽しく簡単に焼ける炭焼きです。焼いた炭は、炊事用などに利用したり、ラッピングをして配布したり、もちろんイベントのバーベキューにも大いに活躍しています。

○子ども達相手の「森林教室」は、反応がストレートでとても楽しいですが、事前に準備をして行かなくては冷や汗をかくことがあります。何しろ私たちよりも動植物のことを良く知っている子どもがいることがあるからです。でも、やればやったくらい反応が返ってくるのがおもしろく、森林教室を通じて今の自然環境と森林・林業の実態がより分かることもおもしろさのひとつです。私達は子どもに教えるということよりも「自然の持つ力を借りて子供たちのもつ力を引き出す」また「子ども達を支援する」ということに力点を置いています。あくまでも子供たちの目線の高さに立って行動することを指針として、

 1.驚きと感動の発見 

 2.安全であること

 3.楽しみながらすること 

 4.お互いから学びあうこと

 5.体験を通じて学ぶこと

 6.参加者自身のねらいを達成すること

を具体的目標としています。


 私たちのグループは、発足して2年足らずですが,森林教室を8回ほど開催しました。これからもまず自分達が楽しみながら活動し、そして私達の活動を通じて森林・林業に関心を持つ人がすこしでも増えることによって、林業の衰退と自然環境の悪化が少しでも食い止められることにつながれば幸いと願っております。