WAVE KIT SA13 追加 diode ladder VCFの実験


回路図を以下に示します。


まずは回路図通りに組んでみました。 但し、差動の OP AMP周りの抵抗は金皮で相対誤差を少なく、audio入力側の差動ペアは 2SC1583、ladderの3個組の負荷は選別しました。

初め誤配線というか半田が付いていない所が2箇所あって動きませんでしたがそれを直したら動くようになりました。 OP AMPの差動AMPの Rfが10Mであると出力が入力信号の約7倍程度になってしまい入力信号を3V程度にしてもクリップしてしまいます。(電源電圧+/-12V) 入力と出力は Rf=1.5Mでほぼ1倍になります。 一応 filterとしての動作はしているようですが、resonance Volを上げた時のゲインの低下が激しい。 これは負帰還タイプのfilterだからいたしがたないのですが、resonanceがほとんどかからず波形がそれらしくなりません。

信号入力をやめてresonance Vol 最大にして見ると発振している周波数は11KHzから55KHzくらいで55Kの方は振幅が2V程度あるのに対して11Kの方はとても振幅が小さい(100mV程度)でした。 これだと resonanceを上げても入力信号の周波数がかなり高くないと波形が変化しないでしょう。

Rf=10Mだと出力レベルが高すぎる(Fc全開、resonanc=0時)ので入出力が1:1くらいになるようにRf=1.5Mとするとさらに発振周波数はせばまり40KHzから50KHzくらいになってしまいます。 これでは(入力信号との周波数がかけはなれているため) 全くと言っていいほどresonanceがかかりません。 しょうがないのでRf=4.5Mとしたところ発振周波数は16KHzから47KHzとはなりましたがこれでも使い物になりません。 とにかくFcが低いすなわち制御電流値が小さくなると発振しなくなります。

このVCFの制御電流はCV=0V時の初期制御電流値を決めるR7=100KΩの時、CV=12.4Vで ladderの片側に300uAくらい流れる計算になるのでその時の Fcは46KHzくらいであって上の結果と合っています。 Fcが50KHzも必要ないので filterのcapacitorの値を0.01uFから2倍の0.02uFにした所、発振周波数の上限は約 23KHzとなり下限はなんと230Hzまで発振するようになりました。 低い方まで発振できるようになったのはいいのですがその際の振幅はやはり小さいです。 今度は resonanceをかけてやるとやっとそれらしい波形になるのはいいのですが、低域での発振振幅が小さいのでまだ一般的な resonance波形には遠い形になってしまいます。

発振振幅(cap=0.02uF)
--------------------------
250Hz .... 140mV
500Hz .... 375mV
1KHz ..... 560mV
2KHz ..... 720mV
4KHz ..... 820mV
8KHz ......1.1V
16KHz .... 1.56V
22KHz..... 1.9V
--------------------------

制御電流とCVの関係


上に示すのは制御電流を作り出している差動回路の定電流源の特性です。 最大電流(テイル電流)はR15の値で設定します。(上記の場合1.2mA程度) CVを-12.4Vから+12.4Vまで変化させた時のカーブです。 OP AMPの出力は 1V /octになっているので出力は入力の1/55になっておりベースに印加される電圧は-220mVから+220mVくらの範囲。

この特性は差動回路の電流特性なので、初めEXPO,中LINEAR、終わりLOGの特性になるので antilogとして使えるのは初めのEXPO領域から上図の0Vくらいまでです。 この為実際は CV=0Vから12Vで EXPOカーブにまたがるよう、 R7で-12V分 CVをシフトしていますので実際の使用範囲は下の図のようになります。


これがaudio信号用の差動回路の共通電流(テイル電流)になるので左右の各ladderに対してはその1/2の電流カーブで電流が流れますので、上記の例では CV=12.4Vで300uA程度。

せめて低域で100Hzくらいまで発振して振幅も数倍ほしいです。 Rf=4.5Mで制御電流の大元の値を決めている R15の値を10Kから4.7Kにして電流が2倍になるようにもして見ました。 高域の発振周波数は上がり1.4倍程度にはなり低域は 1/1.4倍までは下がりますが、2倍 1/2の関係にはならず。



状況としては

・ OP AMPのゲインを増やせば発振できる周波数が下がる。
・ 制御電流の大元(R15に流れる電流)を増やせば発振できる周波数が下がる。
・ capacitor容量を2倍にしたので単純に発振周波数は1/2になると思いきや高域はその通りだが低域は発振周波数が劇的に伸びている。(これはいかに)

ではと言うことでさらにcapacitorの容量を2倍に増やすべく部品棚をのぞくと0.039uFがないので0.047uFを使って再度実験、当然高域の発振周波数は7.5Kくらいに下がるも低域は100Hzくらいまでは発振するようになりました。 上限が7.5KではどうしょうもないのでR15の値の半分の4.7Kにするもcapacitorの容量が約2.5倍なので発振周波数は倍の15KHzには届かず。 結局R15を3.3Kにすることでほぼ15KHzの発振となりました。

今度は低域の100Hz発振時振幅は1Vはあり、15KHz時の2.3Vと比べてもそこそこの振幅です。  振幅は非常に小さくなりますが、40Hzくらいまでは発振するようになりました。 これにより一般的な resonance波形がやっと出てくるようになりました。

 

結局の所、回路自体は特別変な所はないと思われるので定数の設定がかなり悪いということなのでしょう。 ladder filterで capacitorの値が0.01uFというのはあまり見かけませんので。 今回の修正したcapacitorの値は0.047uFですのでladder filterの定番値と言える0.068uFに結果的に近くなっています。 ladderの片側に流れる制御電流も CV=12.4Vで900uAくらいに増えていると思われます。

ちなみにWAVEKITの仕様では VCFの cutoff freqは 20Hzから20KHzとなっていますが回路図通り 0.01uFで組むと高い方は50KHzです。 antilogの初期値のIrefに相当する部分が異なれば高域の方では20KHzが50KHzになっても不思議ではありませんがかなりいいかげんなような気もしますしfreq調整用の半固は必要な気がします。

この基板を製作してからCV=0Vから6Vまでの動作がとても不安定というかこの範囲で変化が見られない状態にありました。 結果的にはこの基板にパスコンをつけるのを忘れていて異常発振をしていたことが原因でした。 たまたまQ4のベースにクリップ付きの線をつなぐと正常に動くことを発見しQ4のベース-GND間に100Ωの抵抗を付けたらなおったのですが気持ちがわるいので抵抗をはずして近辺を見ると OP AMPの反転端子で非常に小さな発振波形を確認。 長らくDIYをやっていないのでだいぶぼけていました。


* なぜ低域では制御電流値が小さいと発振できないのか

diode ladder filterのFcはdiodeの微分抵抗とcapacitorの値で決まります。 微分抵抗は定電流源の制御電流の値で決まるわけで filterの CVとFcの関係は改造前のオリジナルの定数でも問題なく動いているはずです。 ではなぜオリジナルの定数では低域での発振が出来ないのか?。

 *: Fc= 1 / (2πCR) ....... (CR filter 1段)
 *: Fcは抵抗とcapacitorのインピーダンスが同じになる周波数
 *: 微分抵抗(r) = 0.026 / I  (常温で)

ladder VCFの Fc = Io /(8π * C * 0.026) = Io / 0.653 * C

I:  片方のladderを流れるBIAS(制御)電流
C: ladderのcapacitor
Io: 差動のテイル電流

このVCFでは両側のladderで共用しているCを2倍の容量のC、2個で置き換えるとCとCの中点は交流的にGNDとなり両ladderを分離して考えることができるのでその際 Cは元のCの2倍、 またテイル電流の1/2が各ladderに流れるのでFc= 1/(2πCr)の式は Fc=1/(8πCr)となる。

capacitorを0.01uFから0.047uF変えたことによる効果は単純に同じFcにおいて制御電流が増えている(より小さい微分抵抗で同じFcになる)。 この場合は約5倍と言うことになり微分抵抗はオリジナルの 1/5の値で同じcutoff 周波数になる。 filter 1段についていえば当然同じ制御電流量では最高発振周波数は下がります。


resonanceをかけた場合、入力と反対側のベースに出力信号を戻すので位相差180度でresonanceをかけていくと出力信号の通過帯域の振幅が減少していきます。 resonanceでピークができるのは Fc付近で 4pole filterなので位相が 180度回転しているためその付近は信号を入力にもどすと 180度+ 180度 =360度になり正帰還となりそこの周波数成分の振幅が上昇するためです。

このFc付近のゲインは MOOGのような buffer付き(*0)の 4poleの場合 -3dB*4=-12dBですが、このfilterのようにbufferが無い場合は理想値で-22dB 程度、部品のばらつき等を考えればもっと下がるはずです。 かりに-24dB下がっているとすれば通過帯域に比べて 1/16に減少しているわけで MOOGの -12db=1/4よりかなり小さい振幅に対して正帰還がかかるわけです。

正帰還で発振する為には発振が1点に集約するための BPF要素が必要でかつ閉ループゲインが1以上必要です。 このVCFの場合はLPF + HPFで BPFが構成されます。 LPFは自分自身の特性、 HPFは出力を入力に対して負帰還したLPFの逆特性(*1)です。

*0:
transistorの定電流性によるbuffer効果で後段のfilterの負荷としての影響を回避できる。

*1:
位相が180度ずれている帯域でゲインが下がるがLPF特性を逆相でMIXしているのでのなで肩部分は逆にゲインの低下が少なくなり出力特性は肩特性が改善される。 正帰還のポイントは盛り上がる。


緑: 未負帰還時の特性
黄; 負帰還要素(棚型HPF)
白:負帰還後の特性

HPF要素は単純なHPFでなく棚型HPFのイメージ。 正帰還型のVCFではLPFとHPFでBPFを作るがHPFとLPFのカーブの交わった所がBPFのピークになってそこで発振するが、このfilterの場合はHPFの肩のピーク位置と負帰還でできたLPFのピーク位置が一致している。 上図で白のカーブをゲイン低下分上に持ち上げればLPFとHPFでBPFができるイメージか。


ladderに流れる信号源電流の振幅は制御電流の大きさに比例して大きくなりますので制御電流が小さければベースに印加する電圧が大きくとも内部を流れる電流振幅は小さくなるのですがladderの負荷になるdiodeの部分では電流が小さければ、diodeの微分抵抗が大きくなるのでdiodeの負荷に発生するaudio信号の電圧振幅は制御電流値の大きさに関わらず同じになるはずなので低域で発振できないのは制御電流の大きさには関係しないようにも思うのですが結果はそうでもないということです。

制御電流値に対応したコンダクタンス値(gm)で差動回路に印加された信号電圧が信号電流となり(EXPO変換) それが上の方で diode負荷の電流 -- 電圧変換によって電圧振幅(LOG変換)となる。 transistorのVbe -- Ic EXPOカーブ上のあるポイントがバイアス電流としての制御電流でありその位置でaudio信号に対応したVbeがIcに変化されそのバイアスポイントを中心とした電流変化がdiode負荷のの電流 --電圧特性(LOG)で電圧の変化に変換されるので基本、変換された電圧振幅は信号電流振幅の大きさに関わらず一定振幅になる。

* gmと微分抵抗は本質的には同じ物

* audio信号の電圧--電流変換時、本来ならなVbe -- Icの関係はEXPOだが、差動回路の負帰還により信号電圧に対するIcの変化は信号電圧が0Vを中心としたわずかな範囲ではリニアに変化する。 それ以降はLOG変化。 電流は最大で信号電圧0V時点での電流の2倍しか変化しない。 すなわちベースにいくら信号電圧をかけてもB-E間は18mV 2 しか変化しない(LOG圧縮される)。

このdiode ladder VCFの信号の取り出し方を見るとladder出力に抵抗負荷がある形になっています。 これであると上記のような diodeの(微分抵抗 * 信号電流) = ゲイン一定の出力電圧と言うご利益を受けれない(*1)ことになります。 この場合は定電流源の電流が微分抵抗と負荷抵抗Rの抵抗値の比で分流することになります。 よってdiode負荷の両端電圧と負荷抵抗Rの両端電圧の変化は同じ値になります。 と言うことは両者の抵抗値の比率の変化と信号電流の振幅変化で最終的な電圧振幅のゲインがきまります。

最上段のdiodeの負荷が抵抗であれば単純なのですがdiode負荷は流れている電流値で微分抵抗が変わります。 OP AMPにつながっている負荷抵抗には無信号時にもVcc -- diode経由で直流電流がある程度流れていますが、この電流は負荷diodeにも流れているのでCV=0でも負荷のdiodeはバイアスされている為、初めから微分抵抗値は低くなっています。

すなわちfilterのladderの微分抵抗や、差動ペアのtransistorの微分抵抗(というかgm)とは動作点が異なります。 このため CV=0V(低域)で diode負荷の高抵抗値を期待することはできませんから当然制御電流の小さい区間ではゲインが下がらざる追えません。 制御電流が大きくなれば直流電流による初期値の微分抵抗の低下の影響が減るため正常振幅に近づきます。

 * 反転入力側が約1.4uA、非反転側は約1.9uA直流電流が抵抗負荷に流れています。  差動のOP AMPの入力インピーダンスは反転側100K(最低)、非反転側4.6Mですが、直流電流については反転側も非反転側とあまり変わりません。

負荷diodeに抵抗が直結された形の場合まず、抵抗に流れる直流電流でdiode負荷の微分抵抗の初期値が低下してしまうのでCVが小さい時、信号の電圧振幅が 低下した微分抵抗 / 素の微分抵抗 に低下してしまう。 さらに並列抵抗の影響で、信号電流が抵抗に分流した比率分、信号電圧振幅が低下する。


*1:
ご利益を受けないと言うのはうそです。 そうであればわざわざ負荷をdiodeにする意味 が無く負荷が抵抗では単なるVCAになってしまいます。 ladderの負荷が単に抵抗であれば制御電流のEXPO特性そのままになってしまうところをdiode負荷のおかげでそうはなりません。


1: 負荷抵抗Rが無い時のdiode負荷の微分抵抗の変化(R15=3.3K)


2: 負荷抵抗Rがある時のdiode負荷の微分抵抗の変化(反転入力側R15=3.3K)

(1)とY軸のスケールが違うので大差のないように見えますが、(1)のグラフがCV=0から6Vくらいまでは負帰還で圧縮された形なっています。


3: 信号電流振幅の変化

電流振幅の変化は制御電流の変化と同じカーブを描きます。


単純には(2)と(3)のグラフの積としてのdiode負荷の電圧振幅が出てきそうですが、ここでもう一つの反応として信号電流が微分抵抗と負荷抵抗Rの抵抗比に応じて分流するので diode負荷に流入する電流は特に低域では減少します。 CV=6V程度になると微分抵抗との抵抗値の差が大きくなるのでほぼ電流はdiode負荷に流れこむので並列接続の影響はなくなります。

直流電流による微分抵抗の低域での低下は反転、非反転入力で大差はないですが、audio信号に対する分流の影響は反転側の入力インピーダンス約100Kに対して非反転側は4.6MΩ なので反転側はより大きくなります。

初め負荷抵抗が100Kだと勘違いして無信号時85uAが流れていると思って計算した微分抵抗値のグラフはこれになりそうなると振幅グラフはこうなってしまいました。 これを見た時、発振振幅と発振周波数の関係によく似ていたのでこれが原因で発振振幅が小さいのかと思ってしまいましたが、現実はもっと複雑でした。

この微分抵抗のグラフを見るとこのカーブの形は(1)のカーブに負帰還をかけたような形となっています。 初期値として直流電流をかけただけでこうなるのがちょっと不思議にも思えますが直流値が上乗せされているので本来抵抗値の大きい部分がより影響を受けるわけなのでこれは負帰還の反応と同様な動作であるわけで結果のカーブも負帰還反応を反映しています。


制御電流が十分大きい Fc全開の場合、VCFの入力に対する出力電圧の比はRf=1.5Mの時1.1倍程度ありますので4.5Mにした時で約3.3倍程度はあることになりますが、制御電流が小さければ微分抵抗も大きく、負荷抵抗Rの影響を受やすい範囲が広く上記のように低域での電圧ゲインが急低下しているのでOP AMPのゲインを上げても閉ループゲインが1以下の状況で発振不可になるのではと思われます。



抵抗負荷に流れる直流電流の影響で出力ゲインが変化するなら、diode負荷からの取り出しにカップリングのcapacitorをつければ改善されるはずです。 そうなればdiodeの微分抵抗は初めから下がらず、出力電圧ゲインを一定に保てるのか?と言うことですが、この場合もdiode負荷と負荷抵抗Rの並列抵抗が影響してきます。

この場合はdiode負荷との微分抵抗の分流の影響ですからやはりこの場合(R15=3.3K時の制御電流下では)反転入力側の減衰が大きい。 Cをつけることによる効果は直流電流によるdiode負荷の微分抵抗の低下が無くなりdiode負荷の微分抵抗は負荷抵抗R無しの状態になるということで、これと負荷抵抗Rによる分流比で電圧振幅がきまる。

CV
(V)
微分抵抗
負荷無し
微分抵抗
(負荷4.6M時)
振幅比
(負荷4.6M時)
反転入力
(C有り)
反転入力
(C無し)
0058K 11.3K0.190.360.068
0130K 9.3K0.310.520.2
0215.4K 7.2K0.470.680.32
037.7K 4.9K0.630.810.5
043.9K 3K0.760.850.65
051.9K 1.7K0.890.950.85
06970Ω930Ω0.960.970.97
06490 4700.960.990.99
08250250111
09133 132111
1075 75111
1145 45111
1230 30111

・ 振幅比 = 微分抵抗(負荷4.6M時 ) / 微分抵抗(負荷無し)...........直流電流の影響
・ 反転入力(C有り) =(微分抵抗 * 3): 100KΩ の分流比.............並列抵抗の影響
・ 反転入力(C無し) =(反転入力(C有り)) * 振幅比 ............直流電流及び並列抵抗の影響

微分抵抗(負荷無し)はR15=3.3K時の diode 1個の微分抵抗。
微分抵抗(負荷4.6M時)は負荷無しにプラス直流電流の負荷を1.4uAとして計算。

1: 直結時の非反転入力側の入力電圧 = 振幅比
2: 直結時の反転入力側の入力電圧 = 反転入力(C無し)
3: カップリング付きの反転入力側の入力電圧 = 反転入力(C有り)

3っのケースについて計算してみました。

1: 直結時の非反転入力側の入力電圧 = 振幅比

2: 直結時の反転入力側の入力電圧 = 反転入力(C無し)

3: カップリング付きの反転入力側の入力電圧 = 反転入力(C有り)

* 直結時は反転入力側の方が非反転に比べて低下が大きい。 Cをつけると低域の低下が改善される。



実機での測定

filterとしてでなくAMPとしてのゲインをはかるため、filterの4っのCをはずして信号波形の電圧振幅を測定。(OP AMP OUT)

まずはladderに何もつながない状態(OP AMP接続無し)にしてCV=0から12Vまで可変した時のdiode負荷での電圧振幅を測定。 結果はほぼ全域にわたって振幅変化なし。 正確には CV=12Vに近づくにつれてで若干振幅の増加が見られる程度。.....(なぜ上昇が見られるのかわからず。)


次に反転側と非反転側の電圧振幅の違いを見るためにdiode負荷の位置で電圧を測定。 (カップリングCなし、抵抗直付け(OP AMP付け))


非反転入力側



反転入力側

入力インピーダンスの関係から反転側のゲインロスが大きいのは予想できましたが、非反転側でも低域のゲインロスがかなりあります。 これはやはり直流電流の影響でしょう。 両者とも計算値と少し異なりますが形はおおむね似ています。


次にはカップリングのCあり / 無し時の信号電圧振幅特性の差を調べる。(OP AMP OUT)


カップリングのCあり時の信号電圧振幅特性



カップリングのC無し時の信号電圧振幅特性

低域はCがあることにより改善されていますがCありの特性は計算値よりは少し悪いです。 計算値は反転入力だけしか示していないの実機は非反転も多少影響していると言うことでしょう。 あとはbufferを入れればさらに改善されるか。

実機ではCVが大きくなる高域での減衰が少しあります。 なにが原因でしょうか。 抵抗負荷を全くつけない状態で filtetのCをはずして電圧振幅をCV=0から12Vまで計るとCVの増加にともなって若干電圧振幅が上がるという現象はありました。 本来はフラットなはずですが。 diode負荷の電圧振幅変化はaudio信号が入る差動ペアのVbeの値*3と基本同じはずなのですが。(*1) Q3のVbを見ても制御電流の変化による信号振幅の変化はありませんでしたが,,,,

シミュレータで試すとCVが大きくなるに従ってaudio信号が入る差動ペアのB-E間抵抗の低下を受けて信号入力用の分圧抵抗の値が実質低下するため印加電圧の振幅が下がるという結果が出ます。 これは2っのシミュレータを試した結果同様の結果だったのですが、実機の測定では変化はありませんでした。

*1:
・filterとして機能するcapacitorをはずした状態時。
・diodeの電圧がVbeの値と同じであればLOG圧縮が入っていて出力は変な波形になると思うかもしれませんが、反対側のdiode負荷と位相反転して足してやるときれいな元の波形が再生されます。(ladder VCFの面白い所です。)

・audio信号のVbeと両diode負荷に発生する信号の関係(LOG圧縮)
・黄色が差動ペアの信号入力側のVbe、白がdiode負荷の信号電圧
 上図ではVbeの3倍がdiode負荷の電圧になっていますが。
・右の図が合成波形(差動のOP AMP OUT)

・transistorのVbeとdiodeの A-K間電圧は相似形ではありますが、同じ制御電流が流れていても必ずしも同じ電圧値ではない。




最後に問題のresonance発振周波数と電圧振幅の関係を以下にしめします。


Filter発振( カップリングCあり時/ R15=3.3K / filter C=0.047uf )

CV(V) 発振周波数(Hz) 電圧振幅(V)
00 022 0.34
01 035 0.58
02 060 0.9
03 108 1.05
04 211 1.2
05 400 1.2
06 735 1.3
07 1.4K 1.3
08 2.8K 1.4
09 4.6K 1.5
10 8.8K 1.7
11 11.9K 1.9
12 16.4K 2.25

* 0から7VくらいまではCあり時のAMPの振幅特性を反映している感じ。
* それ以降はさらに発振振幅が伸びる条件が加わるような感じ

ここで新たな疑問が生じてしまいました。 AMP特性は平坦なのに高域にいくにしたがってなぜ発振振幅が増加するのかという問題。 発振ということではそれ以前にどうして安定して発振できているかをわかる必要があります。



負帰還型VCFの正帰還発振

このfilterの発振は CR filter 4段接続による位相発振動作と同じです(*1)。 帰還ループ内にBPFが構成されループ内のfilterのゲインロスを補う形でAMPが挿入され、閉ループゲインが1以上になれば発振します。

*1: 厳密には電圧入力型のfilterと定電流入力型のfilterという違いはあります。
(Tr./DiodeLadderともに負帰還タイプですが定電流型はTransisterLadderでDiode Ladderは電圧入力型です。)


上のような回路を考えてみました。


Rf=30Kで帰還のゲインは15倍

この状態ではまだ発振できず減衰振動となります。 ちょうどインパルス共振によるanalog DRUMの波形と同様な波形。 閉ループゲイン1以下なのでループするごとに振幅が減衰。

この波形どっかでみた記憶がと思いきやresonanceを上げた時波形に重畳されるあの形でですね。(下図参照)



Rf=40Kで帰還のゲインは20倍

でやっと上のグラフと違って初段の OPAMPの出力が後の filterのゲインロスより大きくなってゲインロスが解消されたので発振できた。 すなわちループゲイン 1以上。


赤: 初段のOP AMP
白: 後段のBuffer出力(上の2っの波形と同様の出力)

上図は初段の OP AMP出力と最終段のOP AMPの出力の変化を示したもの。 初段のOP AMPの出力が電源電圧まで達し飽和したところで発振波形振幅は安定する。 最終段のOP AMPの出力は初段と異なり歪んでいない。

4段filterで位相が180度回転した結果を逆相で戻して360度にするということはFcではあくまで正帰還になっているので信号振幅はいけるとこまで増大してしまうのは正帰還タイプのfilterと違いはないということです。 ただ最終出力段は4っのfilterの後なのでゲインが低下していてクリップしていないというだけ。 SIN波がクリップして矩形波になり、発振周波数と同じFcの4段LPFで再度SIN波を得る(*1)。 SIN波生成の手助けはLPFとHPFで構成された同じF0のBPFという構成。

この例のfilterの発振振幅のリミッタは OP AMPの電源電圧なので OP AMPの電源電圧を上げれば発振振幅が大きくなります。 ではladder VCFのリミッタはどこ存在しどうやって発振振幅を一定にすることができるのかと言うことになります。

*1: 発振状態ではLPFと言うよりはBPFとして動作。


ladder VCFの振幅リミッタはどこに

これは正帰還発振の振幅上昇がある地点で止まる理由を考えるということです。 負帰還による発振においても発振振幅増大の暴走を止める為のリミッタは必要でシミュレーション例の位相発振においては初段の OP AMPの出力が電源電圧まで達した所で発振振幅の上昇が止まって平衡する。(1点で止まって動かないので帰還量を増やしても同じ発振振幅しか出ない。)

diode ladderにおいてはリミッタは resonanceの戻りが入る差動アンプの入出力特性(電圧 -- 電流特性)にあると思われます。 例の位相発振と違って ladderの場合は入力に戻す帰還量に応じて発振振幅が連動して上昇している区間がある。 さらに帰還量を上げるともうそれ以上、上がらなくなる。 これは差動アンプの最終クリップの点にいたる少し前のLOG特性付近での動作と一致するしこれがなんらか関係している。 これとCVが低い時は発振振幅が小さいことの関係があるのかないのか?。

ループゲインが1以上あればループを繰り返すことで序所に振幅は増加する。 帰還量が少ない場合は増加量がすくないだけで両者ともいける最大値まで達しそうであるが実際は帰還量が少ない方が最終振幅は小さい。 考えれれることは、入出力特性がリニアではないので LOG領域にさしかかると帰還ループが重くなるというかおそらく抵抗が生じて平衡するのでは?。( 坂道で自転車をこぐのが大変になるのと同じ原理か ) もしくは帰還量が少ない方がfilterでのロスが大きいのか?

CVが小さければ電流のリミット値も小さいわけですが、後のdiodeによる電流--電圧変換によりその差は解消されるはずなのでその点は考慮するポイントではないでいいのでしょうか。


白: resonance量 大
緑: resonance量 小

同一CV時、帰還量が極端に小さくなければ最大値に達する時間はかかるも最大振幅はあまり変わらない。 振幅の増加は初めEXPO、その後はLOGカーブ。 やはり差動回路の特性と関係あり。


白: CV 小
緑: CV 大

CV値が小さければ帰還量最大でも最終振幅は大きくなれない。 単位時間あたりの上下運動量の差が何か関係あるのでしょうか?。

CV値が同じで帰還量に差がある場合、当然増加量には差があるがSIN波の周期は同じなのが最終振幅にあまり差が出ない原因?。 CVが小さいということは周期が長いので変化量が周期が早い方に比べて少なく結果増加量は小さい。 このことがゲインロスの原因となるのか?


CV=12V時はもちろんCV=0V時点の比較的小さい発振振幅(300mV)でもQ2のベースに入力される電圧振幅は リニア領域を超えてLOG領域に入っている。(クリップの度合いが違うだけ) すなわち電流の最大値までは振幅の大きさはどちらもある。

* 各シミュレーション波形


黄色: CV=12V時の発振電流波形(差動ペアの出力)
白色: CV=0V時の発振電流波形(差動ペアの出力)


黄色: CV=12V時のQ2 Vbe波形(ベースへの印加電圧2.2V SIN波)
白色: CV=0V時のQ2 Vbe波形(ベースへの印加電圧320mV SIN波)


CV=12V時のQ2Vbe拡大波形(Q3は逆相波形)

入力信号がマイナスの部分では相手のtransistorのB-E間が低抵抗、自身は高抵抗になるので印加電圧はQ2に多く分配される。


CV=0V時のQ2 Vbe拡大波形(プラス側は12Vよりソフトにクリップ)

入力電圧が高ければSIN波の中心部に向かってつぶれていくので波形がより立ってくるが入力が小さい時は波形に丸みが残る。

正帰還の発振信号がQ2に入力されると強くオーバードライブされて出力は矩形波になっている。 これが発振周波数と同じFcの4段LPFというか実際の動作は同じF0のBPFを通ると SIN波となって再度 Q2の反転入力に印加される。



ladder VCFの発振振幅がが高域で大きくなるのはなぜか

この回路の4っのCを除いてfilterでなくした場合の振幅特性は低域での並列合成抵抗の影響を除けば、 CV=6V以上以降はほぼ平坦なはずである。 でも発振振幅は高域すなわちCVが大きくなると大きくなっている。 なにが原因か。


Filter発振振幅

最小値と最大値で5倍程度の差があります。



Fc位置でのゲイン

CV(V) Fc(Hz) Fcでの電圧振幅(V)
00 020 0.17
01 035 0.19
02 060 0.45
03 108 0.56
04 211 0.62
05 400 0.7
06 735 0.7
07 1.4K 0.76
08 2.8K 0.76
09 4.6K 0.9
10 8.8K 1.05
11 11.9K 1.2
12 16.4K 1.25
* R15=3.3K C=0.047u

何かの手がかりと言うことで発振周波数でresonanceを0にしてそこに発振周波数と同じSIN波を入れてゲインを測定して見ました。 測定はかなり大雑把ですが傾向は発振振幅とよく似ていてCV=8V以降で電圧の上昇が大きくなっています。

さらにFc=16KHz、8KHz、4KHz、2KHz、1KHz 時における周波数特性を取って見た所、Fcより十分低い周波数の通過帯域での電圧振幅に差がありました。(1KHzでVc=6.5V程度なので並列抵抗によるゲインの低下はない範囲)


16KHzを最大振幅とすると1KHzではその80%しかない。 Fcが1KHzから16KHzまでですので CV=6.5Vから12V程度の範囲、並抵抗によるゲインの低下がない部分ですが、発振器の振幅上昇が見られる周波数と一致します。 結果としては制御電流の違いによってfilterの出力ゲインの違いがあることはわかりましたが何が原因でそうなるのかはわからず。

* 発振周波数をFcとして実験しています。

* filterがなで肩なのでたとえばFc=16Kだとしてほぼフラットになる通過帯域は250Hz以前になるのでその周波数のSIN波を入力。 (Fc=2Kで30HzのSIN波を入力、Fc=1Kでは15Hzは出ないので20Hzで代用)

filterの4っのCを取り除いた場合のOP AMP 出力にはこのような差は生じていず、実測でCV=8V以降では逆に出力レベルが若干低下しています。(OP AMPを外してdiode負荷位置で計るとCVが大きい方がわずかにゲインがあがる) filter用のCが付くとどうしてこうなるのか。

シミュレータではfilterのCをはずしてかつOP AMPをはずした状態では CV=4Vから12Vの間で1dBほどのゲイン上昇がありこれは実測と同様です。 filterをつけた状態では OP AMP有り無しに関わらず、4dBのゲイン差が生じており上記の実測に近い値です。

上記のようになで肩の影響でCVが小さい時には通過帯域でのゲイン低下があるように見えるのかと思いresonanceを10%ほど上げた状態でF特を測ってみるとCV=4Vの200Hzくらいまでは通過帯域でのゲインは低下しません。  シミュレータでもresonanceを少し上げてやるとCVが小さい時と大きい時の通過帯域でのゲインの差は少なくなります。

resonance MAX時の周波数特性はシミュレータではCV=0時が一番ピークが大きく序所に低下 CV=8Vくらいからまた上昇というカーブになっていますが発振振幅はCVが大きいほど大きいという予想外の結果。 ピークの高さと発振振幅は関連しないのか?


filterとしてresonanceをかけない帰還量0の状態でFcよりも十分低い通過帯域で出力ゲインに差が出るということはわかりました。 CVの違いは制御電流、電流振幅の違いと微分抵抗の違い、しいては発振周波数の違い以外にないはずなのですが、これらのどれかが影響しているのでしょうか。 手持ちのsynthでdiode ladderは無いのでtransistor ladderの MS404のVCFの発振振幅を測ってみました。



transistor ladderのMS404のVCF発振の振幅グラフを下に示します。


WAVE KITほどは変化が少なく最小値と最大値の差が2倍程度ですが傾向は似ていますのでladder VCF独特の物のようです。 MS404は信号の取り出しに OP AMPのbufferを使っているので低域の減衰が小さいのだと思われます。

MS404ではladder出力から resonanceで信号を反転入力に戻す際の差動AMPの電圧ゲインは15倍であり、WAVEKIT(定数変更後)の90倍に比べて1/6になっています。 transistor laderの cutoffでのゲインの落ち込みがdiode ladderに比べて 1/4以下なのでこの値は妥当な物なのでしょう。

このこともあって resonanceを上げても通過帯域の落ち込みが少なく、発振直前でもresonance=0の1/2程度しか振幅が低下していないのはとても良いことだと思います。 MS404ではladder 出力をbufferで受けた語、resonance用のAMPとVCF出力用のAMPが別系統になっています。

* MS404のVCFは基本 MOOG rogueのコピーです。



CVの値によってfilter段でのロスが違うのか?

ladderの1段目のfilterに入る電圧振幅波形は電流入力型のfilterなので直接見ることはできないのでfilter発振させてladder filterの1段目の出力と2段,3段目の出力を比較して見ることにしました。 ladderに入る前の電流波形は矩形波になっているはずで、発振周波数と同じFcの1段目のfilterの出力はADエンヴェロープのような時定数波形になっています。 2段目の出力はまだSIN波にはならず三角波状態です。 Fcを変化させても両波形の形に変化はありません。(厳密には多少の違いがあるでしょうが)

CV(V) 1段目 2段目 比(2段/1段) 比(3段/1段)
04 5.6 4.50.80.36
05 5.6 4.80.860.39
06 5,6 4.90.880.43
07 5.6 5.00.890.45
08 5.7 5.20.910.46
09 6.0 5.60.930.47
10 6.6 6.20.940.48
11 7.0 7.010.57
12 8.0 7.80.980.6


* 振幅の(3段/1段)比(WAVE KIT diode ladder VCF)

上の表から、制御電流値が小さい時の方がFilterの肩特性もしくは全体のゲインが落ちていることがわかります。 この実測値はR15=3.3Kの物なのでオリジナルのR15=10Kであれば制御電流値が小さい時はさらにfilterのロスが大きくなるのでおそらく低域の発振がだめだということなのでしょうか。

シミュレータで試してみると発振状態ではFc付近は 4段のfilterそれぞれがBPF特性になっており段を重ねるごとにBPFのスロープ(LPF側)は急になるがピークのゲインは下がる特性になっています。 また段を重ねるごとにピークの位置が周波数の低い方にずれています。 さらに特徴的なのが制御電流が少ない方が後段にいくにしたがってピーク位置のゲイン低下が激しくなっています。 これが発振振幅の大小と関係あるのかないのか?。 下図では1段目のピークはほぼ同じだが4段目のピークにはかなりの差があります。

CV=12VとCV=8Vの発振時特性
緑: 1段目
赤: 2段目
白: 3段目
水: 4段目

CV=12V: 4段目/1段目= 14% | 3段目/1段目= 29%
CV=08V: 4段目/1段目= 08% | 3段目/1段目= 23%
CV=06V: 4段目/1段目= 07% | 3段目/1段目= 20%

実測結果とシミュレーションでは数値は異なりますが、CVが小さい方がロスが多く後段にいくにしたがって顕著という傾向は同じですのでの関連性はあると見てよいのでしょう。


電流入力型のfilter

ここでは各段のfilterの電圧を見るわけですが、初め単純に各capacitor位置での振幅電圧を測っていたのですがこのfilterは定電流入力のfilterであるため通常の電圧入力のfilterと少々動作が異なりcapacitor位置で電圧を測ると通過帯域のゲインが後段にいくほど減少してしまいます。 各段のdiodeの両端で電圧を見ることで各段の正確な振幅電圧がわかると言うことです。

定電流源入力のfilterなのでCとRの両者のインピーダンスの比で電流が分流していきます。 通過帯域に信号がある時は電流はほぼ全て diode側に流れ capacitorには流れないわけで、遮断領域になれば capacitorに電流が流れた分、diode側の電流は減るわけでdiode端子間の電圧を見ればそれがLPF特性でありまたcapacitorの電圧もLPF特性と言うわけで、通常の分圧型のfilterより動作はわかり易いとも言えます。

実測して見るとdiodeの両端子間の電圧を測るとCVが小さくなるとブレて測れなくなりましたので結局capacitorの電圧を測定。 resonanceを上げていって負帰還が強くなると上記の後段にいくに従って通過帯域のゲインが下がることは無視できるような値になるようですので発振状態ならC側で測ってもいいのかも?。

といいつつも下図のグラフを見るとスロープ特性が測定位置で異なるように見えます。 上記の実測値とシミュレーション値の違いはこのためでしょうか。


* diode 両端の特性


* capacitorでの電圧特性


次にMS404のfilterでも同様のことをしてみました。 但しCVの値との対応でなく単に発振周波数16K/8K/4K/2K/1K/0.5Kの対応としました。

Hz 1段目 2段目 比(2段/1段) 比(3段/1段)
500 4.8 2.30.690.48
1K 4.9 2.40.690.49
2K 4.9 2.40.690.49
4K 5,0 2.60.700.52
8K 5.2 2.80.730.54
16K 5.6 3.00.730.52


* 振幅の(3段/1段)比(MS404 transistor ladeder VCF)

こちらはdiode ladderより差が少なくなっていますのでbuffer効果が出ているということでしょうか。 ですがやはり制御電流が大きい方が発振振幅は大きいです。


考察としては 直流による微分抵抗の低下、並列抵抗によるゲインの低下を除けば、CV=6V以降ではループゲインが同じであって diodeの電流--電圧変換が正常に行われていればCVの値に関係なくresonance MAXで同じ発振振幅になってもよさそうだがそうならない。 リミッタとして働くのは差動の電圧 --電流特性、ループゲインを低下させる可能性があるのは filter段でのゲインロスぐらい。

シミュレーションによるCV値の違いによる発振時の周波数特性(ピークの大きさ)は実際の発振振幅結果を必ずしも反映していない。 ただシミュレータではCV値が小さい方がfilterの後段にいくに従ってゲインロスが大きくなる結果が出ている。 ゲインロスの原因は diodeの電流--電圧特性が影響しているのかそれとも他か?。 そもそもゲインロスを補うための OP AMPがあってその結果がループゲイン 1以上なわけだから結果としては単にループゲインの大きさが発振振幅の大きさに対応しているだけなのか?。

ループを重ねることによる発振振幅の増大はCVが大きい方が発振周波数が高い為早くCVが小さい方が遅い。 これが差動のリミッタに与える影響はあるのかないのか?。 発振周波数の高さだけが意味を持つのなら同じ発振周波数であれば帰還量は影響しないようにも思えてしまうが。 やはりリミッタのリミット値が1点でないこととゲインロスの差が存在することが発振振幅の差を作るのでしょうか?。

1: 直流電流の影響によるdiode負荷の低域における微分抵抗値の低下
2: 負荷抵抗Rとdiode負荷の並列接続による低域での分流比の影響
3: 制御電流が小さいほどループ内でのロスが発生する?
 リミッタのリミット値に幅がある。 それらが正帰還に影響?

と言うのが現時点でも結論です。 3については微妙です。


resonanceのVR位置と帰還量の関係

resonance VRをまわすと負帰還と正帰還が同時におきる。 出力の変化をさぐるべく VRのまわりに目盛り板をつけて角度に対する振幅を測定。 Fcを高めにセットし通過帯域の低めの周波数にSIN波を入れる。

1:負帰還
--------------
このVCFの場合、OP AMP OUTの電圧変化はVolumeの回転角に対してEXPOの下降で VR MAXで最低値となる。 反転入力のQ2のベースに入る電圧はこの時の値が最大値で OP AMP OUT = 反転入力電圧であり、この時だけ分圧はなし。 このためQ2のベースに印加される電圧は小さく最大100mV以下であり、これはOP AMP OUT電圧変化の逆特性の LOG変化であるとともに VR MAX以下ではresonance VRとR11の分圧になるため全体の電圧振幅は上記のように小さい。 WAVE KITのVCOの電圧振幅が5Vでそれが非反転入力には分圧されて100mVで印加されているのでそれと同等の電圧です。

上記のようにOP AMP OUTの電圧変化は EXPOなので resonanceを上げるに伴う音痩せ感は大きく、VRをAカーブにしてEXPOをLINEAR下降に近づけるようにした方がよいと思われる(*1)。


2:正帰還
--------------


* volume(100KB)の回転量と出力の反転入力ベースへの帰還量(分圧の度合い)
* (10で分圧無し(100%帰還))


* CV=12V時の VRの回連量と発振振幅の関係

17%の帰還量で最大発振振幅となる。発振振幅の変化は差動ペアの電流特性に酷似しているようだが。  CV値が異なってもカーブの形は似たような変化であるが発振開始位置(回転角)が後の方に移動する。

CV=2Vでも回転量60%を超えると発振、12Vにいたっては40%から開始してしまうのでとても使いにくい。せめて80%くらいからの発振になるようにしたい。 発振位置が早すぎるということではAカーブの方がよいのでしょう。

resonance VRをまわして得られるOP AMP 出力(正帰還分の発振要素)は VRが50%くらいまでは極少量で変化もEXPOであると思われる。(変化が小さくで観測不能) 出力が出始めは少しリニア気味の上昇だがその後の変化はLOG変化となり、VRがある程度いくとほとんど変化しない、すなわち収束する。 だからこの発振振幅は暴走することなく一定値を保てる

一方 Q2のベースに印加される電圧は resonance VR MAXでは OP AMP OUTと同じ分圧されない値。 それ以下では VRとR11による分圧となる。 変化のカーブは初めEXPOであるがLOGカーブに変化してこれも収束する。

この場合のQ2のベースに印加される電圧は正帰還である為、出力が分圧されているにもかかわらず大きく OP AMP OUTが収束する前にいくにしたがって OP AMP OUT と変わらない電圧レベルになってしまうので MAX値が2Vあるとすれば中間でも1V以上はある。 いずれにしても resonance VR=MAXでは Fcが最高値の16KHzくらいでは 2V以上の電圧が直Q2のベースに印加されておりこれは上記の負帰還の信号レベルとはオーダーがだいぶちがう。

差動増幅回路の入力特性としてベースにどれだけ電圧を印加しても出力電流はテイル電流で決められた値以上にはなることはできない。 すなわち電流振幅がそれ以上は大きくなれないので電流波形がゆがんでクリップするのだが初めはハードクリップでなくソフトクリップである。

実際 、入力電圧(SIN波)が2V以上になった時のQ2のVbeの波形はSIN波の原型をとどめていないくらいLOG圧縮されている。 すなわち差動増幅回路の入力特性によって発振時の振幅増大という暴走はなく上記のようにLOGカーブで収束する。

*1:

MS404のVCFでは差動OP AMPのゲインが15倍とこのVCFよりもかなり小さいこともあってresonance Volを発振寸前の状態に持っていっても負帰還による振幅の減少は1/2以下になっている。 このことからも負帰還タイプのVCFではladder以降の差動AMPのゲインを大きくしないでも発振できることが望ましいように思い、ます。 SA13のVCFにおいてはオリジナルではゲイン200倍である為 resonanceを上げた時の振幅の減少がとても大きく実用的ではない。 ゲイン200倍と言うのはWAVEKITのVCFが低域で発振しないことへの対策なのでしょうが弊害が大きいです。

MS404のVCFは rogueのコピーですが resonanceのかけ方がオリジナルと異なりVRで分圧してベースに対してさらに直列に抵抗をかますタイプ。 さらに分圧の部分は擬似Cカーブになっているようですがこれがたいへん使いにくくVRが最後の方に行かないと効果が出ない。 MOOGのオリジナルはベースに直列にVRが入るタイプであり分圧はこのVRとベースの抵抗で行うタイプであるのでresonance Vol=0でもVRの値によっては厳密にはresonanceがわずかにかかってしまう構造です。 MS404の場合は50KΩなのでほとんど影響なし。 これを10Kにしてしまうとresonance=0でも少しピーキーになる。

rogueの回路図ではVRのカーブはAです。 上の方ではAカーブの方が変化が急にならなくて良いと書きましたが、ベースに直列にVRが入るタイプだとVR位置=0%で抵抗値最大、VR位置100%で0になるため、rogue VCFでAだと変化は下降のLOGとなるため、初め変化がなさすぎてVRの最後の方で急に効くという使いにくさになってしまう。 実際AカーブだとVRが60%の位置でresonanceが効き始め、発振も95%位置で突然発振という状況です。(ベースと並列にVRが入るタイプの場合は上記のようにAカーブがよい)


* 50KB使用時の回転量とMS404 VCF 反転入力ベース端子の電圧振幅


* 50KB使用時の回転量とMS404 VCF 負帰還出力振幅(90%以降は発振)




* 50KC使用時の回転量とMS404 VCF反転入力ベース端子の電圧振幅


* 50KC使用時の回転量とMS404 VCF 負帰還出力振幅(80%以降は発振)

50KCの方がスムーズだということがグラフからもわかると思います。 自分の404は rogueタイプの直列VRでかつ 50KのCカーブに修正してあり、よいresonanceのかかりになっていて発振寸前のふんばっている領域のコントロールがし易いです。 Cを使うのでなければ多少reso=0でピーキーですが20KBでもよいかと。

メーカーのシンセにおいてもresonanceのカーブはA,B,Cまちまちで使われています。 これは差動AMPのゲインなどのからみや負帰還とのからみで適正が変わってくるからなのではと思いますが.....

またこのrogueタイプの VCFでは発振時、反転入力のベースに印加される発振信号の電圧振幅は最大340mVとWAVEKITに比べて大変小さい値になっています。 総じてWAVE KITのVCFよりも安定していて使い易いという印象です。



その他.....


制御電流の大きさによって少なくとも低域の出力の大きさが変わってしまうということはFcを下げるとfilter全体のゲインも下がるということで、実際に周波数特性を取ってみてもそうなりました。 これは本来都合の悪いことなのですがFcを下げればfilterの遮断領域の特性で音量感が下がるので意外とその変化に気づかないからよしとしているのでしょうか。

ladderからの出力の取り出し方としてこの抵抗負荷直結と言う方法は diode ladder filterでは普通に行われている方法ではありますがこのような問題をかかえているのでcapacitorの値を大きめにとりかつ制御電流もそれに見合った電流値にして問題が起きないようにしているのでしょう。 たまたま WAVE KITのVCFの capaciutorの値が小さかったので欠点が出てしまったということでしょうか。 オリジナルの回路ではそれを補うためRfの抵抗を10Mとしておりそれが使い難さとなっています。

diode Ladder VCFに対して MOOG の transister VCFの場合は Ladderからの信号の取り出し方をこのような抵抗負荷的な取り出し方をしている(*1)のは初期の機種でその後の機種では高インピーダンスBuffer等を使い一番上の段のtransistorの電圧変化だけを取りだすようにしています。 こうすれば通過帯域の振幅は一定な状態になるはずです。 と思いきや私と同時期にこのVCFの実験(というか改造)をされた方(WAVEKITの資料を頂いた方)の話ではbufferを付けてもdiode ladderでは低域での発振振幅の大きさは劇的には改善されないということでした。

これは上記のfilterの各段の振幅を測った実験でも明らかなように filterの特性により振幅がスケーリングされているようなので劇的に改善することは無いということになりますが、効果はそこそこあるので少なくともDIY的にはbufferをつける意味はあるでしょう。

*1: カップリングのCは使っていますので直流電流の影響はさけられます。


調べて見るとladderからの信号を電圧で取る取り出し方にはいくつかのバリエーションがあります。

opamp buffer +差動AMP(instrumentation AMP風)
・ MOOG memory MOOG
・ MOOG Rogue (出力ampは+ OTA / resonance用は差動OP AMP)
・ Oberheim OBMX
・ Doepfer MS404(roufeと同様)
・ TEISCO 110F

OTAの使用
・ MOOG Taurus 1
・ MOOG sonic6

FET buffer +OTA
・MOOG polyMOOG
・MOOG microMOOG
・MOOG opus3

FET buffer +差動AMP
・TEISCO 100F

OTAを使うとAMPのゲイン指定に入力の抵抗を使わないで済むというメリットがあり(使ったとしても同じ値)、+/-入力での差ができないです。 上に上げたものは全てtransistor ladder VCFでありdiode ladderで電圧取り出しの物はないようです。 唯一 山下シンセの新版のdiode ladderにはinstrumentation AMP風の方法が明記されています。



SA13のladder VCFについては部品の定数をいろいろ変えたことによって一応 resonanceもそこそこ効くようにはなりました。 現状ではカップリングのCをつける対策まではして上記のような発振周波数下限22Hzで340mVまで出るようにはなりました。 それに伴いresonanceの波形もより変化が出るようになりました。

こうなってくると必ずしも負荷の取り出しをbufferを付けて電圧で取り出さなくとも実用上問題ないのではとも思うようになりました。 あとは低域での出力の低下をどれほど問題と見るかです。

実験して気づいたことはやはりFcでのゲイン低下、かなりのなで肩特性であるということです。 初め入力信号レベルが大きくてソフトクリップしたような少しなまった波形になっているのかと思いましたがこのなで肩特性のせいで波形がなまっているようです。 これはresonanceを少し上げてやることで改善されますので致命的ではありません。 むしろresonanceを上げると通過帯域のゲインが極端に下がるのはなんとかしたい物です。 肩特性がなで肩であることも悪いことではなく特性のバリエーションと見るべきでしょう。  K2000などもわざわざなで肩特性にするfilter parameterを持っていたりしますので。

ただ今回 transistor ladder (MS404)とこのdiode ladderを比較して見るとtransistor ladderの方がはるかに扱い易く感じました。 これを契機に昔作ったtransitor ladderの特性も調べてみようと思います。 また実験には主にROLANDの100MのVCO,VCFを使いましたが測定器的な使用には大変便利だと思いました。

部品定数等の変更箇所
R15 10K -- > 3.3K
filter capacitor 0.01uF --> 0.047uF
OP AMPのGAIN R3,R6 10M --> 4.5M
カップリングのCの追加 ---> 1uF

まだ未処理
Frequency調整用POT
ladderからの出力取り出し --> bufferを付けて 電圧で取り出す
resonance VRを100K(B)から100k(A)に変えるか
DC balance用POTが必要かの検討
R9がなぜ 3.3Kか問題
Rf=4.5Mを小さくできないか
buffer付きでfilterのcを外してAMPのゲインを測定
高域で発振振幅が上がる理由をちゃんとわかりたい。


現実に使えるようにするには上記のようにいくつかのパーツや定数の調整が必要と言うことでこのVCFは初期状態の無改造ではちょと使えないVCF(*1)だったというおちです。 wavekitにはdiode ladder VCF単体のKITもありましたがそっちはどうだったのでしょう。 当時このVCFのKITを作った人は初期状態で満足していたのでしょうかと一瞬思いました。 万能基板を含めた部品代もせいぜい500円から600円くらいですが、このVCFはこれだけ楽しめて勉強になるいい題材だと思いました。

発振状態等がだいぶよくなったので OP AMPのRfを4.5Mでなく1.5M少なくとも3Mくらいに落としても大丈夫かも知れません。 実際diode ladderでRf=1.5Mという値のsynthも多いですし。 実験に使った万能基板は色々部品を取替えしたので裏のはんだ面が結構荒れてしまいました。 実用機として使うには再度作りなおしが必要というか、出力を電圧で取り出す実験をするにも基板を追加するしかないですが、どうせ作るなら次は他のladde VCFに挑戦してみたいとも思います。 それ以前にちゃんとした音出しはまだなのでDC OFFSETによるクリック音がどの程度気になるか等の検討もまだです。

*1:
と言いつつも回路自体は1974年当時のSH-3のVCFととてもよく似ています、 やはりcapacitorの定数の違いが大きいのでしょう。 ちなみにSH-3のfilterのCは0.068uF、Rf=1.5M、テイル電流用の抵抗は3.3Kです。

SH-3と言えば当時の噂としてSH-3はMOOG方式のtransistor ladderを使っていたので特許の関係で後にdiode ladder VCFにチェンジしたSH-3Aが発売されたと言われていましたが実際は、SH-3がdiode ladder、 SH-3Aが transistor ladderです。 SH-3Aの方はしっかりcapacitorでカップリングをしています。

今回ladderからの信号の取り出し方について調べて見たのですが transistor ladderは電圧で取り出している物意外はかならずCが入っています。( 電圧で取り出していてもCが入っているものある。 これはDC offset対策の観点からでしょうか) diode ladder VCFに関してはまちまちで入っているもの入っていないものがありました。

capacitorあり

 ROLAND SH-1000(1973) (filterのC=0.068u)
 ROLAND SYSTEM100(1975) (filterのC=0.068u) *2:
 ROLAND SH-5(1975) (filterのC=0.068u) *2:
 ROLAND TB-303(1982) (filterのC=0.033u) *2:
 Firstman SQ01(197?) (filterのC=0.1u)

 *2: transistorのdiode接続

capacitor無し

 EMS VCS3(1969) (filterのC=0.1u)
 EMS AKS(1972) (filterのC=0.1u)
 ROLAND SH-3(1974) (filterのC=0.068u 制御電流用のR=3.3K)
 JEN: SX2000(1978) (filterのC=0.1u)
 DIY synth
 PE: Minisonic(1974) (filterのC=0.047u)
 PE: Minisonic2(1976) (filterのC=0.047u)
 電子展望(1976) (filterのC=0.068u 制御電流用のR=3.3K)
 初歩のラジオ(1977) ( filterのC=0.068u)
 トランジスタ技術 (1977) ( filterのC=0.22u 制御電流用のR=4.7K)
 初ラ別冊 エフェクター入門(1982) ( filterのC=0.68u) <--おそらくミスプリか

そもそもメーカ製synthでは思ったほどdiode ladder VCFは多くなく、DIY synthにdiode ladderが多いということです。 理由としてOTAが出現すると激減したということでしょうか。 DIY記事ではMOOG transistor ladderは特許の関係もあり使いにくかったのか。 調べたついでにfilterを構成するのcapacitorの値も上に明記しておきます。(カップリングのCではありません) DIY synthでは カップリングのCを付けているものはありませんでした。

ちなみに、初ラ別冊 エフェクター入門のVCFのladderからの信号の取り出し方が SYSTEM100のそれと同一でした。 当時は回路図などは今のように流通していなかったはずですが、持っている人は待っていたのでしょう。 さらに気づいたことは多くのdiode ladder VCFはfilterが4段構成でなく5段構成になっており初段のfilterはFcを他の4段より高くとってFc付近でのなで肩を改善しているようです?。 あとdiode ladderとはちょっとばかり違いますが、スタイナーVCFやKORGのdiode ringも差動回路がらみでにたような原理を使ったfilterでした。 一見違うような回路に見えますが実はdiode ringの動作はdiode ladderの動作によく似ています。



<2017/07/20 rev0.1>
<2016/10/30 rev0>