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調和発振
1: 正帰還
上のような回路で正帰還ループを組んで単周期のパルスを印加した場合の出力結果を以下に示します。
出力の一部を正帰還で入力に戻して加算しただけでは単に出力レベルが増大するだけで、パルスが消滅してしまえば出力も無くなってしまいます。つまりこれだけのしかけでは正弦波の発振は成立しないというわけです。
何かパルスのエネルギーを蓄えておく仕掛けがまずは必要というわけです。エネルギーを蓄えるということで capacitorを含んだ回路を帰還ループ内に配置してみます。
ちょっと回路が冗長ですが正帰還がかかっています。 結果を以下に示します。
正帰還の量によって出力は上図のように変化しています。それぞれ 減衰、保持、発散というケースになっています。 少なくともパルス消滅によって出力がまったくなくなる自体はさけられたので一歩前進です。以下に3タイプの帰還量に対する入力信号の増加のプロットを加えた図を示します。
単周期のパルスが無くなる前にcapacitor電圧が入力電圧より大きくなってしまうのでその時点で電流の方向が逆転して capacitorは放電動作を行います。結果一定時間経過後は出力電圧は0となります。
単周期のパルスが無くなった時点での入力信号電圧とcapacitor電圧が同じになっています。つまりcapacitorの印加電圧と充電電圧がつりあっており、この時点で電流が0になるので以後出力電圧の変化は無いわけです。 CR filterの抵抗に加わる電圧は単周期のパルス電圧そのもので、capacitorの充電電圧分の電圧が終始正帰還される形になっているのでパルスが無くなれば当然入力とcapacitor電圧は同じになるわけです。
単周期パルスが無くなった時点で入力電圧の方がcapacitor電圧より大きい為電流はcapacitorを充電する方向で流れ続けます。capacitorの充電電圧は正帰還で入力に返される為電圧差は保持され出力電圧は上昇します。(電流の直線増加)
上記、減衰、保持、発散のケースで言えることはパルスが無くなってからの動きは単一方向のみの動きになっているということです。 このため回転運動をするようなそぶりは見えません。上記の回路で正帰還をなくした場合の動作を以下に示します。
これは単純にLPFの回路にパルスを加えた形になるため、パルスによって発生した電流がcapacitorに蓄えられてパルス消失後はそれが逆方向の電流になって放電する為です。抵抗の電圧降下(HPF側)に注目してみると初めプラスに上昇した電圧が0を超えてマイナスになって最後に0に収束しています。つまりここで一周期の波形が発生しているわけです。HPFの出力というのはいわば直流分カットの性質があるのでパルス波形の直流分がシフトしてマイナス側に波形が現れるわけです。
パルスが発生している間は入力にパルスの振幅と出力のHPF振幅が加算されて入力されます。MIXされたものが再度HPFを通るためHPF出力の方がMIX電圧より減衰のカーブは急になります。上記回路でHPF出力の一部が入力に帰還されるので両者のカーブが異なってもつじつまは合うわけです。よってパルス発生中はHPF出力の方がMIX出力より小さくなります。 パルスが無くなると時間0で発生したMIX出力振幅から現在の振幅を引いた分の電圧が逆方向に発生することになるのでこんどはHPF出力の方がMIX出力より振幅が大きくなりますので逆方向にcapacitorの放電が開始します。このため無帰還のHPF時と同じように出力は0Vに向かって減衰していきます。 HPFの正帰還の場合帰還量の多さはMIX出力の振幅を増大させるだけで基本的に上記の減衰反応とタイプは変わりません。ということで帰還をかけてもかけなくても 1周期?分のい波形は出てくるわけですがそれ以上の継続は無いわけです。つまり capacitorの充放電がくりかえされないわけです。
また上記の回路は正帰還ループではありますが入力と出力の位相差は 360度+CR filterの 位相遅れなのでこれが問題なのでしょうか?。また帰還ループ内に入っている回路は単に LPFやHPFなので周波数弁別の役目は果たしていないわけです。周波数弁別と上記のよけいな位相遅れをキャンセルするに持ってこいの方法はLPFと同じ定数(Fc)のHPFをプラスすることです。 BPFの cutoff周波数における位相遅れは0です。HPをプラスすることは LPFと逆の性質を導入することなのでcutoff周波数では LPFの遅れた位相がHPFで入力と同じ位相になります。 つまりMIX波形をLPFに通した物をHPFに通した物に対してGAINを調整するとLPFに通す前のMIX波形になると。 ためしに正帰還ではなく普通のBPFにcutoff周波数の電圧を印加した場合の波形を見てみます。
印加信号がLPFを通ってLPF信号となったものをHPFに通すと確かにGAINは下がりますが印加信号と位相の同じ信号が出てきます。 それを何倍かすれば印加信号になるのできっかけさえうまく作れれば外部からの信号が無くても周期運動ができそうです。つまり以下の2っの回路は1:に過渡的変化要素を付加すれば本質的に同じような動作をするということです。
capacitorが2っあってお互いの性質が逆の回路があるということは片方の充電が少なくなると片方の充電が上がってくるような作用に期待できそうとういか少なくとも片方の充電電圧が0であっても片方に充電電圧があれば継続的な周期運動が実現できそうですね。 ということで以下の回路で考えてみます。
上記回路での出力結果を以下に示します。
帰還量を調整することによりほぼ一定振幅の正弦波が現れました。当然のことながら入力と出力の位相は同じになっています。360度の正帰還ループと帰還ループ内に周波数弁別用のBPFを配置してループのGAIN=1いう条件からBPFの Fcの周波数で正弦波が発振という結果が得られました。
* passive BPFの Q=0.34 パルス波消滅時点での各波形の関係が定常状態とほぼ同じになっていてMIX信号が0になった時点で定常状態と同じ動作になっています。現実問題としてはこの回路では正帰還のMIXレベルの微妙な差で発振が減衰したり逆に発散してしまいます。 上記回路でLPFのcutoff周波数を動かしてしまった場合を考えます。LPFのFcをうんと低くした場合は BPFとしての弁別能力が下がるということになります。また LPFの Fcを高くした場合上図のい構成の BPFは LPF--HPF型なので Fcが高い方に移動してBPFのスロープはあまりかわりませんが全体のGAINは上昇します。 実際、この回路のBPF特性というのは passive BPF単体でなく正帰還ループ全体で考えなくてはならないので入力に信号戻す帰還量で BPFのQが変化します。よって回路全体で考えて結果 BPFのQがどのくらいの値であるかで発振できるかできないかが決定されます。ということで上記の回路の周波数特性を以下に示します。
発振が起こっている時のQは非常に大きな値になるわけです。上記のように passive BPF自身の Qは LPF, HPFの cutoffが同じなので Q=0.34くらいになります。このpassive BPFになんども信号が循環していくわけなので f0 以外の信号は残れなくなり(つまり BPF特性の掛け算がくりかえされる)上記のように大きなQになるわけです。発振時の位相特性を以下に示します。
f0の左側で位相が90度進み、f0の右側で位相が90度遅れという極端な特性になっています。通常のBPFの特性は DCで位相が90度進み、周波数∞で位相が90度遅れ、fcで位相差0の点を通過する曲線ですので上の極端な現象は fc以外では信号が存在できないという反応からくる結果なのでしょう。
BPFによる GAINの損失を補償した信号を入力に帰還されることによって発振が実現できる わけです。発振周波数はBPFの f0になるためその周波数でのループゲインは上記の例では1というわけです。また上記のQのグラフのように正帰還がかかった回路の中にBPFが挿入されているのでBPF自体のQはそんなに高くなくてもその特性が正帰還によってなんども掛け算される結果になるため f0以外の帯域のGAINは非常に小さくなるため結果としてQは大変大きな値になるわけです。 ループゲインが1以下の場合、出力が正帰還されるごとに信号のGAINは低下していきます。 つまり一回戻るごとに信号がループゲイン倍が減衰し、この減衰カーブは BPF回路の遅れ時間に反比例することになります。ループゲインが1より大きい時は逆に出力が正帰還されるごとに信号のGAINは上昇していきます。
それを実現するのが 1っのLPFとそれと逆の性質をもったHPFを用意してそれぞれを直列接続して出力を入力に戻す。その際filterによる減衰を補償するようにしてあげれば初期状態で発生してcapacitorにたくわえられた電圧を利用して周期運動が継続する。
つまりHPF出力を何倍かしてあげること(BPFで生じた損失を補償する)でHPF出力は 印加信号とまったく同じになるのでHPF出力を何倍かしたものを入力に戻せば印加信号が外部から供給されている回路となんら変わらない。なにもないところからは反応はおきないのでまずは capacitorに電荷を蓄えるためのきっかけが必要で、 capacitorに電荷が蓄えられる為には capacitor端子に電圧の変化を与えてあげればよい。 電圧の変化があればこの場合 LPFを構成している capacitorは必ず充電されるので LPFに出力電圧が発生すれば HPFの capacitorも充電される。capacitorが充電されてしまえば上記のように発振が可能なBPF回路が構成されているのだから発振できるということです。 つまり上でいっているように LPFが充放電を繰り返して周期運動をする為には正弦波 の印加電圧が必要だということです。印加電圧が外部から供給されなくてそれを可能とするにはまず始めにLPFのcapacitorを充電させてやってcapacitorに電圧が充電されれば、LPF出力が発生するのでそのLPF出力を元にLPFの印加信号にあたる電圧を作りだす回路を作ればいいわけです。 passive BPFにはcapacitorが2っあるのでどちらかのcapacitorが充電が完了(印加電圧と 充電電圧が同じになっても)しても、また capacitorが放電完了して空になっても出力を入力に戻すことで、もう一方のcapacitorにたくわえられた電圧によって前段のcapacitorが次に動く(進む)き進路が与えられるように動作させられれば発振するわけです。このためにはその capacitorに対しての入力信号となる信号の最大振幅がそのcapacitorの充電電圧振幅の最大値より大きい必要があります。ということで下の発振動作グラフの動きを簡単に説明します。
* MIX: パルスとBPF出力の和 BPF回路はLPF,HPFの干渉をさけ動作を簡単にする為bufferを挿入した形にしました。 このためBPFのQは 0.5となり、BPF出力を2倍して入力に返しループゲインを1にします。
*0 --> 1:
パルスが消失した直後のポイント。
HPF出力つまりBPF出力波形を考えます。
* 1 --> 2: LPFの出力がプラスの最大値つまり MIX出力=LPF出力で充電完了となった時、 MIX出力を作りだしているHPF出力回路はどうなっているかということを考えます。 これはHPFを構成している capacitorが今どういう状態にあるかを考えればよいので この場合HPFの入力信号にあたるLPF出力と HPFの capacitor電圧には差があるので HPFの capacitorの電圧は上昇してこれは結果としてHPFの出力電圧を下げることなので HPF出力の下降は継続します。このため LPFの capacitorは放電動作を開始してLPFの電圧が下がることでMIX出力に追従しようとします。
* 2 --> 3: HPFの capacitor電圧=LPFの電圧となり capacitorの充電完了となった時 LPFの capacitorはMIX出力に追いついていないので放電が継続して LPFの出力はさらにさがることになるのでHPFの capacitorは放電動作を開始して HPFの capacitorの電圧が下がることでLPF出力に追従しようとします。
* 3 --> 4:
LPFの出力=0。 capacitorは空となります。
* 4 --> 5: HPFの capacitorが0であって入力信号としてのLPFとの差がある(マイナス値で)ということはHPFの出力(Rの電圧つまり微分電流を反映したもの)は最大値になっています。最大値であるのでその後はHPFの出力電圧の変化の方向が反転します。HPFの出力はマイナス方向の最大値になっているので方向反転で電圧は上昇します。 HPFの出力の変化はMIX出力に反映するのでMIX出力も上昇。
* 5 -->6: LPF出力=MIX出力となって LPFの capacitorのマイナス方向の充電が終了します。 HPFのcapacitor電圧とLPFの出力電圧との間には差があるのでHPF capacitor電圧は 下降よって HPF出力は上昇するのでMIX出力も上昇。このため LPFの capacitorはマイナス方向の放電動作を開始してLPFの電圧があがることでMIX出力に追従しようとします。
6: HPFの capacitor電圧=LPFの電圧となり capacitorの充電完了となった時 LPFの capacitorはMIX出力に追いついていないのでマイナス方向の放電が継続して LPFの出力は上昇することになるのでHPFの capacitorはマイナス方向の放電動作を開始して HPFの capacitorの電圧があがることでLPF出力に追従しようとします。
このようにして LPF出力、HPF出力(MIX出力)の周期運動が継続します。上図のように外部からの信号がなくても capacitorの充電、放電がとだえることなく継続しています。単にBPFにBPFの f0と同じ周波数の信号を加えた場合も BPF出力からは同様の出力結果が得られるわけですが、信号が無くなれば出力は減衰して0になってしまいます。 始めの方で疑問点としてあげた単周期パルスの持続時間に関しては上記の動作原理においてはパルスの幅が初期の充電電圧に反映するので結果それは発振波形の振幅に影響することになります。当然パルスの振幅も発振器の振幅に影響します。そうであるとすれば初期状態の状況によって発振振幅レベルがことなることになり発振器としてはなんだかへんですね。 ということは実際にはループゲインを1よりわずかに大きくして振幅が発散方向に推移するようにしくんで帰還回路内に振幅リミッターを入れて出力振幅を一定に保つということなのでしょう。だからこの前提で教科書などでは正帰還ループの中でノイズ振幅が増大というような表現を使っているのでしょう。
つまりこの場合、積分と微分という動作が逆の性質を持つ回路を正帰還ループに接続することで発振動作が行われるわけです。この観点にたって BPFを用いた調和発振器をみてみると LPFは不完全な積分器でありHPFは不完全な微分器であるのですが両者の性質はまったく逆という点は同じです。 よくよく考えてみればLPF, HPF単体では不完全な積分、微分器でもそれが直列接続されればそれぞれの通過帯域はなくなり、それぞれの積分、微分カーブのみが残るわけですが.....両者の cutoff周波数では出力波形はLPFで45度遅れますがHPFで45度進むので元と同じ波形になります。この際振幅は小さくなるのでそれを補償すれば同じになります。 生産と消費というような働きの違う性質のものが閉ループの中に構成されていて消費、生産量がバランスしている時に安定した循環が形成されそれが安定した発振を意味するということでしょうか。上記 function generatorの閾値に相等するものが調和発振器では入力信号と capacitorの電圧が同じになる点でありcapacitorはそれ以上の電圧にはなれないので値を保持するか、放電するしかないわけで回転運動が成り立つためには放電という動作になるわけです。 (回転運動というか振り子の運動というか.... 等速円運動..... 正弦波)function generatorの閾値はコンパレータの一端に与えた固定の電圧で確固たるものですが、正帰還ループにBPFをおいた調和発振器の場合この閾値が出力信号レベルの大きさで左右されるためこの出力の安定度で発振条件が決定されるわけです。
発電機によって正弦波の交流信号が発生するということはわかりやすいことなのですが、火種となるある振幅を持った過渡的な電圧を加えるとそれ以後なにも加えなくても BPFと正帰還ループにより正弦波が発生するという現象は不思議な感じです。これは結局、上記のようにcapacitorの充電、放電の微妙なバランスが回転運動を発生させ結果、正弦波が発生しているということになるわけで、それを支えている微分、積分要素ともっとも基本でありかつ不思議な現象である正弦波の関係といった部分にせまるものなのでしょう。 シミュレータを使って手軽に物理現象を観測できるという見地からみても面白いものです。
* 現実的な例
上記 SVFでは cutoff周波数で積分器のGAINが-1になり、正帰還ループにおいては+90度(積分器) +90度(積分器)=+180度 -180度(反転増幅)=0度になります。上図では本来filterとして機能する場合はBPF出力から初段のOP AMPの +入力に負帰還をかけますが、発振器ではこれを取り除きます。反転増幅器のGAINも-1となっているので発振条件がそろうわけです。 この形の発振器のおもしろいところは HP,BP,LPの各出力どこをとっても当然発振出力が得られそれぞれの出力は位相が90度づつ、ずれているということです。また F0ではそれぞれの出力のGAINが同じになりますので発振波形の振幅は各出力で同じになります。 位相が120度づつずれてくれればsynthの回路的には ソリーナの3相LFOになるのですが、この場合は 上記のように 90度遅れ...90度遅れ...インバータ(180度反転)なので正帰還ループの位相分担が1/3づつにならないので 3相発振器にはなれないわけです。
* 移相発振回路 ではいわゆる 4pole LPVCFでの filter発振はどうなのかということで考えるとこれは上記のBPFによる発振回路とは若干異なる構成の回路ということになり、CR移相発振回路に分類されます。 このCR移相発振回路も根本をなす原理は上記の BPF回路による発振器と同じです。つまり最終的には360度の位相差の帰還ループを持ち帰還ループ内にBPF特性を持つ素子が挿入されていてループゲインが1になるというものです。構成としては帰還ループ内に数段のLPFを配置して出力を負帰還で入力に戻します。この際帰還ループ内のLPF全体での位相遅れが180度になればそれを負帰還で戻すのでトータル360度の遅れとなり、LPFでの減衰を補償して ループゲイン=1にします。
負帰還で戻していることによって LPFの通過帯域のGAINが減少し、また帰還ループ内にfilterが配置されているので信号はなんどもなんどもfilterを通過することによってcutoff以降の遮断帯域はよりスロープがきつくなり cutoff 付近のGAINだけが減少しないため 回路全体でみれば Qの非常に高い BPFが構成されたのと同じ働きとなるわけです。 この際 4pole VCFであるのなら 各LPFの位相遅れが45度になる周波数で 45度*4=180度で発振が成立する条件となり 3poleなら 60度*3=180度になる周波数で発振が成立する条件になります。passive filter単体(無帰還時)ではこの180度位相遅れの周波数位置は負帰還がかかっているので回路全体で見ると180度-180度で 面白いことにこの発振周波数位置は0度の位相遅れとなり先のLPF+HP回路の動作と同じになっていることがわかります。 つまり負帰還は単に全体で位相を360度遅らすことに関与しているばかりでなく、元ネタとしてはLPFの特性しかないものを負帰還を利用してHPF特性をも作り出しているわけで回路全体で見ればBPF特性を実現しているという複雑な動作になります。 LPF1段では最大90度の位相遅れが可能ですがその時のGAINは0になってしまうのでこの移相発振回路を実現するには最低 3段の LPFもしくはHPFが必要になるということです。 つまりこのタイプの 2poleLP or HP filterでは発振は不可能ということになります。また passive filterを複数つなぐため passive filterの最終段でのGAINロスは大きくなるためその分補償を大きくしなければなりません。 4pole passive LPFの場合入力信号 1に対して0.17程度に減衰します。
* 3相発振器 複数のタップ出力から位相の異なる正弦波を発生できる発振器として電子楽器の回路でも有名な3相発振器があります。 これは120度づつ位相が異なる正弦波が発生して120度*3=360度で元の位相に戻る物です。
調和発振している正帰還ループ内に複数のfilterが配置されていれば複数の位相の異なる正弦波が発生するわけですが、各発生波形の振幅が同じでかつ120度の位相差を保持する 回路はどういう回路となるのでしょうか。3相発振器の場合は通常、 OPAMPの1次filterを3台直列に並べてループを組みます。CR 1次passive filterであれば単純には最大-90度の遅れを作ることができます。OP AMPの反転増幅器でbufferされている 1次filterの場合は通過帯域で位相が最大-180度からGAIN=0になる遮断周波数で位相が最大-90度動きます。 通常のpassive LPFでは位相が0度から90度遅れますがこの場合は位相が+180度から+90まで進むことになるわけです。当然1段で位相が120度進むポイントがあるわけですがこれはpassive LPFでいうところの位相が60度遅れる周波数と同じになるわけで、その時のGAINは約0.5になります。
上記回路でOP AMPのGAINを2倍になるように抵抗を操作してあげれば位相が120度進む周波数で出力GAINは結局 1 になります。それを3段つなげばそれぞれの出力位相は+120度、+240度、+360度となるわけです。またこの周波数において各段のGAINは1になっているので最終的な出力もGAIN=1を保ちます。1次filterなのに位相が120度遅れる(進む)というしくみと増幅機能があること、さらにそれが反転増幅器であるということがこの回路のみそであるわけです。
3段のfilterが帰還ループでつながっていない場合を考えると通過帯域ではGAIN=1は成り立たず、DCではそれぞれの出力GAINは 2倍、 4倍、8倍になります。 この場合も上記の周波数においてはGAIN=1が成り立ちます。 結局この周波数はこれまでの例と同じく調和発振器を構成するBPFの F0となるわけです。 filter 1段において
* F0={1/(2π*R2*C)}*1.7
また負帰還のかかったFB信号の位相はDCからF0までに対して180度から0度まで変化します。つまり周波数F0ではループゲインが1の正帰還になるわけなので発振できるだけのQになっているというわけです。
つまり各段のfilterのGAIN=1になる周波数でそれぞれのfilterの位相が120度ずれているので3段で 360になって元に戻る。 それでなおかつ OP AMPの反転増幅器なので最終出力から初段の入力に帰還をかけると通過帯域に対しては最大で位相が180度ずれて、通過帯域に対してHPF効果がかかるという、まことによく調和のとれた回路であるわけです。
これらの調和発振器においては発振が安定して成立する条件はシビアである為通常はBPFのF0にあたる周波数のループゲインが1より少し大きくなるよう、つまり増加振動になるようにしておき帰還ループ内に振幅リミッタを配置して振幅が安定するように仕組みます。これは振幅の値を特定値にする為にも必要な処置なのです。 analog synthの VCFでも安定発振させるための工夫として diode limitterが配置されて いる場合が多くみうけられます。diode limitterがないようなケースでも安定して発振できるVCFにおいてはそれにかわる仕組みとしてなんらかの飽和特性が振幅特性に対して働いているということです。
<2026/05/12 rev0.1> |