差動回路ベースの VCF/VCAの意味するところ
100FのVCFとVCAは差動回路ベースになっています。 さらに出力段もOPAMPの差動で受けています。
この意味するところはまずは温度補償、次にはCVの急変動に対してAUDIO信号系のDC変動を抑制することにあります。 差動対のテイル電流を可変してgmを変化させているので当然CVの変動に対してバイアス電流は大幅に変動しているのでこのDC変動をさける必要があるわけです。
VCA

* VCAと負荷の関係
VCAに関しては差動の10Kの負荷抵抗から出力電圧を差動のOPAMPで取り出しますが、10K抵抗の電圧降下はそこに流れる電流で決まるので差動回路の電流特性が反映しています。 電流特性はAUDIO入力電圧(差動回路の左のTr.に印加される電圧)変化が+/-10mV程度まではリニアですがそれを越えるとLOG特性化してテイル電流に向って飽和していきますのでAUDIOの印加信号が大きくなると出力電圧は序所にソフトクリップしていくことになります。

* 差動対の電流特性
VCAのoutput特性はこの電流特性に依存するが差動で負荷の電圧を取り出すのでバイアス分がキャンセルされAUDIO信号0V時出力も0V振幅はシングル出力の2倍。

* soft clipの例
Audio信号が大きくなれば対数圧縮されクリップしていく。
VCF

*VCFと負荷の関係
差動回路の電流特性は対称形なので出力電圧に関してはVCAでは差動で取り出さなくても非対称には歪みません。 ではVCFはどうなのか。 そもそもVCAと違いVCFにおいては負荷が抵抗では都合が悪いので Tr.やDiodeになっているわけですがこれは抵抗であれば制御電流の上下に対応してoutputがVCAとして作用していくのを避けるためです。 すなわち制御電流が増大すれば負荷の微分抵抗が小さくなり、逆に低下すれば微分抵抗が上がりますので負荷の電圧降下としては一定値になるという原理です。
歪
AUDIO入力信号をSIN波とした場合、とても大きければ出力は矩形波になってしまいます。VCAの場合、シングル出力であっても歪は対称歪であって非対称歪でないのが特徴です。 一方、差動ベースのVCF(Tr./ Diode Ladder VCF)のOutputの負荷はTr.やDiodeになるので抵抗負荷の場合と異なり負荷の両端子電圧は上記のように差動回路を構成するTr.の B-E間の特性と同様の変化になります。(両Tr.のIcには同じ電流が流れるのでVbeは基本同じ)
*; 但しこれはcapacitorが外れた状態、またはAUDIO信号に比べてFcが十分高い場合のTr.、diodeを負荷として見た場合。

* audio信号レベルの違いによるVbe波形の変化(負荷Tr.のVbe)
上記 Q1、Q2のB-E間にAUDIO IN信号が配分(分圧)される関係で上記のような歪みが起こる(印加電圧が大きい時)。 というか別の見方では電流特性がリニアである区間はVbeはLOG特性、電流がLOG圧縮される区間ではVbeはさらにそれが進む。 電流特性がExpoである区間はVbeはリニアに近い関係を示す。VCFにおいては差動対の電流特性をうけたVbeの変化が負荷の電圧変化になるので複雑でさらに出力は差動でMIXされるのでさらに複雑。
当然のことながらこの分圧関係と電流変化はtransistorのVbeとIcの関係がEXPOという要素と差動対における負帰還反応のなせる業からの結果です。

Q1,Q2に対する分圧比の関係

*印加AUDIO信号(SIN)とQ1,Q2のVbeに対する分圧の関係
SINが0V時両VbeはBIAS電流に対応したVbeで同じ値。 SINが+に上昇すれば分圧されるがピーク電圧が高ければQ1のVbeの変化はわずかで多くの変化はQ2のVbe変化となる(但し逆方向の変化)。 これが差動対の特徴。
Audio信号が大きくなるとAudio信号マイナス時、印加電圧はQ1のB-E間にほぼ全てが逆方向でかかり一方のTr.のB-E間にはかかりにくくなる。 プラス時は逆にQ2のB-E間に多くかかる。 このためこの区間(AUDUO INのマイナス区間)ではAUDIO信号の源波形と微分抵抗の大きい方のB-E間の波形はほぼ同じ形。 この図は差動対の電流特性に似たような形になっているのが興味深いです。
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余談:
差動回路におけるQ1とQ2のVbeの関係
印加電圧の変化に対するQ1とQ2のVbeの関係は上図に示グラフです。この図から上記の歪波形が導きだされるわけです。 AUDIO信号がいくらプラスで上昇してもLOG圧縮される。マイナス方向では変化はAUDIO信号に追従しているので圧縮はほとんどない。
上図はテイル電流が1mAの時と10mAの時のQ1、Q2のVbeの関係のグラフですが当然BIASが変化して動作点は変化していますがカーブの変化は同じ形になっています。 これはすなわちtransistor、Diodeを差動の負荷にした場合、AUDIO信号の変化は同じレベルになることを示しているわけです。(これによりVCA化をさける)
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すなわち差動回路の電流特性がVCAのようにそのままTr. Diode負荷の電圧変化になるわけでなく電流特性に対応したTr. DiodeのB-E間、A-K間の電圧特性となります。 このためたとえば入力AUDIO信号が10mv程度では歪みは少ないですが入力を大きくして100m程度Audio inのベースに印加すれば非対称の波形になります。(上図)
しかし実際は差動で取り出すので右側の負荷の電圧変化は左側の負荷の電圧変化の逆相でそれを反転して加えるので非対称部分は対称歪みになります。 さらには歪み自体が軽減されます。
すなわち差動対のベースに対する印加電圧(Audio信号)の左右のTr.に対する分圧において、波形のプラスの電圧側は大幅にクリップして一定値で落ち着き矩形波のような形に、マイナス側はB-E間の微分抵抗があいてのTr.の微分抵抗に較べてたいへん大きくなるので差動対に対する印加電圧はほぼマイナス側に加わり印加信号の半周期においては元の印加電圧(Audio信号)に近い形を保持しますので上記のように差動でoutputをMIXするとこの部分が主を占め極端に歪んだ波形にはなりません。

差動で取った時の負荷(Tr. Vbe)波形
黄:10mVpp(差動対入力)
白:200mVpp(差動対入力)
桃:600mVpp(差動対入力)
上図からも正弦波入力時電流特性はかなり矩形波に近くなっても(下図)負荷にかかる電圧はTr./Diodeにおいては電流(Ic)-->( LOG変換)---> 電圧(Vbe,Vak)で、差動で取り出したoutputはSIN波に近い形を保ちます。 この部分はMagicめいていますが上の方の説明のようにAUDIO信号の2っのB-E間にかかる電圧がマイナス方向にかかる時はほぼAUDIO信号と同じでQ1、Q2のVbeの変化は逆相なのでその部分だけMIXされれば印加AUDIO信号に近い形になるわけで、実際はLOG圧縮された半周期の波形もMIXされるわけですがその面積は小さいのであまり歪まない。(*1) 一方VCAの場合は抵抗負荷なので電流波形がそのまま電圧波形のなるので歪みます。
*1:log圧縮されている部分はAUDIO信号がプラス部分で最大電圧振幅は18mVにおさまっているのに対してマイナス部分はほぼ印加SIN波の振幅なので逆相MIXした場合波形の0Vを中心とした部分が太るだけ。
ただし印加信号電圧をさらに上げていけば(上図の600mVpp)ある点を越えればマイナス側の信号もクリップしてしまいますのでそれらをMIXした波形は正弦波を入れた場合、矩形波状にクリップします。

負荷Tr.を流れる電流特性
黄:10mVpp(差動対入力)
白:200mVpp(差動対入力)
桃:600mVpp(差動対入力)
上図において印加信号電圧(Audio In)を上げていくと差動対の電流(Ic)は矩形波状にクリップしていきます。 これは単に差動対の電流特性です。それをTr.(Diode)負荷から差動で電圧を取り出したout put電圧は印加電圧がかなり大きくなっても元のSIN波を保持します(上の上の電圧特性図)。 上記例では印加電圧は5mV(10mVpp)、100mV(200mVpp)。300mV(600mVpp)ですが100mV(200mVpp)でもSIN波を保持しています。600mVpp時は上記の理由により歪みます。
差動回路とTr.負荷の電圧特性

印加電圧(AUDIO 信号)の変化に対応した差動対Tr.のVbeと負荷Tr.のVbeの変化
黄:負荷Tr.のVbe
水/桃:差動対のTr.のVbe

300mVを印加した時の差動対Tr.のVbeと負荷Tr.のVbe波形
黄:負荷Tr.のVbe波形
白:差動対のTr.のVbe波形
印加信号電圧に対して差動対のVbeの変化と負荷Tr.のVbeの変化は同じ電流が両者に流れいるため基本同じなのですが印加信号電圧が大きくなると小さい間はある地点から負荷Tr.のVbeは変化しなくなるようでこれによって出力波形は上図のように矩形波に近づき歪んでしまいます。 流れる電流が同じであれば個々のTr.のVbeは同じでありそうなものですがそうならない原因はいかに?。
ちなみに負荷がdiodeでも同様です。Transistorがdiode接続なのでそうなるのかと思い通常のTransistor動作に設定しても同様でした。普通はこんな大きな電圧を入力にはかけないでしょうが。

白: 負荷Tr.のIc
水: 差動Tr.のIe
黄: 差動Tr.のIb
シミュレータで電流を見ると差動のTr.のVbeがとても低い領域ではIeに較べて負荷Tr.を流れるIcの量に差が生じているようで差動Tr.のVbeが低くIeも最小でも負荷Tr.のIcは一定量流れておりこれが負荷Tr.のVbeがある地点から下がらない原因のようです。 Vbeの値が増えれば両者の電流は同じになります。
固定値の負荷Tr.のIcがどこで発生しているのかが??ですが。この範囲では差動対、及び負荷Tr.は逆BIASな状態。さらには差動対には直接電圧がかっているが負荷Tr.は間接的に電圧が発生している状態でエミッタ電位が差動Tr.のベース電位に対上していない状態。、
部品の知識不足でよくわからず。
Transistor Ladder VCFとDiode Ladder VCF
Ladder VCFの構成としてはTransisterLadderの方が複雑に見えますが動作はDiode Ladderのほうが複雑です。両者とも差動対のコレクタ電流が流れる経路にはしご状に1次Filterが複数個直列に配置され、TransisitorのB-E間微分抵抗(実質re)、Diodeの微分抵抗が電圧制御の可変抵抗として動作しFilterのCutOffを制御します。
実際は差動回路のテイル電流の1/2値の直流電流が差動対を構成するTr.のコレクタ電流となり直流バイアスとして機能し差動増幅としてはこれがgmの値を決め同時にはしご型のFiterにおいては上記の微分抵抗を決定します。
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制御電流としてのティル電流が増えればgmが上がるのでaudio信号の振幅が増加しかつPN接合の微分抵抗が下がるので1次LPFとしてはtransistor ladderではAUDIO信号電流のTr.とCap.の分流比が変化してRの分流が多くなるのでFilterのFcが上がります。 diode ladderとしてはHPF特性の共有電流が多くなるのでやはりFcは上昇します。
このまま電流を取り出したのでは差動回路としてのGAINの変化も入ってしまうのでTransistor、diodeで電流 -電圧変換をしてGAINの変化要素をキャンセルしLPF特性のみ出力に反映するようにします。(上記のようにDiode、Tr.のPN接合が負荷というのがポイント)
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TransistotとDiode Ladder Filterの構造の違い(Ladderの片側分の構成)
構造的には回路図よりもかなり違います。
Transistor Ladder VCF
Tr.LadderVCFは定電流入力タイプのCR並列接続の1次Filterの4段接続で構成されています。差動対の直上のTr.を1段目とするとその上が2段目、3段目、4段目で4段目は差動AMPの負荷抵抗を兼ねています。定電流源にあたるものが前段のTr.のコレクタ電流でそれがCapacitorのインピーダンスとTr.の微分抵抗(Re)の比で分流します。(エミッタに注入されるBIAS電流IeとVbeの関係)
Capacitorのインピーダンスが微分抵抗の値に較べて十分大きければCap.には電流が分流せず差動対のコレクタ電流がそのまま1から4段目の各Tr.のC-E間をロスなく流れてゆき4段目の負荷Tr.で電圧化されますのでこの時最大振幅となります(Ibを無視した場合)。 通過帯域の特性。 逆にCap.のインピーダンスが微分抵抗の値より十分小さければCap.側に電流が流れTr.側には流れませんのでAUDIO信号電流は減衰し負荷Tr.での電圧出力は低下、Fc以降の遮断領域ではcapacitorの特性を反映し1/f特性になります。
*: CとReの並列接続なのでReに流れる電流が小さければ電圧は小さくなる。
*: Cに多く流れてもそれ以上にCのインピーダンスは低下しているので電圧は小さい。
Transistorのコレクタ電流はコレクタにつながる負荷(この場合後段のTr.とCap.)に影響されずVbeの大きさに対応した定電流のIcが流れますので後段に対してBufferの効果があります。(厳密には各段でIbが消費されますので各段のFcは微妙に変化しますのでhfeが高い方がよいのでしょう)
定電流入力の並列1次LPFとしての出力はVbeの交流信号の変化分となり分流比がTransistor側に大きい時の方がcap.とベースの交点の電圧が高くなるのでFcは高いということになります。

Transistor Ladder VCFの各段の周波数特性
通過帯域ではBuffer効果により各段outのGainが同じになっています。
Diode Ladder VCF
これに対してDiodeの場合は普通の電圧入力型のCR直列型1次LPFが何段にも重なる構造をしていますのでTr. Ladderのように各段のOutPutがBufferingされていないのでCR passive Filterの多段直列接続になっています。しかしよく見ると差動対の後の1個目のDiodeへの入力が電圧でなく差動対のTr.のコレクタ電流(定電流)なのでちょっと電圧入力型のFilterとは構造が異なる形になります。
電圧入力型であればRとCは直列構造なのでdiodeの後にCapacitorがきて対になって1次Filteが構成されるのですがよく見ると差動対のコレクタにつながっているCap.はそれには該当しないことになります。 定電流とCap.のみでは単に積分器が構成されてしまいますが後段のCR回路がこのCap.と並列接続されているためコレクタ端子は1次のLPF特性を示します。 このためdiode ladder VCFの場合、最上段のdiode 負荷(複数接続)が無いとFilterとして動作しない構造になっています。
すなわち差動対の直後の1個目のdiodeは定電流入力型の並列CR filterのRと次段の定電圧入力型の直列CR filterのRを兼ねている構造になっています。 1段目においては差動Tr.のIcとCap.と並列接続の抵抗要素によって1段目のLPFが構成されそれ以降は直列型のBuffer無しの1次LPFの複数接続になるという複雑な構造となります。
さらにTr. Ladder VCFでは最終段のTr.が1次LPFと出力段の負荷が兼用されているのでTr.4段とも同じ構造なのに対してDiode Ladderは最終段のLPFと出力の負荷Diodeは兼用できない形なので最後のLPFのOutすなわちCap.と並列に負荷としての次段のDiodeの微分抵抗が入る形になります。 このDiodeは負荷として4段目のCap.と並列に入るのでなるたけ抵抗値を高抵抗にしたいので通常3段重ねのdiodeが用いられます。Diode Ladder VCFの中には差動対の直後のCap.が無いタイプの物もあります。(*1)
*1:
EMSのVCFなどがそうで、この場合以降の回路はCR直列型LPFが4個付く形になりますが差動対直後の1個目のFilterが少々特殊な動きとなります。1段目のDiodeはFcには関係なく直列型のCR filterの形ではありますが動作は定電流入力型の並列1次LPFで1個目のCap.とこれに並列になる以降の回路がRの要素です。

Diode Ladder VCFの構成

Diode Ladder VCFの各段の周波数特性
緑が定電流入力型のCR並列1次Filterの特性です。 このDiode LadderVCFの1段目の特性はFc以降は緑と同じ特性ですがFc以前の通過帯域ではGainが上昇しています。 これは1段目のFilterの構成が定電流源入力でCRの並列Filterの構成要素のRが次段以降のRを含めた直列接続になるため通過帯域でCap.のインピーダンスが急増化してIcのほとんどがDiodeに流れるとすれば定電流源の値は同じなのでGainは4倍になるということです。
また基本CR passive FilterのBuffer無し多段接続なので後段にいくほど通過帯域のGaniは低下しています。これは後ろのCR filterほど分圧される率が減るためとBuffer無しなので後段の負荷の影響を受けてFc付近の肩特性がなまるためです。
さらに言うと下記の2次filterの特性は同じです。すなわち定電流源入力型の1次LPFと定電流を直列型の1次CRLPFの入れた物は全く同じ動作になる為、差動対のコレクタ電流とCapacitorの組み合わせとコレクタ電流に対してDiodeの微分抵抗 + Capacitorの普通の電圧入力型のLPFは同じなので差動対のコレクタにCapasitorをつけないでDiode 4段にした物とコレクタにcapacitorを付けてDiodeを3段にしたものは同じ。
上の回路は普通のCR並列型filterだが、下の回路CR直列型のFilterに
定電流源を印加すると棚型LPFになる。1段目のCap.は同じ特性。
よって2段目の抵抗は変形した1次のLPF特性で初段のCap.からこのLPFを引いたものが
2次にLPFで上下のfilterの負荷抵抗に対する特性は同じという不思議な特性。
これは下記のように負荷が無い直列方のCRLPFに定電流を印加した場合Cap.は積分特性、抵抗も積分特性だがFC以降は平坦になる特性がベースにあるからで負荷が付けば通過帯域が平坦になる。(CR直列filterに定電流を印加してもfilterにはならない。/並列に負荷がついて初めてfilter特性)
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差動対 直上の1段目のCR filterについて

* 1段目の電流特性
最終段の負荷Rが無いと動作しないことに注意。diode ladderは電圧入力型の直列CRfilterの多段で構成されていますが1段目は電流入力型の並列Filterとして動いているため最終段のCap,に並列図では3Kの抵抗負荷がないと動きません。
transistor ladderに較べてdiode ladderの動作はかなり複雑で単純にCR1次LPFの集合体の動作と若干違うようで難しいです、
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余談1:
Passive filterの負荷の影響

上記のような1次CR Filterに抵抗負荷をつけた時の電流特性を示します。 LPFの通過帯域ではCap.のインピーダンスが高いので電流はRに多く流れるためI=(Vin / 直列抵抗)がMAX値でFc以降はCap.noインピーダンスが下がるのでRに流れる電流は減少して結果LPF特性。
Cap.に流れる電流は電流リミット値( Vin / 直列抵抗値)のHPF特性。 結果電圧特性は通過帯域MAX値 (Vin/2)のLPF特性になります。
抵抗負荷が無ければ電流はHPF特性だけですが負荷抵抗が付いただけでめまぐるしく複雑になります。ポイントは1次LPFなのでCap.を流れる電流は必ずHPF特性でそれを積分したものがCap.の両端電圧なのでLPF特性になり当然Cap.と並列の負荷RもLPFとなる。電圧の大きさはVinが抵抗分圧されているのでMAX 1/2となる。
負荷の抵抗が大きければ1/2のラインのHPF特性はは下に下がり、1/2ラインのLPF特性も減少するので無負荷時の特性と同じになる。 要は並列回路の分流が起こるか起こらないか。
余談 2:
diode ladder VCFではdiodeのA-K間は差動のテイル電流値で微分抵抗値が変化して電圧制御(電流制御)の可変抵抗として動作しますがTransistor ladderの場合はC-E間が電圧制御の可変抵抗としては動作いているわけではなく、Ieに対する微分抵抗re(*1)がDiodeのA-K間と同様に機能しこれとCapacitorの並列接続による定電流入力型の1次LPFとして機能します。ここがdiodeとの大きな違いです。C-E間はあくまで定電流源動作なのでFilterとしてはエミッタの微分抵抗とCapacitorがFilterです。すなわちエミッタの微分抵抗が可変抵抗要素。C-E間は抵抗ではない。
*1:Tr.のDiode機能に該当する部分にBIASとしての制御電流が流れる。
定電流源である制御電流は上段のladderから差動対に向かって流れますがFilterとしては前段(差動対から上に向かう)のIcが後段のIeとcapacitorの充電電流に分流しさらに分流した(*2)このIc成分が次段に向かう電流となる。(上段のTr.にいくほど後段のLPFなのに注意) AUDIO信号入力が差動対側から入れていてVccは交流的にはGNDなので当然ですがDiode(Tr.)のマークは下に向かってが順方向なので一瞬混乱します。
微分抵抗
transistorやdiodeの印加電圧(Vbe、Vak)と発生電流(Ib、Ie、Ic、Id)の関係がEXPO関係からくる反応。 Ic=Is{exp(q*Vbe/kT)-1}を微分した係数が微分抵抗。
r =(kt/q)/I
r: dynamic resistance(微分抵抗)
k: Boltzman 定数
t: 絶対温度
q: 電子の電荷
I: 電流(PN junctionを流れる電流)
上記の電流はdiodeならId、Tr.ならばIb、Ie、Icの意味です。この場合はIeが意味を持つので微分抵抗をreとすると
Vt=KT/q =26mV
re =(kt/q)/Ie = Vt/Ie = 26mV /Ie (mA)で抵抗値が決まります。
実際のLadderFilterにおいてはIeはテイル電流の1/2なので
re = 2*Vt / Io
Io: テイル電流
この並列型LPFではreとCap.のインピーダンス比でAUDIO信号の分流比が決まりcapacitorに流れる電流の積分値と同様の変化のVbe(*2)値で周波数特性が決まるということです。
*2: VbeのAUDIO信号成分の振幅(Vbeのバイアス成分を含まない要素)
制御電流は基本、直流なのでcapacitorを通過できないので各transistorに対しての同量のバイアス電流となり各transistorのVbeのバイアス成分は同じ動作点で動きます。このIeはVbeを反映した定電流なので負荷としての上段のtransitor Ladderの影響を受けないBuffer機能を有することになります。
C-E間は定電流動作なので抵抗動作ではなく、C-E間が抵抗動作をするのは飽和領域で使用する時だけです。この部分がわかっていないとC-E間はA-K間と同様の反応だとまちがってしまいますがtransistorが非飽和領域で動作しているからにはIcはVbeに対応した定電流源なので抵抗動作にはならない道理です。
Transistor Ladderの各base間に配置されている抵抗の両端子間電圧は、Ibが無視できれば4段とも同電圧でこの中にVbeとVbcが入ります。 すなわちこの抵抗郡は4個のTransisitorのベース電位を固定し、活性領域で同じ動作で動くためのVbe,Vbcの電圧幅を確保するために存在します。 各Transistorのbase電位は固定されているので制御電流としてのテイル電流の値に対応してVbeが決まるので基本微分抵抗は各段同じ値でTransistorは同じ動作点で動いていることになります。
各段におけるAudio信号の振幅はFc以降の遮断帯域では後段にいくにしたがって低下していきますのでIc、Vbe、Vcapにおける信号振幅僮c、儼be、僂apは当然低下します。当然ですが直流/交流信号が重畳されてかつFilter動作をしているので制御電流/信号電流の関係が混乱してしまいがちです。
定電流入力の並列型1次LPFは若干わかりにくいので以下の原理を示します。

並列型1次CRLPFの構造
上記 定電流源がIc、Rがreに該当

Ic、capacitor電流、Vbe、Vcapの周波数特性
上段:電圧(Vbe/Vcap) /下段:各種電流(Ic/Ie/Icap)
定電流値の分流なので、差動対のIcが定電流源、その上のTr.のIeはLPF特性、Capacitorの充電電流IはHPF特性となりそれを積分すればLPF特性になります。 またVbeとVcapは並列接続なのでどちらもLPF特性となります。 上図ではVbeよりもVcapの方がGAINが2倍になっていますがそれはCap.の両端子間を計ったからで片側のLadderとしてはその1/2なので両者は同じ値です
普通の直列型1次LPFでは電流のリミット値はV/Rで決まりますがこのfilterの場合は定電流値が当然Limit値となります。 直列型はCap.のインピーダンス低下で共有電流が飛躍的に上昇しようとするとRの電圧降下によりCap.にかかる電圧が減るのが負帰還になって
電流増加がLimitになりますがこの並列型は定電流源という電流リミッタになっているので並列接続によるRとCap.のインピーダンス比で分流が起こり、両者が常に同電圧という条件の満たした結果が出力電圧のLPF特性となります。 通過帯域ではCap.側に電流がほとんどいかないことがcap.の積分特性に対して負帰還がかかる形。
制御電圧の変化とOutPut信号電圧
制御電圧(CV)の増加でテイル電流が増加しこれはantilog回路を通るので電流はEXPO増加します。TransistorのVbeやdiodeのVakはそれを受けてリニアに上昇し動作点が動きます、当然AUDIO信号の電流の振幅変化(僮c)は制御電流が大きくなればgmがあがるので上昇します。 差動対や、ladderのcapcitorを外した状態ではそれに対応した儼be、儼akの値はほとんど変化しません。これは制御電流増加に対して微分抵抗値が低下しているからです。儼be、儼akが変化するのはFilterとしての特性を反映する部分です。
すなわちこのPageの始めの方で書いたように、LadderのCapacitorを外した状態であれば各ladderのTr./DiodeのAudio信号としての儼be、儼akは制御電流の大小では変化しないということになり各段の値は同じ物になります。変化するのはそれのBIAS電圧だけとなります。微分抵抗の値はBIASの具合で決まりますがCR Filterとしては電流の分流が起こるのでBIAS電流は変化しないがAudio信号としての電流は印加AUDIO信号の周波数よりFcが低い場合は低下していくので儼be,儼akの値は低下してLPFilterとして機能することになります。ここらへんの電圧、電流の動作がBIASとAUDIO信号を混同しがちになるのがLadder VCFの難しいところです。

赤:capactor無し or 差動対 /白:Vbeの変化/緑:Vcapの変化
上図は特定の信号周波数のSIN波のAUDIO信号に対してCVを増加させていった時のVbeとVcapの変化です。Filterとして機能させていない時は制御電流が増えてもBIAS電圧としてのVbeは上昇しますが儼beは変化しません。 Filterとして動いている時はAUDIO信号の周波数に対してFcが低い場合はVbe、Vcapが小さくなりFcが信号周波数より十分高ければVbe、VcapはFilterとして機能していない状態に近づきます。(普通の周波数特性のグラフと逆の図) BIAS(制御電流)で決まる微分抵抗に対して流れる電流が制御電流以下であれば儼be、儼akは小さくなるのは当たり前なのですが若干わかりにくい動作かとも思います。
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3pole or 4Pole ?
ROLAND TB303のDiode Ladder VCFではRC直列接続の1次Filterが3段しかないので3pole VCFかと思われがちですがCap.は4っあり初段のCap.は上記のように差動Tr.の定電流源と後段のCRにより1次LPFが構成されているので4PoleFilterがと言うことになります。

TB303 Diode Ladder VCF
これは一時期303のVCFは3Poleか4Poleか(-18dB/Oct or -24dB/Oct)でNETで論争があったように思います。というのもROLANDのSH5やSYSTEM100のDiode Ladder VCFは直列の1次CR filterが4段あってさらに差動対のコレクタ側にCap.が付いた形で-24dB/octのVCFと呼ばれていたのでそれより1段CRが少ない303は3Poleではないかといわれたわけでしたが上記のように4poleのVCFです。なぜなら、上の方で説明した diode Ladderが同様の構成で周波数特性のグラフは4poleのLPFになっているわけですから!。
その証拠というか差動対のコレクタに接続されているCap.の容量は他のものの1/2になっています。 これは初段の定電流、並列filterにおいてRに相当する要素が後段のfilterが負荷になるため後段のFilterのR要素より大きくなってしまうのでCap.の容量を下げてFcを補正しているものと思われます。これは単に1段目の定電流入力型の1次LPFのFcを上げて本来のFc付近のなで肩を補正する物のようです。 よって差動対に付いているCap.も1段目のFilterとなるということでしょう。
実際はDiode LadderはCutOff付近の特性がなまるのでそれを改善するためSH5などでは5段構成の5poleとしてやっとCutoff付近でも-24dB/Octの特性を得るという仕様だったのだと思われます。 ちなみにWaveKITのDiodeLadderVCFはTB303と同じ4段構成、山下SYNTHのDiodeLaddeはSH5nadoと同じ5段構成です。(書籍versionの"今つくるなら"では4段のようですが)
よってTB303のVCFは4poleですがFc付近での特性は-24dB/Octの特性は達成できずそれより小さい値になりFcよりかなりはなれた周波数帯域になれば4Poleなので-24dB/Octの特性になるということでしょう。
そもそもPoleとは何なんでしょうか。 日本語では極と表記されますが簡単にはFilterを構成する積分器の極点、すなわち積分器の発散ポイントを極という。 4Poleであれば積分器が4っあるということになります。
ちなみにdiode ladderでは上図のようにTransistorをDiode接続して使う例もあり、その場合もB-E間のみを使う物とB-C間をショートして使う物との2タイプがあります。コレクタ オープンで飽和状態、ベースとコレクタをショートして非飽和.
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transistor/ diode ladderは国産機ではROLANDが最も多く、次にTEISCO、HIllwoodの一部の機種もdiode ladderを使っています。 KORG、YAMAHAは無し。
ROLAND SH1000......diodeによるdiode ladder (受けの差動AMPはOPAMP)
ROLAND SH2000(VCF2)......transistor ladder(受けOPAMP)
ROLAND SH2000(VCF2A)......B-Cショート diode ladder(受けOPAMP)
ROLAND SH3..........Cオープン diode ladder (受けOPAMP)
ROLAND SH3A.........transistor ladder (受け OPAMP)
ROLAND SH5..........Cオープンdiode ladder (受け CA3080)
ROLAND System100....Cオープンdiode ladder (受け Transistor)
ROLAND TB303....B-Cショート diode ladder (受け Transistor)
それ以降のROLAND synthはOTA....(system700、SH1>SH7からは...1976年発以降)なのでROLANDでTransistor Ladderを採用したsynthはSH3AとSH2000のみとなり今回作ったTEISOのVCFが国内では一番使われたtransistor VCFということになるのでしょう。USAのsynthではARP、EMUもtransistor ladderを採用した機種があります。 diode ladderはUKのEMSを始めいくつもあると思いますしDIY記事ではDiode Ladderは多いです。
1975年ごろのROLANDのワウワウ紙でSH3AでRick WakmanのMINI MOOG soundを模倣するという記事(patch)があったのを思いだしました。当時はSH3Aがtransistor ladderであるとは知らず.....。
ちなみに山下synthのVCFはSH3の回路にとても近いのでSH3を参考にしているのではとも思います。 当時の連載記事のVCFの回ではMINI MOOGのVCF回路が掲載されていて感激したものです。またKORGのVCFはdiode ringであるとか昨今のようにSynth回路図が流通していない時代にそれらの情報にアクセスできる方だったのだろうといまさら思うしだい。
一方、電子展望の1976年の連載のVCFはdiode ladderでこれもROLAND SH1000とSH2000をほぼ参考にしている回路のようです。 VCAはほぼスタイナーなのでやはりそれらの情報にアクセスできた方々だと思います。 またロッキンfもMINI NMOOG VCFをはじめメーカの回路がいくつか掲載されることがありました。
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余談3:
ladder VCFとresonance
analog synthにとって重要なresonanceですがladder VCFにおいては負帰還を行うことを意味します。 なぜ負帰還か?。 これは単純に通過帯域のGAINを下げFcを頂点とするBPF特性を実現したいためです。AUDIO信号と逆相入力にOUTput信号を入力することで実現します。 低い周波数の帯域はもろに逆相になりGAINが低下しますが周波数が高くなるにつれて効果が薄まっていきFc付近では正帰還になってしまいます。 なぜならTr. Ladderでは理想的にはFcでは位相がAUDIO In 信号から45度 * 4段で180度ずれるのでそれを逆相入力すれば360度で正帰還になるからです。
帰還量が増えてFcでのループゲインが1を超えればFcで発振。 通過帯域は逆相、Fc以降はGAINが小さいので負帰還の効果は出ないので前と同じ特性。 さらに安定した発振を行うには振幅Limitterが必要ですが差動回路の特性がちょうどLimitterとして機能するので特段のLimitterは不必要。
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