怒涛のゲッターロボ・コレクション!

OVA第1面

1998年8月25日。この20世紀もほぼ終わろうとしているこの時期に、登場したのが『真(チェンジ!!)ゲッターロボ』
石川賢先生の新作ゲッターサーガも不定期ながら双葉社から発表され続け、ゲーム『スーパーロボット大戦』においてもゲッターが存在感を放っていた折も折。「エモーション15周年記念作品」として第1巻は破格の1,500円というサービス価格で登場した。


真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
〜 エモーション(バンダイ) 〜

1巻・1998.8.25 2巻・1998.10.25

1998年2月、アニメ雑誌で『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』(以下Gロボ)を完結させたばかりの今川泰宏氏によるシリーズ構成・オリジナルストーリー・監督により新作の『ゲッターロボ』が作られるコトが告知され、続報も流れた(「アニメージュ」「NEWTYPE」「アニメディア」)。しかも第1巻は1話25分収録、以降は2話収録で毎月発売!というOVAというよりテレビアニメのようなペースという話だった。

さらには主役メカは(ゲーム画面を別にすれば)初めて動くことになる、真ゲッターロボ。当時の雑誌「NEWTYPE」によれば、真ゲッター1〜3は「シュナイダーV-1」「スタインバックD-2」「リングストンJ-3」という兵器風の名前も振られており、全く新しい世界観への期待も高まったのだ(今もって出典不明だが)。「アニメディア」には石川賢先生インタビューも掲載、ゲッターへの思いを語っておられた。そして登場した第1話。コレを記念して、東京新宿の書店では購入者に賢先生サイン会まで開かれるというお祭状態。

1話は、敵がコレまでと異なる宇宙から来た(?)インベーダー、キャラクターを独自設定で再配置した謎また謎の展開、思わせぶりで核心をぼかしながら引っ張る台詞回し、ストーリーを握るのがエネルギー「ゲッター線」の真実…と、いかにもエネルギー争奪戦をオール横山キャラで作った『Gロボ』通過後の今川監督らしいストーリーだった。

何よりも、「石川賢」の作家性が濃厚に反映されたキャラクター作りが、ファンとしては感涙モノ。コトに主人公・流竜馬はかつてのアニメ版の面影などカケラもなく、賢先生の代表作『魔獣戦線』の主人公・来留間慎一をそのまま引っ張って来たという原作破壊振り。そして賢作品に良く表れる「復讐」を行動の動機とするあたりまで、見事にトレース+再構築。ケレン味たっぷりの早乙女博士のセリフもこれまた、というところ。今後の展開も全く読めない内容で、期待が大いに高まったのだった。

だが実は1巻の段階で「監督」のクレジットが存在しないという状況。付録のライナーノートにも諸事情でのスタッフ一部変更が語られるという事態。諸説入り乱れる中、続く第2巻(2、3話収録)への不安が…

発売が一月遅れる中、渋谷パンテオンで行われていた「東京ファンタスティック映画祭」の中の一企画として1998年11月3日、「永井豪デビュー30周年記念・東京ファンタまんがまつり」が開かれたのだ。1970年代に公開された『マジンガーZ対デビルマン』から『決戦!大海獣』までの全作品をオールナイト公開というファン狂喜の企画。しかもその前に永井豪・石川賢・桜多吾作・小松原一男各氏によるトークショー、剣鉄也の野田圭一・弓さやかの江川菜子・巴武蔵の西尾徳・水木一郎・渡辺宙明各氏も登場するという大イベントだった。

そこで、この『真(チェンジ!!)ゲッターロボ』の1〜3話をこの映画祭専用に1本にまとめた特別編集版も上映されたのである。2巻発売直後というコトもあり、むしろこの上映回で初めて見た観客も多かったのではないだろうか。その出来栄えは喝采をもって迎えられていた。1巻では見られなかった合体の詳細描写や、量産された敵メカのゲッターG、それが無数に合体して巨大なゲッターを形成するビジュアル、『魔獣戦線』からスピンオフしたスティンガーくんとコーウェンくんの恐るべきキャラ立ちぶり、ゲッターと素手で対峙する早乙女博士など、今まで見たこともない世界にただうっとりとするばかりなのであった。


3巻・1998.12.18 4巻・1999.1.25 5巻・1999.2.25 6巻・1999.3.25 7巻・1999.5.25

続いて、またもや予定より1ヶ月遅れて3巻(4、5話収録)発売。監督は川越淳氏の名前がクレジットされる。

ココでファンはスタッフ入れ替え後の新展開を目にするコトになる。13年の月日が過ぎ竜馬は行方不明、隼人以下の號・渓・凱による新ゲッターチームを主軸に、インベーダーとゲッターロボとの戦いが始まる。賢先生テイストのケレン味は鳴りを潜め、作画の傾向や劇判の編成まで変わり、スタッフの一部変更による影響は明らかだった。3巻のパッケージイラストに象徴されているが、何より「漢」ばっかりの汗臭さが消え、特にヒロイン渓の立たせ具合は「これまでと違うのだ」と高らかに宣言しているように当時思えたものだ。

とはいえ、本来この作品の松本プロデューサーが志向していたのは、かつてスーパーロボットアニメで展開されていたようなシリーズ構成だったようだ。主役ロボットとチームというキャラを立てながら、各話読みきり的なドラマを載せる方法論である。特に第8話(5巻収録)「死闘!!血に染まる氷原!!」はその典型だろう。「全体の流れ」はさておき、インベーダーに襲われる村人を守るために主役が闘う、という完結性を持ったエピソードである。惜しむらくはこういった作りがこの回以外はあまり成功しているワケではないのが残念だが。また中盤は特に作画レベルが低かったのも災いしていた。

ただそういう意味では、いきなり大河的に伏線を張り巡らせながら謎で引っ張っていくという形式の1〜3話が、むしろイレギュラーだったのかもしれない。それにしてもこの変わりようは…とファンとしては複雑な思いを抱えるコトとなる。

以後、毎月発売のペースは守られながら、それでも徐々に初期の伏線回収も含めてストーリーはテンションを上げていく。初期のケン・イシカワ節に迫るというよりは、1〜3話のテンションへのトライアルといった趣きではあったが、持ち直していったのは確かだ。必殺技ストナー・サンシャインを打つ際に、線画で荒々しく描かれたタッチのみの「叫び」を描いたり、巨大感を表すゲッターや敵の描き方など、作画的にはテンションも上がる一方だった。

ストーリーとしては、さらに巨大な宇宙への旧ゲッターチームの旅立ちを描き「たたかいだ!ゆくぜ!」というダイナミック風にまとめて終わった。残念なのは、號の存在。人造人間としての彼と、周りの人間に起こりうるようなドラマ、内面に踏み込むようなエピソードがなかったために、號の存在感が「叫び」以外では立たないまま終わったというカンジか。新スタッフの渓への思い入れと同じくらい、そこは見たかった…というのが個人的な感想である。インベーダー自体の目的も、完成後に発売されたムックなどの補完資料にも目を通さないと分からないという弱点もある。襲ってくるから倒す…という単純化はされているので主人公たちには思いいれ出来るのだが、やはり恐竜帝国や百鬼帝国に比べると組織化もされていない分、敵の動機が見えなかったのは、やはり辛いところだろう。

ま、見てる方は何とでも言えるけどもね。


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