|    昔から名作であるという評価を何度も聞き、チターのバック音楽とウィーンの観覧車、そして最後の場面だけを幾度となく観てきた作品です。いつかは観ておかなくては、という思いから今回借りて観るに至りました。舞台は、第二次大戦直後のウィーン。町のところどころが爆撃で破壊され、英米仏露の4ヶ国が共同統治しているという、戦争の傷跡をありありと曝け出しているウィーンです。白黒画面のそのウィーンの姿だけでも、鮮烈な印象があります。
 ストーリィは、アメリカの西部劇作家ホリー・マーチンスが友人ハリー・ライムから呼ばれてウィーンに来たところから始まります。ホリーが着いてみると、ハリーは事故死したということで、その埋葬に立ち会うことになります。その後、ホリーに、ハリーに関わりをもっていたという様々な人間が近寄ってきます。ホリーの方でも、埋葬の際に立ち会っていたハリーの恋人である女優のアンナを訪ねます。そのうち、ホリーはハリーの死に疑問をもつようになり、更に事故死の際に記録されていない第三の男がいたことを突き止めます。第三の男とは誰だったのか。
 静まり返った夜の街角の中、ハリーの横顔が一瞬浮かび上がるシーンは、圧巻とも言うべき見事なものです。
 そして、廃墟とも見紛うべきウィーンに街中にそびえたつ観覧車、ウィーンの街の地下にある大規模な下水道、少しの隙も無く場面は展開していきます。
 ストーリィ全体に漂う物悲しいような雰囲気、それを印象づけるチターの音色、そしてオーソン・ウェルズ演じるハリーの表情の深さ。そして最後の、落ち葉が舞う長い並木道をアリダ・ヴァリが真っ直ぐに歩いてくるシーン、すべて忘れ難いものです。
 淀川長治さんは、本作品は完璧すぎてむしろ好きになれない思いがしたと語っていますが、そのとおりかもしれません。
 ※
  独身時代にウィーンへ行ったとき観覧車に乗りましたが、その前にこの作品を観ていたら、   
  もっと感慨があったろうと思います。                  2000.02.27 |