“ルノワール” ★★
(2025年日本映画)

監督:早川千絵
脚本:早川千絵
出演:鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキー、中島歩、河合優実、板東龍汰

 

カンヌ国際映画祭で話題になった作品。一応観ておこうと思った次第です。

最初から、不穏な雰囲気が充満している、という印象。

時代は1980年代、主人公のフキ(鈴木唯)は小学生、11歳。
このフキという女の子にとても危ういものを感じます。何故なら、表情がない、そのくせ超能力とかに興味を持っていて、他の子どもたちと仲良くやれているのかと気になります。

フキの父親である沖田圭司(リリー・フランキー)は癌を告知されていて、助かる見込みはないらしい。母親の詩子(石田ひかり)は夫の病や家計を担わなくてはならないという重責の所為かやたら苛立っていて、会社ではパワハラを懸念される状況。
そうした間にあってフキは感情を抑えている、いや殺しているのでしょうか。それ故の無表情なのか。

フキだけではなく、母親も父親も不穏。
母親は癌に効くと言われた食品を買い込み、その相手と不倫?しているかと思えば、父親も病院の付添婦に囁かれた言葉に乗っかって超自然的療法に大枚の金を払ってしまう。
そしてフキは、両親との溝、親友の引っ越しから生じた孤立感を埋めようと、伝言サービス(現代のSNSの類か)にひっかかり若い男と
・・・・。

そうした現実を見続けているフキは、危うい女の子というより、やはり気の毒な女の子と言うべきなのでしょう。子どものままでいることが許されず、放置されているといった様子を感じますので。

ラストシーン、ようやくフキが見せる、その年代に相応しい、楽しそうな笑顔にホッとさせられます。そして、これが本来のフキという少女の姿であったのかと思い知った気分。
そうした少女フキを演じ切った鈴木唯さん、やはり見事な演技だったと言うべきなのでしょう。

※なお、下は一場面についての感想。ネタバレですのでご注意ください。
父親がたまたま病院から自宅に戻った時、妻の部屋に掛けられた喪服を見て立ち尽くす場面、そのショックはさぞ強烈だったろうなぁ・・・・。

2025.06.25

                  


  

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